武&山根の展覧会レビュー 一生懸命生きない画家を知りたいわ──【速水御舟 -日本画への挑戦- 】展を観て
── 武 盾一郎&山根康弘 ──

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もっと知りたい速水御舟―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)山:どーもー。飯食ってました。

武:ういっすー。今、冷凍しておいたカレーを温めております。

山:おお。これから晩ご飯ですか。

武:16時ちょい前くらいに家帰ってきて寝てた。昨日はハードだったんすよ。

山:ほう。なんで。

武:今回の展示観に行って、そのあと事務所寄って、そのあと246表現者会議、そんで野宿。野宿がこたえた。。。


山:ほう。野宿かいな。そりゃ大変やな。

武:翌日の11月9日(月)の朝に宮下公園が封鎖されるってのもあって。宮下
  公園にロケット(段ボールハウスのこと)を作って寝るワークショップを
  アーティストのいちむらみさこさんが呼びかけてて。

山:で、どうなったん?


武:朝になったら、のじれんの人たちや大阪からの野宿支援者や抗議の人たちが増え始めて、警察や車や私服も来てて闘争モードに突入してたんだけど、246表現者会議は段ボールでスペース作って「何もしない」って書いて、ウクレレ弾いたり、ハーモニカ吹いたり、絵を描いたりしてたんす。けど、内心全面対決とかやだなーとか思ってたら、なんと封鎖見送りとの通達、封鎖予定もないんす。ポカーンって一瞬なった(笑)

『【緊告】宮下公園のフェンス封鎖を阻止!?』
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>


山:どういうことなんやろな。

武:わかんないw。で、上尾に帰ろうかと思ったら、電車動いてない(泣)。

山:ああ、今日JRストップしてたみたいやな。信号機トラブルかなんかで急病人が出て、とかやったか。ちょうどラッシュやもんなあ。

武:そうなんすよー。まあ、なんとか高田馬場事務所まで辿り着いて昼をごちそうになって午後帰ってきた。寝不足&疲労という感じす。


山:そうかー。でも僕も大変やったんですよ。友人の結婚パーティー。

武:酔っぱらい過ぎんたんだ。

山:覚えてない(笑)。

武:まあ、いつものことだが、怪我とかなければいいがどうだったん?

山:スーツが破けた(笑)。こうやってどんどんいろんなものをなくしていくんやね。。


武:わはは! あの一張羅のスーツか? しかし、どうやってスーツ破くんじゃ?わざと破こうと思っても難儀だぞ。

山:たぶん勝手に道で転んだ(笑)。膝を強打していた。

武:激しい転び方だなー、皿とか大丈夫だったんかいな。

山:そこは大丈夫やったみたい。膝のちょっと下。と、足首が痛い。

武:ねじったんかいな、危ないなあ、オイ。


山:鴬谷にいたのに気がついたら新木場でした。

武:遠くなってるじゃんw

山:もうね、ほんまにあきませんよ僕。

武:ヤバいなそれ。今こうやって生きてるの、運がいいだけだぜ、多分。

山:運はもう来世分ぐらいまで使い込んでるやろな(笑)。借運。

武:あはは! 運の前借りか! 来世は怖いのぅ。

山:来世ではその次の運を借りよう(笑)。

武:おっ、いいね。


山:いやまてよ、来世ってあるのか?

