ネタを訪ねて三万歩[22]いまだに学園祭が大好きというDNA
── 海津ヨシノリ ──

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人によって『今年もそろそろ終わり』と感じる時期が多少は違っているものなのでしょうか。実は、私は随分長い間11月末にこれを感じていました。父が表具師だったことにより、毎年12月は大パニックだったためです。とにかく物心付いた頃から、私にとって12月は特別を通り越して異常という意識が強かったためです。ですから、私にとっての年末は11月なのです。もちろん感覚的にね。まっ、今はしっかりと12月が自然に訪れる生活をしているつもりですが、この子供の頃の反動から、どうも年末年始のセレモニーが苦手です。


きっと、年始回りをしたことがない(勤めてもいないので行く場所もない)ことがかなり影響しているかもしれません。まっ、それでも昭和の良き時代には親戚を回ってはお年玉を稼いでいましたが、いつしか私が一番下の従姉妹にお年玉をあげなくてはならない空気を読んだ時、このセレモニーも自然消滅してしまったように記憶しています。

※表具師というと、襖や障子を張り替える職人という意味合いが最近は強いようですが、掛け軸や額を作ったり、屏風を仕立てたりする職人を指します。そして私の父は掛け軸や屏風が専門でした。

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~子供の頃と言えば、今年はリリー・フランキーの東京タワーが大ヒットしました。原作もドラマもしっかりとチェックしましたが、私は最近の昭和ブームで自分の子ども時代の事とオーバーラップして、何か不思議な感覚に襲われることが多くなってきました。

例えば、渋谷の東急デパートへの通路の一部はいまだに当時のタイルが残っている箇所があります。景観がきれいになっても、赤坂見附駅で銀座線と丸ノ内線の乗り換えをすると、私はすぐに勤め出した頃の自分にタイムスリップしてしまいます。そんな昔の空気が少しだけ残っているのは、やはり京王線と井の頭線かもしれません。明大前や下高井戸、下北沢、新代田あたりのホームに降り立つと、ふと当時の自分がその辺を歩いているような錯覚すら感じます。

便利で新しいモノが町に溢れ出し始め、それらを手に入れるために親達が汗水垂らして頑張っていた背中を見て育った私たちの世代は、もしかすると最後のノスタルジー世代かもしれません。物心付いた小学校の6年間、たったそれだけの期間に体験した様々なことを、いまだに引きずり影響されていることに驚くばかりです。そして今の仕事へのきっかけとなった様々な事件や出会い、影響がこの時期に集約されていたことを思い出しました。もちろんそれ以降の人生でも色々な影響はうけています。しかし、あの小学校の6年間に勝る事はありませんでした。

学校と言えば11月2日から5日にかけて、学園祭を色々とはしごしてしまいました。ある学校では関係者として、またある学校では出演者として、はたまたある学校では情報収集の怪しいおじさんとして、色々と楽しませてもらいました。面白かったのは、予測不可能なスケジュールであったために、かなり予定が狂い、神出鬼没状態となってしまったことです。もちろん、それはそれで楽しい関わり方であったと感じています。とにかく、ある意味で無礼講みたいな学園祭の空気が昔から大好きです。

でも、必要以上にインディーズ系のアーティスト等を含めた芸能人などに依存していると取られてもしかたのない学園祭は『来年も参加したい』とは思いません。芸能人と屋台を見に来るわけではないからです。屋台なら屋台で何か一工夫が欲しいところですが、それは野暮な愚痴かもしれないですね。これは私が文科系の大学出身者ではないことに大きく影響しているかも知れません。例えば極端な話、文科系の大学といえばコンサートと模擬店しかないも同然ですから。まっ、それを理解しつつも、普段入れない大学の校舎を探検したりするのが面白いのですが、少し志が変かもしれないですね。

逆に学園祭そのものが好きなのは、市立中学や高校、それに美術・音楽系の学校ですね。展示や発表会的な要素が強いので、参加して面白かったという印象が残るからです。まっ、お祭りなのですから、気軽に参加して楽しめばいいのでつまらないコメントは愚の骨頂でしたね。

とにかく私が学生の時は、できる限り出店者あるいは出演者として突っ張っていました。今もその気持ちは少しも薄れていないのですが、さすがに学生ではないので控えめにしないとまずいですね。でないと、単なる変なおじさんになってしまいますから。もっとも、どこかの学生になってしまうという奥の手もありますね。迷うところです。

まっ、変なおじさんにならずに済むのはIT関連のイベントだけかもしれません。先月の原稿掲載の直ぐ後となった26日、東京国際フォーラムで行われたマイクロソフト主催のREMIX Tokyoに参加してきました。今年後半で最も注目されたイベントのひとつではないでしょうか。前日の25日がゲッティーイメージズでのPhotoshopセミナーでしたので、朝10時30分から20時までのREMIXはかなり疲れてしまいましたが、得るものは多かったと感じています。

