ネタを訪ねて三万歩[80]妙な感覚のこと
── 海津ヨシノリ ──

投稿:  著者:


9月になり、大学で後期の授業が始まりました。後期は東京工芸大学芸術学部にも出講なので、前期よりもリズムを崩さないよう注意が必要です。とにかく、毎度お馴染みのプリント作成と修正を自転車操業する季節、とでも言い換えた方がいいのかもしれません。

ところで、聞くところによると、大学には十年一日のごとく同じ講義を繰り返している教授がいるそうです。しかし、それは一概に悪いとも言えませんね。その科目の内容によってはセーフかもしれません。

ところがIT系あるいはグラフィック系の情報は恐ろしく足が速いので、ほぼ毎年何らかの更新が必要になってきます。定番ツールもアップデート毎に新しいツールが加わり、益々覚えることが多くなってきます。しかし、授業のコマ数がそれに連動して増えることはないので、必然的に苦渋の選択で講義内容を絞り込むことになります。

また、諸般の事情で私自身が必然性を感じないのでそれほど使っていないソフトウェアも、必要最低限の操作方法を覚えなくてはならない等、これでも色々と大変なわけです。学生はもっと大変でしょうね。

でも、頑張って覚えても仕事で使わないと直ぐに忘れてしまいます。最近5年ぶりぐらいでZBrushを使い始めたのですが、もう完全に操作方法を忘れていてニガ笑い。5年前まではWindows環境で、今回からはMac OSX環境とは言え、きれいサッパリ忘れているのです。人間って本当に忘れる生き物ですね。もっとも、これは私だけの問題かもしれません。

とにかく新しく購入したものや、実務では使うことのないソフトウェアを覚えなくてはならないのは本当に大変ですね。そんな時は、簡単な小冊子的な解説書を作るつもりでプリントを作成するようにしています。

こうすることにより、仕事で使っているような錯覚に自分を追い詰めるわけです。こういった自分を追い詰める作戦は効果的ですね。そして、仕事は面白くないと続きません。でもその前に仕事が好きでないと長続きしません。



面白い(多分)と言えば、夏休みに予定していた案件がまったく手付かずに終わってしまったこと。まっ、世の中はそんなもんですね。もちろん、仕事というわけではなくて、自分自身の勉強なのです。

数年前であれば、夏休みなどあり得なかったのですが、大学に関わるようになると夏休みはその分がお休み状態なので、時間が空くと糠喜びしていたわけです。しかし、世の中そんなに甘くないわけで、予定外の仕事が「大学休みだから時間空いているでしょ」とでも言っているように入ってきてしまいました。

そうなると、当然ながら仕事優先ですから、気が付いたら9月に入っていたという感じです。しかも、今年は震災の関係でカリキュラムにズレが発生していて夏休みが短いため、例年以上に混乱を生んでしまいました。もちろん仕事は問題なくクリアしましたが、「あっ」という間に夏休みは終わり、気が付けば元の生活に戻っていたというわけです。もっとも、適度に忙しくないと逆に落ち着かなくなってしまう性格なので、こんな感じがいいのかもしれませんね。

そんな9月が早くも下旬に入ったわけですが、今年の9月はちょっと懐かしく温かい気持ちにさせられた月でした。何かに導かれるように、教え子や古い友人からの連絡が集中したのです。もちろん彼らに共通項はありません。まったく異なる場所で知り合った、年齢も性別も異なる教え子や友人達です。

今年で定年というわけでもありませんし、何かやらかしたわけでもないごく普通の年なので、余計に妙な感覚を覚えました。思えばこの妙な感覚というのは、子供の頃から不定期に感じていました。

大きな出来事として、小学生の頃自転車で公園に向かっていた時にオートバイと側面衝突したことがありました。私はその瞬間に死んだと思うほどの恐怖を感じたのですが、とにかく衝突によりペダルは潰れて自転車そのものはへこんでしまいました。

しかし、問題の私はその自転車の位置から数メートル離れたところに、無傷で立っていたのです。小学生の頃の記憶であり、正確さに欠けることは承知の上ですが、自転車が壊れてしまったのは紛れもない事実です。にもかかわらず私は無傷であったことが、今思い出しても不思議で仕方がありません。

大袈裟なことではなくても感じることがあります。例えば、仕事中は常にメール受信体勢としています。といっても、着信音がしたら直ぐにチェックするというわけではありません。仕事の方に集中していますので。ところが、何か自分でも分からない不思議な瞬間があるのです。

着信音と同時に、唐突にメールの送信者が頭に浮かぶのです。それは現在仕事で関わっている担当者などではなく、しばらくぶりの友人からのメールに限られます。「あっ、今誰それからメールが来た」と感じた次の瞬間、実際に届いたメールでその事実を知るのです。

この不思議な感覚がどうしてなのか、そしていつ頃からなのか分からないのです。実はこのような不思議な体験が時々訪れます。もちろん年がら年中というわけではありません。

また、2ヶ月に一度ぐらいのサイクルで、何か良くわからないモノの存在を感じることがあります。うまく説明できません。自宅や外出先など、場所や時間も色々です。取り立てて神経質というわけでもないのですが、とにかく妙にある一点が気になってしまうことがあります。もちろん気になる位置に向かっても何も見えません。でも何かを強く感じるのです。