武:来世か。まあ、あってもなくても、自覚は出来ないんだからいいじゃん。

山:そうか、じゃあ借りまくろうw 後の事はまかせた。

武:それを宿業っていうんだろうな。

山:まあ、ご利用は計画的にってことで今回はですね、山種美術館です。
< http://www.yamatane-museum.or.jp/
>



●新美術館開館記念特別展【速水御舟 -日本画への挑戦- 】/山種美術館


武:ほい。恵比寿なんだよね。俺、初めて行った。

山:移転したんやね。日本画専門の美術館だそうです。

武:なんとなく名前は聞くよね。

山:そうやな。聞いた事はあった。

武:特別展【速水御舟 -日本画への挑戦- 】です。

山:「登り得る勇気を持つ者よりも、更に降り得る勇気を持つ者は、真に強い力の把持者である」(速水御舟)。


武:ほー。40歳で夭逝した日本画家ですね。

山:武さんより若いやん。

武:そうなんだよなー。明治・大正・昭和初期に生きたんすね。画業に入ったのが若いよね。ってか昔ってみんなそうなんかな。

山:10何歳かで画塾に入ったとありましたね。

武:うろ覚えだけど。あ、14歳か。


山:どうしますかね。順を追っていくか、なんか最初に言ってまうか。

武:まずはざっくりと言ってしまいましょう。あのね、
  1.入場料高い!! 大人1,200円! 120円くらいにしろ!!
  2.ロッカー少な過ぎ!!
  3.トイレが展覧会場にない!!
  3ペケ!

山:トイレあったで。


武:展覧会場フロア(B1)にないんですよ。なので展示閲覧中にお腹壊したら1F戻って退場しなくちゃならない。もう一回チケット買わないとならないなんて、もう、ダメですよ。

山:そんなん係の人に言ったら大丈夫やろ。

武:再入場できませんって書いてあった。

山:トイレは行けるやろ。普通。

武:そかな。

山:そりゃそうやろ。

武:でなきゃ、糞尿垂れ流すしかないもんな。最近、尿意が頻繁なんだから。

山:そんな美術館聞いたことないわ(笑)。でもひょっとするとそれもおもろいか? 僕は嫌やけど。


武:あとね、混んでたよ。なんで? この人、有名なんかね?

山:僕行った時も混んでたな。年齢ばらばらやったし。速水御舟は有名やな。美術の教科書には大抵載ってる人やろ。

武:記憶にございませんw

速水御舟―日本画を「破壊」する (別冊太陽 日本のこころ 161)山:火に蛾が集まってる絵とか。

武:あー。『炎舞』(1925)、31歳ですの。
< http://www.haizara.net/%7Eshimirin/dia_img/hayamiennmai >


山:切手もあった気がする。ちゅうかね、久々にこう、昔の日本画家の絵を観た訳ですが、

武:うん。

山:うまいんやな。

武:うーん。けど、ぶっちゃけ人物はなー、下手だと思ったぞ。あんなにのびのびと馬のスケッチが描けて、どうして裸婦はああなんだ? みたいな。

山:最近絵を観るときあんまり技術的なこと観なくなっててんけど、久々にうまいなあと思たで。まあ人物画はこれからって感じやったんちゃうの。基本は植物やら虫やら。

武:なんかね、こんなことを言ってはおこがましいですが、「ああ、わかるなあ」って感じた。絵がリアル(リアリズムっていう意味じゃなくて)に入ってきた。


山:入ってきた、とは?

武:なんか、御舟の感じてることが、絵を描いてる時の感覚が入ってきたというか。まあ、それは俺の勘違いかも知れないけど。うまく言い表せないんだけど、つまりは「共感」したってことかなあ。絵に感動したというより。そんな感じ。

山:ほう。

武:うまいとさ、「その人なり」が感じ取れなくなっちゃうことってあるじゃん。日本画ってそういう印象があってさ。

山:技術ばっかり目立って、とかかな。うーん、でも必ずしもその人となりを感じれれば良かった、と言う訳でもない気もするが。


武:なんだろうね。まあ楽しめたんすよ。ざっくりいうとね。

山:なんやねんそれw もうおわってもうたやないかw

武:あはは。

山:あと思たんですけどね。当たり前やろうけど、絵って絵やなあ、と。

武:うむー。。難解だなー、オイ。


●「絵は絵」


山:いやいや、そのままw 絵って絵なんですよ。

武:まあ、食いもんではないわな。

山:はは。確かに食えない。なんちゅうんですかね、えーと、現代美術だなんだといろいろありますけど、解釈どうこうはあるにしても、絵って、ただ絵そのものやないか、と。

武:確かに「絵画とは何か」という問いかけをする「作品」ではないよね。どんな「絵を描くか」、そこを追求しているワケだからね。そこの分かり易さってのはある。「問題」ではなく、「こたえ」を描いてる。

