先日、大阪は梅田にあるグランフロント大阪にて、「うめきたフェスティバル2016」というイベントが開催されました。
そのイベントで、様々な技術を展示したコーナー「うめきた未来ラボ」が一階にて展示されていました。
その中のこれ↓
文楽をヒントに生まれた「黒子ロボット」--柔らかな動きを再現
(CNET|Japan)
http://japan.cnet.com/news/service/35080528/
このロボットの造形部分を、私の方で制作させていただきました。
ロボットシステム本体はマッスル株式会社さん、デザインは岸啓介さん。そして、岸さんのデザインした梵天をベースとしたキャラクターを、私の方で制作したわけです。
岸さんから提供していただいたデータは、もちろん3DCGデータ。しかしながら、3Dプリントをするには、色々とデータの工夫が必要になってきます。
まずは、岸さんのお造りになった3Dデータを元にして、ほとんどすべての部品を、3Dプリンターの出力用にモデリングすることから始まりました。
とっても繊細で細かいディテールのキャラクターですので、かなり気を使う作業でした。
3Dプリンターでは、体積を持ったソリッド形式のデータが必要になりますので、どうパーツを分けて出力するか、後の仕上げ作業を考えて、組み立てやすく、塗装しやすいパーツに分けて、モデリング作業を行います。
出来るだけサポートは使わないようにモデリング、配置をしています。
これは、サポートを使うことで、余分な材料を使うことになり、その上、そのサポートも出力しなければならないので、サポートがないだけその時間も短縮できます。
時間とコストを削減できるわけです。
その上、サポートが付いている所は、付いていない所と比べて、表面が荒れてしまいます。その分の研磨作業も増えて来るわけです。
今回使用した3Dプリンターは、FDM(熱溶解式)プリンターで、ムトーエンジニアリング社のMF-2200D。そして、システムクリエイト社の「Bellulo」(ベルロ)です。
主にこの二種を使ってプリント出力をしました。プリンターの造形サイズ、精細さの差を考慮し、役割分担をしています。
ムトーエンジニアリング社の「MF-2200D」は、造形サイズが300×300×300と、このクラスのプリンターでは大きなものを出力できます。
システムクリエイト社の「Bellulo」(ベルロ)は、造形サイズは200×200×200と、「MF-2200D」の2/3のサイズになっていますが、繊細な表現が可能なため、ディテールの細かいパーツ、比較的大きくないものは、こちらを使用しました。
あと、大きな違いになりますが、スライサーソフト。「MF-2200D」は「Slic3r」ではなく、「Cura」を使用。「Bellulo」(ベルロ)は、標準の「SIMPLIFY 3D」を使用。
3Dプリンターの造形の出来を左右するのが、このスライサーソフトです。
「MF-2200D」の場合、「Slic3r」より「Cura」の方が繊細な表現が可能になるように感じました。
「Bellulo」(ベルロ)で使用する「SIMPLIFY 3D」は、かなり良いソフトです。繊細な表現も可能ですが、何より「サポートの外し易さ」が、このソフトの一番の売りではないでしょうか?
使用した素材は、Polymakerの「PolyMax」。
これは、PLAにも関わらず、耐衝撃強度は、一般的なPLAの8倍強というデータがあり、強度が強いと言われるABSと比較しても約20%も強いとされ、丈夫な素材になっています。
ロボットに使用する素材としては、良い素材だと思います。同社の「PolyPlus」と比べて、価格が少し割高なのですが、それでもその価値があるのではないでしょうか。
この「PolyMax」ですが、一般的なPLAや、同社の「PolyPlus」と比べ、後処理の研磨作業が格段にやり易い面もあります。あのPLA独特の変なネバリ、堅さを緩和して、よりABSに近い触感を得られます。
上記の条件にて、制作作業を行ったのですが、そのパーツの大きさ、多さにより、約一か月くらいはプリントしていたように感じています…。
まあ、正確には延べ半月くらい、二〜三週間はかかったんじゃないかと。
出力するパーツが大きくて多いってことは、表面処理のために研磨する作業も凄いってことですよね。ほんと、これ大変でした。
私がたまに教えに行ってる、大阪芸術大学の学生さんにもお手伝いしに来てもらい、とっても助かりました。
皆で黙々とゴシゴシゴシゴシ……
なんとか、ギリギリではありましたが、会期に間に合わせることが出来ました。
今まで3Dプリンターで作らせていただいたものの中では、ダントツに大変な作業でした(笑)
しかし、出来上がったロボットが、マッスルさんの力で動き出す所を見ると、「うわ〜! 頑張って良かった!」って、正直に思いました。
やっぱり、これ、完成した時の感動、そして、皆さんに喜んでもらえる。これに尽きますね!
さて、また大きい制作が始まります。次も頑張りますよ!
って事で、今回は具体的な(少しだけど)内容になりましたが、参考になれば幸いです。
【___FULL_DIMENSIONS_STUDIO_____ 織田隆治】
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