武&山根の展覧会レビュー 特別編 うわさの靖国神社・遊就館に行く その1
── 武 盾一郎&山根康弘 ──

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靖国神社遊就館の世界―近代日本の歴史探訪ガイド武: こんばんはー!
山: どうも。こんばんは。
武: いやー、お疲れさまでした。九段下はローグの武道館以来ですよ!
山: ローグ? なんやそれ。おいしいの?
武: ローグと言えば、ボウイを産んだ群馬県のロックバンドですがな。もう解散してるけど。っていうか、今日は雨であいにくの天気でしたが。
山: なかなか風情ありましたな。あの売店。
武: 売店かい! ワンカップ一杯400円はちょっと高いな。
山: 観光地やね。
武: そだねー観光地価格でしたねー。せめて、250円にしてくれ。焼きソバ450円もちょっと高いな、せめて300円にしてくれ。
山: どこを想定した値段やねん!
武: 地元団地の祭り値段。
山: 今どき300円の焼そばなかなかないぞ・・・はあ。ようやく酒の準備が出来た。冷や奴と。うまそー!
武: マジすか! 俺も呑みたい!
山: え? マジすよ。飲めばええやんか。あー! うまいなー!
武: うし! 持って来ました。麦焼酎。あーうめー!
山: 僕は瑞泉。泡盛。
武: でも、ちょっと今回難しいテーマなんであんまり呑まないようにしよー。
山: そう。僕は普通に飲むけどな(笑)

●特別編「靖国神社 遊就館」を観て

武: わはは。というわけでね、今回は特別編として九段下は靖国神社の遊就館に行てまいりました!
< http://www.yasukuni.or.jp/yusyukan/movie.html
>
山: ・・・なかなか素敵なホームページやね。
武: 凝ってるのね。靖国神社のトップページも凝ってるよ。今時、トップページでフラッシュムービーは珍しいけど。
< http://www.yasukuni.or.jp/
>
山: 確かに凝ってる。。うん、しかし広かったなー。


武: いやあ、靖国というロケーションに山根のボウズ頭と鋭い目つきはピッタリハマりましたねー! どうみても民族主義者系。
山: 何言うてんの。武さんもモロやったで。おばちゃん系(笑
武: わはは! 雨だったけど俺傘持ってこなかったんでアイアイ傘しながら靖国の鳥居をくぐったけど、ホモの右翼に見えただろうなあ。
山: 見えへんわ!ゲイの軍事おたくやろ(笑
武: もっとヤダ。
山: わはは。どっちゃにしてもノーマルやないやないか(笑)でもたぶんそういう人たち仰山来てるハズやな(笑)ただね、場所としてはいい場所やった。ある種の求心力あった。
武: そうだの。やっぱり。
山: アースダイバー的(中沢新一著「アースダイバー」より)にはどうなんかね(笑
武: ちょっと待って、アースダイバーマップ見てみる。。。九段下、岬あるねやっぱり。そう言った意味では霊的場所なんかな。
山: ほう。やっぱそういうのあるんかなー。いやあのね、とにかく変な感じしんかったんよ。
武: そだね。それにしても広い! デカイ! そんでもって思ったより人が多い! 20代あたりの若者が多いのはちょっとビックリだったの。
山: そうやな。若い人が多かった……っていっつも言ってへんか? それ。
武: うん。靖国はもっと年寄りだらけかと思ってたんで。まあ、男性が特に多かったけど。
山: おばちゃんも仰山おったで。
武: そうだったけ?
山: おったおった。武さん同類やから分らんかったんやな、顔でかいしなあ。ツアーみたいな人たちもおったし。
武: 顔デカイのは関係ないだろー! まあ、ツアーはいたよね、観光バスが何台も止まってた。んでね、今回靖国をテーマにしたのは何故かというと。
山: ほう。
武: どうもこのあたりで近代日本総括の時期にさしかかってるのではないだろうか。という感じがするのよ。太平洋戦争体験者が実際に居なくなってしまう。
山: このあたり、っていうのは?今、ってこと?
武: うん。太平洋戦争体験者が居なくなると、それ以降の人間は、どうしても史観を確認して行かなきゃならないし、体験者は体験者で最後のメッセージを伝えなきゃならない。今年になって元日本軍兵士の告白本とか出たりしてるし。(風媒社「日本軍兵士・近藤一忘れえぬ戦争を生きる/青木茂」
山: 体験した人がおらんようになると、おそらく戦争しやすくなるんちゃうか。
武: うーん。。。そうなのかも知れないし、そうじゃないかも知れないし。それは俺達の問題になる。
山: そうやな。僕らはまだ親の世代、じいちゃんの世代は体験者やからね。戦地には行ってなくても。じいちゃんは行ってたか。
武: 俺のじいちゃんは徴兵された。
山: ばあちゃんは満州生まれだ。
武: おーっ! でも、じいちゃんはもう居ない。
山: 僕んとこどっちもおらん。
武: 本当は戦争に対して何を思ってたのか、どんな気持ちだったのか、どんな思想を持ったのか、それは孫の俺には何も話さなかった。
山: 僕も聞いたことない。