山:こたえ、って言うんか、なんやろ、そもそもそういう問いがないんやろうけどな。


武:そうかなあ、洋画を取り入れようとしたり、そしたら日本画ってなんだ?という問いかけだって生まれるだろうし、やっぱり葛藤とは闘ってたと思うよ。

気魄の人 横山大観 (別冊太陽 日本のこころ)山:ああそうか、そういやヨーロッパに横山大観と行ってるんやな。

武:「葛藤そのものを表現する」とかはないんで、そこが気持ち良かったってのはある。

山:『横山大観を"体感"する』
< https://bn.dgcr.com/archives/20080213140200.html
>


武:やっぱり山根が酔っぱらって大変な事になってるじゃん!

山:わはは!! ほんまや。

武:なにこれ! あきれるわ。

山:何年前やねんこれ(笑)。一年半前や。


武:むしろ凄い。死んでもおかしくないことがらばかりじゃないですか、やっぱり運を前借りしてるな。来世に謝っておきなさい。

山:ちゅうかこれおもろいやん。あほやこいつら(笑)。

武:あほですね確実に。批評としては良いこと言ってるんだよ。けど冒頭があほ過ぎるから、だいなしになってるんだよな。

山:ひどいなあ(笑)。

武:文章だけ読むとこんな奴らと恐くて会いたくないって思うよな。今読み返して思った。


山:先日、高田馬場まで乗り込んでいらっしゃったべちおさんはすごいなw ちゅうか最近べちおさんネタ多いなw

武:べちおさんくらいですよ、俺らに興味持って会ってくれる人。

山:ありがとうございます! これも運、いや、縁。

武:いやあ、有り難いことですよ。ということで御舟いきましょう。


山:えっと、どこまで話したんや、あ、絵は絵、ってとこや。御舟を観てね、まあ40歳で亡くなったのはやっぱりちょっと早いなあと思うねんけど、絵は絵だ、って思うのって、難しい事なんとちゃうかなあ、と。だって絵は絵だ、って思ってないとあんなん描き続けられへんのとちゃうかな。

武:「絵は絵だ」って「絵画は自律してる」という意味かい?

山:いや、自律というよりも、なんて言うんやろ。

武:あ、「絵は自我ではない」ということ?

山:うーん、そうなんかな。ちょっと考えよ。


武:確かに洋画って、そういうところを悩まなければならない的なとこって強いよね。多分に文学的というか。

山:自我との関係はあるのか。あ、そうかもな。別にその時の自分の感情やとか、時代の雰囲気やとか、そんなんなくても絵は絵やん。で、その絵が、うまくできたとか、なんかあんましとか。そんなもんやろ、みたいな。


武:やっぱ、自画像を描いてないからなんじゃないの? まあ、ここで順を追って進んでみますか。

山:お。そうくるか。

武:『第1升:画塾からの出発』。展示は時系列なんかな。

山:1升ってなんやねん! 酒系列やないかw


●第一章:画塾からの出発


武:おー、ついつい無意識の欲望がw つかね、俺のマック「しょう」ってタイプすると「升」が最初に出てくるんですもの!

山:あれ? 今日は呑んでないの?

武:梅酒の梅食べてる。じゃあ呑むか!

山:何を?

武:トリス行きます。

山:お。珍しくウイスキー。なんでそんなんあんねん!

