武&山根の展覧会レビュー パーッと売れて飽きられて散る──特別展【写楽】を観て/武 盾一郎&山根康弘

投稿:  著者:  読了時間:16分(本文:約7,800文字)



武:こんばんみー。

山:どうも。いやー、それにしても毎度のことではあるが、呑んだ呑んだ。

武:呑んだねえ! なんだか凄い久しぶりな感じしたなあ。。

山:なんでやねん。いっつもいっつも呑んでるやないか。

武:呑んだ次の日に「嗚呼、気持ち悪くて最悪な気分だ。何をやってるんだ俺は、もう死にたい」って思わないで目覚めたのw


山:どういうことやねん。

武:酔っぱらった山根からDVを受けてない! これが久しぶりなんだよなあ!

山:なんやねんそれ!

武:清々しい宵(酔い)越し。

山:知らんがな。

武:俺たちはもうDVの共依存関係から脱却することが出来たんですよ!


山:そんなもんそもそもないっちゅうねん。しかし僕はなぜか足を打撲してる。なにがあったのか。

武:ひとりDVか。自律するDV。ふむ、どこか密教的だな。

山:だからないって言ってるやないかw どっかにぶつけただけです。まあでも、「アメ横で呑むとやばい」というトラウマから逃れることが出来てよかった良かった。これでようやく上野が普通になった。


武:あれは2007年、アメ横で呑んでベロベロに酔っぱらってた所にパトカーが後ろからやってきてな、あんな細い路を我が物顔でやって来るんでそりゃ気に食わない。お巡りさんと一悶着。二人ともパトカーに強引に押し込まれて警察署に連行、俺は真夜中に極寒の上野の街に放り出され、山根はそのまま逮捕。

山:4年越しか! 大変やったなあw


武:今回、あえてアメ横で呑んだんですよね。何も起こらなければ「トラウマ克服」だ、と。見事に成功しました! 良かった! やっぱり「トラウマの克服」って失敗した所に戻ってやり直してみる必要性があるんだよな。

山:いやー、さすがにもうあんなことはないようにしたいもんですな。@punrieさんは大丈夫やったんですかね。


武:そうそう、今回俺は【プチ・パトロン募集】をしたんです。
< http://d.hatena.ne.jp/Take_J/20110509/1304691564 >
  デジクリはノーギャラでしょ、グラフィック・デザインの仕事はなくなっちゃったでしょ、まだ絵じゃ食えてないでしょ、しのぎないでしょ、もう助けて下さい、と。誰も来ないかもなあと思ってたんですが @punrieさんが名乗りをあげてくれました。20年前にお金なくなっちゃったところを助けたみたいなんだけど、俺覚えてないw


山:ほう。武さんがお金で誰かを助けるなんて、そんな時代があったのか。でも、ちょっと待てよ。結局僕が招待券を知り合いからわざわざ頂き、アメ横の飲み代も払たんやから僕がパトロンちゃうんか。

武:誰が払ったかは知らないw もし山根が払ってたとしたら「DVとトラウマの克服治療費」だよ。俺は山根のドクター。

山:なんでやねん! 家にも泊めたって、飯も食わしたやないか!


武:それは「あごあし代」ね。

山:あ、ラーメン代は武さんが出したような気がする。

武:そうそう。治療してラーメンおごってるんだから、感謝しなさい。

山:治療ちゃうわ! しかもよく思い出してみると、、、武さんは自分のラーメン代払っただけや! おごってない!

武:癒しと解脱。


山:癒されるか! 解脱ちゃうわ! むしろこれは、なにか新たなトラウマが形成されているのではないだろうか。。

武:そんなことはないよきっとw ということで第1回【プチ・パトロン募集】無事終了いたしました。@punrieさんありがとうございます!
< http://d.hatena.ne.jp/Take_J/20110516/1305524577 >



●特別展【写楽】東京国立博物館平成館


山:まあええわ。そんなこんなで上野に展示を観に行った訳ですが。東京国立博物館、写楽展です!

「寛政6年(1794)5月、豪華な雲母摺りの役者大首絵28枚を出版して浮世絵界に突然姿をあらわし、翌年1月までに140点をこえる浮世絵版画を制作しながら、その筆を断って忽然と姿を消した東洲斎写楽。本展は、その造形の魅力を解きほぐし、芸術的な特徴を明らかにすると同時に、写楽作品創造の源を探ります。」
< http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=706 >


武:「役者は揃った」という気合いの入ったキャッチコピーだったんだけど、役者が揃わず延期となるまさしく「出オチ」のような展覧会ですのよねwなんで延期ですのん?

