武&山根の展覧会レビュー 路は未知へと続く。──川俣正『通路』展を観て/武 盾一郎&山根康弘

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武:こんにちは!

山:こんちわー。

武:いやー、ここんとこバッタバタですねー。

山:ほんまに。打ち合せだの軟禁だの酩酊だの、大変ですよまったく。

武:今回はさくっと、まずは告知です!
  「ネグリさんとデングリ対話」プログラムの大ラウンド・テーブル
  「マルチチュードか、プレカリアートか?」
  ──この国の「路上」からトニ・ネグリを歓待する
  < http://www.negritokyo.org/geidai/meeting-cell/ >
  日時:2008年3月30日(日)15時〜19時
  場所:東京芸術大学上野校地美術学部・石膏室
  入場無料(11時より整理券発行)
  武盾一郎が『246表現者会議< http://kaigi246.exblog.jp/ >』として出演
  しまっす! で、「ネグリさんとデングリ対話」プログラムは膨大で、3月
  29日(土)13時からやってます。
  「ネグリさんとデングリ対話」
  < http://www.negritokyo.org/geidai/ >

山:そうなんです。そしてスワンプパブリケイションは、グラウンドで『沼美術館』やります!29、30両日。
  『沼美術館』参照
  < http://swamp-publication.com/archives/2007/02/_swamp_museum_1.php >
  日時:2008年3月29日(土)13時〜21時、30日(日)10時〜21時
  場所:東京芸術大学上野校地美術学部・グラウンド

武:「どぶろくを造る過程からみんなで呑む」までをアーティストブックとして捉えた作品、『アーティスドブログ』も配布!
  『アーティスドブログ』参照
  < http://japan.swamp-publication.com/?eid=621695 >
  それからですね、3月27日(木)12時〜19時「ネグリへのプロローグ」と
  題してコジマラジオ(88Mhz)のパーソナリティーを芸大の学生松岡詩美
  さんという方と俺がやっちゃいます。場所は銀座「Gallery-58」
  < http://www.gallery-58.com/08kojimaradio.html >
  銀座周辺の方、是非チューニングして下さい!!

山:僕も出ますよ! 12時からと17時からの放送。シンポジウムします!

武:俺は呑めないけど、山根はきちんと「シンポジウム」の語源「共に飲む」を遂行します!

山:共やないやないか!

武:わはは! 山根ひとりが酔っぱらってるギャラリーを想像すると恐ろしいものがある(笑)。30日(日)19時〜21時のファイナル・コンサートには「ジンタらムータ」が出演!
  シカラムータの変容体ですね。
  「シカラムータ」
  < http://www.cicala-mvta.com/ >
  その時、『沼美術館』に何かが起こる! 乞うご期待!!



山:いやー、盛り上がってきましたね〜! もう何がなんだかよくわからんが。

武:27日12〜19時がコジマラジオ(88Mhz)、29、30日全日が『沼美術館』、30日15〜19時が大ラウンドテーブル、ってことですな。今その準備でテンパってます!

マルチチュード 上 ~<帝国>時代の戦争と民主主義 (NHKブックス)山:ところでアントニオ・ネグリってどんな人?

武:イタリア人(笑)。
< http://www.negritokyo.org/geidai/antonio-negri/ >

山:イタリア人……、どんな感じやろ。

武:『帝国』、『マルチチュード』が有名らしい。読んだ事ある?

山:『帝国』は3分の1ぐらい読んで、そのまま放置。『マルチチュード』はなぜか下巻から読んで、やっぱり放置(笑)。

武:『帝国』を枕として使用したのみ(笑)。分厚いからね。

山:もうちょっとわかりやすくならんもんなんかねー。でもなんとなくの雰囲気は掴んだ……つもりにしている(笑)。

武:俺も直感で「マルチチュード」を理解した!……つもり。

山:これぐらいできっと大丈夫やろ!わっはっは。

武:俺たちがこれからどのように生きて行ったら良いのか、ひとつの道筋を示してくれるような考え方・思想・哲学なんだとは思う。ということで、道。路ですがな。


●川俣正『通路』展


通路山:そうやね。今回は川俣正『通路』展、東京都現代美術館にまたまた行ってまいりました!
< http://www.kawamata.mot-art-museum.jp/walkway/ >

武:いやー、木場はだだっ広い。

山:僕はすてきな女性お二人と行ってきました! あー楽しかった!