武:ミニボトル貰った。フフンッ。

山:僕は生協の麦焼酎ですよ。

武:おー、貧相でよろしーのー。


山:もうね、金も信用もないのでw いろいろ失っていくんですよ。年月とともに。

武:最後に大切な事柄が2つ3つ残ればいいんですよ。人間の脳ってな、最期は「自分の人生は幸福でした」と思うように出来てるんだって。

山:別に後悔はしておりませんがね。ちゅうか、ぜんぜん御舟に行かへんやないか。


武:わはは! えっと、画塾ですよ。いい響きですねー、画塾って。俺、好きよ。彩光舎(武、山根が通っていた美術予備校)って画塾っぽい感じあったじゃないですか。ああゆんいいね。

山:松本楓湖の安雅堂画塾だそうですね。そうやな。なかなかないよなあ、そういうとこ。

武:御舟はさ、きっとかわいがられたんですよ。うまいしね。

山:そうなんやろな。最初の方に展示されてた『瘤取之巻』(1911)はすごい楽しんでる雰囲気がめっちゃ出てる。楽しんで描いてる。

武:うん。楽しそうだよねー、すんごい好感持てるのよ。当時17歳。
< http://www.yamatane-museum.or.jp/img/exh_0910/picture01 >


山:僕も描きたいって思ったもん。

武:とにかくかわいらしい絵ですわ。模写なんだっけ。

山:模写ではなくて、学んだ技法を物語にのせる形で出した、ということらしい。物語としては成立はしてないみたいやね。

武:あはは。技法が「遊び感覚」っていうかさ、活き活きしてるんよね。

山:描きたくてうずうずしてる感じがあるよな。

武:そうそう! いいねえ。40歳も過ぎるとな、そのまんまの感覚ってのはないな。

山:ないんか。悲しいのう。

武:重なってるものの方が遥かに多くなってしまうんよ。

山:どういうことや。


武:17歳(描き始め)→「描きたくてウズウズ」。15年のキャリアとか→「描きたくてウズウズ」の上に「自分とは何か」とか「自我問題」「対人問題」「対社会問題」「立場問題」みたいなのが堆積していくんよ。

山:問題ばっかりやな。

武:そうそう。そして、その問題は解決しないわけさ。

山:僕はほとんどが「酒問題」。お、酒問答みたいでおもろいな。

武:何言ってんだか全然わかんね。

山:わはは。

武:「描きたくてウズウズのみ」には戻れないんだと思うよ。

山:むずかしいねえ。

武:それがきっと大人になるってやつさ。


山:まあでも、そういうのを探すっていうのもあるんかもね。絵を描く中では。

武:探すって?

山:うずうず出来るものを。

武:あー。けど描き始めの「描きたくてウズウズ」のウズウズとは違うんだよな、それ。

山:そうなんかな。まあそうかもな。いや、だからさっきの話に戻ると、「絵は絵だ」って思い続けるのって、やっぱ難しいことなんとちゃうかな、と。


武:「絵は絵だ」ってのはどちらかというと、辿り着く絵画観なんじゃないのか?

山:そうではなくて、純粋に描く行為、に近いんかなあ。

武:うーん、なんとなくわかるようなわからないような。

山:描きたくてうずうず、ってやっぱり行為やんか。

武:「描きたくてウズウズ」して「描いて出来た!」って喜ぶ、それのみ。それってさ描き始めか、ある程度悟りの境地に達したかだと思うんさよ。実際、その後の御舟も絵を描く喜びみたいなのは保ち続けてるけど、挑戦、挑戦という感じだし。満足いってない感の作品もあるし。

山:そうやな。確かに純粋なうずうず感はない、のか。


武:まあ、そんな感じで次行きますけど、いいすか。

山:ほい。

武:『第2章:個展への挑戦』

山:古典やがな。


●第2章:古典への挑戦


武:あれ! 個展したい無意識的欲望の顕われだなw マジで天然だから、この流れ。

山:なんでも無意識にしたらあかんよ。僕は酔っぱらったら全ては「憑依」されてるってことにしてるけどw

武:そっちの方がタチ悪いだろ!