学生の頃、霊感の強い先生に「鍛えれば色々見えるようになる」とアドバイスを受けたことがあります。私はこの手の現象について肯定も否定もしません。しかし、妙なモノは見たくないので直ぐに拒否して今に至っています。

実は大学でその時の恩師と今は一緒です。言われてみれば、確かにかつて親族に霊感の強い者が数名いたのは事実です。しかし、その親族の存命中に私はまだ生を受けていませんでした。だから私にはピンと来ないのですが、少なくともその血は少なからず受け付いているのかもしれません。

でも普通は年齢と共に鈍ってくるはずの力。だとすると、今からでも遅くないからちょっとだけ鍛えてみようかなどとは、まったく思いもしません。やっぱり怖いモノは見たくないですからね。そうはいっても日々色々と怖いモノを見てしまっているので、今更感はありますが......。

----------------------------------------------------------------------
■今月のお気に入りミュージックと映画

[Still...You Turn Me On]by Emerson, Lake & Palmer in 1973(England)

「Brain Salad Surgery(邦題『恐怖の頭脳改革』)」に納められているグレッグ・レイクのソロ楽曲。その圧倒的なボーカルは一度聞いたら病みつきになります。1973年当時に聞いたときに大きなショックを受けました。とにかく、プログレッシブ・ロックに傾倒していた私にとって、キング・クリムゾン、イエス、ピンク・フロイド、キャメルと並んで今でも外せないグループです。

ちなみにB面最終楽曲である「Karn Evil 9: 3rd Impression(邦題『悪の教典#9-第三印象』)」が、1974年にTV放映された日本の某有名宇宙戦闘系アニメに使われている曲と恐ろしいほど似ています。2010年に実写版が公開されていますが、見ていないのでこの中で使われていたかは不明。

作曲者は有名な方でしたが既に他界しています。どうして疑惑を持ったかというと、氏のコンサートにてELPの「Pictures At An Exhibition(邦題『展覧会の絵』)」に納められている「Nut Rocker(邦題『くるみ割り人形』)」を息子(現在は作曲家)にピアノ演奏させていたからです。もう完全にELPのアレンジそのものでした。

当時は圧倒的なファンの支持に支えられていても、メディアではELPなどのプログレッシブロックアーティストは一切取り上げられていませんでしたので、TVしか見ていない人達には気が付かないネタというわけです。

もちろん実際にパクったのか否かについては分かりませんが、当時も今も限りなく黒に近い暗黒にしか感じませんでした。似ているレベルではなくて「そのまんま」だからです。とにかく、問題のアニメを知っている人にとってはビックリする楽曲だと思います。ちなみに1983年公開の「幻魔大戦」では音楽をキース・エマーソンが正式に担当しています。

[Sucker Punch]by Zack Snyder in 2011(アメリカ)

邦題『エンジェル ウォーズ』というのが損をしている感じがします。邦訳が難しい単語なので、そのまま『サッカーパンチ』でよかったのに。ちなみに、当初は日本での公開は予定されていませんでしたが、突然公開になったのでビックリしました。で、作品の完成度は賛否両論分かれていますね。

しかし、メインキャストがハードなアクショントレーニングを積んでいるので、アクションシーンはメチャクチャ圧巻です。世界観と戦闘シーンは切れの良いダンスを見ているような心地よさ。美少女、戦争、ドラゴン、侍、ロボット、アーマースーツと美味しいネタがてんこ盛りというわけです。

個人的には主役(?)でベイビードール役のエミリー・ブラウニングより、スイートピー役のアビー・コーニッシュと、ロケット役のジェナ・マローンのファンになってしまいました。

----------------------------------------------------------------------
■アップルストア銀座でのセッション

10月17日(月)19:00〜20:00 Apple Store Ginza
Hands on a Macとしての画像処理セッション
『海津ヨシノリの画像処理テクニック講座Vol. 61』としてAdobe Photoshop CS5の3D機能とその可能性。Adobe Photoshop CS5の3D機能の解説と実用性について整理するとともに、語られることが少ないPhotoshopの3D機能を正しく理解し、その延長上にある可能性を検証してみます。
予約無用・参加無料・退席自由です。

【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/怪しいお菓子研究家
yoshinori@kaizu.com
< http://www.kaizu.com
>
< http://kaizu-blog.blogspot.com
>
< http://web.me.com/kaizu
>

原稿執筆の関係で、新製品のEPSON A3ノビインクジェット複合機PX-1600Fを出版社からお借りしました。A3ノビ対応/ネットワーク標準搭載/一段フロントカセット(最大250枚)/大容量ブラックインク採用と、数年前なら考えられなかった仕様。とにかくA3スキャナーは圧巻です。

現在Amazonで4万円台で販売されており、この値段でA3スキャナーだけで考えても問答無用の正義ですね。大きなスキャナーは使用頻度が少ないように感じますが、結構あるのではないでしょうか。実は頻度はそれほどでもないのですが、なくて困っていたのがA3コピー。コピー機はあるもののB4が最大だからです。A3対応の複写機は4万円台では買えませんからね。

我が家には現在7台のプリンタ(3台の複合機を含む)があるのですが、物欲がメラメラと沸いてきてしまいました。