[4858] あなたのギガは足りていますか?◇映像作家 コーキくん◇高卒の就職事情

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《高校生と仕事の出会いをつくる活動》

■装飾山イバラ道[252]
 あなたのギガは足りていますか?
 武田瑛夢

■Scenes Around Me[57]
 映像作家 コーキくんのこと
 関根正幸

■crossroads[71]
 高卒の就職事情
 若林健一




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■装飾山イバラ道[252]
あなたのギガは足りていますか?

武田瑛夢
https://bn.dgcr.com/archives/20190910110300.html

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外出先でスマートフォンのインスタグラムを見たりすると、データ容量を使ってしまう。テレビでも、ギガの大容量や使い放題のCMばかりの気がしますよね。

自分には関係ないことだと思っていたけれど、外出先でインスタグラム中、気に入ったお店のライブを見ていた時に、とうとう画面が固まり始めた。カクカクしたり止まったりだ。

契約形態にウトいタイプなので知らなかったけれど、今までは使っていない部分が繰り越されていたらしい。先月はその繰越部分も使うほど使用量が増大していて、とうとう制限がかかったのだ。しょうがないので、追加データを1ギガ1000円で購入した。

するとこの1ギガという単位が、あっさりとなくなる。やはり基本契約を見直すべきだと思って、近所のソフトバンクのカウンターへ出かけた。

駅前の店舗は広くて快適。ソファもたくさん用意され、白いロボットのPepper(ペッパー)もいる。

こんな地味な店舗にいるほど、Pepperはもう珍しくはないらしい。誰も話しかけられず宙を見ている感じだ。遠くから見ている私と目があったら、気づくくらいのロボットになるとまた楽しいかもしれない。目があったら会釈して近づいてくるとかね。少し怖い?

夫とソファで待っている時に、若い女性と高齢の男性がスタッフと話していた。どうも高齢男性はお怒りのご様子だ。居合わせた不機嫌な人の出すエネルギーって強いので、つい気になってしまう。

「だから、この子が契約内容は全部自分で選ぶんだ。話はこの子から聞いてくれればいいんだよ!」「今回の場合、名義人となっている契約者本人様との、ご契約なので……」(スタッフ)

どうやら、おじいさんが契約者となっている家族(孫娘)の携帯電話の契約内容の変更に来ているらしい。

「この前だって、ずーっと待ってて。わたしが決める訳じゃないんだから、最後までいる意味がないだろう!」

孫娘らしい女性は、ずっと静かに聞いていた。

「働き始めて、もう自分で払える歳なんだら自分で払えば?」。結局は、孫本人の契約に変更するということで、話が落ち着いたようである。何かあるたびにこれを繰り返すより、ずっといいに違いない。

スタッフも辛抱強くて、丁寧な説明と対応だった。おじいさんもだんだんと機嫌が直ってきたようだ。よかった、よかった。

「この前はね、携帯電話の機種を選ぶ時に見せられた電話機の色が、後からなかったとか言って。この子は気に入ってないのを今は使ってるんだ。見せて聞いておいて、ないなんて。可哀想だろ」

結局はお孫ちゃん思いの、優しいおじいちゃんなのである。家族契約だと安いところが多いけれど、家族が何か変更する度に呼び出されている人も多いということか。

スマホのカラーの選択肢は、在庫のあるなしにかかわらず、すべて見せることになっているのかもしれない。契約や販売に関する決まりごとも、万全にやろうとすれば時間がかかる。

契約なのだから契約者本人がいないと変更できないのは当たり前だ。しかし、何かとめんどくさいだろうなというのも理解できる。

そばに立っていたPepper君は、それこそ我関せずの感じで、そこに佇み続けていた。もし進化してオロオロしたり困った顔をしたりしたら、それはそれで可愛いけれど、もっと怒られかねないな(笑)。

私はギガをだいぶ増やした契約に変えたけれど、千円くらいの金額アップで済んでよかった。おそらくこのままで、出かけた時に使うくらいなら足りそうだ。


【武田瑛夢/たけだえいむ】
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
http://www.eimu.com/