Microsoft Windows Vista Ultimate アップグレード版しかし、お土産にもらったWindows Vistaのプレリース版に少し困ってしまいました。Macintoshなら外付けハードディスクにインストールして遊ぶことが出来ますが、Windowsではそれは無理ですからね。さりとてまだMacBook Proにはインストール出来ません。もしかすると宝の持ち腐れになってしまうかもしれません。そんなこんなでかなり楽しめたイベントでした。

ただし、問題は昼食です。私は一人で店に入って何かを食べるというのがとても苦手なのです。かなりストレスが溜まります。結局15分ほど徘徊した後に、いつものようにコンビニで気まぐれ定食を買ってベンチで済ませました。ちなみに私の言う気まぐれ定食とは、(1)稲荷寿司または納豆巻きに緑茶(2)アンパンまたはメロンパンに牛乳(3)お赤飯または梅昆布のおにぎりに緑茶、といったところです。学生の頃は『アンタマチュー(アンパン、たまごパン、コーヒー牛乳)』というのにも拘っていました。貧乏性丸出しですね。

modo 103日本語/通常版ハイブリッド貧乏性丸出しといえば、最近はすっかり新しいソフトの衝動買いが少なくなりました。刺激にマヒしてしまったことは否定出来ませんが、あれこれ遊んでいられなかったことが一番影響していました。でも、それが永遠に続いてしまうのは体によくありません。というわけで、久しぶりにmodoという新しい3Dソフトにはまってしまいました。

ソフトそのものは最近リリースされたというわけではないのですが、まっ、吉井宏さん(http://www.yoshii.com/)が随分と入れ込んでいたので、かなり前から存在は知っていました。しかし、それほどの必然性を感じていなかったのです。STRATAとShadeとZBrush、それにいざとなったらRhinocerosもあるので、困らないと思っていたのですが、やはり、手描きイラストみたいなモデリングを素早く行なうという意味では持っていてもいいかな〜というノリです。もちろんZBrushでそれは充分なのですが、時々発症する新しいもの好きの病気といったところです。


そもそもこのジャンルのソフトウェアは、それぞれ一長一短がありますので、色々持っていたほうが素早い対応が可能というわけです。頭の体操という意味でもね。とにかく、粘土細工のようにグリグリと、捏ね繰り回しながら温いキャラクターを作ってみたいと思っていたからです。

こうなったらZBrushの時のように沢山作り込むだけです。理屈はいりません。完成度も必要ありません。3Dのラフスケッチです。少しずつ感触を掴みながら機能を理解すればいいだけです。

ところで前回のテキストで、10月末に『ラブリバーたまがわこども絵画展』の審査員を行なったことを書きましたが、正しくは審査委員長でした。もう肩書きなんてどうでもいいから、もっと子どもの絵を見せてという感じだったので、まったく気にしていなかったのです。そして、10月29日の表彰式の時にそれに気がついて少し焦ったという次第です。もう少し緊張感持ちましょうという意味で反省猿しました。こんな具合に、相変わらずオマヌケまっしぐらです。とにかく、とても有意義な体験をすることが出来ました。

【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター

アップルストア銀座でのセミナーはかなりリズム感が出てきました。あとはネタの整理といったところですが、冠は『画像処理テクニック』という切り口なので、Photoshopに拘る必要もないわけです。拘ってもいのですが、それだと面白くないですからね。自分の勉強にもなりません。ということで、少しずつ『脱Photoshop』あるいは『Photoshopユーザーのためのなんちゃらソフトウェア』みたいなのものを色々と画策中です。もちろん、宗旨替えをするというわけではありません。ひとつのことだけにエネルギーを集中することは、クリエイターにとっては命取りだからです。常に新しい発見と刺激を求める行動が必要だと感じています。論理武装したクリエイターなんて面白くもなんともないですからね。

そういえば、10月25日に行なったゲッティーイメージズでのPhotoshopセミナーの最後に受けた質問のひとつに、後から考えるとかなり私が勘違いして回答してしまったものがありました。思い込みはその場の空気で随分深みにはまってしまうことがあります。真剣に質問を理解し、素早く適切に回答しようとするあまり、余計な事まで考えてしまうことが原因なのかもしれません。帰宅してしばらく時間が経てば気がついたりするのはそのためかもしれません。

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東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~
リリー・フランキー
扶桑社 2005-06-28
おすすめ平均 star
star親孝行させることが大きな価値
starドラマにもなったこの本。
star涙で活字が見えなくて困った
starこれはエッセイです。
star泣いちゃいました(>_<。)

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modo 202 日本語版 /パッケージ
マーズ 2006-09-27

by G-Tools , 2006/11/29