エセー物語(エッセイ+超短編ストーリー)[17]駕鶴帰西 プリン船
── 柴田友美(超短編ナンバーズ) ──

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◎駕鶴帰西

趣味で中国語の勉強をしてます。最近覚えた成語で「駕鶴帰西」というのがあります。

死ぬ、ということの婉曲な表現のようなのですが、このまま訳すと「鶴に乗って西に帰る」ということになるかと思います。死んだら鶴にまたがって西に飛んで行くなんて、なんかいいなぁと思います。

長崎のおばあちゃんが、昨年(2017年)の11月に亡くなりました。めちゃ悲しくて、今でも信じられません。

長崎の文化には中国が影響しています。食べ物だとちゃんぽんとか皿うどんとかハトシとか、中国の文化と日本が混ざって独自に進化してます(長崎のハトシ、サンドイッチみたいな形をしていて美味しいです。エビとかが入ってます)。

お盆の精霊流しや、秋のおくんち、冬のランタンフェスティバルなども中国の影響を受けてます(おくんちには日本の船、中国の船だけではなくて西洋の船も出ます)。他にはペーロン大会もありますね。





長崎のお墓には土神様がまつられている事か多いようで、これも中国文化の名残だそうです。もうすぐおばあちゃんが入るお墓にも、お墓のすぐ横にまつられてます。お盆になると、お墓で爆竹やロケット花火をします(中国ではお墓で爆竹はしないかもしれませんが……)。

私はおじいちゃんの初盆の時に、お墓で爆竹やロケット花火をするのに参加しました。いとこは平気で爆竹やロケット花火をするので、おそろしかったです(精霊流しでも爆竹が飛び交います。そばに行くとすごい音です。耳栓は必須です)。

中国人の家庭ではなくても、普通に中国の文化が根付いている不思議な街・長崎、ぜひ行ってみてください。今は長崎の教会群の世界遺産登録を目指しているようです。長崎は日本一島が多いらしく、島にぽつんと教会がある所があるようで、いつか行ってみたいです。

死ぬということの婉曲表現は、英語にも色々あるようで、この間知ったのに「kick the bucket」というのがあります。なぜバケツを蹴るのが死ぬという意味なのかというと、首を縛ってバケツを蹴るところから、とか……。

死ぬまでにやっておきたいこと、というのは「bucket list」と言うそうです。バケツリストで、死ぬまでにやっておきたいこと、を表すようです。

そういえば、1月の京都の文学フリマ、『チョコレートタンタン』が二冊売れました、ありがとうございます! 『群青コースター』のチラシも持っていってくださった方がいたようで、枚数が減ってました。ありがとうございます。

京都の文学フリマの時は冬でしたが、もうすぐ春ですね。また何か書きたいと思いますので見捨てないで下さい。


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◎プリン船

大阪駅の周辺に、変わったステージがある。ステージだけれども、ステージにいる人以外は、ステージ上の音は聞こえない。それは主に、何か音を出して練習したい人のために設けられている。

楽器の練習をしたい人や、スピーチの練習をしたい人が、駅周辺を歩く人に向かうようにして発表の稽古をする。

大阪駅周辺に何か所かあるので、だいたいどこかが空いている。3時間までは無料で使用できる。

僕はいつもそこで外国語の発音練習をしている。なにか本を持って行って、それを読んだり、決まったフレーズを繰り返し練習したりしている。

ある日、僕がいつものように発音練習をしていると、そこへプリンが飛んできた。よく見ると、プリンの底に操縦席が付いていて、小さい人が乗っている。その人が、僕に話しかけてきた。

「何か困ったことはないですか」。僕はびっくりして答えた。「いえ特にありません、大丈夫です。僕の発音、そんなにひどいですか」「いえいえ、そういうわけではありません。では失礼します」

そのままプリンは去っていった。

月を見るとピンク色に光っていて、僕は泣いた。


【柴田友美(しばたともみ)】

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