武:俺は一人で行った(寂)。誰か俺とデートして下さい!! メール待ってます!

山:こーへんな。。。で、ちょっと普通の展覧会と違った展示やった。

武:そのものズバリ、タテカンで通路を作ってるんだよな。美術館を「通路」にする、と。この、インスタレーションのみを考えてみても、興味深いんだけど、「通路」に「通路ラボ」があるんだわね。「サヴァイバルイン東京・ラボ」、「コールマイン・ラボ」、「wah・ラボ」、「通路制作・ラボ」、「通路編集・ラボ」、「セルフポートレート・ラボ」、「通路カフェ」。けど、最初は通路のインスタレーションだけの計画だったようです。

山:「通路ラボ」って言われてもなんのこっちゃわからんけどな。要するに通路で何かが行なわれている、と。

武:そうなんだよね、スタッフが居て「作業中」なんですよね。「プロセス」を見せてるんだよな。例えば、「サヴァイバルイン東京・ラボ」。「都市における狩猟採集的な生活についてリサーチして行く。」で、野宿してる、段ボールハウス、ブルーテント、などをリサーチして写真とレポートを展示し、大きな地図にマッピングしていく。

山:ダンボールハウスなんで、どうも最初は感情的に「どないやねん!」って思ってしまったが、よくよく見ると、というか考えると少し意味が解る。

武:俺も、あれだけ心血注いで段ボールハウスにペインティングして、捕まったり、苦しかったり、野宿している人たちも様々で、そういったことを軽々と取り上げていいんか? みたいな感情を持った。俺たちゃ実際に現場に居たんだ、ゴルア! みたいな、ね。けど、なんつか、展示が良いんだよ。それに、作業中ってところもまた、いいし。

山:全体的に、うーん……かっこいいんですよ。すげーくやしかった(笑)。

武:グループで共同作業ってのも、な。羨ましい。

山:あれだけの展示やから、相当な人間が動いてるよな。それはやっぱり出来る人と出来ない人がいるなあ、と。何かしらの「力」みたいなものも強く感じた。

武:コンセプトがシンプルだし、みんなでテーマに沿った事柄を調査、アーカイブしていく。そこから深い問題も浮かび上がる。そして展示がクール。くそーっ!

山:ちなみにこの川俣正さん、冒頭で話した30日のネグリデングリに出ますね。

武:おっ! ホントだ! 『246表現者会議』で、渋谷の高架下に集まって、排ガスにまみれながら五月蝿い場所で、アートの暴力性と都市、再開発について等々を14〜5人で語りあってる、まあ、俺はこういう「泥臭い現場」が好きなんだけど、バーンとこういうデッカイ展示も出来たらいいなあとも思うよ。確かに段ボールハウス・ペインティングは数百軒描いたけど、シコシコと足掛け3年かけてたからね。金と人と力がないとあんなでっかい展示は出来ない。

山:この差はなんなんや!(笑)

武:格差社会だな(笑)。俺たちは「マルチチュード」、川俣正は「帝国」(笑)。


●通路ラボ


山:なんかなあ、うまいことなってるなあ……、「おもしろい」と言うしかないとこあんねんなあ。ところで印象に残った「ラボ」はある?

武:そうだねー、俺は「wah・ラボ」なんか面白かったねー。「このラボはアイデアを集めてその中から一つのアイデアを実現させる活動を行っています」と黒板に書いてあって、実際にアイデアを募っている。見に来た人たちが自由にアイデアを書く、まあ、参加型ラボなんです。

山:ほう。それあんまし覚えてない。

武:例えば「横断歩道で荷物をひっくり返すと風船が出てしまう」というアイデアがあって、実際にそれを行っている写真が展示されている。また、「最強のアイデア」ってのがあって、それが「地面の中に家がある」で、そのアイデアを実現しようと土地の情報を募集している、というまさに作業中であって、その作業を見せながら、協力を求めていく、というやり方なんですよ。

