3Dプリンター奮闘記[27]3Dプリンターの理想と現実
── 織田隆治 ──

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さて、新年2回目の掲載です。そろそろ新年気分も抜けて、皆さん猛烈に仕事モードに突入している事でしょう。僕は、休みもほどほどに、年末年始も少ししか休めなかったので、今はもう最高に仕事モード。

今、僕は専門学校の「3Dフィギュア」なる学科で教えているのです。学生さんが作った3Dデータを、うちの事務所にある3Dプリンターで出力して、それを仕上げて塗装、という感じで授業を進めているのですが、やはり3Dプリンターの理想と現実というのは、一般の人にとって、かなりの差があることに気がつきます。


学生さんに3Dプリンターで出力した物を渡すと、彼らが最初に感じる印象は、「え! ほとんど完成していると思った!」という感じですね。

うちのプリンターは、積層ピッチが28ミクロンでかなり細かいのですけど、やはりその積層痕が出ます。ヤスリで表面をならす必要がある訳ですよね。

「テレビで見たら、凄くきれいなのが出て来るって思ってたのに〜」と言う生徒さんが結構いました。

この先、そういったプリンターも出て来るとは思いますけど、やはり今の段階ではまだまだそういう訳には行かないんですよね。

テレビ等のマスメディアで放送される3Dプリンターでは、頭に思い浮かんだものが、夢のような完成品で出て来る! というイメージを持ってしまうんです。これは、学生さんに限った事ではなく、普通の人もそう思っている人が多いのが現実です。

現実には、おおまかな形状が出て来ること自体が凄いことなんですがね。3Dプリンティングにマッチしたデータの製作方法や、出力した後の処理等、まだまだ啓蒙していく必要があると感じました。

3Dプリンティングの技術は、これからどんどん成長していく分野でしょうし、若い人に教えることが出来るのは、とても有意義で楽しいことです。

彼らが社会に出る頃には、3Dプリンティングによるモノ作りは、今よりもっと身近なものになっていますよね。きっと。長生きしたいなぁ。

これからも、「3Dプリンターとはこういう物やねん!」という知識を持った人を増やすために、色々な所で講義やセミナー、ワークショップ等をやって行きたいと思っています。

なんか、うちでもやってよ! とか、そういう事案がありましたら、3Dプリンターの基礎と、3Dプリンターを使った実際の製作の事例を引っさげて参上しますので、お気軽にご連絡ください。使える人を増やさないと意味ないですしね。

フィギュアに向いた3Dプリンター
工業製品の試作や生産に向いた3Dプリンター
大きな物を作ることに向いた3Dプリンター

と、今でも色々な棲み分けが自然に起こってきてます。ひとつの3Dプリンターですべて出来るわけでもなく、一長一短があるんですねぇ。

僕も、もう数種、別のプリンターが欲しいところで、今どれを導入すべきか画策中。まあ、予算との兼ね合いもあるんですけど、やっぱり実際にじっくり使ってみないと、その良さ、悪さなんて分からないですし、ちょっと触った程度で判断するのは、問題あるな〜っと思ってます。

実際、「BFB 3D TOUCH」というプリンターを2年以上使っていますが、このプリンターの良い、悪いは、やはり数か月〜一年くらい使ってみて、初めて分かることが多いです。僕の認識力が低いんちゃうの? と言われると「ハイ、それま〜で〜よ〜」なんですけどね…

最近導入した「objet24」にしても、とても素晴しいプリンターではあるのですが、それが「BFB 3D TOUCH」よりもすべてにおいて優れているか? と言えばそうでもないんですよね。

そういった違いを、じっくり使った上での判断っていうのは、記事やスペックだけで判断することの出来ない、素晴しい発見とかがあったりするんです。

専門家という方は、スペックだけ見れば想像が着くのかもしれませんが…。僕みたいな職人が、実際に使い倒して見えて来るものとは、視点が少し違うのかもしれません。

だから、僕は実際使い倒してみて、そのプリンターの長所、短所を述べて行きたいと思ってます。

安いプリンターは良いものなんて出来ない。それはそうとも言えるんですけど、使い方によってはかなり凄いものが出来たりします。

まあ、そりゃあけっこう力技もあったりして、かなり手間暇かかりますけど、出来ないこともないんですよ。要するに気合いと愛情(笑)

でも、僕としては良いプリンターも欲しいのはホンネなんですけどね(笑)そんな資金源なんてないわぁ〜。う〜ん。宝くじでも当たるとか、奇特な投資家さんとかが出資してくれるとかないやろか……。

と、日々なんとなくそう思いながら、それでも時代は進んで行くので、日夜業務と試行錯誤に追われておりますのですよ。

ああ、そう言えば、2月9日(日)は幕張メッセで「ワンダーフェスティバル2014冬」。ぼちぼちその準備の追い込みにも入っていくのであります。

3Dプリンターや造形に興味があって、幕張だったら行っても良いかな、という地理にある方は、是非覗きに行ってください。素晴しい造形、ヤバい造形、3Dプリンターを使った造形、色々な造形を見ることが出来ます。その上、コスプレイヤーや、力つき、果てたディーラーの姿も見ることも出来ます。

え? そんなの見たくないですかああ???>果てたディーラーの姿

いやいや、それが結構、憂いのある哀愁、みじめさの中にも、達成した喜びがにじみ出る、なかなか非凡な風景を見ることが出来る、貴重なショットだと思います(笑)

では、そろそろ私もその世界へ…。
生きて戻ってきたら、またここでお会いしましょう。

【織田隆治】FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
< http://www.f-d-studio.jp
>

暇な時には音沙汰ないのに、ワンフェスの準備に本腰入れる時期に限って、沢山のお仕事が来る訳ですよ。お仕事があるって、有り難いっす! ハハハ