ネタを訪ねて三万歩[59]どんなことだって一方通行は不毛ですからね
── 海津ヨシノリ ──

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●芸術祭で盛り上がる

昨年も、多摩美術大学上野毛校の芸術祭で盛り上がった話をネタにしました。今回も同じ季節ネタというわけです。実はこの時期、同じ日に学園祭のある立教大学へ午前中に出没するのが、定番コースの始まりとなっています。そんなわけで、まずは例年のように立教通りを歩き、立教高校が同時開催している学園祭で父兄の方が作ってくれる醤油味のラーメンが美味で、スルーは絶対に出来ず、ここでまずはラーメン一杯。このラーメンの存在を教えてくれた友人に激しく感謝。

もちろんラーメンだけ食べてスルーするのは、あまりにも失礼なので、例年通りに写真部や美術部、地理歴史研究部、書道展などの定番展示を見学し、感想を書いてから本丸の立教大学へ向かいました。ところが、定番のこの流れが今年は唐突に崩れてしまいました。持参したR-D1xGが突然壊れてしまったのです。巻き上げノブが戻らないのです。バッテリーを確認しても問題はないので、完全に機械的な故障。しかも、巻き上がった状態のノブはかなり危ない突起物となるので、これを自宅に戻してから上野毛に向かわなくてはなりません。

そこで、立教大学内での徘徊はスピードアップし、あとはひたすら池袋駅までの600mほどを全力疾走。更に、自宅近くの駅から自宅までの往復1600mほどを全力疾走というハード展開の後に上野毛に到着しました。完全に死ぬかと思いました。



なんでそんな必要があるのかというと、ある学生と校内で待ち合わせをしていたからです。要するに一緒に呑もうと。考えてみると、飲む約束のために全力疾走もなんとなく変な話ですね。学生の携帯番号を控えていなかった私のミスです。

さて、上野毛の芸術祭ですが、美大ということで当然展示関係が多いのはお約束事項。そしてそれを全て鑑賞するのが楽しみなのです。それは、顔見知りの学生の意外な作風に驚いたり、唐突に講評を頼まれたりと、私の方が刺激を沢山もらう空間に早変わりするからです。当然ながら、学生と接点のない学校の展示をどれだけ見てもこの緊張感を味わうことが出来ません。どんなことだって、一方通行は不毛ですからね。

展示の後はお約束の模擬店というわけで、そのまま校庭へ突撃。今年も私の授業を履修していない学生からフルネームで声を掛けられ、模擬店全制覇のキャラバンの始まりというわけです。上野毛は敷地が狭いので、そのアットホームな雰囲気が気に入っています。私にとって、終電過ぎても小一時間(正確には一時間半ぐらいのはず)歩けば帰宅できる距離は問答無用の正義です。

そんなわけで、最後は恒例の酒宴。今年もシメは造形学科の学生との宴席でした。後半は、特に顔見知りの大学院生と意気投合するとともに、かなり熱く話し込み、充実した時間が静かに暮れていった芸術祭となりました。私自身の学生の頃と、オーバーラップしてしまう雰囲気が校内にあることも影響しているようで、この熱い学生達の息吹はそのまま私にも伝染してくるのがわかります。まだまだ論理武装でしか自己主張出来ないオジサンにはならないぞ......と。

論理武装と言えば、先日も、二年ぶりに再開した友人との宴席で、彼がいつの間にかオジサンの話し方に変貌しているのに絶句したことを思い出しました。この二年間に何があったのかはわかりませんが、上から目線の自分がすべてという話し方は、正直に言うと不快感さえ感じるほどでした。しかし、本人は当然気にしておらず、私も注意すべきか否かで随分悩んでしましました。しかし、余計なお世話なのだろうという判断に至り、結局そのことには触れずに別れました。

さて、話を戻すと、楽しい芸術祭での唯一の問題が未解決のまま学園祭も終わりかけていました。その問題とは、校内で会う約束をしていた学生のこと。残念なことに、結果的に最後まで会うことが出来なかったのです。広大な敷地ではないで狐につままれたような気持ちです。後から、その学生も私を捜していたことを知り、余計に複雑怪奇な気分になりました。どうやら、背中合わせでお互いを捜していたようです。これは、やっぱり仕切り直しの飲み会ですね。

ということで、月末に自由が丘で仕切り直しの飲み会を約束しました。実は他にも池袋編、飯田橋編と短期間に三回も飲み会が予定されていて、私としてはかなりのハードスケジュール。問題は、他に控えている怪しいオジサン達との飲み会。お付合いなので仕方ないのですが、マナー(酒癖)悪いのですよね〜。

●マナー違反は中高年ばかり

マナー悪いで思い出したのが、9月の免許証更新。今回からICカードになりました。しかも、ゴルードカードから無事にゴルードカードへ更新できました。ところが、こう言うと、決まって「ペーパードライバーは楽でいいですね」と切りかえされます。少なくとも、この10年ほどはほぼ毎日運転しているのですけど、その方の頭の中では「毎日運転している奴がゴールドのはずがない」というステレオタイプで満ち溢れているのでしょう。何もゴールドカードを自慢しているわけではありません。後述する、スルーの対象者とは「こんな人」というサンプルを提示しただけです。