山:なるほど。

武:プロセスそのものが作品、という見せ方なんだけど、今までこういうアプローチは見た事なかった。

山:ふむ。複数のラボの中の一つにそういったラボがある、というのがいいな。いわゆる参加型の展示。「『参加してください』と僕は言わない。大事なのは一緒に考えていくということかな。一人ひとりが疑問を提示して、自分でアイデアを出していく。」(川俣正【通路】/美術出版社より)とおっしゃってます。

武:ふむ、「セルフポートレート・ラボ」もいわゆる参加型だよね。で、僕が一番長く居たのは「コールマイン・ラボ」で、炭鉱遺跡のレポート。これは面白かった。廃鉱になってる風景の写真が展示されているんだけど。かつて、石炭は主要エネルギーだったわけで、炭鉱の街が栄えたけど、一気に没落して街ごと消えてしまう。現在は石油エネルギーが主で、石油で出来るさまざまな物や産業があるけど、この炭鉱遺跡のように将来、代替エネルギーによって今まで栄えてた場所が一気に消えてしまうのではないか、とか、考えるよね。

山:ふむ。それはなんやろ、何をアーカイブしてるんやろ。

武:ある意味、過去の再発見アーカイブなんだろうけど、炭坑遺跡を丹念に追ってく事によって現在が浮かび上がって来る。博物館的な歴史の見せ方とはちと違うんだよね。

山:なるほど。

武:過去へのノスタルジー的オマージュだけではないんですよ。現在、そして未来を考えるように見せている。これもうまいなーって思った。炭鉱の話っていうとさ、なんか泥臭くて、暗くて、みたいなのってあるじゃん。山本作兵衛の炭鉱画とか、好きだけど、なんていうか、ちょっと日本土着な霊的雰囲気っていうかさ、そういう「闇」的部分ばかりがピックアップされるじゃないですか。この「コールマイン・ラボ」はそうじゃない見せ方をうまくやってる感じがした。

山:まあ山本作兵衛の場合は炭鉱夫本人やからね。この展示の場合は完全に外側から俯瞰して見てるわけやしね。アーカイブ作業っていうのはどこか冷たい、ある意味暴力的な印象も受けたりする。

武:なるほど、それは言えてる。あとさ、実際俺たちって炭鉱って知らないじゃないですか。スタッフの人たちも知らない。知らない人が知らない人に向けてのアーカイブ作業だからこそ伝わるものもある。炭鉱や労働が取り沙汰される時の往々にしてありがちな左翼臭、みたいなのがないのがよかったんかな。

山:それはあるかもね。政治的観点からそれを扱っていない、というか。じゃあ、どの観点なんや?

武:生きていく問題(笑)。

山:確かに生きていくための労働があって、それが衰退して……、ということやね。不安と未来は表うら(笑)。なくなって行くものに対する不安というか。でも、感傷的には感じない。

武:そうだねー。炭坑遺跡と炭鉱労働者を追跡する作業、まさに「作業」から見せていくやり方。

山:それもつまり「人間の動き」、ってことやな。作品の中にも動きがある、と。ずっと動いてる、と。

武:意思をもって、冷たくアーカイブするワケなんだが、結局それを支えてるのは情熱だったり。

山:確かに。根底に情熱がなかったらこんなことできへんやろね。

武:作品を作る時、実はプロセスが面白かったりするわけじゃないですか。今回の『通路』は「ラボ」と名付けてるように、大きな実験場だったんだろうね。

山:なんか神的視点やな。エゴイスティックな感じもするな。そこに魅力もまたあるねんけど。まあ教授やし、そうなんかね(笑)。

武:やりたい放題やれるなら俺も教授になりたい(笑)。でさ、そのプロセスそのものを作品として見せる場合、相当な作り込みというか、見せ方考えなきゃならない。

山:そうやね。

武:それらをスコーンとシンプルにタテカンで通路作ってラボを配置した。

山:うまいこと作ってた。

武:作業中の営みが空洞化しちゃったら台無しなんだけどね。そこら辺もうまいこと見せた、という感じはうけました。で、展示見ながら、俺たちだって、このくらいの広さでも充分もつ展示が出来るんじゃないか? という希望も湧きました!


●本当の通路展


山:まあ僕が一番良かったのはそこで酒呑めたからよかってんけどね。通路カフェ。

武:酒かい!!

