◎七つ道具の話
子供のころ「テレビくん」という雑誌の付録だったか、探偵手帳というのが付いていて、表紙裏に探偵七つ道具というのがイラスト図解で紹介されていた。
(1)手帖(その付録です)
(2)ペン
(3)小型カメラ
(4)小型テープレコーダー
(5)小型望遠鏡
(6)虫眼鏡
(7)小型懐中電灯
だったと記憶する。まあ、子供だから七つ道具を集めることに熱中した。ペン・手帳・虫眼鏡以外、手に入らなかったが。集めたのは探偵になりたいからではなく、七つの道具を持つことで万能の者になれるという誇大妄想だった。まあ、子供なのですぐに熱が冷めて、違う遊びに興味が移ったが。
小学校6年の時、高千穂遙さんのSF小説『クラッシャー・ジョウ』が映画になり、ブームになった。クラッシャーという工作部隊(何でも屋)が、宇宙船を駆って大活躍する話である。まあ少年だったし、朝日ソノラマ文庫を友達と奪い合って、読み合って興奮した。
クラッシャーたちは未開の惑星で冒険したり戦闘したりするために、クラッシュパックというバックパックを背負っており、この中に探偵七つ道具に匹敵する小型ライフル、小型通信機、小型バズーカ砲などが装填されてて。
「クラッシュパックを用意せねばならん!!」と、狂奔した。
小型バズーカは80年代の日本には無論売ってなかったので、通学用リュックサックに折り畳み傘、ゴミ袋、ふえラムネ、銀玉鉄砲など代用品を詰めて大満足していた。
まあ少年だから、すぐに飽きてしまったのだが。
その後も江戸川乱歩の少年探偵団、キャプテンフューチャー、007ブームなど、特殊道具が出てくるたびに狂乱したが、どうですか? 皆さんもそんな体験なかったでしょうか? 七つ道具って、少年心をめちゃくちゃくすぐりますよね。
そんなことをふと思い出したのは、ときどき友達に会いに滋賀から東京へと行き来する昨今、年のせいで旅の荷を少しでも軽量化しようと、必要最低限の旅装を検証していた時だった。
そう言えば七つ道具ってあったよな。七つぐらいにまとめられるんじゃないだろうか? と。今、ついに少年心を有したままアラフィフの領域に達してしまった、僕にとっての七つ道具を考えてみた。
電子文具ポメラとか、カシオの電子手帳などは候補に挙がったものの、コンパクト度、携帯性で極めて優秀なガジェットであるものの、その重量と使用頻度からランキング8位以降となった。
衣類やタオルは現地調達が容易なのでやはり七つ道具には至らず、毎度遠出をするたびに反省レポートを綴り、これは必要だった。これは持ってって正解だったと試行錯誤を約5年繰り返し、厳選した結果現在のプチ旅行お役立ちグッズとしての、七つ道具が決定した。
(1)眼鏡…………これがないと空間移動不可の重要グッズ
(2)財布…………SUICAは絶対入れておく
(3)マスク………案外この程度の用心でインフルエンザが防げる
(4)上着…………移動中の電車、バスの冷房対策
(5)折り畳み傘…クラッシュパックと同じや!
(6)携帯電話……目覚まし時計も兼ねる
(7)ゴミ用のスーパーのビニール袋……クラッシュパックと同じや!
以上です。もしよかったら、読者の皆さんの七つ道具も、こっそり僕に教えてください。お便り待ってます。
それにしても、探偵七つ道具、スマートフォンがあったらすべて揃うのよな。そろそろガラケーから機種変せねば。
◎キャプテン・ホリグチ
二重惑星ミラレスには動物は存在せず、菌類とシダ植物だけが鬱蒼としたジャングルを形成してます。しかし、そのジャングルの奥深くに、知的生命体が作ったとおぼしき遺跡があることが探査衛星によって確認されたのです。
低い解像度の写真では詳しいところまではわかりませんでしたので、急遽、国際探査隊がNPO法人によって結成され、有人探査艇おっぺけ丸はミラレス遺跡への調査に乗り出しました。
隊長は日本人のホリグチです。クルーは中国人、イラク人、ザンビア人と国籍もさまざまです。ミラレス星域到達まで約35日。艇内では謎の知的生命体についての推測で毎夜テキーラパーティーが開かれておりました。
「隊長、ヒック、やっぱ知的生命体はヒト型でありましょうか?」
「ウィック、いやヒトが進化したとは限らんだろ、カバかもしれんぞ」
「なんでやねん」
隊員たちの、あてどない口論の末に、ホリグチがビシッと言い放ちました。
「正体がいずれにせよだ、奴らはベジタリアンぜよ」
「?」
「?」
「はあ…」
(2005年1月13日作品)
【海音寺ジョー】
kareido111@gmail.com
ツイッターアカウント
https://twitter.com/kaionjijoe
https://twitter.com/kareido1111