[5113] ツナLIFE/すでに綱島ロス 万年思春期/魅惑のコバルトブルー(ヒュー)

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《ヒューって何?》

■ツナLIFE[002]
 すでに綱島ロス……
 みなみ まいこ

■万年思春期[002]
 2話目「魅惑のコバルトブルー(ヒュー)」
 木村きこり




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■ツナLIFE[002]
すでに綱島ロス……

みなみ まいこ
https://bn.dgcr.com/archives/20201029110200.html

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https://bn.dgcr.com/archives/2020/10/29/images/001

◆1……昭和の時代を彷彿

10月も終わりに近づき、秋は終わり、冬の気配が色濃くなってきた。

出産の準備のため、実家のある長野県に帰省して、約10年ぶりに長野県での秋から冬のシーズンを迎えようとしている。

綱島での柔らかな秋の日差しや、夕暮れに飛び交う川鳥の風景などがすでに恋しい。

綱島を最初に訪れた時、この街には温泉があるということにとても衝撃を覚えた。

私が越してきたときは、綱島温泉・東京園という温泉施設が駅の東口にあり、街のシンボルとなっていた。
かつては街道沿いにたくさんの温泉宿が軒を連ね、芸者衆がたくさんいた、色っぽい街だったらしい。

駅前の商店街を歩いてみると、入り組んだ路地の奥にある甘味処や、ビルとビルの狭間に残る地蔵堂などに昭和時代から息づく温泉街の名残が感じられる。

◆2……魅惑の東京園

東京園は惜しまれつつ数年前に閉業して、現在はもうその姿を見ることはできないが、幸いにも閉業前に二度ほど利用することができた。

この街に生まれ育った人たちには、子供のころ親に連れられて行った思い出の施設だという。

銭湯と同じ料金で天然の温泉を堪能できる、最高の温泉施設である。

しかも900円支払うと、閉館までの一日中を東京園の中で過ごすことができる。温泉に何度も入れて、飲食物は持ち込み自由。近隣の商店街を利用して欲しいということらしい。そんなものだから、館内はいつも人でいっぱいだった。

円を基調とした内装で、円形の浴場や、湯舟。壁が丸いので富士山などの壁絵ではなく、タイルのモザイクアートが施されていた。今まで私は、片方の壁に備えつけられた一般的な四角い銭湯の内装しか見たことがなかったため、ここのお風呂はとてもロマンあふれる贅沢な作りに感じられた。

東京一帯の温泉でよく見られるように、ここの温泉も黒湯である。

お風呂は浴場の中央にひとつだけ。深さのわからない真っ黒なお湯がかけ流されている。ヘリや手すりにしがみついて、恐る恐る足をつける。

中央のお風呂の他には、源泉のお湯が貯められた水風呂代わりの低温のお風呂があり、火照った体を優しく冷ましてくれる。

しっかりお風呂を堪能して出てくると、休憩室は宴会をしている人や、カラオケをしている人ですし詰め状態。EXILEを歌う大学生と、その曲に合わせて社交ダンスを踊るお年寄りという、まさにカオスな空間が広がっていた。

今はもうなくなってしまったが、老若男女が集う、すごい場所が綱島には存在していた。

◆3……綱島温泉の面影

東京園は閉業してしまったが、温泉を求める者のために現在でも綱島には数か所、温泉に入れる場所がある。
スーパー銭湯の湯けむりの庄、下町の銭湯富士の湯、日吉湯などである。その他に、黒湯ではないが草津湯という銭湯もある。

都内で暮らしていた時も近所の銭湯には必ず足を運ぶほどだったが、その日の気分で選べるほど何軒も近くにはなかった。それゆえに綱島は銭湯が多いと感じる。

温泉の街、綱島。再開発が進みゆく街ではあるが、これからもこの風景は変わらず残っていってほしいもののひとつである。


【みなみ まいこ】
漫画家
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■万年思春期[002]
2話目「魅惑のコバルトブルー(ヒュー)」