山:じっさいホンマにそんな気がするw

武:怖いわ!

山:僕もw

武:何に憑依されてるんじゃい!

山:どうやら前に住んでた雑司が谷から連れてきてる臭いな、これは。まあそれはええんですけどw


武:古典なのかどうなのか、ちと分らなかったが、あ、琳派とかってことか?

山:琳派もあるらしいねんけど、写実ってことみたいやね。

武:古典=写実、なんかい!

岸田劉生 内なる美―在るということの神秘 (Art & words)山:岸田劉生にも影響を受けてるらしい、というと西洋画も入ってきた訳やな。大正時代やな。

武:俺はね、『震災(写生)』(1923)、29歳の時関東大震災のスケッチがサラッと展示してあったんだけど、なんか気になってね。スケッチ描いて、で油絵タッチの絵描くんだよね。

山:あったね。あの絵は僕はやっぱりフジタ
< https://bn.dgcr.com/archives/20060614140000.html
>
  とか思い出すんやけどね。ただ、あの時代の人には震災は相当強烈な体験やったやろうし。金子光晴も言っている。

武:そうだろうなあ。絵の中に人が居ないのも気になるんだよなあ。でさ30歳、スーパーリアリズム『春昼』(1924)、になるんだよね。
< http://image.space.rakuten.co.jp/lg01/50/0000015750/63/img05a543f5zikazj.jpeg
>


山:これまたすごいな。なかなか描こうと思えん。

武:で、このスーパーリアリズム画法でもって冒頭の『炎舞』を描くっていう流れだよね。

山:細密という意味ではそうなんやろね。

武:象徴性の高い絵なんだけど、理屈っぽく見えないんだよね。

山:そこらへんに何かありそうやな。理屈っぽくないけど、象徴的な絵。日本っぽい。いや、大陸っぽいのか。東洋とでも言えばいいのか。

武:「炎」と「虫」ですからね。意味っぽいんだけどさほど意味はないというか。「炎」や「虫」の背後に物語りを忍ばせたりするじゃないですか、フツー。

山:おそらく無意識に任せたんやろう(笑)。

武:『瘤取之巻』もさ、こぶとり爺さん出てくるけど、別に物語りではない、みたいなね。

山:まああれは作家の作品、という感じでもないからな。

武:そっか。まあ、だからね、変に考えなくていいから気持ち良いんですよ。


山:じゃあ、『翠苔緑芝』(1928)はどうなん?
< http://www.yamatane-shop.com/data/artbox/product/ehagaki/A0585-045-1_b >
< http://www.yamatane-shop.com/data/artbox/product/oobanhagaki/A0585-46_b >
  この絵好きやねんけどね。

武:34歳だね。

山:琳派の影響がかなりあるみたいやけどね。


武:『炎舞』より御舟っぽいと思う。構図面白いじゃん、けど琳派ならああならないよw

山:琳派とちゃうからね。琳派の影響やから。

武:「カッチョエーッ!」っていうよりかは、「フフフッ」って感じ。脂のってますよね。で、すんごく好感持てるんだよね。

山:魅力のある絵やと思う。なんでやろ。

武:楽しそうなんだよね。あじさいの花とかこっちが微笑んでしまう。

山:あのあじさい、めっちゃ描いてるよ。

武:そこがいいんかも!


