[5088] ヒトとの接触を避けつつ近所を歩く3◇昔ながらの商店街の看板文字◇万年思春期

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《トラウマを乗り越えたいから》

■わが逃走[267]
 ヒトとの接触を避けつつ近所を歩くの巻 その3
 齋藤 浩

■もじもじトーク[136]
 まちもじ探検記 昔ながらの商店街の看板文字
 関口浩之

■デジクリトーク
 万年思春期
 木村きこり




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■わが逃走[267]
ヒトとの接触を避けつつ近所を歩くの巻 その3

齋藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/20200924110300.html

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この4連休、go toトラベルはさすがに気がひける。しかし、どこにも行かないというのもねえ。

たとえば愛車のバッテリーがあがってしまうなどと言い訳を考えつつ、日帰りのドライブくらいならと軽い気持ちで出かけてみたら、大渋滞に巻き込まれました。考えることは皆同じなのであろうか。

日本中、どこもかしこも通常のお盆休み以上の混みっぷりだったらしい。まあ、この日のことは後日まとめるとして、今回もご近所散歩について書こうと思う。

ようやく(数値的には)涼しくなってきたとはいえ、まだまだ(体感的には)暑いし日差しも強い。

強い日差しが水面に反射すると、周囲の天井や壁面に不思議なパターンを投影したりして、その偶然のゆらめきが妙に幾何学的に見えて、ドキッとすることがある。

私の住む集合住宅の中庭には、ビオトープという名のただの池があるのだが、それをまたぐ二階廊下に映し出された不思議パターンがこちら。

ごく初期のCGというか、タイムボカン的というか、しばらくぼーっと見物していたのであった。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/09/24/images/001
https://bn.dgcr.com/archives/2020/09/24/images/002

さて、クソ暑い日に銀行に向かって歩いていると、世田谷通りで好ましい枠を発見。ちょっと傾いだ具合といい、底辺の微妙な歪みといい、なかなかの風情を感じる。「無」のトマソンに属するものだと思う。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/09/24/images/003

昭和な壁鑑賞会1。
鳥居マークの意味を知る者も高齢化している。三軒茶屋「三角地帯」にて。21世紀になって20年経過しても、いまだこういう写真が撮れるのは嬉しい。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/09/24/images/004

昭和な壁鑑賞会2。
作った本人は気づいてないと思うが、点と線と面の構成が実に彫刻的。こういう「無作為の美」は、気づいたときに記録しておかないとすぐ「現存せず」になってしまう。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/09/24/images/005

以前から気になる一角。Googleマップで確認したところ、六叉路だった。ずっと五叉路だと思っていた。こんど行ったら再度確認する所存。

道路の舗装法やペイントなど、とくに鋭角に交わる部分が現代的にバージョンアップされている印象。

また、ご近所全体に同様な物件が増えているように思う。

法律や条例の変更や、土地所有者の代替わりなど要因はいろいろあるのだろうが、今後鋭角な交差点を見たら、写真に記録するよう心がけようと思う。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/09/24/images/006

【さいとう・ひろし】
saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。
 
 
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■もじもじトーク[136]
まちもじ探検記
昔ながらの商店街の看板文字

関口浩之
https://bn.dgcr.com/archives/20200924110200.html

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今日のテーマは、引き続き、「まちもじ探検記」です。前々回は松屋銀座のエレベーターの可愛らしい文字のお話、前回はガムテープで作られた現場発想の素敵な文字のお話でした。

街中には、可愛らしい文字や、独創性の高い文字がたくさん存在します。調べてみると、それらの文字には、歴史や誕生秘話が存在することもあるのです。なんか、不思議な世界ですね。

●昔ながらの商店街の看板文字

交通機関の案内板の文字は、ヒラギノや新ゴなどのゴシック体フォントが使用されることが多いようです。サインシステムと言われる案内板の文字は、視認性を考慮して、同じフォントを統一して使われることが一般的です。

しかしながら、商店街の看板文字は、一般的なフォントを使用していることもあれば、手書き文字を用いていることもあります。

お店の看板の文字は、公共性を求められるサインシステムの文字と異なり、広告の意味合いが強いですよね。インパクトがある書体を使ったり、他店と差別化を図るために、オリジナル書体を使ったりするケースもあります。

そして、昔ながらの商店街の看板では、江戸時代に制作した手書きの看板文字をそのまま踏襲しているケースもあります。

僕のiPhone写真フォルダのある、手書き風の素敵な看板文字をいくつか紹介します。
http://bit.ly/mojimoji136-001


とりわけ、「ふしぎどう」の看板文字、いいですよね。特に、「う」が素晴らしい!