山:震災の影響で作品がそろわんかったんとちゃうの。

武:まあそうだろうけど、それこそ「役者が揃わなかった」わけよねw


山:そうやな。で、行く前は人が全然入ってないって聞いてたんやけど、えらい混み様でしたよ。最初の部屋なんかちゃんと見られへんかった。どうやら会期変更前の最終日に当たる日やったみたい。変更気付いてない人たちがどっと来たのではないか、と。

武:混んでたねえ! ビックリだよ。入口付近が凄く混んでいたので、最初「集中して観れないなあ」って思った。第一会場、第二会場とざざざーっと観てから、逆方向に歩いて気になった絵をポツポツ観ながら入口に戻り、再び最初から観て行く、という見方をしました。


●写楽の人気


山:人がずっと並んでたからな。でも人気あるんやね。写楽。

武:そうね。なんつったって名前がかっこいいじゃん。「写楽」なんて。

山:なんか意味あんのかな。

武:なんだろな。「漢字」と「音の響き」がなんだかかっこいいよ。「シャ乱Q」と「写楽」比べてみそ。「シャカタク」vs「写楽」。「シャズナ」vs「写楽」。「シャランラ < > 」vs「写楽」。

山:なんやねんそれ。


武:「シャラク」って響きはさ、なんかちょっとアジアンで神秘的な感じしない? で、(役者を)「写(うつす)」のが「楽(たのしい)」んだぜ。「楽」は「楽市楽座」の「楽」のイメージもあったと思う。「自由商業だぜ!」みたいな。
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%BD%E5%B8%82%E3%83%BB%E6%A5%BD%E5%BA%A7 >

しゃ‐らく【×洒落/×灑落】
[名・形動]物事にこだわらず、さっぱりしていること。また、そのさま。洒々落々。「─な人柄」「─でありながら神経質に生れ付いた彼の気合を」
< http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/102741/m0u/ >


武:オシャレっていう意味でもあるのか。オサレ。シャレオツ。

山:確かに面白い名前やけどな。粋ですか。

武:そうね。「粋」だよね! 少なくとも「帰り」ではない。


●活動期間10ヶ月


山:...武さんの頭も謎やけど、写楽ってほんまに謎が多いんやな。だいたい活動期間が10ヶ月って。

武:なんつか、アイドルみたいだよな。パーッと売れて、消費され尽くし、飽きられて散る、みたいな。そんでプロダクションは丸儲け、みたいな。

山:蔦屋重三郎という人が売り出した訳か。それにしたって10ヶ月は短いやろ。そんな浮世絵師ほかにもおるんかな。
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%94%A6%E5%B1%8B%E9%87%8D%E4%B8%89%E9%83%8E >


武:蔦屋重三郎って秋元康みたいな人ってことなんかな。48歳は短命だけどね。

山:へー、そんなに早く死んだんや。

武:写楽は現在では阿波の能役者、斎藤十郎兵衛(さいとうじゅうろべえ、1763年? - 1820年?)だとする説が有力となっている。斎藤十郎兵衛だとすると58歳まで生きてる。
(東洲斎写楽の正体は斉藤十郎兵衛でほぼ決まりなのでしょうか?
< http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1327875963 >
  写楽として活躍するのが31、2歳の時ということか。売れなくなったらもとの能役者でしのげたのかなあ。。


山:はっきりはわからんみたいやな。

武:職を変えたからだろうね。一生絵師だったら辿れるんでしょうね。

山:絵師なんて、そんなすぐ始めたりやめたりするもんなんか? そうも思えんが。当時。


武:ああね、絵師になるまでの約30年、絵師を辞めてから26年あまりは気になるわね。前回の河鍋暁斎もそうだったけど、絵師兼役者じゃないですか。写楽の場合は役者兼絵師か。身体の動きとか、衣装とか、小道具とか、役者として勉強する為に絵を描く事が必要で、必然的に役者は絵がうまくなる、とか?
< http://bn.dgcr.com/archives/20110420140100.html >


山:暁斎はでも、絵が主やからね。ずっと絵の勉強してきた訳やし。ちょっと器用やからって絵師になれるとも思えんけど、たまたま描いてたのを蔦屋重三郎が見つけて売り出してしまった、とか?


●規制と不況とブレイク


武:役者としてはイマイチだったけど、役者を描かせたら凄く面白くて、それが蔦屋重三郎の目にとまり、一山あてようと企んだとか。
< http://blog.goo.ne.jp/0854_y_m/e/8935e1e42356202f832116a17d431b64 >

山:つまりただの一発屋やったってこと?