山:あと、枇杷の木かな。葉っぱのコラージュみたいになってる。

武:葉っぱと小さな実みたいなのもひとつひとつ表情があってね。あとね、あの不思議な緑色。蛍光色みたいな緑色使うんだよね。

山:画材も相当研究したらしい。

武:個人的には『夜桜』(1928)とか、対象の一部を潔く切り取って気持ち良く配置した絵とか好きだなあ。


●第3章:渡欧から人物画へ


山:さて、第3章いきますか。『渡欧から人物画へ』。ヨーロッパいくんやね。横山大観と。

武:建物とかのスケッチいいね。

エル・グレコの生涯―1528‐1614神秘の印山:渡欧以前から興味をもっていたエル・グレコほか、たくさんの西洋絵画を実見した。この体験により、帰国後にそれまでほとんど制作していなかった人物画に挑戦することとなる(山種美術館ウェブサイトより)。


武:ああ、ようやく人間になるんだ(笑)、36歳。『ギリシャ少女像(素描)』(1930)、お世辞にもうまいとは言えんぞう。裸婦素描も。

山:まあほとんど制作してなかったんやからな。目覚めたんやろな。人間描かなあかんねや! とか。日本画の人がヌードデッサンしてるイメージあんまりないな。

武:やっぱり、日本画は「自然」を描く的なものがあるんかな。

山:花鳥風月やろな。

武:未完の『婦女群像』(1934)が展示されてたけど、なんつか表情が硬いっていうか。
< http://www.holbein-artistnavi.com/artnews/imgfile/2009/09/hayami2 >

山:たしかに。

武:あそこっから、深化して行くんかも知れないけどなあ。


山:でも、やわらかい表情の人物を描く絵描きなんて、当時おらんかったんちゃうの?

竹久夢二 (別冊太陽 日本のこころ 20)武:竹久夢二(笑)。

山:竹久夢二? 表情みんな一緒やんか。

武:そう? なんか「物語り」は感じない? しぐさとか。

山:でもスタイルやし。御舟もおそらく日本画人物スタイル。


武:スタイルに辿り着いてないんじゃないのかなあ、スタイルまで行けばよかったんだよ。女性像ってさ「しぐさ」が重要じゃん。で、その「しぐさ」の背後には「物語り」があるんですよ。そこが漂ってくればスタイルになっちゃっていいんですよ。

山:「なんかちゃうなあ!」って自分でも思ってたんかもね。だから何度も描きなおしてて、結局完成しなかった。


●第4章:挑戦者の葛藤


武:そんな感じするする。37歳で描く『豆花』(1931)、とか40歳の『あけぼの・春の宵のうち あけぼの』『あけぼの・春の宵のうち 春の宵』(1934)とか、好きだなあ。

山:僕は画帳に描いたようなんが良かった。花の水彩スケッチみたいなやつ。

武:あれもいいよね。ガツって描いてる。

山:そうそう。

武:「晩年の御舟は「自分の作品に主張がなくなった」、「絵が早くできすぎて困る」などと友人たちに語り、、、」とあるので、晩年に悩むんだね。

山:まだ死ぬ気なかったんやろうけどな。


武:そりゃそうだわな。けど、フツー青年期に悩まないか?

山:え? 武さん今も悩んでるやん。人生にw

武:人生に悩んでるんではなくて、健康とか金とか女性とか具体的に不具合を起こしてるだけで。それは悩みとはいわない。

山:そうなんや。僕は酒と憑依と落とし物について悩んでいる。

武:それは全て気を付ければ解決するので、悩みとはいわない。

山:憑依は気をつける事ができない。

武:憑依じゃねーだろ! 酒で泥酔して記憶失ってるだけだろ!

