3Dプリンター奮闘記[98]3Dプリンター製作近況/コンセプトモデルから医療まで
── 織田隆治 ──

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梅雨ですねぇ……。気圧が下がって、体調がオモワシクない今日このごろです。

先月から、あるメーカーのコンセプトモデルの製作をやってました。

これまで、3Dプリンターによる製作で最大の大きさは、高さ120cmくらいのロボットでしたが、今回、それを上回る大きさのものの製作となりました。

三つ作ったんですけど、最大のものは高さ160cm。。。しかも、三つで制作期間は一か月という荒行。

まず、3Dデータを見ながら、それを出力するためにどういった分割にすれば効率が良いか、というところから製作はスタートします。

今回の製作では、僕は作る専門。3Dモデリングは他の人が担当しました。そこで、出力するにはここをこうして欲しいとか、色々打ち合わせをしながら3Dモデリングをお願いします。

全体のモデリングデータを送ってもらってからが、僕のお仕事。データを次はどういった分割にするかを考えて行きます。





うちで使っている3Dプリンターで最大なものは、武藤工業さんのMF2200D。出力範囲が30cm角なので、その中に入り、かつ効率よく出力できるように、中空にしたり、分割して出力角度を調整したり。

この行程が実は「3Dプリント」の肝だったりします。

「いかにサポートを付けないできれいに出力するか」

サポートがないということは、材料を無駄に使わない。出力時間が減る。サポートを出力する時間が減る。といったように、いいことずくめなんですよね。

色々計算していると、現在事務所にあるプリンターでは、圧倒的に時間が足らない。そこで、新しく3Dプリンターを二台導入することになりました。

そして、このプロジェクトのために動いたプリンターはこういう構成です。

大きいパーツ担当:武藤工業「MF2200D」×1台
主なパーツ:
システムクリエイト「Bellulo200」×1台
エスラボ「Moth Mach S3DP222」×2台
細かいパーツ:久宝金属製作所「Qholia(クホリア)」1台

おかげでまずは事務所を整理して、置き場所の確保からやる事に(笑)狭い事務所で作業するので、ここからやらないといけなくなりました〜。まあ、事務所のいい整理にはなりましたね。

そして、色々工夫して再構成した3Dデータを黙々と出力開始。なんと、この5台の出力だけで、24時間フル可動させて2週間を要しました。

出力の順番も、うまく組み立てて行けるように考えながら出力していきます。少しでも時間のロスをなくすためですね。

この他にも、工夫しないといけないのは、出力時間の確認です。僕もず〜っと事務所で起きて監視するわけにもいかないので、スライサーソフトで出力予想時間を確認、すべてを書き出して、夜は寝られるようにします。

朝に仕上がり、次の出力を開始して、うまくスケジュール調整します。この、出力の組み合わせが本当に大事なんですよね。

そして、出来上がったパーツは、すぐに組み立てに入ります。ある程度組んだら、次は表面処理。

ご存知のように、3Dプリンターで出力したのもは、積層ピッチで横段が出来ます。それを、ヤスリやパテで埋めて行くわけですね。

これがまた永遠と思われる作業。かなり慣れたとはいえ、ブツがでかくて大変!

使用した素材はPLAなんですが、最近のPLAの品質はかなり上がってきています。素材にもよりますが、ABSにかなり近い性質を持ったものも出て来ています。

研磨作業なんですが、PLAの場合、サンダー等の機械でバリバリっ! と削ると、融点が低いためか、素材が溶けてすぐにヤスリの目詰まりをおこしてしまいますし、素材がやわらかくなる感じがします。

そこで、僕の場合はすべて手作業で研磨をします。これが一番なんですね。ヤスリの種類も色々と使い分けて行くんですが、そこはノウハウって事でしょうか。

その他、PLAの塗装には、下地作りとプライマー、サーフェイサー選びも重要です。これもノウハウですね。

いかにしっかりとした下地を作るか、塗膜をガッチリと吸着させるかが重要ですね。

とにもかくにも、なんとか塗装まで無事に終えて納品する事ができました。出荷予定時間の一時間前までギリギリ作業してました。

完成したものを東京へ出荷し、東京での展示。その後、大阪に戻ってきて展示。最終的に、メーカーさんのショールームに無事に設置して完了!!!

最終的にメーカーさんのショールームに展示されたときは、本当に嬉しかったです。みなさんも喜んで頂いて、本当、大変だったけど、やってよかった! って思う瞬間ですね。

他にも、昨年からずっとやっているのですが、心臓血管外科の先生からの依頼で、施術前のシミュレーション用のモデル製作をやっています。

3Dプリンターで出力したものを、いかに縫合施術に耐える素材におきかえるか。ということが重要で、先生と一緒に、この素材ではどうだろう? とか、色々と試作を繰り返しました。

なんとか良さそうな素材を見つけて、それ以来その素材で製作しています。

この度、雑誌(学会誌)に掲載され、その表紙にその写真が使われました。僕の仕事が、少しでも医療に貢献出来ているのだなぁ……と思うと、嬉しいかぎりですね。

これからも、色々とチャレンジして行こうと思います。


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