ネタを訪ねて三万歩[116]制約があってこそアイデアが生まれる/海津ヨシノリ

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正直ここのところ疲れが取れません。かなり無理してプラモデル作りの時間を捻出しているからかも知れません。昔の知識が頭の引き出しからボロボロ出て来たり、新しいテクニックがスラスラと頭の中に入ったり、といった不思議な体験が毎日のように私を楽しませてくれます。

塗装は前回お話したようにブラシに徹していますが、絵筆を使うということは本当に久しぶりです。デジタル環境も決して悪くありませんし、私は嫌いではありませんが、絵の具の調合は感覚がすべてを決定してしまいます。つまり、わざと面倒なほうを選ぶことにしています。


例えば、組み立てが面倒な外国メーカーの製品や比率の小さい製品を選びます。リキテックスに拘るのも、実は必要とする特色をゼロから作りたいからなのです。作られた色を買ってきて塗ることを拒否したわけです。

バカバカしい拘りと思われるかもしれませんが、制約があってこそアイデアが生まれると信じている私にとって、これは楽しいゲームのような作業なのです。

しかし、笑ってしまったのは、プラモデル作りはやめたと封印していたお札がとれてしまったので、部屋の奥から50箱ほどの未開封の積み箱が出て来ました。

積み箱というのはモデラーに共通する癖のようなモノで、とりあえず買ってしまい、そのうち作ると決めているキットの箱が、いつの間にか溜まってしまうという癖のようなものです。



そんなわけで、本当はホドホドにしないとイケナイのですが、モノ作りはスイッチが入ると止まらなくなってしまいますね。

例えば、最近はジャム作りにも傾倒しています。もともと我が家の庭で繁っている葡萄が美味しそうなのに、酸っぱすぎて食べられない悔しさを数年間味わっていました。

その悔しい思いを、せめて写真だけでも、ということでfacebookにアップしたところ、色々な方からジャム作りを勧められ、コッソリ作ってみたところ、これが恐ろしく美味しいので病みつきになってしまった次第です。

作り方はとても簡単です。葡萄の種を取り、綺麗な水を大さじ2杯ほど入れた器に入れ、皮と実はボールに入れます。こうして好みの量の葡萄を処理したら、種の入った器の水を葡萄に加えます。

次に全体の重さの半分のグラニュー糖を加えてから、バーミックスでペースト状態にします。後は電子レンジで7分ほど加熱し、様子を見ながら1分間隔で何度も加熱して、好みの状態になったらレンジから出します。

予め用意していた煮沸した空の瓶に熱いままのジャムを入れ、蓋をしたら逆さまにして醒めるまで置きます。醒めれば完成です。逆さまにする意味は諸説あるようですが、雑菌処理のような感じだそうです。

ちなみに電子レンジを使うと時間の節約になり、アク取りも簡単という大きなメリットがあります。あまりに簡単なのでイチヂクなども試してみたいと思っています。

市販のジャムは材料の産地を明記する義務がないので、正直不気味です。今のところマーマレードも成功していますので、来年は苺も試す予定です。



そんなこんなで相変わらず馬鹿なことに没頭している私に、素敵なプレゼントが届いたのは先月の終わりでした。教え子が揃って海外に進出という嬉しい知らせです。

全く異なる学校での教え子二人の出国が、偶然重なったわけです。暫くは会えなくなるので、ディナーで昔話に花を咲かせました。もっとも、昔話といっても数年前のことです。

なお、二人は面識がないので、個別にディナーをしました。ちなみに二人とも女性です。声を掛けてくれたことがとても嬉しく、それだけで疲れは吹き飛んでしまいました。「授業のプリントは今も大切にもっています」と言われ、記憶に残っていてくれる嬉しさは本当に格別です。

ところで二人が向かうのは親日の国なのも素敵です。そのうちの一人には、交友のある現地のアーティストを紹介しました。

彼女達とは、ちょっとしたボタンの掛け違いが発生していたら、永遠に関わることのなかったことも嬉しさに繋がってきます。人の出会いと繋がりは本当に不思議で面白いものです。

数年後に帰国した彼女達とのディナーが今からとても楽しみです。正に「縁は異なもの味なもの」ですね。これか英語だと "Marriage goes by destiny" となるのがとてもユニーク。



さて、ここで話を少し戻すと、私はもともとパッケージデザインなどでアナログ時代はダミーの手作りに費やす時間が、かなりの比重を占めていました。つまり、毎日が工作のような感じだったのです。