「ワクワクする看板だね」「看板というよりもアートだね」「えっ、この場面でこの書体?」「あれっ、誤植じゃないの?」などと、思わず叫んでしまいたくなる文字を、親しみ込めて、「まちもじ」と名付けました。

そこで、明日9/25金曜19:00-21:00は、「まちもじ」特集のFONPLUS DAYセミナ
ーを開催します。

ご興味のある方、下記ページから、[このイベントに申し込む]をクリックしてくださいね。放送時間になると視聴URLが通知されます。Facebook Liveを使った生放送番組です。文字好きな方でなくても、楽しめる番組です。

▽ FONTPLUS DAY スペシャルライブ2020秋
[みんなで愛でよう!私の「まちもじ」特集]
https://fontplus.connpass.com/event/186547/


今回、スペシャルライブ(スピンオフ版)ということで、あの伝説の(!)、マニアッカーズデザイン佐藤正幸さんと、フロップデザイン加藤雅士さんをお招きします。

お二人も「まちもじ」が大好きなので、視聴者から応募される「まちもじ」を、みんなで一緒に楽しもうと思っています。

佐藤正幸さんも加藤雅士さんも群馬県の方です。僕も群馬出身なので群馬特集みたいなノリになるかもです。でも、群馬特集でありません(笑) 

佐藤さんは顔出しNGなので、アイコン出演になります。番組の司会進行は、鷹野雅弘さんとフォントおじさんの黄金コンビです。番組編成は田口真行さんが担当します。楽しくなるに決まっています。

●琺瑯看板に囲まれて育った幼少時代

僕の生まれ故郷は、群馬県新田郡笠懸村です。今は、群馬県みどり市笠懸町という地名に変わりましたが……。

幼少期の1960年代は、僕の実家や近所の家や蔵には、たくさんの琺瑯看板がありました。キンチョー蚊取り線香、オロナミンC、ボンカレーの看板など。

琺瑯看板の書籍を見つけたので購入しました。琺瑯看板のこと、知らない人も、この写真を見たら、「あっ、そのことなのね!」とすぐに思い出すはずです。
http://bit.ly/mojimoji136-002


●コミュニケーション基盤としての文字

数日前にテレビを眺めていたら、『神聖文字(ヒエログリフ)を読み書きできる書記は、特権階級として王様から扱われていた』という話が耳に入ってきました。

そっか、今から4,000〜5,000年前に文字が誕生した頃、文字を理解できる人は限られていたので、歴史や功績を活字で記録できる人は、高給取りだったわけです。

当時は、まだ紙は発明されていないので、まずは、書記がパピルスに書いて、それを彫師が石に象形文字を彫っていたのかもしれませんね。

また、文字(記号の体系化)の誕生や文字の普及は、商業活動の発達が大きく関連していると言われています。

交易の物資の数を管理したり、物の貸し借りを管理したりするためには、お互いが共通理解し合える、コミュニケーション基盤が必要になったということなのです。

それが文字であり、まずは、メソポタミアとエジプトで文字の文明がスタートしました。いまでは、特定エリアのコミュニケーション基盤だけでなく、世界共通言語として使える文字も存在するのです。

●『文字を組む』ということ

今年、僕は還暦を迎えました。区切りがなんとなくいいこともあり、『文字を組む』というテーマで、誰もが理解できるわかりやすい表現で体系的な記事を書こうと思っています。