木村きこり
https://bn.dgcr.com/archives/20201029110100.html

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昔、画材屋に行くと必ず買う油絵具があった。高校3年の頃である。その絵の具は「コバルトブルー(ヒュー)」という青い絵具で、当時の私は美術予備校の先生から「寒色系のほうがうまく色を使いこなせている」と言われていたため、なけなしのこづかいをはたいて買っていた。

コバルトブルーの絵の具には(ヒュー)がついていないものもあるが、そちらはちょっと値段が張るため(ヒュー)の方ばかりを買い美大の受験対策をしていた。秋も深まり冬が近づいてくると、そんな受験生の頃の思い出がよみがえってくる。

さて、私とコバルトブルー(ヒュー)の出会いはこんなものだが、付き合いは今でも続いている。大学生になり平面作品を作るにあたっても、油絵具を多く使用していたのだが、やはり使いなれたコバルトブルー(ヒュー)を手放せなかった。

しかし、多くの色を使いこなしたいため、ある日思い切ってただのコバルトブルーも買い、パレットに出した時にその色の違いに愕然とした。

なんとなくだが色が「重い」のだ。そして混色した時には、相手の色を食い青く染めてしまう。慣れてないせいもあるだろうが、使いづらかった。しかし、これはあくまで私個人の意見である。コバルトブルーを使いこなすアーティストは大勢いるだろう。

そんなこんなで、コバルトブルーに関しては(ヒュー)ばかりを使っているのだが、この(ヒュー)とは一体どういう意味なのか、この文章を書く際に気になったので調べてみた。Art NAVIによると……。

『かつて、バーミリオンという赤い絵の具を作るために、辰砂という鉱物から採られた硫化水銀の赤い顔料が用いられていた。しかし現在は、合成の硫化水銀が作られるようになり、色も品質も良くなり、価格は下がってきている(だが、貴金属である水銀を原料とするバーミリオンは、他の色とは比較にならないほど高価な絵具である)。 そこで、色味をバーミリオンに似せて、別の安い顔料で代用品を作り、安く販売している。』とのこと。

なるほど、バーミリオンから(ヒュー)の歴史は始まっているのか。さらに読み進めてみると……。

『(ヒュー)という添え名が付いている絵具は、油絵具として基本色の原料が高価なものに限られる。また、最近では、元の絵具の有害性によって使用しにくくなっている色の、代替品として作られた絵具にも(ヒュー)がつけられている。マンガニーズブルーや、クロムグリーンなどがそれにあたる。

一般に、基本色の原料が高価な絵具の場合は、元の絵具より(ヒュー)の方が性能面で劣るのが普通だが、現在では改良された顔料処方により、ただ安価なだけでなく、使いやすい独自の色として存在している。』と書かれていた。
Art NAVI: http://www.artnavi.ne.jp/


そうか、コバルトブルー(ヒュー)はもうコバルトブルーのまがいものではなく、独自の色として成り立っていたのか。そう思うと、友達がほめられたときのように少し嬉しくなった。

日頃からなんとなしに使っている、絵の具の成り立ちを今回知ったわけだが、知れば知るほど色の難しさに直面するし、まだまだ自分は知識が足りていないなと思う。そして同時に、色についてはまだ書きたいことがある。次回に続くので、興味を持ってくれた方は読んでもらえると嬉しいです。

○デジクリトーク 万年思春期
木村きこり
https://bn.dgcr.com/archives/20200924110100.html



【木村きこり】
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編集後記(10/29)

●偏屈BOOK案内:池上彰+[池上彰スペシャル]制作チーム 「日本VS韓国 対立がなくならない本当の理由」文藝春秋 2020
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日韓でベストセラーになった「反日種族主義」の筆者は、韓国の学者やジャーナリスト、研究者たちのグループで、編著者は元ソウル大学教授で経済史学者の李栄薫である。日韓関係が悪くなっている時にこういう本を出版したため、深刻な反発が今も続いている。電話やメールによる脅迫は後を絶たない。それだけの反応を予想していながら、なぜ出版したのか。池上彰がインタビューした。

