3Dプリンター奮闘記[32]UV硬化タイプの3Dプリンター所見
── 織田隆治 ──

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朝夜もかなり暖かくなってきました。まあ、暖かいってもまだちょっと寒いんですけどね。そろそろ春の足音が聞こえてきます。

実は、このテキストを書くちょっと前に、光造形式3Dプリンター「B9creator」の発送のメールが届きました。うう〜ん。惜しい! ファーストインプレッションは次回になります。

次回は「開封の儀」→「設置」→「初出力」でも書いてみましょう。まあ、うまく行けば良いんですが…。

ということで、前回の続きの「教えるという事(後半)」を書こうと思っていたんですが変更して、今回は主にUV硬化タイプの3Dプリンターについて、少し所見を書いてみようと思います。


まず、3Dプリンターを導入して、だいたい始めからうまく行くことはありません。高額なハイエンドプリンターなら、案外そつなくいけたりするものですが、デスクトップのプリンターの場合、そのプリンター独自の癖や設定を理解することから始めないといけないということは、これまで使ってきたプリンターから学びました。

買うとすぐにきれいなものが出来る! というのは、なかなか難しいものです。これは、製作機械やその他専門分野の機械にも言えることですね。

今回導入するプリンターは、光造形式3Dプリンターです。最近まで使っていた「objet24」も、同じ光造形式3Dプリンターですが、「EDEN/objet」シリーズのプリンターは、インクジェット方式でテーブルにUV硬化樹脂をプリントし、それに紫外線を当てて固め、積み上げて造形するタイプ。

一方、「B9creator」も同じ光造形式3Dプリンターですが、こちらは液体にプロジェクターやレーザー等を当てて、あたった所だけが硬化するタイプで、一般的には天井につり下げて造形していきます。

こういった具合に、同じ光造形式3Dプリンターなのですが、構造はかなり違ったものになります。

「EDEN/objet」シリーズのプリンターは、積み上げて行く方法上、必ず造形物の下にサポート材が必要になります。このことから分かるように、メインの造形材とサポート材の接している部分は、必ずザラザラした表面になり、ツルツルにはなりません。

プラモデルなんかの雑誌を見る人であれば、プラモデルメーカー等の試作品の表面がザラっとしている事に気がつきます。これは、「EDEN/objet」シリーズ等のインクジェット式プリンターの特徴でもあります。

大量の工業製品の試作なんかを行う場合には、出力時の安定性の面からも、この方式のプリンターが用いられる事が多いようですね。

そのものズバリを仕上げてフィギュアの原型等に使う場合には、かなりの表面処理が必要になります。そういう意味では、フィギュア等の原型制作にはあまり向いていないように僕は感じました。あくまでも僕の主観ですよ。念のため。

それに、これらのインクジェット型の光造形プリンターは、樹脂(液体)自体が高額なものなので、気軽に出力するわけにも行きません。

「B9creator」や「Form1」「MiiCraft」のような「つり下げ造形」をするプリンターは、サポートとメインの造形に使用する素材は同じものになり、サポートと造形物の接点を極限まで減らすことで、後加工が楽になります。

しかし、造形したものを「つり下げる」ことで、設定次第ではテーブルから落下したりする問題もあるようです。また、サポートをどこにどう付けるかも、ある種のコツが必要になりますね。

これは、ローエンドの素材を熱で溶かして積層するタイプの3Dプリンターにも必要な知識です。いかにサポートを減らしつつ、きれいな造形物を積層するか、ということが、3Dプリンターを使用する上の重要なノウハウとなります。

すべてのタイプの3Dプリンターにも言えることですが、出力する部品の配置の仕方も、いかに早く、無駄なく、きれいな造形物を製作できるか、ということに直結します。

それから、つり下げ型のプリンターの素材なんですが、前記したインクジェット型の光造形プリンターの素材から見ると、素材の費用は半額以下くらいになっています。同じ光造形で使用するプリンターですが、そういう面でも、かなりの値段の差があります。

僕が実際に3か月使ってみて気がついたことですが、「EDEN/objet」シリーズのようなインクジェット型の光造形プリンターで製作した造形物は、薄い所や細い所もかなりの強度を持っています。アクリルライク、ということですが、まさにそんな感じですね。

しかし、アクリル用の溶剤等では素材は溶けないので、アクリルやプラ用の接着剤は使用出来ません。接着は主に瞬間接着剤でした。

一方、「B9creator」や「Form1」「MiiCraft」のような「つり下げ造形」をするプリンターで出力した造形物を触ってみると、薄い所や細い所はかなりの弾性があり、どちらかと言うと、やわらかい触感を持つ素材だと思います。やわらかめの塩ビかABSといった触感ですね。

そこで、表面処理をする際の、ヤスリを当てた感触を比べてみようと思って、「Form1」「MiiCraft」で出力したサンプルを入手して削ってみましたが、その感覚は、不思議とアクリルライクと言われる「EDEN/objet」シリーズと似たようなものでした。

柔らかい素材の場合、ヤスリを当てた時に表面がケバ立って、処理しにくいのが普通です。この「つり下げ造形」をするプリンターで出力したものは、案外表面処理がやりやすいように感じました。

僕のような、3Dプリンターを「プロトタイピング」(試作)以外に使用することが多い者にとっては、どちらかと言うと「EDEN/objet」シリーズのようなインクジェット方式よりも、「つり下げ造形」をするプリンターの方が向いている感じがします。

これは、使う側の用途により、マッチしたプリンターを選定する上でも、かなり重要な要素と言えます。

今後、インクジェット方式のプリンターにも、もっと面白い機能を持った機種も出てくるかもしれませんので、楽しみにしています。

これは、僕が使用している「BFB 3D TOUCH」や、「CUBE」、最近ではかなり安価な物が出てくるようになった、熱で素材を溶かして積層するタイプのプリンターにも言えることですね。

ということで、今回はさらっとUV硬化タイプの3Dプリンターについて、でした。さて、次回は「B9creator」のファーストインプレッションを中心に書いてみます。

【織田隆治】FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
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最近あったかくなったので、電車の中の暖房は低めにしてほしい…と思うオッサンです。暑いっちゅうねん…(´・_・`)