ところのほんとのところ[108]ニューヨーク冬の風物詩が……
── 所 幸則 Tokoro Yukinori ──

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さて、いろいろな人とのつながりができつつも、[ところ]のNY行きの本来の目的は、写真を撮ることです。まずは、NYの冬の風物詩と思われる、道路から吹き上がる蒸気(というか煙というか)です。これは20年近く前に初めてNYに行ったときの印象から来ています。当時の[ところ]は武田真治君を撮りに行った冬のNYのかっこよさに魅了されました。

いままで何度かNYに行ったものの、真冬に行く機会はなかったのです。そして今回は、ようやくタイミングが合ったので、憧れの蒸気を狙って探しまわったわけです。しかし、思ったよりポイントは少なく、円筒状のものから水蒸気を逃がすための工事がそこかしこで行われていました。そういった貴重な写真も撮れましたけれど、道路からの直接放出ではないのがちょっと残念でした。

そして、旅の最後の方で会ったNY在住の日本人から、意外な話を聞きました。地下鉄の温かい空気が寒い地上に上がって来て、蒸気となって道路から吹き上がる、という説を[ところ]も含め日本人は信じていたように思います。


真実はもっと驚くべき話だったのです。マンハッタン島の地下には色々なケーブルや配管があります。近くにある火力発電所からも来ています。それらの管のヒビや隙間からもれているものが、冬には水蒸気と一緒になって上昇することで、あの幻想的な冬の景観になっていたようです。

この冬の間にはほとんど工事は完了するようなので、NY名物はもう見ることはできなくなるでしょう。ボイラー室から出る水蒸気は変わらず見られますが、それは主にビルの上にあるので、道路から立ち上るのとは違う景色です。

もっとも[ところ]の視点はたまに訪れる人のものであるし、住んでる人からすれば出ない方が快適になると思います。たぶん空気もきれいになるし、道路の交差点での事故も減るでしょう。あの雰囲気がよかったなどというのは、あくまで旅人の感傷やエゴでしかないですよね。

というわけで、一番の目当てはもうほとんどなかったので、最後の一日は盟友・木村達也君と、別のポイントを探しながら効率的に撮影を進めました。運良く天気も味方をしてくれて、満足できる撮影になり、[ところ]はかなり満足しました。もう一〜二回撮影に来れば、個展ができるなというぐらいまでNYの撮影は進んでいます。もっとも、それを[ところ]が作品に仕上げるのには随分かかりそうです。その後のプリント作業もありますからね。

それと、けっこう驚いたことがありました。友人フランコの車に乗る時によく通る道で、車の窓から素敵なビルを見つけました。そこに行きたい、と木村君に言ってみたのですが、彼はそんなビルはまったく覚えがないと言うのです。

しかし、[ところ]も渋谷の街を撮り始めた頃、渋谷歴28年以上なのに、新発見だらけでした。行く場所や道は知っていても、今まで被写体としては見ていなかった物件がいくつもありました。普通はそういう目で見てないのだから、木村君の感覚は当たり前なんだなと思った次第です。


●「アートとして香川を撮り続けるフォトグラファー集団
K lovers photograpers TOKYO展」
助成:一般財団法人百十四銀行学術文化振興財団

会期:3月11日(火)〜3月16日(日)11:00〜18:30
会場:gallery cosmos(東京都目黒区下目黒3-1-22 谷本ビル3階 
TEL.03-3495-4218)
<http://gallerycosmos.com/>


所幸則の指導の下、写真に取り組んできた「フォト・ラボK」の卒業展、フォト・ラボK修了生からなるフォトグラファー集団「K lovers Photographers」の選抜作品展が行われます。

いわゆるカメラ雑誌でいうところの“うまい写真”を撮る、あるいはFacebookで「いいね!」をもらえる写真を撮るというのではなく、自分のテーマ、被写体と真摯に向かい合い、作品を紡ぎ出すという写真表現、アートとしての写真に取り組む人々の写真展です。主宰の所幸則の新作も出しています。

普段見慣れた人にとっての香川の風景も、香川を見たことがない人にとっても、フォトグラファーの目を通して表現されるとまったく異なる表情を見せます。写真表現の可能性についても、感じられる写真展になると思います。

3月11日(火)18時からのオープニングパーティには皆さんお誘い合わせの上いらしてください。お待ちしています。

【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/
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所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/
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