「タイポグラフィ」とか「文字組み」という言葉を使わずに、敢えて、「文字を組む」という表現にしています。

なぜかというと、「文字組み」という表現をすると、InDesignなどのDTPソフトウェアを意識した技術解説になってしまいそうだからです。

僕が書きたいことは、技術的な解説やツールの使い方ではありません(実際、それらのことを含めて解説することになりますが)。

それ以前の大切なこととして、「なぜ、人は文字を組むのか」から始まり、「なぜ、このように組むと読みやすいのか」「コンテキストから判断すればこの言葉がしっくりくる」「風通しのよい文章とは」「心地よい歩幅の文章とか」などの観点で書きたいのです。

『文字を組む』ということは、美しいレイアウトの観点だけでなく、「伝わるビジネス文章とは?」「心がこもった年賀状作りとは?」「心地よいメールやSNSでの文章とは?」などにも繋がるヒントがあったほうがいいと思うんです。そうすると、文字がもっと身近な存在になると思ったからです。

『文字を組む』という難しい概念を、難しい言葉で解説するほうが楽ですが、(実際、それも簡単ではないけど)だれもが理解できる平易な表現で、体系的に書くのは簡単ではないなと思っています。

そんな挑戦をしている今日この頃です。とは言え、隙間時間に書き溜める作業なので、いつ完成するのだろうか。かんばります。

では、また、お会いしましょう。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
関口浩之(フォントおじさん)

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1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現SBテクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この25年間、数々の新規事業に従事。現在、活字や文字の楽しさを伝えるフォント伝道師(エバンジェリスト)、フォントおじさんとして活動。


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■デジクリトーク
万年思春期

木村きこり
https://bn.dgcr.com/archives/20200924110100.html

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「木村さん、ご無沙汰&突然ですいません。定期的にオンライン原稿を書いてみませんか?」

フェイスブックを久しぶりにチェックしていたところ、こんなメッセージが来ていた。デジクリで執筆なさっている海津ヨシノリ先生からだ。私と先生の出会いは某美大でデザインを専攻している友達が「面白い授業があるよ」と誘われもぐりで入った時だ。私はその時油絵を専攻していて作品が行き詰まっていたので、気分転換も兼ねて授業を見学していたのだった。先生は教授だった。それからもう約8年経とうとしている今、このような依頼が来たのはなんだか不思議な気持ちである。

もともと私は「文字を書くこと」に対してとても抵抗があった。漫画家と美術家の二足のわらじで生活していこうと心に決め、活動を開始した18の頃から小説家志望や趣味で「文章」を書く人間に多く出会った。しかし、どの人ともなんだか馬が合わなくなりSNSでケンカしてしまうことが多く、ケンカの際に言われた言葉が私の心に突き刺さり、度々脳内でリフレインしている。

この原稿執筆の依頼を受けたのは、そんな自分が文章を書くことにより少しでも創作の幅を広げるとともに、トラウマを乗り越えたいからであった。

タイトルの「万年思春期」という言葉は、私の造語である。小説家志望たちに嫌われた時「あの子は今もまるで思春期の中学生のようだ」と、聞こえるように陰口を言われた。その時の言葉を思い出した時、「中学生のよう、だなんて勉学に励んでいるあの子たちに対して失礼じゃないか!」とひっそりと家で一人怒り、そして「どうせ私は情緒が不安定で反発心が強いまま人生を過ごしていきますよー、だ」と開き直った。

そもそも「思春期」でいることを悪いと思っていないのだ。自分自身と向き合い悩み、時には親や社会に反発する。それのどこが問題なのか。(暴力や非行に走ることは除外する)

少々話がずれてしまった。とにかく私は月一ペースでデジクリに文章を書くことになった。どんなことをこれから書き進めていくのかは分からないが、概ね趣味・仕事含めたマンガやアートの話や、日常で起こったことにたいしての疑問などを自分なりに考え書いていこうと思う。これからどうぞよろしくお願い致します。

☆10月から連載を開始します。今回は予告編。お楽しみに。(編集部)


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編集後記(09/24)

●偏屈BOOK案内:「幸福な監視国家・中国」梶谷懐・高口康太

「中国を訪問すると、その監視社会ぶりに驚かされます。地下鉄駅ではX線による荷物検査など空港並みのセキュリティチェックを実施。日本の新幹線に相当する高速鉄道では身分証の提示が必須です。さらに街中いたるところに監視カメラが林立しており、全国でその数は約2億台。2020年には6億台に迫るといわれています」とイントロからびびらせてくれる。これが現実世界……。

