あっと言う間に2月が終ってしまいました。普通なら30日あるのに、この2日は大きい! ですよねぇ…。とにかく頑張るしかないのです。
さて、すでにコンシューマー機として、3Dプリンターが世間に登場して5年ほどの時間が流れてきました。
大型家電量販店等にも、少しながらも3Dプリンターのコーナーができたり、企業内にも3Dプリンターが設置されたり、大学や専門学校等にも3Dプリンターが導入され、それを教える学科も設けられてきました。
僕的には、かなり3Dプリンターの普及度、認知度も上がってきたなぁ〜って思っています。そういったお問い合わせも多くなってきていますし。
しかし、現実はまだまだなんだと実感する出来事がありました。
「3Dプリンター、というモノが、あるのは知っている」というのが、実際のところなのです。「3Dプリンターというモノがあり、簡単に立体を作る事が出来ることは知っている」という感じが正しいですかね。
先日、僕が以前勤めていた会社の先輩デザイナーから電話がありました。先輩も、会社を辞めて独立されて、色々な世界で活躍されている方です。
「織田君、久しぶり! ちょっと相談があるんだけど……」
という言葉から始まったのが、ある展示会に出品する展示物の一部を、せっかくなので3Dプリンターで作ってみたいんだけど、その制作をお願い出来ないか? というものでした。
僕的には、先輩デザイナーのお役に立てるし、面白い展示会なので協力したいところ。内容を聞いてみると、3Dプリンターで出来る案件。
先輩「そこをさ、ちゃちゃっと作って欲しい訳なのよね」
……ん!?
僕「えっと、3Dプリンターで作るには、3Dデータからまず制作しないといけないんですよね」
先輩「そうなの? 3Dプリンターがあったら、簡単にササっと出来るものだと思ってた!」
僕「3Dデータを現実の世界に出現させるのが3Dプリンターなんですよ」
先輩「そうなんだ。知らなかった。3Dデータってどうやって作るの?」
僕「ええっと、まずデザイン画なんかを用意して、それを見ながら僕が3Dモデリングする訳です」
先輩「それって、結構手間かかるよね〜」
僕「そうなんですよ。形にもよりますけど、ある程度はかかりますね」
先輩「それじゃ、二〜三日はかかるよね」
僕「そうですね〜。それから出力して、研磨して仕上げて……」
先輩「え! テレビとか見たら、きれいなのがササっと出てくるじゃん」
僕「あ…。あれ、テレビだからです……。面倒なところはカットされてる事多いっすよ。実際、積層して立体を造形して行くわけで、等高線みたいに積層痕が出来るんですよ」
先輩「うわぁ、そうなんだ…。知らなかった。って事は、結構コストもかかるよね」
僕「そうなんですよねぇ」
先輩「めちゃくちゃ急ぎで、しかもコストが結構かかるんじゃ、ちょっと無理かなぁ」
僕「そうですねぇ……。さすがにその納期では難しいかも……」
という感じで、結局時間的、諸費用的に協力する事は出来ませんでした。
ジャンルは違えど、デザイナーとして活躍している人がこんな感じですので、まだまだ一般には浸透してないんだろうなぁ……なんて思ってしまいます。
僕が学校等で教えているのは、まさにそういった「手間」の部分です。
やっぱりテレビなどの特集では、そういった「手間」の部分がハショって放送される事がほとんどで、3Dプリンターによる制作の一部しか紹介されていないんですよね。
まあ、自分から日頃興味を持って、情報を取っている人は別なんですが、一般
的にはまだまだこんな感じなんでしょうね。
そういえば、そういった工程を紹介している記事や番組を見た事ないですね。
猛烈に簡単にその工程を説明すると、こんな感じになる訳です。
1)まず、3Dモデリングをして3Dデータを制作
2)後工程の事を考えて分割等
3)3Dプリンターに合ったデータを制作して出力角度調整
4)出力。結構時間かかる。たまに失敗する(笑)
5)出来上がったものの積層痕をひたすら研磨して消す
6)下地処理をして塗装する
7)出来上がり〜
そこまでの工程を説明する必要があるのか、って事にもなるんですが、今の現状はそんなものです。正しい知識として、こういった事も取り上げて欲しいなぁ、なんて思います。
模型雑誌や、専門書にはそういった事もかなり書かれてきていますが、一般向けにね。
前にも紹介しましたが、コンシューマー向けの3Dプリンターも、積層ピッチがかなり細かくなり、積層痕もかなり目立たなくなってきたり、プリント速度も上がってきました。
3Dデータもフリーデータがかなり出て来ていますし、そういった3Dデータを販売するサイトも出て来ました。
でも、今のところまだ一般的に普及、もしくは認知された、という状況ではなく、まだまだ発展途上なんですね。
その原因として、やっぱり「3Dデータ」という壁があるんですね。現在のところはまだ「3Dデータ」ってのは敷居が高いもので、気軽に扱えるものではありません。
インクジェットプリンターの普及の時にも、同じような段階を踏んでましたね。
いつか、そう遠くない未来(って聞いた事あるフレーズだな)、インクジェットプリンターみたいに普及する時が来るのかもしれませんね。
ま、その時が来るまでは、僕の仕事もなくならない訳でして(笑)
今、IoTなんかの発展で、3Dプリンターもそうとう注目されています。3Dプリンターって、ある意味、転送装置でもある訳ですよ。そう、あの「スタートレック」や「ザ・フライ」の「立体物の転送装置」ですね。
離れた所に「Gコード」(3Dプリンターで出力するための積層データ)を送ると、それが3Dプリンターで再現される。
まあ「元の物体」が消えてしまう訳ではないので、「スタートレック」って訳にも行かないんですけど。
世界のどこにいても。同じ3Dプリンターと環境さえあれば、そういった事も可能な訳です。いやはや、ちょっと前までは「SF」的なモノですねぇ。
今では、宇宙にもデータが送れる時代になってますし、そういった「Gコード」さえ送れたら、いつでもどこでも同じものが手元に出現する時代になりました。
そう考えると、「3Dプリンター」ってロマンがありませんか?
まさに「夢の機械」!
ま、現実はそう簡単には行かないんですけど、完璧なデータと3Dプリンターさ
えあれば、それが本当に出来ちゃうんですよね。
裏には色々な問題も沢山あるんですが……。特に著作権の問題とか、意匠権の問題とかね。
簡単に(昔から比べると)そういったコピーが出来る時代になった訳ですが、そういうデータの取り扱いにも、色々な工夫が考え出されて来るんでしょう。
未来は楽しい!(はず!)
最近は暗い未来しか話題にならないですが、そういった事だけでなく、「楽しい未来」も、もっと取り上げられてもいいんじゃないかなぁ。
ほら、オッサン世代の子供の頃って、「楽しい未来」ってのが色々あった訳です。未来はこんな感じになる! とか、少年雑誌には特集されてたりして。
そういった「楽しい未来」ってのをどんどん作っていかないと、若い人の夢とか希望とかなくなっちゃうじゃないですか。
やっぱり未来は「ロマン」ですよ。ね? そう思いませんか?
【___FULL_DIMENSIONS_STUDIO_____ 織田隆治】
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