李栄薫は今、韓国社会に深く潜んでいる野蛮性と原始性の克服なくては、韓国社会が先進化できないと考え、彼なりの使命感でこの本を出版した。李は1991年頃から親日派だといわれてきた。韓国の教科書には、当時全国の土地の40%が朝鮮総監府の所有として収奪されたと、いまだに記されているが、それは事実ではないという論文を書き、左派の猛攻撃を受けた。ところが、40%という数値を証明した研究者は一人もいない。

「反日種族主義」は自国を批判する本なのに、韓国でベストセラーになっている。その理由を池上が聞くと、筆者らもまったく予想外だったという。せいぜい2〜3万部ぐらいと思っていたが、実際には11万部近く売れた。2、3週間、総合ベストセラー1位だった。動画サイトにアップした研究者たちの講義は、韓国人が皆共有している一種の危機意識であり、それをまとめたのがこの本である。

そのサイトは日本で大きな反応があり、アメリカ在住の300万人以上の韓国人からも評価され、出版につながった。「日本の戦争責任は日本人の問題です。私は韓国人として韓国人の責任を話しているだけです。韓国人が自ら近代化を行い改革をして、近代国家を建てることができていたら、20世紀の東アジアの歴史はまったく違っていたと思います」。それにしても意味深で刺激的なタイトルだ。

1960年代まで韓国の社会的な構成単位は親族だった。韓国の民族性はその親族の原理が、国家的な原理に拡大したものだろう。その本質的な特徴は強力な閉鎖性で、また敵愾心が強い。特に日本に対しては歴史的に受け継がれた敵対感情が、民族主義という名のもとに広がり、強化されたこと、それが韓国種族主義の特徴である。

ドイツや日本は、民族主義が強化される前の短期間に、歴史的ないろいろな代価を払って近代的な個人、自由な個人というものが確立していた。「しかし、発展途上にあった他の国、特に韓国の場合は、そのような自由な個人というものがなく、言い換えれば歴史的前提条件が十分でなかった。そのため建国後70年間ずっと、前近代的な特徴が強化されて特別な現象を見せていました。種族主義という言葉に『敵対性』という意味がふくまれているのはそのためです」

韓国がまとまるためには「反日」が必要だった。「現在の韓国人の集団的なアイデンティティは、反日の感情を前提にしています。韓国人であるということは、反日の感情に忠実な人間になるということなのです」。その反日というのは、教育によって形成された。1950年代、1960年代の韓国人の反日感情は、それほど深刻ではない。1970年代以降50年間は、民族主義寄りの反日教育が行われた。

虚偽の歴史によって、過去の歴史が上書きされている。そういうことが、今も続いている韓国。李栄薫はあくまで韓国人として、韓国人に向けて話している。一日も早く不幸な過去から、歴史から解放されるべきだ。「韓国人がそのように変化すれば、日本人はそれに十分肯定的に、ポジティブに対応してくださると信じています」。この本が韓国で売れているのは明るい兆しか?(柴田)


●NFCタグシールをAliExpressで買った、の続き。AliExpress内のストアは、主に中国。ロシアのストア(出荷元?)も見かける。日本語表記にはなっているけれど、機械翻訳で、なんとなく意味がわかる程度。

噂には聞いていたが、価格破壊が半端ない。体感的には、日本の物価の1/5。NFCタグシールなら、送料込みで200円前後で売られている。そして価格の幅が広い。

海外通販の利用で感じるのは、日本っていい国だなぁということ(笑)。品質が高く、梱包が丁寧で、商品の扱いがいい。郵便・宅配の人たちの仕事が丁寧。通関時に開けられて、再梱包のためにテープがベタベタ貼られたりしないのもいい。

つまり、AliExpressを利用するにあたっては、日本のストアより覚悟が必要だということ。返金保証はあるが、トラブルがあったら、慣れない言語でのやり取りは疲弊するだろう(ネタにはなる)。続く。(hammer.mule)