一方、インターネット上でもすべてが政府につつ抜けである。ところが、中国人のほとんどがそれに不満を抱いていない。それどころか、現状を肯定的に見ている。中国人はプライバシーに無頓着だから、専制政治によって洗脳されているから、と思いたいがそんな単純な理由からではないらしい。この本は、この「幸福な監視社会」の謎を解き明かすことを課題にしている。

第1章では、数々の事実誤認と誤解、時には歪曲であふれている、中国の監視社会に関する議論。第2章では、アリババやテンセントといった民間企業によるテクノロジーの開発および、その「実装」がいかに中国社会をより便利に、より快適にしてきたかに注目。第3章では、政府主導で進められている「社会信用システム」に注目、管理社会、監視社会について具体的に考える。

第4章では、政府による言論統制が、情報通信技術(ICT)の進歩によっていかに洗練化し、巧妙になっているかを現地での体験を踏まえて紹介する。第5章では、「テクノロジーを通じた統治と市民社会」という観点から、「管理社会」「監視社会」化の進展による「市民的公共性」の基盤の揺らぎを考えていく。

第6章では、中国の大都市の「行儀が良くて予測可能な社会」が中国のような権威主義国家で進行していることの意味を考える。第7章では、ジョージ・オーウェル「一九八四年」的監視の最前線、深刻な民族問題を抱える新疆ウイグル自治区で起きていることに焦点を当てて論じている。みごとな構成である。

それぞれの章のタイトルは、「中国はユートピアか、ディストピアか」「中国IT企業はいかにデータを支配したか」「中国に出現したお行儀のいい社会」「民主化の熱はなぜ消えたのか」「現代中国における『公』と『私』」「幸福な監視国家のゆくえ」「道具的合理性が暴走するとき」うまい! うますぎる。

「デジタル監視社会」の実体に詳しい専門家ですら、中国の監視社会については正確に理解できていないらしい。多くの誤解がある。その原因は、バイアスのかかった先行情報を参照した結果、後追い情報もさらにバイアスのかかったものになる、という負の連鎖が起きているからだ。驚くのは、外からの視点と中国自身の現状に対する内からの視点とでは、評価が真逆なのだという。

この本は、現代の中国社会で起きていることを、冷戦期の社会主義国家のイメージで語るのはかなりミスリーディングだ、というスタンスをとる。「監視社会」やそれに伴う「自由の喪失」を論じるのであれば、同時に「利便性や安全性の向上」にも目を向けなければならないということだ。というわけで、かなりめんどうくさい。うさんくさい。警戒しながらじっくり読むべし。(柴田)

「幸福な監視国家・中国」梶谷懐・高口康太 NHK出版新書 2019
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140885955/dgcrcom-22/



●木村さん、よろしくお願いいたします!

/冷凍庫(の話題から離れてしまったが)続き。記事の話でいうと、ドン・キホーテの情報はダメだ。だって店舗によって品揃えや価格が違うんだもの。コスパ最高、リピ確定とか言われましても……。

ケトルダンベル8kgが1つ100円で売っていたよ。ゴールドブレンド80gが3つセットで1,200円で売っていたよ。明治ザ・チョコレートが100円だったよ(期限12月)。でもこれ在庫処理だと思うから、他店にはないよね。関西にしか、いやたぶん大阪でしか売ってないだろう「大阪中央卸売市場で直接買い付け!」な海苔佃煮もいいよ〜。

業務スーパーに行ってみたり、バター売り切れ事件や野菜高騰事件があったり、作り置きをしたり、新型コロナであまり外出したくない、なんてことがあったりすると、冷凍庫が欲しいなぁなんて思ってしまうのだ。(やっと戻ってきた)

そういや、どこで知ったか忘れたが、冷蔵庫の中に賞味期限切れのものがある人って27%なんだって。73%の人はちゃんと期限内に使い切っているのね。わたしはほぼ100%だと思っていたわ!! 皆様、ちゃんとされているのね。調味料とか余らせていないのね……。(hammer.mule)