3Dプリンター奮闘記[83]人を育てるということ その2
── 織田隆治 ──

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さて、これまで色々と3Dプリンター関連の「私信」をつらつらと書いて来たわけですが、世の中、3Dプリンターがどれくらい広まってきたんでしょうか?

今回は、僕の完全なる「私信」と「夢の企画」を徒然なるままに書いてみよう。

一時期のような「メディア」で大々的に取り扱われなくはなっていますが、工業、産業、その他諸々では、かなりの広がりが見えてきています。

そこで、これからそういった分野で活躍する人を育てる場所、つまり「学校」での動きが活発になってきているように思います。




僕のような、超弱小個人零細事業の所にも、色々大学や専門学校からの講義のご依頼が増えて来ているのも、そういった分野での「学部、学科」の設立を考慮されているんだろうなぁ、と感じています。

現在のところ、3Dプリンターを全面に押し出した学校ってには、まだまだ数が少なく感じます。

来年、再来年と、そういったことを教えるための教育機関が増えてくるんじゃないかなぁと思いますね。

水面下(?)では、この3Dプリンターを主とした「プロトタイピング」や「もの作り」、そして最近良く耳にされるようになってきた「IoT」Internet of Things(モノのインターネット)という分野では、3Dプリンターなどが占める役割もかなり高くなって来ます。

そういった分野を見越した「人作り」ということが、今後の産業や工業、流通の仕組みを支えて行くことになりますので、企業側も色々と力を入れて行く必要があるわけです。

そこで、これから社会に旅立って行く若い人材を育てて行くことが、また一つのビジネス展開になって行くんですね。

要するに人ですから。良い機会、良いシステムを使うのは人。

最近はAIの発達がありますが、まだまだ人の力、マンパワーが必須です。

何年か後には、そういったAI技術や機械の精度が高くなっていって、オペレーター的な作業はもちろんのこと、人が動く分野も狭くなるのかなぁ、とは思いますが……。

まあ、そうなって行くのもそう遠くない未来ではあると思いますが、まだまだ「マンパワー」は必要なわけですね。

特に最近は「専門学校」からの問い合わせが多いんですよね。そういった視野を持ち、先行投資が出来る所が生き残って行くんだなぁ、と思います。

こういう施設っていうのは、やはり先行投資必須になるわけです。

3Dプリンターのメーカーと協賛するか、先にどれだけ受け入れる体制、教える体制を整えるか、というところがミソですよね。

そこで教えるカリキュラムとかシラバスの組み立てとかと平行して、色々な素材、技術、機材に触れることが出来るか、ということになるかと思います。

僕も色々な所で教えていますが、やはりしっかりとした基盤があり、先行投資している所には人が集まります。

自分でそういう所を作ってみたいなぁ。とも考えるんですが、そこは超弱小個人零細事業なので先立つ物がない……。

という訳で、今ある、もしくは今から立ち上げようとしている所で「人作り」をしていくことしか出来ないのが少し残念ではありますが、やるからには色々な技術を伝えて行きたいとは思ってます。

しかし、経営権、決裁権もなく、ジレンマを感じることが多いのが現状。こういうのって難しいなぁ。

それならいっそ、学校法人までは出来ないでしょうけど、精鋭を5〜10人くらいを半年程徹底的に育てる「塾」みたいなのを作れないかしらん。と思うわけです。

「もの作り塾」みたいなの。

商品の開発や設計を主として、3Dモデリングから3Dプリント、研磨から仕上げまで、3Dプリンターやレーザー、あらゆる工具等を使えるように育てる所。

FabLabではなく、付きっきりでひたすら作業をこなせるまで。

「各企業から新人を数人研修をして半年預かり、先行投資としてもらって人を育てる、って場所」を作るのが夢ですね。

入塾には面接や試験も必須ですね。

誰でもいい訳じゃない。やはり、「モノ作り」が好きでたまらない人ですね。これって、凄く必要なことです。

そういった企業やもの作りの現場で、能力をガツガツ発揮出来るような人を育てるシステムを作って行ければ面白いかな。

メーカーさんも協賛してもらって、そこから機材を入れてもらえれば、コストも抑えられるし、メーカーさんにとっても、卒業した人の企業で、そのメーカーさんの機材を使ってもらえるメリットもあるかな、と。

最近は、プラモデルもそうなんですけど、工夫して組み立てる必要がないものが多いです。

僕もプラモデル大好きで、小学校の事から色々作ってきてはいるんですが、最近の新しいプラモデルを見ていますと、何も考えずに説明書通りに組み立てれば、それなりにいいものが出来てしまう。

これって、すごくいいことではあるんですけど、臨機応変に対応するとか、工夫をしてよりよいものを作る、ということが難しくなってきているんだと思うんですよね。

昔は、「コレジャナイ」プラモデルが多かったんですよね。そこで、

「もっとかっこよくしたい」

「オレのモデルを作る」

ということで、色々切り刻んだり、くっつけたり。こういうことがとても大切なんだと思います。

今のプラモデルがダメな訳じゃないんですよ。念のため。凄く進化していて、それはそれでとても素晴しいことなんです。

でも、あえて言えば、

「自分が欲しくなるものを、オレのモデルを作りたい」

「そのために3Dプリンターなどの道具を使う」

「そのために3Dモデリングを覚えたい」

こういうことが大事なんですよね。

「3Dプリンターで何か作りたい」ではなく、「オレの欲しいものを作るには3Dプリンターが必要だ」なんですよね。


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