3Dプリンター奮闘記[40]3Dプリンターって凄い? モノ作りって何なのさ? by学校編
── 織田隆治 ──

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先週の土曜日と日曜日、筑波大学へ3Dプリンターの講義に行ってきました。一日5時間×2日の集中講義で、「立体造形の基礎と3Dプリンターの応用」というお題でした。

ここ3年ほどこの講義をやらせて頂いていいますが、初回は50人強から始まり、昨年は100人、そして今年は140人という受講希望。

毎年どんどん増えて行っていますが、それだけ若い人にもこの「3Dプリンター」というモノが浸透してきて、興味を持って受講しているんだろうなぁ......なんて思っています。

毎回、この講義で感じることなんですが、最近の学生さんは、僕らの時より賢いのかな〜と思ったりして。




講義の時間にはあまり反応がなく、ちゃんと聞いてくれているのかなぁ......なんて思うんですが、終ってから書いてもらうレポートを見ると、ちゃんと聞いていて、理解しているんだな〜と。

そりゃ、かぶりつきで講義を聞いてくれている学生さんも沢山いますが、さすがに140名もいると、テキト〜に受けてテキト〜にレポート書けばいいか〜なんて、僕なら思っちゃうかも(笑)

と、感じて、自分の学生時代を思い出してみれば、なるほど僕もそうだった気がしたりしてます。最近って言っても、それは最近ではなく、この世代の特徴なんだな。(笑)

レポートをちゃんと読んで、採点する訳なんですが、その中には「おお! これは凄いアイデアだな〜」なんて関心することも多いです。

自分の専攻分野に、どう3Dプリンターを応用するか、ってことを深く探求しているレポートもあれば、自分の専攻分野だけでなく、色々なジャンルでの発想もあったりして、これが若い脳ってことなのかもしれないですね。

そういう柔らかい発想ってのは、オッサンになった今でも大事にしていきたいと思ってます。

僕の講義では、まず、僕がどんな仕事をしていて、そこで、どうやって3Dプリンターを活用しているのかというところから入っていき、次に3Dプリンターの仕組みや基礎をお話しています。

まずは興味を持ってもらい、それがどういうふうに生み出されているのか? という順序にした方が、いきなり論理や理念なんかを話したとしても、インパクトに欠ける気がしてます。

社会で仕事をするとは、どういったことなのか?
そのとき何が重要なのか?
「モノ作り」とはどういうことなのか?
立体造形ってどういうものなのか?
ってことも、講義の内容に入れています。

ここも、僕が「実践第一」と考えている所以なんです。手を動かした者だけが得られる情報、ってのはかなり多いんですよね。

だから、僕の講義の重要なポイントってのは、「何でもいいから、自分の好きなモノを作ってみない?」ってことであり、3Dプリンターってのは、その一つの道具、選択肢に過ぎない、って事なんです。

スライドを多用して、僕が作っているものの工程を見てもらい、それがどうやって作られているのかを理解すれば、モチベーションを上げてくれると思っています。そういった「制作過程を見る」ということって、すごく大事だと思うんですよね。

最近では、出来上がったものがポンっと出て来るでしょ? インスタントのパスタとか、レンジに入れたらチンって出来ちゃうじゃないですか。

それは、麺を茹でたり、どんなスープにするか、どういう素材をどう使っているか、っていう「モノ作り」の重要なポイントがまったく見えてこないんです。

つまんないよな〜って思うんですよね。

僕の講義を受けて、レポートをちゃんと書いてくれる学生さんの多くが「3Dプリンターを使えば、簡単にポンって出来ると思っていました」ってことを書いています。

その出力されたブツを、どうやって製品に仕上げるのか? ってことをちゃんと理解してもらいたい。モノを作るとはどういうことなのかを知る、興味を持つきっかけになってくれたらいいな〜と思っています。

3Dプリンターはすごいけど、それをどう使ってブツを仕上げて行くのか、また、ちゃんとプリント出来るデータを作るってどういうことか、さらに、無駄をなくしたプリントの方法とはどういうことなのか?

な〜んてことが、漠然と分かってくれているようで、教える側としてもとても楽しみな講義なんです。

専門学校での授業では、実際に3Dプリンターを使用して一からモノを作り出し、工夫して、苦労して、完成した時の喜びとか、感動なんかって事を体感してもらうようにしています。

おかげで自主的に色々作り出す学生や、出来ないって思っていたけど、完成した! と喜ぶ学生さんもいたりして、僕もすごく嬉しい瞬間ですよね。

今のところ、筑波大学では、集中講義ってこともあって、実際にプリンターを使用して、何かを作る「ワークショップ」的な講義が出来ないでいるんですが、レポートには「実際に講義で何かを作ってみたい」「実演をしてもらいたい」という内容が多いです。

やっぱり実際に見て、触って、体験するって大事なんですよね。

そういったことが出来ないかと、学校の方にも提案しています。そうなったら、さすがに150名とかは難しいなぁ...とも思いますけど、絶対楽しいですよね。

さて、学生さんはそろそろ夏休み。休み明けにどういった反応で出て来るかが楽しみです。

【織田隆治】FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
< http://www.f-d-studio.jp
>

ああ...。出来る事ならもう一度学生時代に戻りたい(笑)