●靖国設立のおおよそのこと

武: 靖国と言うと、太平洋戦争のことだけがピックアップされるけど、明治新政府設立、天皇を中心とする近代国家樹立の為に殉じた人達の慰霊施設なワケだよな。
山: どうやら始まりはボシン戦争の後やったみたいやね。
武: そうね、戊辰戦争にはこだわっていたよね。
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%8A%E8%BE%B0%E6%88%A6%E4%BA%89
>
  明治新政府からしたらいわゆる旧幕府側だった会津藩なんかは悪者なんですがな。
山: ここらへんはややこしいな。僕はいまだによくわかってない。
武: 悪者の東北人会津藩やらを倒して(戊辰戦争)、西郷隆盛を主とした最後の武士勢力を倒して(西南戦争)
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%8D%97%E6%88%A6%E4%BA%89
>
  欧米列強に打ち勝つべく近代国家明治新政府基盤が整った、と。そん時に明治新政府側、皇軍の斃れた人たちを祀る為に建てられたんだわね。現代日本もその欧米帝国(資本主義?)を目指した明治新政府の土壌の上にある、というのが靖国史観なんですよ。けど、ちょっとややこしいのは、そこに天皇を中心とするという皇国史観も入ってるのよ。遥か彼方の神話の時代の神武から続いてる万世一系天皇と、近代欧米化っていうのをセットにしちゃったところがまずややこしい。
山: なんで王政復古したんですかね。
武: 倒幕の気運を高める為に最も有力な戦略だったんだと思うよ。開国を迫られてた訳だし。遊就館の展示タイトルにもあったけど、「アジアに迫りくる欧米列強」「ペリーの来航と開国要求」「日本海に出没する外国船」とある訳で、凄まじい恐怖の中、日本が植民地化されずに生きてく為には天皇を中心にして国が一致団結しないとならなかった、という解釈だよね。
山: ふーむ。なるほどな。
武: で、確かにそうかもなあって思ったりするんですよ。
山: そうやねえ。実際その時「どないしよ〜やられる〜」って思ったんやろうしな。
武: モーレツに張り切ったんだろうな。
山: そうなんやろな。
武: 俺は思うんよ。こん時、猛烈に焦るんじゃなくて、こんなちっちゃな列島なんだから、野花を愛でて、のほほんと居てさ。
山: お?
武: 欧米から「こんな価値のない島と人を侵略するのはメンドクサイ」って思わせていたらなあって。
山: ははは。まあなんせジパングやしな。ほっとかへんわな。
武: 張り切って、欧米の真似をして肩を並べようとした時点が最大の過ちだったのではないか、と。
山: でも威圧的に「お前ら言うこと聞けー!」ってまったくよーわからん人らに言われたら「何言うとんねん!」って言いたくもなるわな。
武: 太平の 眠りをさます じょうきせん たった四はいで 夜も眠れず。(上喜撰という高級茶四杯呑むと眠れなくなるのと、黒船蒸気船が太平洋側から四隻来て夜も眠れなくほど驚いたということをかけたうた)
山: 今でこそまあ、わかるけどな。張り切ったんやろなあ。我々は眠ってた! と。
武: 心理学者岸田秀の本で……
山: おお。なつかしい。
武: 明治開国を「強姦」と例えていたのが俺には強烈だったんだよなあ。
山: うーん。なんでそこまでトラウマになるんやろね。そんなに痛かったんかね。なんで「強姦」って捉えたんやろ?
武: ホントに強姦まがいだったって事なんだと思うよ。強姦をされた人は、心を硬直化させてしまう、と。それは日本に例えると「尊王攘夷」だ、と。
山: そうか。
武: で、イジメられっこに限って、その後イジメっこに転身するように、日本もそうなった、と。
山: わかりやすいな。