山:わっはっは。まあええやないの。


武:「主張がなくなった」って悩むんだね。40歳近くになって。

山:あ、僕も僕も。主張がない。そろそろ死ぬんかもな。

武:主張がなくなってむしろ悩みから解放されるんじゃないのか? 主張したくてしたくて悩んじゃうんだからさ。

山:僕に主張はなくても「憑依」が。。

武:だから、憑依じゃなくて酒だっつーの! いや、むしろその憑依が主張なんだよ。憑依こそ山根。

山:いや、憑依は別人格やから。。

武:憑依の時のみ山根。あとは別人。

山:お、それは新しいな。じゃあ僕、誰? 自我の目覚め(笑)。

武:てきとーに繋ぎあわせて取り繕ったなにか(笑)。

山:ひどい(笑)。


武:いやあ、人間そんなもんよ。で、記憶喪失泥酔時のみ本物の「山根」が降りてくる。嗚呼、いい物語だ。

山:おお、そうなると「山根」はなかなかすごいな。

武:普段その本当の「山根」はどこで何してるのか、知りたい所だけどな。

山:やるやないか「山根」。でも僕は「山根」を知らない。。

武:そう。決して思い出せない。ああ、なんか本当に良い物語りだな、酔い物語。つか、御舟ですよ、もういっこ部屋あったよね、第二展示室だっけ?

山:あれが第4章なんとちゃうの?


武:そうそう。第4章の半分というかね。40歳最晩年に描いた『白芙蓉』『黒牡丹』『秋茄子』(1934)の延長線上に何があるのかなあってのがね。ノリノリの30代、緑が面白いなーって思ってたら、色彩が黒と緑になっちゃってさ、どんどん色が消えて行ってく。スーパーリアリズムでもなくなってく。そう、「薄明」になっていくんですよ。時間や場所が「明瞭」にあるような絵を描いてきたんだけど、そうじゃなくなって行く兆し。

山:きっとヨーロッパ旅行で、横山大観と仲良くなって朦朧体を習得したのでしょう。


武:あはは! 案外と正解かも。

山:海外で一緒に居ると何かしら繋がったりするからな。...ところでオチはどうしよう。

武:そうねえ。質問、御舟とはどんな画家ですか?

山:え! いきなりそんなこと聞いてくんの?

武:チャットの最初と変わるかなと思って。

山:そうやなあ、、一生懸命生きた人。あ、生きた画家。

武:一生懸命生きない画家を知りたいわ。

山:え? 結構いる気がするけどw


武:人生自体が劇的な印象はないよね、御舟。電車に轢かれたりしてるけど。

山:まあ技術は抜きん出ていたんでしょう。

武:若いうちから認められるけど、すんごい尊大になった感じもなければ、酷い苦悩でのたうちまわった感じもしない。

山:尊大になる前に死んじゃったか、尊大になれないから死んじゃった。

武:「天才」ではないような気がするんですよね。。。

山:そうやな。秀才肌。すごくまじめ。昔の日本画家ってそういう人多かったのかも。僕もその時代に生まれたら良かったなあ。あ、でも僕は憑依されるからあかんわw

武:ずっとコンスタントにチャレンジし続けられた画家というか。


山:チャレンジとかせーへんしなあ。

武:あはは! 怠け者やなー。

山:酒にチャレンジ! あ、でもそれももうやめるw

武:生きてりゃそれでいいんだよ。きっと。

山:生きてるのが不思議でもあるが。運やし。使い果たしたし。

武:運命に身を任せればいいのかなあ、と。

山:身を任すと憑依されるw

武:本物の山根に会える!

山:そうか! おーい、山根さ〜ん!

新美術館開館記念特別展【速水御舟 -日本画への挑戦- 】
< http://www.yamatane-museum.or.jp/exh_current.html
>
会期:2009年10月1日(木)〜11月29日(日)10:00〜19:00
休館日:月曜日(11/23は開館、翌火曜日は休館)
会場:山種美術館(東京都渋谷区広尾3-12-36)
入館料:一般1,200円、大高生900円、中学生以下無料

【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/尿意が頻繁】
take.junichiro@gmail.com
twitter < http://twitter.com/Take_J
>
Take Junichiro Art works
< http://take-junichiro.tumblr.com/
>
246表現者会議
< http://kaigi246.exblog.jp/
>

【山根康弘(やまね やすひろ)/憑依が頻繁】
yamane@swamp-publication.com
twitter < http://twitter.com/swamp_jp
>
SWAMP-PUBLICATION
< http://swamp-publication.com/
>