歌う田舎者[17]わたしの初体験/もみのこゆきと

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かつて15歳の山口百恵は「青い果実」という歌で、♪あなたが望むなら私何をされてもいいわ♪と歌った。"何をされても"って何ですか? どう考えたって、あんなことやこんなことやそんなことですよね。Wikipediaにだって、この歌に続く「ひと夏の経験」も含め、「青い性路線」で山口百恵は絶大な人気を獲得したと書いてありますとも。

誰にも訪れる初体験。あなたの初体験はいかなるものだっただろう。今日は皆さまに、やっと訪れたわたしの初体験を告白しようと思う。

そう、なぜかわたしには、いつまでたっても初体験の日が来なかった。こんなことではオトナになれないと以前から気に病んでいたのだ。2010/3/12付けのデジクリに書いたではないか。アレっすよ、アレ。え? そんなの誰も覚えちゃいねぇって? 知らざぁコピーして聞かせやしょう。

◆参考:2010/3/12のデジクリ─────
ぼく、もみのこゆきとです。小学生です。ほんとうは性ふうぞく関連とくしゅえいぎょうのお店には、まだ行ったことがありません。...略...
1/22のGrowHairさんのコラムに、浅草ロック座というところが書いてあったので、しゅうがく旅行で東京に行くときに、一度見てみたいです。
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やっとそれを実現できる日がやってきたのだ。
......あの〜、その初体験って......もちろんストリップ劇場を初体験したお話ですとも! 何か文句でも?



ちなみに、わが薩摩藩にはストリップ劇場はない。かつては「東洋ショー」「国際ミュージック」という二大ストリップ劇場が存在した時代もあったのだが、20年以上前になくなってしまった。しかし、存在していたとしても地元でそんなところに行けようか。いや、行けるはずがない。ここ、反語です。受験生の皆さんはよ〜く覚えておくように。

そんなところに並んでいるのを誰かに目撃されようものなら、田舎ではもう生きていけない。「もみのこんちの娘っこの話、聞いたか」「聞いた聞いた。なしてそったなとこにおらしたんかの」「嫁こ行げねぇ行かず後家は、かわいそんだな」「んだんだ」こりゃいったい何弁なんだ? と聞かれても、わたしだってわからないので深く追求しないように。

ここはやはり、花のお江戸に出かけるという絶好のチャンスに体験するしかないではないか。コブクロだって、ここにしか咲かない花を見に行こうと言っている。たとえそれがストリップであっても......言ってねーよ!

しかし、女一人でストリップなんて大丈夫なのか......事前リサーチということで、隔週金曜日にデジクリに現れるG/Hさん(仮名)にお伺いを立てたところ、「浅草ロック座なら、全然おかしいことないですよ、女性一人でも」「以前は、はとバスのコースに組み込まれていて、田舎の農家のおいちゃんおばちゃんがわさっと来るときがあったけど」との心強いお言葉を賜った。田舎の農家のおばちゃんが大丈夫なら、歌う田舎者のわたしだって大丈夫なはずだ。

ええぃ! 薩摩藩士に二言はなかとでごわす。三波春夫先生も歌っておられる。♪止めて下さるな妙心殿 落ちぶれ果てても もみのこは武士じゃ 女の散りぎわは知って居りもうす 行かねばならぬ、行かねばならぬのだ!♪......ちょっと違うがな。

清廉潔白清純無比なわたしとしては、このくらい御託を並べておけば、自らの行動を正当化できるのではないかと思う次第である。

そんなわけで、ストリップ初体験のために浅草を訪れたのであるが、薩摩藩ではいまいち役に立たないiPhoneも、お江戸ではバリバリ役に立つ。ちなみに先日など、鹿児島中央駅で、アンテナは5本立っているのに、電話しようとしたら『接続できません』などと言いやがり、iPhone片手に公衆電話から電話をかけるという素敵な体験をしたわたしは、「こんな携帯、捨てたるわ!」と叫びそうになったのだが、右も左もわからない花のお江戸で、わたしを浅草駅からロック座まで道案内してくれたのはiPhoneのマップ機能だった。やはり捨てなくて良かったかもしれない。