武:それはあるなあ。けど、画家の場合、一発あれば良くね? 代表作がない画家よりも誰もが好きな(または知っている)一作がある方がよくね?


山:そうやな。江戸の流行り廃りは今以上に早かったんかな。一発屋にしても、その一発が200年以上も続いてるっちゅうのはすごいけど。

武:写楽が登場する時期って不況だったとか書いてなかった? 不況下において何かが突然ブレイクする事はあるかもね。イギリスのパンクロックもそうじゃなかったかなあ。


山:寛政と言えば「寛政の改革」か。ぜいたく禁止。ただ、写楽の絵は、社会に対するはけ口ではなかったみたいやけどね。役者にも不評やったりしたらしい。誇張が過ぎる、と。

武:「1970年代のイギリスのロンドンは不況であり、人々は社会への不満を有していた。その不満のはけ口がパンクロックというものであった。」
< http://www.nuis.ac.jp/%7Etakagi/soturon/data/dat05/11002003.html >

「写楽は蔦屋から出版されましたが、写楽の登場する少し前は未曾有の不況だったそうで、江戸の三座と呼ばれた芝居小屋も休業するほどだったらようです。やがて賑わいが戻ってきた寛政6年に頃合をみて写楽はデビューします。」
< http://21stcenturyxxxman.blog40.fc2.com/blog-entry-716.html >


武:規制と不況の抑圧が続いていて、不況が復活してくると勢いづく。この波を狙ったのが蔦屋重三郎ってわけだ。

山:満を持して出したってことか。そういう時は今までとは違う、ちょっと変わったもんが受け入れられやすいのか。でも逆に、そんなに最初売れなかったら、細々と絵師を続けてたりして。


武:あり得るwww いやあ、人生、塞翁が馬ですよ。

山:どっちがよかったんやろ。

武:うーん。どうなんだろうな。商業的成功ってプロデューサの能力はそらもちろんあるだろうけど、偶然と言うか運と言うかね、人智を超えた所に、そういう運命ってのはあるんじゃないのかなあ。


山:運はあるやろね。

武:不思議だよなあ。

山:不思議やね。


●歌舞伎とエロス


武:展示については?

山:順追う? まあ有名な作品が多いから、いちいち追わなくていい気もする。

武:そうなんだよ。

山:なんかこれは気になった! みたいなこと、絵についてのことで、あげてみたりしよか。


武:そうね。屏風よかったな。

山:それ写楽の絵とちゃうやないかw

武:うん。その昔、歌舞伎は女性のみが演じてたってのが面白いじゃない。

山:エロティックやったんやろね。


武:その頃の歌舞伎を観てみたいなあ。歌舞伎踊りってのか。
「歌舞伎は江戸時代初期、出雲の阿国が念仏踊りから発展させた歌舞伎踊りから生まれたといわれます。」
< http://www.geocities.co.jp/Bookend-Hemingway/1852/ >

山:一向宗とは関係ないんかな。


武:面白いなあ歌舞伎の起源って。。
「阿国が評判になると多くの模倣者が現れ、遊女が演じる遊女歌舞伎(女歌舞伎)や、前髪を剃り落としていない少年の役者が演じる若衆歌舞伎が行なわれていたが、風紀を乱すとの理由から前者は寛永6年(1629年)に禁止され、後者も売色の目的を兼ねる歌舞伎集団が横行したことなどから慶安5年(1652年)に禁止され、現代に連なる野郎歌舞伎となった。」
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%8C%E8%88%9E%E4%BC%8E >

  売春がからんでるんだよねやっぱり。

山:若衆ってそんなにええんか。

武:この時代のエロスって純粋性欲(?)だから、男でも女でもいいんだよね。

山:純粋性欲ってなんやw

武:(一夫一婦制の)婚姻制度に性行為(セックス)が回収されてないってこと。別にあるの。

「『若衆歌舞伎』で、まだ舞台に立たない少年の役者を「陰間」(かげま)と呼び彼らが、男色を売ることが、多かったので、「若衆狂い」=「少年と男色におぼれる」ことを意味するように、なりました。「町なかに、歌舞伎に、子供のような男の子を、抱え置き、金銀を取って、遊女のような真似をさせてはならない」とのお触書も、出ました。その陰間茶屋の、上得意の中には、武士や町人もいましたが、大部分は、僧侶でした。僧侶は「女犯」を禁じられていたからです。しかも陰間は、遊郭の太夫(店の看板女性)よりも、高額な料金だと言う事です。彼ら陰間の中には、「両刀使い」もいて、大店の後家や、御殿女中もこっそりと、通っていたらしい。現代からは、想像できないくらい、江戸時代は、男色を好む男が、多かったみたいですね」
< http://blogs.yahoo.co.jp/skei1919myou/44839645.html >


山:なんにしても男色か。

武:「三次元で性が取り締まられた」と「二次元の役者絵のブレイク」は関係してないだろうか? 今に例えると、三次元の性が断たれた「童貞(状態)」という現実が、「萌え絵」という二次元を大々的に躍進させているのと共通しないか?


