3Dプリンタ奮闘記[18]3Dプリンタの活用・番外編その3 ワンダーフェスティバル
── 織田隆治 ──

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前回に引き続き、と言いたいところだが、今回の番外編は講義ではなく、造形イベントと3Dプリンタについて書いてみる。

「ワンダーフェスティバル」というイベントをご存知だろうか。現在は幕張メッセにて、年に2回開催されるガレージキットのイベントである。

そもそも、ガレージキットとは何なのか。それは、大手玩具メーカーやプラモデルメーカー等から発売される模型やプラモデル等とは違い、個人で製作した原型をシリコンとレジンキャストと呼ばれる樹脂で複製した、少量生産の組み立てモデルを一般にはそう呼ぶ。

まあ、一般的ってのが、まだまだ狭い業界なんですけどね。

ガレージで生産するからその言い方をされる、と聞いたことがあるが、詳細をここで説明していると、それだけでかなりの長さになってしまうので、詳しくははWikipedia等で調べていただききたい。




僕くらいの年代の模型好きな人なら、もしかしたら知っているかもしれないが、ガレージキットとの出会いは高校時代〜大学時代、1980年代だった。

大阪では門真の海洋堂、ゼネラルプロダクツ(現ガイナックス、大阪環状線の桃谷駅にあった)、ボークス(僕が行ってたのは京都の小倉店)等で、怪しい感じ(ごめんなさい)で色々な海外のキットや自作のキットを置いていたのを見に行ったものだ。

ガレージキットは高価だったので、当時の僕のお小遣いではかなり厳しかった。バイト代を貯め、欲しいものを厳選して清水の舞台から飛び降りる勢いで購入、といった具合だ。

しかし、それでもこれまでのプラモデルや玩具にないクオリティ、そのマニアックな商品群にワクワクした。そんなことをしてまでも欲しかったものだ。

当時はかなりアンダーグラウンドな部分もあったガレージキットが、最近のフィギュアブームを受けて、かなりのメジャーなものになってきている。

かつては怪しい趣味だったフィギュア収集だが、最近ではコンビニ等でもフィギュアが当たるくじがあったり、景品でも色々とフィギュアが出て来ている。市民権が認められて来た、ということだろうか。

以前、ディーラーとしてではなく、一般参加者として行ったことがあったが、まだまだアングラの怪しい感じがしたし、参加者自体も男性が多かったものだが、最近では参加するディーラーも一般参加者もあか抜けた人が多く、一番驚くのが女性の参加者がすごく増えたことだ。

「ワンダーフェスティバル」は、いま現在は海洋堂が主催し、年に2回、冬と夏に幕張メッセにて開催されている、そういったガレージキットの即売イベントのことである。

この種のイベントは、現在のところ「トレジャーフェスタ」「キャラホビ」等がある。それぞれ特徴のあるイベントになっているので、こちらも興味のある方はググって頂きたい。

僕はここ7年ほどディーラーとして参加していて、これまで色々なニッチなモデルを出展している。古き良き時代のキャラクターや、怪しい生き物なんかをリリースしているため、周りからは「オッサンホイホイ」とのありがたいお言葉を頂くようになってきている。

この1〜2年で感じたのは、3Dプリンタを使用した出展物が増えているということだ。昨年からは、3Dプリンタ自体を展示するゾーンも現れて来て、かなりの注目度を上げている。そういう僕のブースでも、昨年の冬にBFB 3D TOUCH自体を展示した。

これは、ブースの一部に出展してはどうか? と、僕が購入している代理店さんに提案して実現したのである。その時期では、まだあまりプリンタ自体を展示している所も少なく、かなりの注目度だった。担当者はちょっと気の毒かと思うくらい、ずっと質問攻めになっていた。

で、ここ一年くらいの「ワンダーフェスティバル」等の模型イベントでは、3Dプリンタがかなりの注目度が上がってきたことから、ホビーユースでの3Dプリンタの需要度が上がってきたのだろう。

安価な3DCGソフトもあり、3DCG自体も一般化しつつあることも、この需要に結びついているのだと思われる。

そして、3Dプリンタの出力サービス等も徐々に一般化してきており、それまで手作業でしか作れなかったフィギュアの原型が、3DCGをやっているユーザーも、自らモデリングしたデータを出力をして、ディーラーとして参加出来るようになってきたのだ。

これは、この業界においてかなりセンセーショナルな出来事だと思う。

これまで、こういったイベントで製作する原型等、左右対称な物を手作業で製作するということは、単純ではあるがかなりの造形スペックのいる作業だったのだ。飛行機、車、ロボット等の製作では、これがかなりハードルが上がっていた。

しかし、3DCGではミラーモデリングといった機能で、左を作ると右も同じ形状に製作できる機能がある。これを立体で出力できるということは、もう何というか「凄い!」の一言なのである。

3DCGをやっている人からみると普通のことなのだが、この左右対称モデレングの難易度と言ったら、手作業で造形を行っている人から見ると「神の領域」なのである。ちょっと大袈裟な気もするが、いや、本当、そうなのだ。

僕は、なんとなくのポリシーとして、趣味での造形イベントは手作りで......と思ってはいるが、そのポリシーも崩れてしまいそうになってきた。だって、面白いんだから。

まあ、そういった趣味での製作についても、楽しければエエやん。ということで、これから僕自身も3Dプリンタを使った造形物を出展する日も近い気がしている。

こういったニッチなユーズが広まることで、色々な文化が発展していくのだ! と僕は信じてやまない。

【織田隆治】
FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
< http://www.f-d-studio.jp
>

ホビーユース。まずはこれでしょうね。やっぱりニッチな層からの普及というのが、今のハヤリなのでは? と。次回も模型イベントについての続きとなります。