15時15分から始まる二回目公演の30分前にロック座に着いたのだが、だが、だが......どーにも入る勇気が出ない。入口には「祝・団鬼六 小向美奈子さんへ」という花が飾られている。おぉぉ、団鬼六先生の花か! さすがは花のお江戸は違うわい。しかしのぅ、ロック座に入る客を遠くから見ていたのだが、女一人どころか、女複数という客も、男と一緒に来場する女もいやしねぇ。

勇気が出なかったら、お隣の浅草演芸ホールで落語でも見て帰ろうと思っていたところ、強風に吹き飛ばされた小向美奈子のパネルを直しに、ロック座の従業員らしき小太りのおじちゃんが現れた。いかにも、たまたま通りかかっただけの通行人を装って尋ねてみる。

「あの〜、すいません」
「はい?」
「こういうとこって、女性客っているもんですか?」
「あー、いますよ。たまにね」
「あ、そうすか。女性一人ってお客もいます?」
「あー、えぇ、たまにね」
「ふ〜ん」

入り口のボードに目をやると、一般入場料金7,000円と書いてある。
「あ、ちょっとちょっと。一般入場料金7,000円なんですか? 6,000円じゃないの?」
「あー、今回はねぇ、いつもの興行とはちょっと違うんで」

たまたま通りかかった清廉潔白清純無比な通行人が、なんで通常料金が6,000円だと知っているのか、そこは追求してはならない。想定外じゃねぇかと思いつつ、まじまじとボードを見ると、片隅に『女性入場料4,000円』と書いてあることを発見。

「あれ?女性割引ってあるんですか?」
「ありますよ。あとシルバー割引とか学生さん割引とかね。まぁ、これまで社会のために頑張ってくれた高齢者の皆さんには、ストリップ見て元気出して下さいよ〜とかね、そういうこと」

なるほど。高齢者の皆さんは、これまで散々金を落としてくれたんだろうし、学生さんたちは、これからストリップ劇場に金を落としてくれる見込み客だし。しかし、女性割引をしても、あまり将来の集客には繋がらない気がするのだが。

「ところで今回の興行がちょっと高いってのは、やっぱ小向さんみたいな知名度高い人とか、緊縛師の有名なおじちゃんが出てるってんで、人件費が高くついてるんですかね」
「まぁ、そんなとこですね」

たまたま通りかかった清廉潔白清純無比な通行人が、今回の公演には有名な緊縛師が出ていることをなんで知っているのか、そこは追求してはならない。ちなみに今回の公演は、「花と蛇3公開記念特別公演」である。「花と蛇」と言えば、谷ナオミに始まって杉本彩、今回の小向美奈子と、幾度となく映画化された、その世界の名作なのだ。

えぇい! 入ったれい! 従業員のおじちゃんとの会話で勢いをつけて「いや、わたしホントに通りすがりにちょっと寄ってみただけですから」などという雰囲気を意味もなく醸し出しつつ、一目散に階段を上ってチケット売り場に辿りついたわたしであるが、たまたま通りかかった清廉潔白清純無比な通行人のバッグの中に、WEBで印刷した1,000円割引券がなんで入っていたのか、そこは追求してはならない。しかしながら女性割引等の料金が適用されると、WEBの割引券は使えないので、受験生の皆さんはよ〜く覚えておくように。

チケット売り場の若いおにいちゃんに4,000円渡して劇場の中に入る。開演5分前だ。ブルーノート東京より小さめのハコだが、確認すると収容人員は145人であるらしい。なんだってブルーノート東京と比べるかっつーと、いつもなら、お江戸に出かける用事があるときは、ジャズのライブ鑑賞を常としているノーブルなわたしだから、なのである。