山:どうやろ。役者の絵はブロマイドで、実在の人物やからねえ。しかし待てよ、GrowHairさんは二次元の奥さんがいるしな、、でも3次元でセーラー服を着ているというのはどういう......
< http://bn.dgcr.com/archives/15_growhair/ >


●江戸の絵描きと現代の絵描き


武:まあ、歌舞伎の屏風絵からこんな話しになってしまいましたがw 他に気になったことは?

山:パッと思い出せない。

武:『婦人相学十躰 ポペンを吹く娘』喜多川歌麿筆よかったな。

山:あの絵も有名やね。あ、展示で違う絵師が同じ人物を描いてるのを比較展示してるのは面白かった。

武:それ面白かったね!


山:それぞれの絵師の個性はあるねんけど、みんなちゃんと人物の特徴を捉えてるんやな、ということがよくわかった。

武:三代目坂田半五郎の藤川水右衛門:東洲斎写楽vs歌川豊国筆vs勝川春艶筆とかね。なんだろうね。浜田省吾の物真似をどのようなデフォルメで歌うか、みたいなw 北島三郎をどう真似るか、とか。

山:ものまねとちゃうやろ!


武:まあ、オリジナルが居るわけですから。どこに着目してデフォルメするかという意味では似てる。

山:別に笑かしたいわけじゃないと思いますw あ、やばい眠い。

武:おおそうか。こまったな。

山:明日も早いのでそろそろ。。


武:じゃあ最後に、展示では写楽は第1期に限る、4期はもうつまらない的な言い方だったけど、俺、なんか好きだったな最期も。続けて欲しかったなあって思った。形式的になってから十年後とかに、「いい感じ」になってくるだろうになあ、と。

山:でも確かに4期になるとほんとに動きが少ないというのか、独特な感じというか、そういうのは薄れてるな。でもたったの10ヶ月やからな。


武:装飾的になるのね。ある意味、すごい枯れかただけどねw

山:いわゆる「枯れ」でもないような。まだ全然やるやろ、と思てまうけど。

武:「意識(意気込み?)」が抜けちゃってる感は結構、気持ち分かるなあ的な。。そこからなんだよなあって。

山:当時の売れない絵師ってどうしてたんやろか。

武:役者で食ってたんじゃない?


山:写楽はそうやったんかもしらんけど、他にも多分いるやろ。売れない絵師。つぶしきくんかな。
「江戸時代などの当時、売れない画家や、売れない浮世絵師はいたのでしょうか?」
< http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1445540639 >


武:【プチ・パトロン募集】してたんじゃない?

山:それに近いものもあるんかも知れんが。。。

武:まあね、ともかく、シャあないんでラクに生きてくわ!

山:...あー、飲み代はツケにしとくんで。

【特別展「写楽」/東京国立博物館平成館】
< http://sharaku2011.jp/ >
会期:2011年5月1日(日)〜6月12日(日)5/23休館
開館時間:9:30〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
(ただし、会期中の金曜日は20:00まで、土・日・祝日は18:00まで開館)
観覧料金:一般1,500円、大学生1,200円、高校生900円

【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/愛】
被災地子ども向け造形ワークショップをしに行って来ます!経緯はこれ↓
< http://d.hatena.ne.jp/Take_J/20110516/1305532371 >
被災地神戸での活動で辛い体験をしました、これこそ自分にとっての「トラウマ克服」かも知れません。現場に行ってみないと分からないけど、ともかく19日の夜行バスで石巻に行って来ます!
take.junichiro@gmail.com
twitter < http://twitter.com/Take_J >
武盾一郎の報告書 Take Junichiro report.
< http://d.hatena.ne.jp/Take_J/ >
Take Junichiro Art works
< http://take-junichiro.tumblr.com/ >
制作配信してますUstream
< http://www.ustream.tv/channel/Take-Junichiro-live-drawing >

【山根康弘(やまね やすひろ)/坊主に戻してみた】
yamane@swamp-publication.com
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