確かに私の運転は慎重です。なにせ、やたらと後ろからクラクションを鳴らされるくらいですから。そのような、後ろで些細なことにイライラしている人達は決まって中高年ばかり。もっとも、見渡せば歩行タバコや唾吐き、電車内で大声を出しての携帯電話、ほとんど中高年ばかりですね。大人がどうしようもないわけです。私がタバコを吸わないのがわかっているくせに、打ち合わせ場所に喫煙地獄の喫茶店を指定と、開いた口がふさがらない方が本当に多いです。脳味噌が固まっているのでしょう。

そして、その固まってしまった思考回路は、絵や写真、文章などモノを表現することに対して、教科書的な解釈が意味をなさないということを忘れてしまっている方が実に多く、驚きを隠せません。誰だって少しずつ物覚えは悪くなってきます。確実にジワジワと。若いときは1を学んで10を知ることが出来ますが、中高年になれば10を学んでなんとか1を知ることが出来ればまともなぐらいですからね。年を重ねる毎に今まで以上に慎重に考え、行動することが求められているはずだと、どれだけの人が気付いているのでしょう。

いったんマナー違反をしてしまうと、中高年の場合は元に戻らないですからね。で、頑固なおじさん、おばさん達とガチンコ対決してもなんのメリットもないので、私はいつも上手にスルーしてしまいます。つまり「相手にしない」「すぐに謝ってしまう(もちろん本意ではありません)」「次回から会わないようにする」で、ストレスは消滅。もちろん、自分の意に反する人とは付き合わないという意味ではありません。注意してくれる友は大切にしないとね。

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■今月のお気に入りミュージックと映画

20 Songs to 21st Century -BEST OF SADISTIC MIKA BAND-"塀までひとっとび" by サディスティック・ミカ・バンド in 1974
加藤和彦さんの死は私の音楽シーンにおける今年最大の事件でした。加藤和彦といえば、サディスティック・ミカ・バンドですね。もちろん私も『HOT!MENU』『黒船』『ライブ・イン・ロンドン』と、複数枚のLPを所有していました。しかし、LPを絶対に貸し借りしなかったはずが、どうしたわけか一枚も残っていません。

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"Mission:Impossible" in 1966〜1973(USA)
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スパイ大作戦 シーズン1 [DVD]いわゆるTV版の「スパイ大作戦」です。なんと言ってもメンバー構成【リーダー:ジム・フェルプス(ピーター・グレイブス/声:若山弦蔵)、ローラン・ハンド(演:マーティン・ランドー/声:納谷悟朗)、シナモン・カーター(演:バーバラ・ベイン/声:山東昭子)、バーニー・コリアー(演:グレッグ・モリス/声:田中信夫)、ウィリー・アーミテージ(演:ピーター・ルーパス/声:小林修)】と、スーリー展開により第1シーズンと第2シーズンが最高傑作だと感じていました。

ところが、私が思い描いているスパイ大作戦は第2シーズンからであったことを最近知ってびっくり。つまり、私が最高傑作だと信じていたのは第1シーズンと第2シーズンではなく、第2シーズンと第3シーズンだったわけです。

それでは第1シーズンは日本で放映されなかったのかというと、実はしっかり放映されていたようです。それにもかかわらず、記憶にないのはどうしてかと実際に見てみて納得しました。リーダー役の【ダン・ブリックス(スティーヴン・ヒル/声:若山弦蔵)の影が薄いのです。自身が活躍することもなく、完全に傍観者。そのために、なんとなくメンバーとの間に距離を感じるこの雰囲気は頂けません。

どちらにしても、TV版の「スパイ大作戦」は派手な銃撃シーンもほとんどなく、生身の人間がトリッキーなハイテク技術に助けられることもなく、常識的範疇の機械操作と頭脳プレイ、そして話術で任務を遂行する流れを今見直しても、そのスリリングな面白さと、そのバツグンの完成度は圧巻です。

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■アップルストア銀座のセッション 12月14日(月)19時より
Apple Store GinzaにてMade on a Macとして画像処理セッション
『海津ヨシノリの画像処理テクニック講座Vol. 41 
Illustratorを組み合わせることで生まれるPhotoshopのブラシ機能の可能性と応用展開。Illustratorで作成したデータを効果的にPhotoshopで取り込み、ブラシ機能を活用する方法を検証してみます。予約無用・参加無料・退席自由ですので、気軽に参加してください。
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【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター
yoshinori@kaizu.com
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○涙腺ユルユル族

先日、友人の一人が飲み会の席で唐突に『お奨めの泣ける映画ってありますか?」と質問してきました。聞けば、いまだかつて映画を見て泣いた経験がないのだとか。しかも、いわゆる悲しい系映画を見てもダメだったのだとか。そうなると何を薦めてもダメなような気がして、答えに困ってしまいました。涙腺が強い人にとって、私のように涙腺がユルユル人間の感覚は、到底理解できないと思うからです。

ピノキオ プラチナ・エディション (期間限定) [Blu-ray]例えば、私は未だにディズニーの『ピノキオ』で泣いてしまいます。ポイントは、ゼベット爺さんが星に願いをするシーンとラスト。それが原作を大幅にモディファイした、ディズニーの戦略上に成り立っている御伽話だと解っていても泣いてしまいます。

西の魔女が死んだ (新潮文庫)また、梨木香歩の原作を映画化し、シャーリー・マクレーンの娘であるサチ・パーカーが主演した『西の魔女が死んだ』に至っては予告編だけで撃沈寸前。もしかすると、人一倍感情移入が激しいのかもしれません。もっとも、喜怒哀楽全てが激しいわけではないのですが、中途半端な表現をすると、また妙なレッテルを貼られてしまうので、今日はこのへんで終わりにします。