ネタを訪ねて三万歩[49]勝手に時代劇祭り
── 海津ヨシノリ ──

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月に1回の連載も今回が49回目ということで、5年目に突入しました。ただし、デジクリへの寄稿という意味では1999年(確か…)からですので、今年が10年目になります。

●2009年は勝手に時代劇祭り

最近、私にとって「すごい!」あるいは「ピン!」と感じるデジタル系の話題があまりないので、デジタルとは無縁の話が続きます。また、そうなってくると、どうしても好きな世界に突入してしまいます。そんなネタを求めまくっている私にとって、今年はいきなり好きな時代劇ばかりで危ない状況になっています。

例えば……現在、真田幸村(真田信繁)の誕生月日は不明となっていますが、多くは没年(1615年没。ただし1614年没説もある)から逆算すると、1567年または1570年という説が強いようです。だとすると、1573年に織田信長の使者として洛中洛外図を持って現れ、13才の直江兼続と対面した初音(真田幸村の妹)は3〜6歳よりも若いということになってしまいます。



NHK大河ドラマ「天地人」オリジナル・サウンドトラック姉という設定なら多少の無理はあるが、かなり苦しい設定。と感じていたら、NHKは1月28日に突然妹から姉へ設定を変更しました。かりに架空の人物ではあっても、初歩的な時代考証ミスですね。それと、いくら時代が違うとはいえ、13才の直江兼続の立場でかなり出過ぎた動きをしていますね。
< http://www9.nhk.or.jp/taiga/
>

ドラマなので仕方のないことですが、いろいろと知っていると無理が目立ってしまうのでした。ちなみに1573年とは武田信玄の没年であり(享年52歳)、上杉謙信の没(1578年48歳)5年前、本能寺の変(織田信長48歳で没)および武田家滅亡(武田勝頼36歳で没)の9年前となります。こうして大きな事件までの年数を整理してみると、ほんの少しでも誰かが長生きしていたら、歴史は激変していたことが分かり(結果がどうなるかは謎ですけど)ます。

あくまでも歴史の「もし」のことですが、例えば関ヶ原の戦いまで有名な武将が生き延びていたとすれば、武田信玄(79)、上杉謙信(70)、織田信長(66)、武田勝頼(54)、今川義元(81)、豊臣秀吉(63)、前田利家(61)、毛利隆元(77)、吉川元春(70)、小早川隆景(67)、柴田勝家(78)、明智光秀(72)、豊臣秀次(32)、竹中半兵衛(56)、浅井長政(55)となります。

片や、実際に関ヶ原の戦い当時の武将たちの年齢は、伊達政宗(33)、徳川家康(57)、上杉景勝(44)、毛利輝元(47)、石田三成(40)、福島正則(39)、加藤清正(38)、黒田長政(32)となります。この年齢を現代人の平均寿命に置き換えてみると、健康あるいは戦死、刑死がどれほど歴史を左右してしまったのかが分かります。

いっその事、このシミュレーションで「異説関ヶ原」とか書いたら面白いかもしれませんね。もっとも、武田信玄が60歳まで長生きしただけで織田信長、豊臣秀吉は存在しなくなってしまうわけですから、関ヶ原もなかった世界の可能性は高いですね。

さて、その謙信没直後、家督相続に関して明確な遺言を残していなかった謙信生涯唯一の痛恨のミスが発端となり、上杉景虎(北条三郎)と上杉景勝(謙信の甥)による本格的な家督争いとなった御館(おたて)の乱が多くの武将の命運を塗り替えてしまいました。

この時、長篠の戦いで織田信長、徳川家康に大敗した武田勝頼は、上杉景虎と盟約を結び、上杉景勝討伐に動くも、上杉景勝からの懐柔により越後との甲越同盟を結び、北条(後北条)との甲相同盟は反故にしてしまいました。それで北条を敵としたため、北条対策として佐竹義重との甲佐同盟を結び、それが結果的に武田家の孤立、そして滅亡へと繋がったというのが悲しい結末です。

ちなみに関ヶ原の戦いと同様に、この御館の乱勃発当初は圧倒的に上杉景虎が有利という状況だったわけですが、ここでも歴史は皮肉な結果を導き出しています。だからこそ直江兼続という人物のその後の活躍が歴史に残る(マイナーですけど)のです。

そんなワクワクする話を自分に置き換えると白けてしまいますが、それでも自分なりに「あの時」の「もし」を考えてみると、自分にとって相性の悪い人、あるいは相性の良い人との関わり。親しい友人と突然交流がなくなってしまったかと思えば、まったく予想していない人からの接触が、実はかなり複雑に絡み合っている交友関係によるものであった等、誰にでもいろいろな大河ドラマが生まれているのではないでしょうか。

私は運命論者ではありません。だからこそ、運命に翻弄される主人公を克明に描いた小説やドラマが好きです。もちろん私にとって運命を変えた(であろう)人は沢山います。しかし、私の人生は小説ではないので、リセット(見ていて後味の悪いドラマがありましたね)が効かないので結果を比較することが出来ません。当たり前ですけど、だから人生は面白いのだと思います。

ところで、実はここまでの原稿内容は、書いておいたものにかなり大幅に加筆・修正しています。しかも何度も。さすがに1ケ月のタイムラグは大きいです。仕方のないことですが、タイムリーではないテキストは、やはり読む方にとって辛いかもしれませんね。申し訳ないです。可能な限りネタ収集に走り回りたいと思います。

話を戻し、同じNHKで土曜日に放映している「浪花の華〜緒方洪庵(おがたこうあん)事件帳〜」が面白いです。福澤諭吉、大鳥圭介、橋本左内(はしもとさない)、大村益次郎、長与専斎(ながよせんさい)、佐野常民(さのつねたみ)、高松凌雲(たかまつりょううん)など幕末から明治維新にかけて活躍した多くの人材を輩出した蘭学塾「適々斎塾(適塾)」を開いた緒方洪庵の、若き日の青春群像といったところです。

いかにもNHKらしい丁寧な作りと雰囲気。この世界観は大好きです。主人公の緒方章(若き日の緒方洪庵)を演じる窪田正孝、謎の男装の麗人左近を演じる栗山千明、ナイスキャスティングですね。このテキストが公開される頃には、全10回の最後の方になってしまっていると思います。でも、絶対に再放送されると信じていますので期待しましょう。
< http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/naniwa/
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"アン・ドゥ・トロワ" by キャンディーズ in 1977
"Viva La Vida" by Coldplay in 2008
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"Indiana Jones And The Last Crusade" by Steven Spielberg in 1989 (USA)
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【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター
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某所からの依頼で面接官を体験しました。実は今年で2回目。はじめ、受験者の緊張感と比べたら面接官の方が楽だと思っていましたが、とんでもない勘違いとすぐに気がつきます。ある意味で、他人の人生を左右してしまいますからね。ただ、非の打ち所のない受け答えをする人は、概ね評価が低くなりますね。それと、面接官側も隠し球の質問を用意しており、それがかなり合否を左右するような感じでした。

しかし、具体的に合否材料として重要なのは、第一印象と受け答えで分かる人柄だと思います。最終的な判断は私が下すわけではありませんが、そんな印象を受けました。結局、人はさまざまな人生の節目でいろいろな「縁」に出会いますが、その「縁」が吉と出るか否かは、結局のところ誰にも分からない不思議な巡り合わせなのかもしれません。ただ一つ言えることは、「良い縁」はさらに「良い縁」を生むということ。あるいは、「最悪の縁」は「最悪の縁」に結びつくとも言えますね。