●遊就館の展示

武: 展示の話に入ってみよう。まずね、遊就館を入ると出迎えてくれるのが、零戦。ちっちゃっ!
山: あの零戦やばいな。張り子みたいやった。
武: これが飛ぶんか? これで飛んだんか? と本気で思う。あの小ささだったらさぞかし撃ち落としにくいだろう。
山: よく飛んだみたいやね(笑
武: コンパクトなものを作るのは天才的だよな。日本って。
山: ちっちゃいの好きなんよ。なぜか。
武: もともと、巨大なものを諦めてるとか。もちろん資源がないってことなんだろうけど。
シジフォスの笑い―アンセルム・キーファーの芸術山: 零戦の展示、アンゼルム・キーファーを思い出した。
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%BC%E3%83%AB%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC
>
武: キーファーって乗り物みたいな立体作ってたっけ?
山: うーん、どうやったか忘れたけど、昔京都で見た時の展示を思い出した。だだっ広いとこにどーんと置かれてた。何が置かれたたんやったかな……藁とか。なんか零戦と全然違うな(笑
武: 藁のような零戦ってことかの……
山: それで入ってすぐ和歌があった。天皇が詠んだのとか、本居宣長が詠んだのとか。
武: 「敷島の やまと心を人問わば 朝日に匂ふ 山ざくら花」by本居宣長
  これはいい歌だと思う。
山: 和歌はよかった。
武: 敷島=日本ね。大八洲とかもいうよね。
山: 煙草かとおもた。ちゅーか、特攻隊も煙草も名前の付け方一緒かい!
武: さくらと言っても山桜ですから、今のソメイヨシノじゃないんだよな。
山: ソメイヨシノは品種改良やからね。
武: そうそう、わりと新しい。桜って日本の伝統だと思いがちだけど、今観てる桜は確か、明治以降。だから、明治で何もかも変ったとは言えるよ。林檎などの果物もほとんど明治以降。
山: 文明開化か。そうするとそれ以前に文明はなかったんか! ってわきゃないわな。
武: で、展示室2に「國の礎 -日本の武の歴史-」ってのがあるんだけど……
山: ああ。あった。あの展示って時系列になってたんよな?
武: 時系列と言っても、神話の登場人物から始まってる。
山: 神武天皇とか、日本武尊やったっけ。卑弥呼はおらんかったね。
武: そうね。天皇が神武から始まった万世一系だっつうことを現そうとしてるんだろうけど。で、武の歴史は明治以降の軍隊へと続いている、と。
山: 天皇国の為の戦争、ということか。
武: そうなんだろうけど、織田信長とか足利義満とかいなかったっけ?
山: あ、おったおった。何でこの流れで出てきたんかな、とおもた。
武: 足利はいなかったか。。。織田信長(と足利義満)は武将としては珍しく天皇を廃そうと考えた人なんだけど、いいんかな(笑)
山: なんであそこに入ってたんやろ?
武: 有名人を集めた(笑)
山: 客寄せかい!
武: なんだろなあ。。。ちょっと支離滅裂な気がしなくもない(笑
山: なんやろねえ。武の歴史も含めたかったんかな。
武: 鎧と兜を見せたかったんかの。
山: まあ確かに軍事博物館的やったね。
武: で、展示なんだけど、
山: はい。
武: 常設だけあって凝ってたというか、なんかビックリするような所が丁寧というか。時代の流れを現した野暮ったいパネルがあったかと思うと、現代建築のオブジェみたいなクールな感じなのが突然出てくるんだよね。
山: そんなんあったっけ? 僕は意外と彫刻が多かったことが気になった。けっこう広かったしボリュームあった。2時間みっちりやったね。やっぱ映画も全部見ときゃよかったかな。まあ美術的価値は別として、絵画、彫刻、レリーフ、いろいろあったな。
武: なんだこれ? ってな感じな彫刻もありましたねー。石もって礎(いしずえ)、みたいなの。
山: 絵はちょっとあれやったな。。亡くなった人が描いた戦闘機とか、自画像とかの方がよっぽどよかった。
武: そうそう、戦争体験記をマンガにしてた人とか良かったよなあ。
山: 絵、好きやったんやろうなー、って思いました。
武: 絵師の力量がそのリアリティー比べるとまるで劣ってる。
山: なんかね。なんでああいう絵を展示してるンかね。

▼本来は明日の掲載ですが、とっても長くなりそうなのでその一部を本日にもって来ました。つづきはまた明日