山:でもビール二本までやと! もっと呑ませろ! って言うか呑みたかったら外で呑め! というわけでその後、外でワイン呑んでました。

武:あー。「通路」なんだからさ、「泥酔してもいい」ってして欲しいよなー。煮炊き、寝泊まりも可。タテカンもグラフィティーだらけ。通路にゲロとか犬の糞とか落ちてんの。連れ込みスペースとかあって、ラリってる人たちがいかがわしいことやってる、とかね。で、ちょっと溜まれるところではフォーク・ゲリラとかDJとか、勝手に酒とか古本とか販売してるヤツがいたりしてるの。ビッグ・イシュー(ホームレスが売る雑誌< http://www.bigissue.jp/ >)もあるといいな、ちゃんとホームレスの人が野宿してるの。ついでに、機動隊のコスプレした軍団が寝泊まりしてる人たちを強制撤去する、という演劇も行われるの。大阪・長居公園の強制撤去演劇みたいに。参加型(笑)。武盾一郎『本当の路上』展(笑)。そうなってれば、もう言う事ないね。

山:……何をもとめているんですか。

武:芸術。当たり前だのクラッカー。

山:いつもの現実やないか! いや、その現実さえ危うくなってきてるんやな、今は。ふむ、都市の中にもう一つ都市を作る、それが現実なのか嘘なのかよくわからん……、おもしろそうやな。でも何がホンマかほんまにわからんようになってきた今日この頃。

武:まあ、ニューヨーク行って帰って来たら、出来るさ。

山:ニューヨーク! そうだ! ニューヨークへ行こう! このなんでニューヨーク? って感じが最高やね。

武:俺ここんとこ風呂に入ってないからさ(笑)。

山:……早速ニュウヨクして下さい。あーー、言ってもうた! 恥ずかしい!

武:ふふふ。俺の勝ち。

山:なにを盛り上がってるんや!

武:まあ、方法論を学ぶには良い展示だったね。そろそろ〆ようか。

山:そうっすね。では最後に展示内の壁に書かれていた言葉を引用しとこ。
  「すぐれたアーティストとは
  鋭利なアクティビストであると同じに
  誠実なアーカイヴィストである。(桂)」

武:フォッフォッフォ!

●展覧会評


山:☆☆☆☆☆ 星5つ。すてきな女性と展示をみながらお酒を呑めた。

武:☆ 星1つ。悔しいが実はもう一度行きたいので、デートしてくれる女性が現れたら、☆☆☆☆☆☆☆ 星7つ。

■川俣正『通路』
< http://www.kawamata.mot-art-museum.jp/walkway/ >
会期:2008年2月9日(土)〜4月13日(日)
会場:東京都現代美術館 企画展示室 1F+B2F
開館時間:10:00〜18:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日
観覧料:一般1,000円、学生800円、中高生・65歳以上500円、小学生以下無料
※同時開催の「MOTアニュアル2008 解きほぐすとき」との共通パスポートもございます。(一般2,000円、学生1,600円、中高生・65歳以上1,200円)

【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/今まで後悔した酒は一滴もない】
take.junichiro@gmail.com

【山根康弘(やまね やすひろ)/酒がありゃいーんだよ、酒が】
yamane@swamp-publication.com
SWAMP-PUBLICATION
< http://swamp-publication.com/ >
交換素描
< http://swamp-publication.com/drawing/ >

池袋駅東口から首都高護国寺入口に向かうグリーン大通り、ちょうど西側に雑司が谷霊園があるあたりの首都高下に、数十軒の段ボールハウスが軒を連ねていた。ここは僕の自宅近くで、日常的にその営みを目にしていた。

この展示を見た翌々日である3月11日、それら段ボールハウスが一つ残らず忽然と姿を消し、残された地には規則正しくポールが並んでいる風景を目の当たりにした。
僕は、心が寒いとはこのことか、というような感情を持ち、すぐさま川俣正『通路』展の中の「サヴァイバルイン東京・ラボ」のことを思い出した。僕は今、これがどういう事なのかを理解することはできないが、「アーカイブの暴力性」、そんな言葉が頭の中をぐるぐると回っている(山)。

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アントニオ・ネグリ マイケル・ハート 幾島 幸子
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通路
川俣 正 大橋紀生 川俣正
美術出版社 2008-02-28

by G-Tools , 2008/03/12