3Dプリンター奮闘記[59]3Dプリンターを使える人材を育てよう
── 織田隆治 ──

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北京ネタの続きを書くつもりでしたが、日本の3Dプリンターの現状に変更。

最近、3Dプリンターを取り上げるニュース番組が、かなり減ってきました。三年くらい前から二年くらい前までの一年間は、世間にコンシューマー向けのプリンターが出始めた時期でもあって、色々な番組やニュースで取り上げられ、沢山の情報が発信されていました。

で、今はどうでしょう? たまに取り上げられる程度になり、普通にテレビを付けていても、ほとんど見ることもなくなって来ました。

逆に、ネットの世界では、毎日色々な新しい技術や機種についての情報が発信されています。

ネットのニュースは、特定の方が見るものが多く、僕も多分その特定の一握りの人なんだと思いますが、最近の素材、技術の発展というと、かなり凄いものが出て来ています。

今までのスピードから見て、信じられない程高速な出力ができる技術も発表され、世界では恐ろしいスピードで進化して行ってます。

テレビ番組にしたら、二時間以上の特番が作れるほどなんじゃないかな。




半面、一時期の冷やかし的なブームも去り、今3Dプリンターに関わっている人は、本当にやりたい、やっている、という熱意のある方が多いように感じます。

大型家電店なんかに置いてあるプリンターって、売れているんでしょうかね?一度、販売している所を見に行きましたが、人もまばらで売れているようにはみえませんでした。売り場に説明できる人も、多分少ないんだと思います。

白もの家電、黒もの家電と違い、3Dプリンターってもっと特殊なもので、データが触れてナンボの物です。

ブームに乗って買っちゃった人も、今でも続けて動かしている人の割合ってどれくらいあるんでしょうね。そうやって、眠っているプリンターも多いんでしょう。

現在、日本は本当に3Dプリンター分野では、アジア各国から見ても残念ながら完全に遅れた発展途上国です。台湾、韓国、中国からは、色々と新しいプリンターが発表され、精度もかなり良くなってきています。

最近のニュースで、中国の学校に大量の3Dプリンターを導入する、というような発表も行われていますね。

この「3Dプリンターの英才教育」が、本当に必要なのかは別として、国を上げての取り組み具合は凄いものだと思っています。

結局、使えてナンボのものですし、今後の産業、工業からは切っても切れない製造機械、技術になって来ることは確実ですから、そろそろ日本も本腰上げて向かい合って行く時期に来ています。

......というか、遅いくらい。

そういう、「基礎知識」がついた人が社会に出て来ることで、3Dプリンターも売れるようになるでしょうし、それを使って色々工夫したり、作り出すことをやり始めるでしょうね。

今の日本では、企業や工場、研究施設等がメインの「購買主」となっており、一般向けじゃないですね。それは、基礎知識もない人に売るような商品じゃないってことなんですよね。

それで、需要が伸びるはずもなく、商売としては難しくなることに繋がっているんでしょう。

企業向けだけでいい、という考えを持っているメーカーさんもあるとは思いますが、それで本当にいいのかなぁ、と最近ツクヅク思う訳です。

ここ最近では、小さいながらも国産メーカーの3Dプリンターも出て来ていますし、精度も高くなってきています。安価で良い国産のプリンターもあります。

しかし、そういう物を買う人は限られているのが現実です。もっと基本的なことを教えてくれる人、機関、場所が必要なんでしょうね。

そういった意味で、僕は専門学校や大学等で、3Dプリンターの基礎や応用について講義を行っています。本当に微力なんですが、もっと使える人が増えてくれて、大手国産メーカーさんにも頑張って頂きたい。

僕が発起人の一人でもある、大阪3Dプリンタービジネス研究会でも、素材メーカーさんも毎回来られて、新しい素材を開発したので試して欲しい等、活発な意見交換がなされています。

現在では、出席メンバーも280名を超え、多種多様な分野の方が、毎回60名ほど参加されていて、もっと業界自体がこんな感じだったらなぁ......と、いつも思っています。

新しいビジネスコラボなんかも生まれていますし、もっとこういう場を増やす、広めて行く、なんてことをして行かないといけないんじゃなでしょうかね。

個人事業主で、昨年は色々とブッキングして出られなかったことも多かったんですけど、今年に入ってからはほとんど出席するようにしています。

熱融解式のプリンターも、三年前に買ったものから、最近ではBelluloという機種を入れました。このプリンターも、これからどんどん進化して行くんだろうと思っています。

素材自体のバージョンアップも凄い勢いです。以前は、PLAなんて、すぐ折れるし湿気には弱いしなぁ......なんて言ってましたが、最近のPLAの開発技術には驚くばかりです。

金属を混じらせたもの、通電するもの、柔らかさの違うもの、より強度の高いもの等、多種多様な素材フィラメントが開発されています。

この分野って、日本は強いはず。素材自体も、日本のメーカーが行い、逆輸入の形で入ってきている素材も多いと聞きます。

もっと、気軽に3Dプリンターを活用でくる環境を、整えていかないといけませんね。

そのためには、もっと情報を一般に広めて行く必要がありますし、そういった「使える人材」を育てることって、今後の日本での3Dプリンターの発展には重要なポイントになってきます。

今の低価格プリンター。凄くいいですよ。後は、どう使うか、どう使えるか?もっと間口を広げましょう。

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