ネタを訪ねて三万歩[145]初代iPadを歩く書庫にする
── 海津ヨシノリ ──

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初めて本を“自炊”したのは2011年ぐらいだったと思うのですが、記憶は曖昧です。とにかく、自炊は可能な限りしないつもりでした。本というモノが好きだから……。

あのランダムにバラバラめくれる本を、まだデジタルでは再現できないですからね。ただし、そうも言っていられなくなってきたのは、時代の流れかもしれません。大学の授業の関係で、つまみ食い的に色々なジャンルの本が必要になってきたからです。

考えてみれば、紙の本も小説系でもない限り、全部を読むことはほとんどないわけです。ある本のあるページだけが欲しいからです。本はつまみ食いに限りますね。

そんな感覚で大昔、ある出版社の担当者との雑談中で、章ごとに分冊した専門書を提案したことがあります。残念ながら丁重に却下されましたが、デジタル本ならこの可能性はありますよね。

複数の専門家で構成した内容で、差分として新しい情報や追加分は低価格で公開……。そんな流れがあっても良いような気がします。





さてさて話を戻し、しばらくはAmazonの1円本に代表される、中古などにもアンテナを張ってうまく買い求めていましたが、いつも安い中古があるとは限りません。

なにより、自炊してiPadで持ち歩くことが前提でしたので、冷静に考えればKindle本でいいわけです。気が付くのが遅いですね。

ということで、1月に体調を崩した頃から、病的にKindle本に手を出すようになりました。

Kindle本と言えば、限定10冊以内であれば0円というKindle Unlimitedもありますが、あれにコチラが求めている本がある確率は、ほとんどゼロですからね。だから0円なのかもしれませんが……。

そんなKindle本とは別に、企業が公開しているPDFだけでなく、セミナーで配布した資料類や、教科書代わりに配布したPDFも含めると10GBほどでした。

これらをiPadに入れて持ち歩くわけですが、iPadを最初に購入したときは、まさかこれほど激しく活用するとは思っていませんでした。

ちなみに、私自身は初代iPadを今も活用しています。アプリは必要最低限で写真も入れていませんし、音楽データも入れていません。本当に本箱そのものという感じです。

しかし、重いのが難点ですね。あとWiFiが遅くてほとんど使い物になりませんので、完全に歩く書庫と割り切っています。

ところで、Kindle本の場合に問題なのは、フォーマットが固定なのか可変かですね。私も一冊だけお付き合いで出してしまったKindle本がありますが、可変形式なので正直、残念……。

可変って、画像が沢山ある場合は、少々イラッとすることがありますからね。また、レイアウトもラフですし、固定の方が絶対に読みやすいです。少々神経質過ぎるかな?

ですから、良さそうなKindle本を購入したら可変データで読みにくかった場合は、同じ出版社のKindle本には注意するようになってしまいました。

もし、同じ内容の紙の本が出ていたら、私は迷わず紙の本を購入します。もちろん図版を多用するような本の場合です。文章だけの本であれば、可変データでも気になりませんから。

それと、総じてKindle本は高いですね。紙の本ならバンドルされているDVD等がなかったりと、一般的な読む本ではない場合は割高で不自由を余儀なくされますね。

さらに数ページだけプリントしたい場合にも、一切プリント出来ない仕様なのも辛いです。とりあえず画面キャプチャーで急場をしのいでいますが、面倒くさいですね。

そう考えると、やはり読み物系ならKindleに無条件移行ですが、資料系の本は紙の本の方が断然便利かな。でも自炊は面倒だし、悩みどころですね。

そんな悩みどころで時間を止めることは出来ないので、授業準備のためにとにかく突っ走るだけです。

しかし、用意万端準備していても土壇場で思わぬミスをしてしまうのが人間。こればかりはどうしようもないですね。

私はコンピュータではありませんから……。今までに、もっとも冷や汗をかいた失敗例は、AdobeCCのアクチベーション事件です。

私は、出先の環境や状況に合わせて、MacBookProではなくてVAIOを持参することもあるので、AdobeCCのアクチベーション管理にかなり神経質になっています。ミスったら出先で使えなくなってしまいますからね。