前方のステージから花道が客席に伸び、中央部に円形の小ステージがある。ほほぅ。宝塚歌劇の銀橋みたいな役割ですかね、コレ。お客を見渡すと、老若男々寄り集まっているのだが、意外と普通の人々だ。いや、わたしの妄想の中では、欲求不満を持てあました狼のようなギラギラした男ばかりかと思っていたのだ。一人だけ女性客を見つけたのだが、よくよく観察すると、このおねーちゃん、踊り子さん志願でOJT中なんじゃないか? という気がしなくもない、金髪ロングつけまつげ神盛りのうら若き女子である。ふっ......無関係な女の客はあっしだけかい、そうですかい。

そうこうしているうちに照明が落ちて開演だ。......いやいや、どんな淫靡な世界が繰り広げられることかと思ったら、やっぱり宝塚みたいなものじゃありませんか。踊り子さんが歌わないだけで。KARAの「ミスター」に合わせてヒップダンスを披露したり、「リベルタンゴ」でタンゴを踊ったり、男性の踊り子さんも一緒に力強い和太鼓の演奏があったり。

......しかし、しかしな、やっぱり宝塚ではない部分が......あたりめぇだな。花道から客席中央の円形ステージに出てきた踊り子さん、衣装を脱ぎつつヒモパンに手を伸ばした。はい? そこに手を伸ばして何をするんですか?

わたしの脳内メモリは、VB的に言うと、こういうことになっていたのである。
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Dim St1 As String
Dim St2 As String
St1 = "浅草ロック座のストリップショー"
St2 = Replace(St1, "ストリップ", "トップレス")
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ストリップという文字は、わたしの脳内でトップレスという文字に置き換えられていたのだ。よって、踊り子さんがおっぱい出しても平常心だったのだが、ヒモパンに手をかけた時、初めてストリップの真実を知ったのである。いや、ホントだってば。つーか、お尻くらいは見せてくださるだろうが、そちらの方もあのよーにキッパリ見せてくださるとは思わなんだ。そして拍手喝采の鳴り場所も、そこなんである。男性の踊り子さんが「あ、おまえ、シロートじゃねぇな」ってな素晴らしいグラン・ジュテやピルエットを披露しても、哀しいかな、そんなところで拍手は沸き起こらない。女性の踊り子さんが見せて下さったときにだけ拍手喝采は起こるのである。

観客の方はどんな感じなんだ? と横目で観察していたが、かぶりつきでご覧になられていた殿方が、ちょっと身を乗り出していた程度で、皆さま終始穏やかにご覧になっておられた。そして御贔屓の踊り子さんが中央ステージから引くときに、花束や高級宝飾店のものと思しき水色の紙袋などを差し出したりもするのであった。

終演後、ロビーにいた従業員のにいちゃんに聞くと、通常は男性の踊り子さんはいないのだが、今回は特別にプロのダンサー3人に出演をお願いしているのだそうだ。ちなみに、男性の踊り子さんは脱がないので、受験生の皆さんはよ〜く覚えておくように。ついでに言えば、香盤表に名前が掲載されているきれいどころの踊り子さんは、皆さま円形ステージで全て脱いでおしまいになられたのだが、本公演のトップスターであらせられる小向美奈子嬢は、トップレスオンリーであったため、終演後の観客から「あな、口惜しや」の声がちらほらと聞かれた。

ストリップ初体験で、ひとつオトナになったわたし。知らなかった過去のわたしには、もう戻れない。「うちのサヤカちゃんたら、すごい大股開きで寝てるの。ほんと子供って体が柔らかいわよねー」などと言いながら赤子をあやす御近所の奥さまに、「ふっ......君たちは本当の大股開きを知っているのか」と呟き、トレンチコートの襟を立てる苦み走った女がいたら、それはわたしで間違いない。

※「青い果実」山口百恵
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※「ひと夏の経験」山口百恵
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※「ここにしか咲かない花」コブクロ
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※「大利根無常」三波春夫
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※「ミスター」KARA
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※「リベルタンゴ」
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【もみのこ ゆきと】qkjgq410(a)yahoo.co.jp
働くおじさん・働くおばさんと無駄話するのが仕事の窓際事務員。かつてはシステムエンジニア。18歳未満の方々はロック座には入場できないので、受験生の皆さんはよ〜く覚えておくように。