スマホのゲームはしばらくしていなかったけれど、App Storeの「Dig it!」という指を使って砂を掘って、ボールを転がすゲームにハマっている。単純なんだけれど、物理法則を使っているので夫もドハマり中で、二人で競い合っているところ。


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■Scenes Around Me[57]
映像作家 コーキくんのこと

関根正幸
https://bn.dgcr.com/archives/20190910110200.html

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コーキ(長谷井宏紀)くんは、オブスキュアで共同生活を送っている間に映像作家として認められるようになりましたが、私はコーキくんの仕事の現場は撮影していませんでした。

今回はコーキくんの仕事に関連する写真を紹介します。



これまでの連載で断片的に触れたように、コーキくんは駒場寮にいる間に撮りためた映像を編集して、「W/O」というドキュメンタリー映画を製作しました。

完成した映像はおそらくアップリンクでお披露目され、その後、「W/O」は海外の映画祭でいくつかの賞を受賞しました。

問題は「W/O」を劇場で公開するにあたって、パンフレットやポスターのデザインをどうするかということでした。

オブスキュアの人たちは、最良のアイデアにたどり着こうと、一時期いろいろなアイデアを試しては、ボツにすることを繰り返していました。

リンク先に最終的に決定されたデザイン(映画のパンフレットの写真)が載っています。

http://web.archive.org/web/20190907143042/https://blogs.yahoo.co.jp/artsygeneproduction/2847151.html


https://live.staticflickr.com/65535/48599231137_dd4351b079_c

写真はボツになったポスター案で、確かコーキくんが飼っていた犬の写真をコラージュしたものです。

撮影時期(2001年5月初旬)からすると、この時すでに最終案は決まっていたはずですが、コーキくんが気に入ってしばらく壁に貼っていたのでしょう。

https://live.staticflickr.com/65535/48687564118_a2397e2a9b_c

2001年2月4日

「W/O」公開に先立ち、サウンドトラックCDを製作しました。写真は完成したCDがオブスキュアに届けられた直後に撮ったもので、正方形のフォーマットにトリミングすることを前提に構図を決めました。

CDは木のケースに収められ、おそらく写真に写っている赤い毛糸で封をしたのだと思います。

2002年5月9日頃

この頃、イメージフォーラムでデレク・ジャーマン特集があって、その関連イベントに上映する映像作品を、コーキくんが製作することになったのだと思います。

これはおそらく、アップリンクの浅井さんの依頼で、浅井さんはコーキくんとデレク・ジャーマンの映像に、何かしらの共通点を見出したのでしょう。

とはいうものの、コーキくんはその当時デレク・ジャーマンの作品を見たことがありませんでした。

また、変な影響を受けたくないので、映像を作るにあたってデレク・ジャーマンの作品は一切見ない、とコーキくんは話していました。

コーキくんはオブスキュアに来たお客さんに意見を聞きながら、映像の製作を進めていました。

私がオブスキュアに行った時、コーキくんは赤ん坊が手足をバタつかせている映像を、曇り空に合成させる作業を行っていました。私は、赤ん坊の色を暗くしたらどうか、と意見を述べたことを記憶しています。

こうして、映像の製作は順調に進み、上映日の前日には編集作業は終わっていました。

ところが、上映当日に編集ソフトからデータを書き出す段階で、映像の色味が予期していたものと違っていることが発覚、大慌てで全編にわたって色の調整を行うことになりました。

私は、調整作業を続けるコーキくんたちを尻目に、イメージフォーラムに向かいました。イメージフォーラムで対バンの高木正勝さんたちの映像を見ながら、コーキくんが間に合うかハラハラしていたのを覚えています。

結局、コーキくんたちはギリギリになって到着、上映は無事に終わりました。この日上映された3作品のうちいちばんデレク・ジャーマン的ではなかったかと思いました。というほど、私もデレク・ジャーマンを見てはいないのですが。

http://sekinema.com/photos/66

写真は上映日の前日に撮影したのだと思いますが、編集作業中の長谷川優樹くんで、この時音響を担当したKUJUNくんも隣にいました。

後に、コーキくんは、製作費を安くあげるために、フィリピンやジャマイカなど、物価の安い国で現地の人が出演する映像を撮るようになります。そして、その方法の延長として、映画「ブランカとギター弾き」が作られたのでした。


