もじもじトーク[136]まちもじ探検記 昔ながらの商店街の看板文字
── 関口浩之 ──

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今日のテーマは、引き続き、「まちもじ探検記」です。前々回は松屋銀座のエレベーターの可愛らしい文字のお話、前回はガムテープで作られた現場発想の素敵な文字のお話でした。

街中には、可愛らしい文字や、独創性の高い文字がたくさん存在します。調べてみると、それらの文字には、歴史や誕生秘話が存在することもあるのです。なんか、不思議な世界ですね。





●昔ながらの商店街の看板文字

交通機関の案内板の文字は、ヒラギノや新ゴなどのゴシック体フォントが使用されることが多いようです。サインシステムと言われる案内板の文字は、視認性を考慮して、同じフォントを統一して使われることが一般的です。

しかしながら、商店街の看板文字は、一般的なフォントを使用していることもあれば、手書き文字を用いていることもあります。

お店の看板の文字は、公共性を求められるサインシステムの文字と異なり、広告の意味合いが強いですよね。インパクトがある書体を使ったり、他店と差別化を図るために、オリジナル書体を使ったりするケースもあります。

そして、昔ながらの商店街の看板では、江戸時代に制作した手書きの看板文字をそのまま踏襲しているケースもあります。

僕のiPhone写真フォルダのある、手書き風の素敵な看板文字をいくつか紹介します。
http://bit.ly/mojimoji136-001


とりわけ、「ふしぎどう」の看板文字、いいですよね。特に、「う」が素晴らしい!

「ワクワクする看板だね」「看板というよりもアートだね」「えっ、この場面でこの書体?」「あれっ、誤植じゃないの?」などと、思わず叫んでしまいたくなる文字を、親しみ込めて、「まちもじ」と名付けました。

そこで、明日9/25金曜19:00-21:00は、「まちもじ」特集のFONPLUS DAYセミナ
ーを開催します。

ご興味のある方、下記ページから、[このイベントに申し込む]をクリックしてくださいね。放送時間になると視聴URLが通知されます。Facebook Liveを使った生放送番組です。文字好きな方でなくても、楽しめる番組です。

▽ FONTPLUS DAY スペシャルライブ2020秋
[みんなで愛でよう!私の「まちもじ」特集]
https://fontplus.connpass.com/event/186547/


今回、スペシャルライブ(スピンオフ版)ということで、あの伝説の(!)、マニアッカーズデザイン佐藤正幸さんと、フロップデザイン加藤雅士さんをお招きします。

お二人も「まちもじ」が大好きなので、視聴者から応募される「まちもじ」を、みんなで一緒に楽しもうと思っています。

佐藤正幸さんも加藤雅士さんも群馬県の方です。僕も群馬出身なので群馬特集みたいなノリになるかもです。でも、群馬特集でありません(笑) 

佐藤さんは顔出しNGなので、アイコン出演になります。番組の司会進行は、鷹野雅弘さんとフォントおじさんの黄金コンビです。番組編成は田口真行さんが担当します。楽しくなるに決まっています。

●琺瑯看板に囲まれて育った幼少時代

僕の生まれ故郷は、群馬県新田郡笠懸村です。今は、群馬県みどり市笠懸町という地名に変わりましたが……。

幼少期の1960年代は、僕の実家や近所の家や蔵には、たくさんの琺瑯看板がありました。キンチョー蚊取り線香、オロナミンC、ボンカレーの看板など。

琺瑯看板の書籍を見つけたので購入しました。琺瑯看板のこと、知らない人も、この写真を見たら、「あっ、そのことなのね!」とすぐに思い出すはずです。
http://bit.ly/mojimoji136-002


●コミュニケーション基盤としての文字

数日前にテレビを眺めていたら、『神聖文字(ヒエログリフ)を読み書きできる書記は、特権階級として王様から扱われていた』という話が耳に入ってきました。

そっか、今から4,000〜5,000年前に文字が誕生した頃、文字を理解できる人は限られていたので、歴史や功績を活字で記録できる人は、高給取りだったわけです。

当時は、まだ紙は発明されていないので、まずは、書記がパピルスに書いて、それを彫師が石に象形文字を彫っていたのかもしれませんね。

また、文字(記号の体系化)の誕生や文字の普及は、商業活動の発達が大きく関連していると言われています。

交易の物資の数を管理したり、物の貸し借りを管理したりするためには、お互いが共通理解し合える、コミュニケーション基盤が必要になったということなのです。

それが文字であり、まずは、メソポタミアとエジプトで文字の文明がスタートしました。いまでは、特定エリアのコミュニケーション基盤だけでなく、世界共通言語として使える文字も存在するのです。

●『文字を組む』ということ

今年、僕は還暦を迎えました。区切りがなんとなくいいこともあり、『文字を組む』というテーマで、誰もが理解できるわかりやすい表現で体系的な記事を書こうと思っています。

「タイポグラフィ」とか「文字組み」という言葉を使わずに、敢えて、「文字を組む」という表現にしています。

なぜかというと、「文字組み」という表現をすると、InDesignなどのDTPソフトウェアを意識した技術解説になってしまいそうだからです。

僕が書きたいことは、技術的な解説やツールの使い方ではありません(実際、それらのことを含めて解説することになりますが)。

それ以前の大切なこととして、「なぜ、人は文字を組むのか」から始まり、「なぜ、このように組むと読みやすいのか」「コンテキストから判断すればこの言葉がしっくりくる」「風通しのよい文章とは」「心地よい歩幅の文章とか」などの観点で書きたいのです。

『文字を組む』ということは、美しいレイアウトの観点だけでなく、「伝わるビジネス文章とは?」「心がこもった年賀状作りとは?」「心地よいメールやSNSでの文章とは?」などにも繋がるヒントがあったほうがいいと思うんです。そうすると、文字がもっと身近な存在になると思ったからです。

『文字を組む』という難しい概念を、難しい言葉で解説するほうが楽ですが、(実際、それも簡単ではないけど)だれもが理解できる平易な表現で、体系的に書くのは簡単ではないなと思っています。

そんな挑戦をしている今日この頃です。とは言え、隙間時間に書き溜める作業なので、いつ完成するのだろうか。かんばります。

では、また、お会いしましょう。


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関口浩之(フォントおじさん)

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1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現SBテクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この25年間、数々の新規事業に従事。現在、活字や文字の楽しさを伝えるフォント伝道師(エバンジェリスト)、フォントおじさんとして活動。