万年思春期[002]2話目「魅惑のコバルトブルー(ヒュー)」
── 木村きこり ──

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昔、画材屋に行くと必ず買う油絵具があった。高校3年の頃である。その絵の具は「コバルトブルー(ヒュー)」という青い絵具で、当時の私は美術予備校の先生から「寒色系のほうがうまく色を使いこなせている」と言われていたため、なけなしのこづかいをはたいて買っていた。

コバルトブルーの絵の具には(ヒュー)がついていないものもあるが、そちらはちょっと値段が張るため(ヒュー)の方ばかりを買い美大の受験対策をしていた。秋も深まり冬が近づいてくると、そんな受験生の頃の思い出がよみがえってくる。





さて、私とコバルトブルー(ヒュー)の出会いはこんなものだが、付き合いは今でも続いている。大学生になり平面作品を作るにあたっても、油絵具を多く使用していたのだが、やはり使いなれたコバルトブルー(ヒュー)を手放せなかった。

しかし、多くの色を使いこなしたいため、ある日思い切ってただのコバルトブルーも買い、パレットに出した時にその色の違いに愕然とした。

なんとなくだが色が「重い」のだ。そして混色した時には、相手の色を食い青く染めてしまう。慣れてないせいもあるだろうが、使いづらかった。しかし、これはあくまで私個人の意見である。コバルトブルーを使いこなすアーティストは大勢いるだろう。

そんなこんなで、コバルトブルーに関しては(ヒュー)ばかりを使っているのだが、この(ヒュー)とは一体どういう意味なのか、この文章を書く際に気になったので調べてみた。Art NAVIによると……。

『かつて、バーミリオンという赤い絵の具を作るために、辰砂という鉱物から採られた硫化水銀の赤い顔料が用いられていた。しかし現在は、合成の硫化水銀が作られるようになり、色も品質も良くなり、価格は下がってきている(だが、貴金属である水銀を原料とするバーミリオンは、他の色とは比較にならないほど高価な絵具である)。 そこで、色味をバーミリオンに似せて、別の安い顔料で代用品を作り、安く販売している。』とのこと。

なるほど、バーミリオンから(ヒュー)の歴史は始まっているのか。さらに読み進めてみると……。

『(ヒュー)という添え名が付いている絵具は、油絵具として基本色の原料が高価なものに限られる。また、最近では、元の絵具の有害性によって使用しにくくなっている色の、代替品として作られた絵具にも(ヒュー)がつけられている。マンガニーズブルーや、クロムグリーンなどがそれにあたる。

一般に、基本色の原料が高価な絵具の場合は、元の絵具より(ヒュー)の方が性能面で劣るのが普通だが、現在では改良された顔料処方により、ただ安価なだけでなく、使いやすい独自の色として存在している。』と書かれていた。
Art NAVI: http://www.artnavi.ne.jp/


そうか、コバルトブルー(ヒュー)はもうコバルトブルーのまがいものではなく、独自の色として成り立っていたのか。そう思うと、友達がほめられたときのように少し嬉しくなった。

日頃からなんとなしに使っている、絵の具の成り立ちを今回知ったわけだが、知れば知るほど色の難しさに直面するし、まだまだ自分は知識が足りていないなと思う。そして同時に、色についてはまだ書きたいことがある。次回に続くので、興味を持ってくれた方は読んでもらえると嬉しいです。

○デジクリトーク 万年思春期
木村きこり
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