【せきね・まさゆき】
sekinema@hotmail.com
http://sekinema.com/photos


1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔


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■crossroads[71]
高卒の就職事情

若林健一
https://bn.dgcr.com/archives/20190910110100.html

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こんにちは、若林です。

突然ですが、高校を出て就職する場合の、就職活動ってどんな風にするかご存知ですか? イマドキの就職活動と言えば、ネットの就活サイトに登録して、希望の企業にエントリーシートを送って入社試験と面接。うまくいけば内定を、そうでなければお祈りメールをもらう、そんなイメージかと思います。

しかし、高卒就職の場合はそうでなく、学校に来た求人票(しかも紙です)から希望の企業を選び応募する。

ただし、ひとりが同時に応募できるのは一社だけ。入社試験、面接と進んで、内定をもらったら内定辞退という選択肢がなく、そこで就職活動は終了となります。

つまり、面接に行った学生が「ここは自分には合わなさそうだな」と思っても、断ることができない。

高卒就職の場合、本人の希望の会社に必ず応募できるわけではなく、成績などから学校内で絞り込みが行われますから、成績上位者から順に応募先が決まります。

限られた選択肢の中からしか選べず、もし合わない会社だと思っても辞退することができない、とても狭い選択肢しか与えられていないという状況にあるのです。

そんな状況ですから、入社後まもなく辞めてしまう方も多いのだそうです。私自身も高卒就職した人間なのですが、恥ずかしながらこんな仕組みだということを、まったく知りませんでした。

昔から変わっていないということなので、おそらく私の時もそうだったのでしょう。違うのは、私が就職した時代はバブル期で、就職するのに困らなかったということ。だから、気づかなかっただけなのかもしれません。

学生さんにとっても、企業にとっても不幸なこの構造、一日も早く変えていかなければならないと思います。

■高校生と仕事の出会いをつくる活動

そんな高卒の就職事情を、なんとかしようと活動している会社があります。

高校生と仕事の出会いをつくる 株式会社アッテミー
https://atteme.com/


こちらの会社では、高校生へのキャリアカウンセリング、インターンの紹介を行い、企業へは定着率向上のためのプログラムの提供などを行っています。そしてアッテミーさんや、高校生が社会に出るための支援を行っている団体が一緒に、大阪でイベントを開催します。

「人生100年時代。18歳の意志ある進路選択」
~就職・進学どちらも魅力的な選択肢へ~
https://attemeosaka.peatix.com/


今年の3月に、「大学へ行かないという選択肢」というタイトルで記事を書きましたが、こんな状況ではとても大学に行かないという選択肢を選べるわけがない。

このことをひとりでも多くの方に知っていただき、協力してくださる方を集めたいと思い、今回取り上げさせていただきました。

もし関心がある、うちの会社で高校生インターンを受け入れを考えてもいい、という方がいらっしゃったら、イベントへの参加や株式会社アッテミーへのお問合せをお願いいたします。


【若林健一 / kwaka1208】
https://croads.jp/aboutme/

子供のためのプログラミングコミュニティ「CoderDojo」
https://croads.jp/CoderDojo/


mBotをただの車型ロボットで終わらせない本
「mBotでものづくりをはじめよう」好評発売中!
https://amzn.to/2NrvzmR



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編集後記(09/10)

●偏屈BOOK案内:渡部悦和・江崎道朗「言ってはいけない!? 国家論」

渡部悦和は日本戦略研究フォーラム・シニアフェロー。江崎道朗は評論家。経済は常に政治(国家の意思)に翻弄される。それを前提に、外国の思惑にいかに適切に対処するのか、経国の大計を論じ合う。日本はなぜ当事者能力を失ってしまったのか。一方でなりふりかまわず相手国に攻勢をしかけるアメリカや中国は、なぜそのようなことができるのか。安全保障の専門家に聞く。