そこでの感覚はまさに模型作り。ある意味それはとても楽しい時間でした。それがデジタル化されたことで、いつしか並行しておこなっていたプラモデル作りをやめてしまったのかもしれません。やめてしまった理由が思い出せません。

とにかく、やめてしまうと感覚は鈍るモノです。鈍った感覚は数をこなすことで取り戻すしかありません。これはデジタルの世界でも同じですね。

理屈で分かっていても作品は作れません。思い描くイメージを形にする難しさは言葉では説明できないのです。とにかく体を動かすこと。その延長上に作品が輝くのだと常に感じています。

セミナーなどで、Tipsと銘打っている私が言うのは変な話ですが、Tipsは、本来は人から貰うモノではなく自分で見付けるモノであり、それは必要から生まれるはずなのです。

つまり、数をこなさなければTipsは見付けられないわけです。禅問答のようですが、それが理解できないとテクニックにばかり走ってしまう、残念な結果に終わってしまうでしょう。

誰もが永遠に初心者であり、そして初めから達人であるということを理解しましょう。うさんくさいものに振り回されず、自分を信じて仕事をこなすことがすべての解決に繋がるような気がしています。

テクニック本は捨てて、物作りの趣味を持ちましょう。趣味を持ったら、同じ趣味の人と繋がりましょう。同じ業界の人達と四六時中同じ話題で盛り上がっていることは、自分のスキルを退化させることでしかないように感じています。もちろんこれらは極論ですけれどね。

◎今月のお気に入りミュージックと映画

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[My Love]by Paul McCartney & Wings in 1973(U.K)
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アルバム『レッド・ローズ・スピードウェイ』から唯一のシングル・カットされている曲で、この曲が聴きたくてアルバムを買ったことを思い出しました。シングルカットは不経済ですから。

最近、facebookで繋がっている友人の多くが、YouTubeで公開されているお気に入りの曲を紹介してくれる中で思い出しました。当時のLPの多くはCD版も再購入していましたが、これは購入漏れでした。何か忘れていた青春の一部分が戻ってきたような思いに駆られています。私はジョンではなくてポール派だったからかもしれません。

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[Lone Survivor]by Peter Berg in U.S.A
< http://lonesurvivor.jp/ >

邦題『ローン・サバイバー』は2013年の作品。アフガニスタンにて、アメリカが誇る精鋭特殊部隊ネイビー・シールズ史上最大の悲劇といわれる、レッド・ウィング作戦の映画化。

平時では誰もが取る行動により数十人の命が奪われる緊迫した流れと、唯一生き残ることができた兵士は、何故生き残れたかが重くのし掛かってきます。そして、これが実話であると言うこと。

主演のマーク・ウォールバーグは「ザ・シューター/極大射程」での、アメリカ海兵隊武装偵察部隊所属の前哨狙撃兵のイメージが少し強すぎたかも知れませんが(私だけなのかもしれませんね)、とてもよい作品だと思います。もちろん、戦争映画ですのでリアルな殺戮シーンがありますが……。

【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/
怪しいお菓子研究家

yoshinori@kaizu.com
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絶対にあり得なかった、2013年制作の「Epic」という大好きな3Dアニメーションが「メアリーと秘密の王国」として公開されることが、最近では一番ユニークな事件かも知れません。

どうやら「アナと雪の女王/Frozen」の流れに乗りたいという思惑のようですね。もちろんこれは私の推測に過ぎませんが。ちなみに私は作品の完成度と娯楽性などを総合的に整理すると"Epic"の方が断然気に入っています。"Frozen"は何か見終わってしっくりこないのです。

その理由をなんとなく分析してみました。まずキャラクターの造形に違和感があったからかもしれません。最近のディズニーによる3Dアニメーション作品のキャラクター、とりわけ女性の造形は逆三角形の頭に大きな目、小さな口という流れのようですが、私には爬虫類にみえてしまうのです。

また、ミュージカルという形態をとっていたからかもしれません。そんなこともあり、要するに私にとって漠然とし過ぎてしまった感じでした。
その点 "Epic" はキャラクターの造形も違和感がなく、ハラハラドキドキのシーンもあり、適度な物語の起伏とエンディングの心地よさが際立っていると感じました。

特に主人公のメアリーの造形は自然でとてもかわいらしく鑑賞者が感情を共有しやすいのではないかと感じましたが、もちろんこれは私と一部の学生との意見に過ぎません。
< http://www.foxmovies-jp.com/mary-himitsu/ >