実は、昨年出先のVAIOでPhotoshopが起動出来ずに、頭真っ白になりました。アクチベーション処理を完了していたと勘違いしていたのです。

慌てて電話で家族にMacBookProのアクティベーションを解除してもらい、改めてVAIO側で登録して事なきを得ましたが、本当に冷や汗をかきました。思い込みと勘違いの悪い例です。


■今月のお気に入りミュージックと映画

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[Tie a Yellow Ribbon Round the Ole Oak Tree]by Tony Orlando & Dawn
in 1970(USA)

邦題「幸せの黄色いリボン」。高倉健主演の「幸せの黄色いハンカチ」の元になった曲としてあまりにも有名ですね。ただし私はこの映画は見ていません。なお、日本ではドーン(Dawn)というグループ名で1973年にレコートが発売されています。理由は不明です。

実はfacebookにアップした私の写真に写っていた黄色いリボンを見て、スウェーデンの友人がリアクションしてくれたことで、レコードを持っていることを思い出して盛り上がりました。Tony Orlandoのボーカルが素敵です。

Tony Orlando & Dawn ~ Tie a Yellow Ribbon Round the Ole Oak Tree


イエローリボンプロジェクトで使われているアニメーションもいいですよ。
Tie a yellow ribbon round the old oak tree (MV)


[A Royal Night Out]by Julian Jarrold in 2016(U.K)

邦題「ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出」。ヨーロッパ戦勝記念日VE-Day(Victory in Europe Day)の夜、後の英国女王エリザベス2世が、妹マーガレット王女と共に外出を許され、臣民と共に戦勝を祝ったという史実を元にしたフィクションドラマです。

ストーリーはユーモラスに描かれており、後の名作「ローマの休日」のグレゴリー・ペックの名前が出てくるなど、色々と細部にこだわって丁寧に作られています。

ラストも素敵な仕上がりで、これはもしかして史実ではないかという思いがこみあげてきました。当時の町並みの再現もかなり丁寧でした。

ちなみに、主演のサラ・ガドンはカナダ人ですが、その演技は品があって可愛らしいエリザベス2世を演じているのも印象的でした。ファン必見です。最後の台詞 "Not a bloody word, right?" が、良かったですね。ただ、マーガレット王女の設定はちょっと壊しすぎたかも……。

映画『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』予告編



【海津ヨシノリ】
グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/怪しいお菓子研究家

yoshinori@kaizu.com
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毎年この時期は新学期のスタートで、緊張と期待が入り交じった不思議な気持ちになります。そして、月末ぐらいまでリズムを取り戻すのに苦労する時期でもあります。でも、それは心地よい流れになっています。とにかく1月のように体調を崩して休講にならないようにしないとダメですね。

そう言えば、先月は狂ったように古い建築物のプチ見学月間になってしまいました。新しい刺激が欲しくなってきたからかもしれません。実際かなり良い刺激になりました。

御殿場市の箱根外輪山の麓にある秩父宮雍仁親王・勢津子妃が過ごした元別邸
http://www.chichibunomiya.jp/


目黒区駒場にある日本民藝館(西館は旧柳宗悦邸)
http://www.mingeikan.or.jp/


東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)
http://www.teien-art-museum.ne.jp/


横浜の山手西洋館(山手111番館、山手234番館、横浜市イギリス館、エリスマン邸、ペーリック・ホール、外交官の家、ブラフ18番館)
http://www.hama-midorinokyokai.or.jp/yamate-seiyoukan/


御殿場にある岸信介元首相の東山旧岸邸
https://www.kyu-kishitei.jp/


成城にある旧猪股猛邸
http://www.setagayatm.or.jp/trust/map/pcp/


雑司が谷旧宣教師館(宣教師のマッケーレブ邸)
http://www.city.toshima.lg.jp/129/bunka/bunka/shiryokan/kyusenkyoshikan/004412.html


益子にある濱田庄司記念益子参考館
http://www.mashiko-sankokan.net/


谷中にある浅倉彫塑館
http://www.taitocity.net/zaidan/asakura/



■5月の画像処理セッションは5月18日を予定しています。
〜Photoshopの基礎【高速マスキング処理と合成のセオリー】〜

◎講演内容

素材の状況により使い分ける高速マスキング処理のポイントと、合成先の新規画像との関係を整理します。Photoshopのマスキングと合成を楽しみましょう。

・マスキングツールの使い分け
・マスキングのための合成
・プレ・カラーリング調整