DTPデータ解体新書──DTPな人たちのソフトウェア環境は今(2)
── 笹川純一 ──

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データ入稿の印刷という業務に携わって、もう8年くらいでしょうか。今まで印刷通販という業務形態を通じて、全国のお客様の様々なデータを拝見させていただきました。

色々な印刷用のデータを見ていると、結構な数の入稿データ(Illustratorデータ)がアウトライン化されているのですが、アウトライン化されていないものもそれなりに存在しています。

また、PDF入稿だと、結構色々なフォントを使用されている方も多く、実際どんな感じのフォントを使用しているのだろうかと思い、今回もWebでアンケートを行いました。今回はフォントメーカーではなく、フォントの種類の話で、Open Type Font・CID Font・OCF・True Type Font(OTF・CID・OCF・TTF)を指します。最近のAdobe CreativeSuiteでは小塚のOpen Type Fontが付属していたり、Mac OSXではヒラギノフォントのOpen Type Fontが付属したりしています。

また、Mac OSでのDTPで以前からの環境であれば、CID Fontなども多く使用しているかもしれませんし、WindowsではTrue Type Fontなども多いかもしれませんが、どんな感じなのか…。アンケートの結果は以下のようになりました。



■最もよく使用されるフォントの種類 …投票数:454票

 1位…OTF/Open Type Font     …46.9%
 2位…よくわからない        …20.0%
 3位…CID Character IDentifier font…16.1%
 4位…TTF/True Type Font     …11.5%
 5位…OCF/Original Composite Font … 5.5%

■2番目によく使用されるフォントの種類…投票数:352票

 1位…TTF/True Type Font      …30.4%
 2位…CID/Character IDentifier font…22.2%
 3位…OTF/Open Type Font      …19.6%
 4位…よくわからない        …19.3%
 5位…OCF/Original Composite Font … 8.5%

一番よく使用されるフォントの種類はOTF、2番目に使用されるフォントの種類はTTFになりました。MacとWindowsのDTPを分けていないので結構順当な結果なのかな、という感じですね。

OTFは一番よく使用されるフォントの種類、2番目に使用されるフォントの種類でともにそんなに低い順位ではないので、広く使用されているということでしょうかね。

最近のフォントレンタルサービス(モリサワパスポートやフォントワークスLETSなど)ではOTFの選択ができるので、選択肢として入ってきやすくなったのと、またソフトウェア側から見ても以前はInDesignくらいしかOTFの特徴的な機能に対応していなかったのが、今ではInDesign・Illustrator・Photoshop・QuarkXPressなどの、主要なDTPソフトウェアでも対応しているためかもしれませんね。

TTFはどんなメーカーのものが使用されているのか、このアンケートからは分からないのですが、やはりダイナフォントが多いのでしょうか…。Windowsのフォントとしては様々なソフトウェアにバンドルされているということもありますし、フォントのパッケージとしては驚異的に安いので、使用されている方も多いかもしれませんね。

以前はDTPでTTFは使っても出力ができない、なんて時代もあったのですが、メジャーに使用されているのを見ると時代は変わったなぁなんて思ったりもしますね。結局アウトライン化しているのか、フォントを含めてPS書き出しをして出力しているのかは分かりませんが、とにもかくにもTTFを使っている人は結構多いってことでしょうか。

CIDは、以前からMacでDTPをされている方にとってはスタンダードなフォントですね。投票の割合的にもまだまだ多くの方が使用されているようです。2番目に使用されている割合が高めなのは、従来のデータの流用などがあるからなのかなと考えられますね。

CIDの詰め情報などは、古くからIllustratorでDTPをされている方には便利な機能なのですが、Illustrator CS以降は詰め情報が効かないようになっているようですね。Mac OS8やMac OS9対応のIllustratorから、Mac OSX対応のIllust ratorに移行するとこの点でちょっと戸惑うかもしれませんね。

▼イラレCSでの文字詰め - DTP駆け込み寺BBS過去ログ
< http://dtp-bbs.com/dtpbbs/archives/cs_20051015161531.html
>

▼[223460][ReadMe]新しいテキストエンジン
< http://support.adobe.co.jp/faq/faq/qadoc.sv?223460+002
>

OCFはさすがに使用頻度は減ってきてはいるのでしょうが、まだまだ現役な所もあるかもしれませんね。アウトラインプロテクトが掛かっていないメーカーのOCFフォントを使用して、Illustratorなどで入稿時にアウトライン化して入稿すれば、作業的には問題がないですからね。

ただ、アウトラインプロテクトのあるフォントが含まれた文字列をアウトライン化しようとすると、文字が消えてしまう場合があるので注意が必要ですよ。

▼[Illustrator]文字をアウトライン化する時のエラーについて
< http://blog.ddc.co.jp/mt/dtp/archives/20050720/003212.html
>

あと「最もよく使用されるフォントの種類」で「よくわからない」が20%というのはちょっと多いかな、という印象です。「そんなことで大丈夫なのか?」と思われる方も多いかと思いますが、確かにOTFやCIDの特徴的な機能を使用しない場合、OTFだろうがCIDだろうがTTFだろうがあまり気になることはないのかもしれませんね。Illustratorでアウトライン化すれば良いという考えもありますし…。

さらに、印刷業界ではPDF入稿が着々と進んでいますので(もちろん吉田印刷所は対応しています)、PDFにフォントを埋め込めればフォントの種類を意識することもないので、入稿も問題ないのかもしれませんね。

▼[PDF]PDF形式の7つのメリット〜なぜPDFなのでしょうか?
< http://blog.ddc.co.jp/mt/dtp/archives/20050704/114733.html
>

フォントなどを自由に使える時代というのは、まさに作り手側の方に主導権が移動してきたということなのでしょうかね(=フォント環境を出力する側に依存しなくても良い)。その分、作り手側でしっかりしたデータ作りを行わないといけないので、色々な手間も発生してしまいますが…(いや、きちんと作ってもらうのが前提なのは元々か…)(苦笑)

●フォントの種類について…
【OTF】
< http://blog.ddc.co.jp/mt/words/archives/20050912100126.html
>
【CID】
< http://blog.ddc.co.jp/mt/words/archives/20050916105532.html
>
【OCF】
< http://blog.ddc.co.jp/mt/words/archives/20050912112902.html
>
【TTF】
< http://blog.ddc.co.jp/mt/words/archives/20050809113842.html
>

【笹川純一】sasagawa@ddc.co.jp
DTPデータ入稿を手がけてまだまだ8年目の、個人的には若手だと思っている印刷会社の人。昔は出力できなさそうなデータでも最近のパワフルなRIPだと、あっさり出力できてしまうので、一抹の寂しさも感じる今日この頃(笑)。
今まで出会ったDTPデータのエラーや、PDF変換手順などを掲載した冊子の販売も行っています。
< http://www.ddc.co.jp/
>

現在「DTPでよく使っているフォントのメーカーは何?」というアンケート実施中。やっぱりモリサワ・フォントワークス・ダイナコムウェアあたりなんでしょうかね?
< http://blog.ddc.co.jp/mt/dtp/archives/20081113/122500.html
>