エセー物語(エッセイ+超短編ストーリー)[43]“The piano”の紹介(続き)◇私の舌の電車
── 柴田友美 ──

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◎エッセイ

“The piano”の紹介(続き)

2017年12月5日の号に続いて、タカスギシンタロさんの”The piano”をご紹介します。今回はその中から「台風」と「空」の英訳と元の日本語を掲載します。

|エセー物語(エッセイ+超短編ストーリー)[008]“The Piano”のご紹介
|沈むティーポット/柴田友美(超短編ナンバーズ)
https://bn.dgcr.com/archives/20171205110100.html





The Typhoon

A typhoon read a newspaper while waiting for the train.
Scraps of paper fluttered around, and pigeons landed.
The train rolled toward the platform.
The doors opened, and the typhoon boarded.
The passengers became sucked in by the wind.
Someone stepped on another person’s foot, and then they began to argue.
The wind grew even stronger.
The doors closed, and the train began to move.
Just then, the image of the typhoon vanished from the weather bureau’s radar.
All the trains, which ran in a loop, began to run counterclockwise.
Inside the train, a grey storm blew, and it became unclear what happened after that.

台風

台風が新聞を読みながら電車を待っている。
紙くずが舞い、鳩が墜落する。
電車がホームに滑り込んでくる。
ドアが開き、台風が電車に乗り込む。
車内の風に客が吸い寄せられる。
誰かが誰かの足を踏んでけんかになる。
風はいっそう強くなる。
ドアが閉まり、電車が動き出す。

そのとき、気象庁のレーダーから台風の画像が消える。

環状線のすべての電車が、反時計回りに走りはじめる。
車内では灰色の暴風雨が吹き荒れ、もはや何が起こっているのか判然としない。

The Sky

The small, fleecy cloud secretively slipped the Sun, which he had stolen, into his shirt pocket. He sped across the highway of clear, blue sky, missing the road sign, “SKY ENDS HERE.”



ひつじ雲が胸ポケットに盗んだ太陽をしのばせて、青空のハイウェイを逃走中、うっかり標識を見逃した。

ココヨリソラオワル

↑↑↑

なんだか混沌とした感じとか、疾走感とか、英語で読んでも楽しいですよね。

電車がホームに滑り込んでくる

The train rolled toward the platform.

で「滑り込んでくる」、が「rolled toward」となっていたので、rollってこんな時でも使えるんか? と思って辞書を引いてみました。

そしたらrollは色んな意味で使えるようですねー。車が進むという意味以外でも、涙が流れる、とか、雷がゴロゴロ鳴る、と言う意味でも使えるようです。

ロールケーキは英語でも roll cake と言うのかと思って検索しました。そしたら roll cake でもよいようで、それとは別に Swiss roll という言い方も出てきました。なぜスイスなのかは、これから調べようと思ってます。

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◎超短編

私の舌の電車

どこかの子供が電車のおもちゃを持っていて、そのおもちゃの中に私の舌が入ってしまい、レールの上を走らなくなったらしい。

私の舌はちゃんとあるのに、なぜそんな事になったのか。とにかくその子に謝りに行こうと思ったが、電車は実際に私の舌を乗せてどこかを走っているのだと思い、楽しくなって、その子に会いに行くのをやめた。


【柴田友美(しばたともみ)】

短いお話を書いています。
huochaitomomi@gmail.com

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私個人のホームページ
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