以下、多くのテーマを語り合う中から、防衛費についての両者の発言内容をミックスし、整理してみる。国防費増は国家の意志である。国防産業を重荷だと考えたらダメだ。ネガティブなものではなく、成長産業だと考えるべきである。例えば5Gでも、AIでも、ロボットでもそうだが、他国はこの分野をひとつの有力な産業だと捉えて、国防予算を当てながら官民協力して開発を進めている。

日本の装備品は高いといわれるが、当たり前だ。防衛省が買ってくれる量が少ないから。つまり、装備品の輸出を真剣に考えなければいけない。「死の商人」的な批判をして我が国の防衛産業を衰退させていった結果、アジア各国の軍隊の装備は中国製になった。日本の軍需産業を頭ごなしに批判することは、中国の防衛産業の世界展開、中国のアジア進出を支援していることを理解すべきだ。

防衛関係の研究なんかやらない、と宣言する日本の大学は、ぜひその通りにすべきである。防衛と関連する研究をやらないことに徹底すればよい。しかし、多くの技術は、軍事専用と民間専用という形ではもう分けられない時代だ。コンピュータも携帯電話もスマホも、すべて軍事技術から派生した側面がある。

国防にはかかわりたくないというのであれば、矜持を持ってそれらを使わないという決断が必要なのでは。日本政府も態度が中途半端である。大学が軍事に利用できる研究はやりたくないと言っているのだから、「よし、わかった。軍事と関連しそうな研究予算、全部削るね」と言えばいいのだ。科学技術分野はほぼ軍事と関連するので、その分野の予算はごそっと削ってしまうのだ。

そこで浮いた予算は防衛費や防衛産業、民間シンクタンクに回してもらいたい。「軍事研究しなければ平和が手に入る」という根拠はどこにもないということを、わかりやすく(ちょっと意地悪く)説明している。日本はこのままでは右肩下がりで没落していく。この対談では、外国の具体例を紹介しながら、では日本はどうすべきか、という対策まで議論していてとてもエキサイティングだ。

以下は、本の内容とは関係ない。外国(おもに特定の国々)が明白に日本に害をなしても、国内でなんらかの不祥事が生じても、官房長官は「極めて遺憾だ」とコメントする。そこには何の意味も効果もない。今後はすべての政治家に、あらゆる場面で、この曖昧で無責任な「遺憾」の使用を厳禁すべきである。

きちんと、どこが思い通りでなく残念だという具体的な説明をせよ。ずいぶん昔、植木等がヘラヘラ笑いながら、何事についても「♪まことにいかんにぞんじ〜ます」と笑い飛ばした。いまやその程度の意味しかない「遺憾」など、思考停止の無用で有害な政治用語だ。遺憾なんぞ使っちゃイカン。(柴田)

渡部悦和・江崎道朗「言ってはいけない!? 国家論」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4594082440/dgcrcom-22/



●デレク・ジャーマンのビデオを持っていたなぁ。/内定辞退がないなんて。

/レジ話続き。ということでクレーマー(涙)かつ、店員さんたちにとってはウザい客になったわけだが、今後同じ事例があれば、お客さんたちは対応してもらえるはずだ。

「同時に使えるかどうか」は、今のクーポン・ポイント乱立時代、店員の注意・意識だけに任せるべきではないと思う。

コードを読み込んだ瞬間に「同時には使えない」というエラーが出て受け付けなかったらミスは防げるし、店員さんだって怒られることはない。迷ったらまずは読み込ませるという解決方法がとれる。普通のシステムならそれは仕様に組み込まれているはず。

コンビニはそうなっていて、なんとか券が使えるかどうか、税金がなんとかPayで納められるかどうかを聞くと、まずはピッして、レジの表示で判断してくれる。大阪市の固定資産税は、nanacoやファミペイが使えて、チャージするクレジットカードによっては、カードのポイントがもらえたりするよ。(hammer.mule)