コーキ(長谷井宏紀)くんは、オブスキュアで共同生活を送っている間に映像作家として認められるようになりましたが、私はコーキくんの仕事の現場は撮影していませんでした。
今回はコーキくんの仕事に関連する写真を紹介します。
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これまでの連載で断片的に触れたように、コーキくんは駒場寮にいる間に撮りためた映像を編集して、「W/O」というドキュメンタリー映画を製作しました。
完成した映像はおそらくアップリンクでお披露目され、その後、「W/O」は海外の映画祭でいくつかの賞を受賞しました。
問題は「W/O」を劇場で公開するにあたって、パンフレットやポスターのデザインをどうするかということでした。
オブスキュアの人たちは、最良のアイデアにたどり着こうと、一時期いろいろなアイデアを試しては、ボツにすることを繰り返していました。
リンク先に最終的に決定されたデザイン(映画のパンフレットの写真)が載っています。
http://web.archive.org/web/20190907143042/https://blogs.yahoo.co.jp/artsygeneproduction/2847151.html

写真はボツになったポスター案で、確かコーキくんが飼っていた犬の写真をコラージュしたものです。
撮影時期(2001年5月初旬)からすると、この時すでに最終案は決まっていたはずですが、コーキくんが気に入ってしばらく壁に貼っていたのでしょう。

2001年2月4日
「W/O」公開に先立ち、サウンドトラックCDを製作しました。写真は完成したCDがオブスキュアに届けられた直後に撮ったもので、正方形のフォーマットにトリミングすることを前提に構図を決めました。
CDは木のケースに収められ、おそらく写真に写っている赤い毛糸で封をしたのだと思います。
2002年5月9日頃
この頃、イメージフォーラムでデレク・ジャーマン特集があって、その関連イベントに上映する映像作品を、コーキくんが製作することになったのだと思います。
これはおそらく、アップリンクの浅井さんの依頼で、浅井さんはコーキくんとデレク・ジャーマンの映像に、何かしらの共通点を見出したのでしょう。
とはいうものの、コーキくんはその当時デレク・ジャーマンの作品を見たことがありませんでした。
また、変な影響を受けたくないので、映像を作るにあたってデレク・ジャーマンの作品は一切見ない、とコーキくんは話していました。
コーキくんはオブスキュアに来たお客さんに意見を聞きながら、映像の製作を進めていました。
私がオブスキュアに行った時、コーキくんは赤ん坊が手足をバタつかせている映像を、曇り空に合成させる作業を行っていました。私は、赤ん坊の色を暗くしたらどうか、と意見を述べたことを記憶しています。
こうして、映像の製作は順調に進み、上映日の前日には編集作業は終わっていました。
ところが、上映当日に編集ソフトからデータを書き出す段階で、映像の色味が予期していたものと違っていることが発覚、大慌てで全編にわたって色の調整を行うことになりました。
私は、調整作業を続けるコーキくんたちを尻目に、イメージフォーラムに向かいました。イメージフォーラムで対バンの高木正勝さんたちの映像を見ながら、コーキくんが間に合うかハラハラしていたのを覚えています。
結局、コーキくんたちはギリギリになって到着、上映は無事に終わりました。この日上映された3作品のうちいちばんデレク・ジャーマン的ではなかったかと思いました。というほど、私もデレク・ジャーマンを見てはいないのですが。

写真は上映日の前日に撮影したのだと思いますが、編集作業中の長谷川優樹くんで、この時音響を担当したKUJUNくんも隣にいました。
後に、コーキくんは、製作費を安くあげるために、フィリピンやジャマイカなど、物価の安い国で現地の人が出演する映像を撮るようになります。そして、その方法の延長として、映画「ブランカとギター弾き」が作られたのでした。
【せきね・まさゆき】
sekinema@hotmail.com
http://sekinema.com/photos
1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