ネタを訪ねて三万歩[82]わたしのエネルギー源
── 海津ヨシノリ ──

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今年はコレをマスターしようと密かに予定していたプロジェクトが、一向に進まず少しイライラ状態です。予定通りに事が運ばないのは世の常ですが、そう理解していてもイライラは隠せません。でも、その原因にもなっている学生達とのやりとりが、実は本当に楽しくて癖になっています。

11月5日(土)と6日(日)は多摩美術大学造形表現学部の芸祭期間で、今年も6日はほぼ一日中遊びまくりました。まずは展示をまんべんなく鑑賞という例年のルールを今年はいきなり破り、最初に走って向かったのはライブステージ。

夕方から行われるプロの演奏にはまったく興味はなく、学生バンドが登場する11時半から13時までのコアな時間帯に、今年はなんとライブショーが行われたのです。

映像演劇学科の1年生が企画し演じた【チーム多マビンジャー】。全員が立ち見席の特設ステージで、ショーに集中していた観客は大盛り上がり。こんなに面白いライブを見たのは久しぶりです。関係者の多くが私の授業を履修していた故に顔見知りということで、事前に情報を掴んでいたお陰です。

ショーの後はいつものように、展示巡りでグッズ類を買い漁るわけです。事前に展示の相談を受けていた学生もいるので楽しみは倍増します。ただし、展示室に誰もいない場合は、購入したくても出来ずに退散。実はこれが一番残念な結果なんですよね。一人で座りっぱなしは当然無理なので、誰か臨時で代理対応をしてくれれば良かったのにと思っても後の祭りです。

とにかくグッズ購入と展示を楽しんだ後は、校庭で先ほど盛り上がった【チーム多マビンジャー】のメンバーと昼食で再度盛り上がり、そのままの勢いで校庭に出現している模擬店のはしごで、時間はあっという間に過ぎてしまいました。その間に卒業生が引っ切りなしに訪れ、久しぶりの再会で盛り上がったのはいつものお約束。とにかく、在校生とも普段の授業での関係とは違う空気の中での雑談は、時間の経つのを忘れさせてくれます。



ただし、楽しいことばかりではありません。芸祭で展示や模擬店を出すためには厳しい規定をクリアしなくてはなりません。詳しい規定内容は誤解を招く恐れがあるので伏せますが、この規定があるために企画を断念する学生が多いのも事実です。

しかし、規定や制約こそチャンスではないでしょうか。なんでも自由でやり放題では面白くありません。クリエイターとして、制約をクリアするアイデアを出して欲しいと切望しています。とにかく、毎年クリアしてくる強者がいるので、下級生は見習って欲しいモノです。そして、それこそが短い学生生活の中でもっとも重要な事のひとつだといつも感じています。

馬鹿騒ぎも芸のうち。騒げるときに騒いでおかないと後で激しく後悔してしまいます。とにかく4年間はあっという間です。1年生の時の初々しさが抜けたと思ったらもう卒業。そんなスピードで駆け抜ける学生生活はもっと楽しまなくっちゃね。

でも、そんな4年間が過ぎてしまっても、時々こんな具合に卒業生と会う事で、なんだかまだ学内にいるような錯覚さえ受けます。特に造形学科の学生は3年生からアトリエに籠もっている時間が長いので時々遊びに行くのですが、本当にその延長のような感じが抜けません。何年度の卒業なのかさえどうでも良くなるこの空間は、本当に楽しくて仕方がありません。

そんなこんなの芸祭で今年はちょっとしたサプライズがありました。実は、昨年は非売品であった私のキューピー人形が、今回の芸祭では公式に販売されたのです。ただし、初日に完売してしまったそうで、私自身が原物を拝むことは出来ませんでした。ところが、恥ずかしいというか嬉しいというか、再販リクエストが多かったようで、別途新作をリリースすることが決定したと連絡を受けました。

2010年度版の私の人形(写真向かって左側)
< http://kaizu-blog.blogspot.com/2010/11/blog-post_7722.html
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また、どうやら初日に購入したのは造形学科の学生で、アトリエの守り神にしているのだとか。どう考えても私は貧乏神ですけど、大丈夫かな。とにかく顔見知り学生は限られています。しかし、その顔見知りの学生の展示や模擬店に入ることで、新しい学生との関係が生まれることがとても楽しくワクワクしてしまいます。

いや、新しい刺激と言い換えるべきかも知れません。私は刺激をもらいに大学へ出講しているからです。結果として、多くの学生が私のモチベーションを上げ、そして様々なスイッチをオンにしてくれるのです。私にとって多摩美術大学造形表現学部は、究極のパラレルワールドかもしれません。

実は、来年の芸祭で一緒に何かしようというオファーが、既に複数の学生グループから入っています。間接的な協力は今までもありましたが、本格的な協力というか、じっさいに関係するのは初めてです。もう破れかぶれで一気に突っ走ってしまおうかと、今から少々ワクワクしています。

いい歳して馬鹿なことしてみたいですね〜。いや出来るうちにしておかないとね。声が掛かるうちが華ですから。学生の尻を叩いておいて、私の腰が重いのでは洒落になりません。難しい顔してウンチク垂れているより、こちらの方が遙かに面白いに決まっています。

まっ、とにかく芸祭後には飲み会とお茶会の誘いが毎年沢山入ってきて、ちょっと疲れ気味のまま年末まで突進という感じです。もしかすると、これが私のエネルギー源なのかも知れません。これからも、若いエネルギーを沢山貰って走り続けたいと思っています。

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■今月のお気に入りミュージックと映画

[Clap]by Steve Howe in 1970(UK)

その後のイエス・サウンドに多大な影響を及ぼすことになる、ギタリストであるスティーヴ・ハウが加わった最初のアルバムが、イエスとしては3枚目ということで、通称イエス・サード・アルバムと呼ばれている「The Yes Album」の2曲目に収められているライブ録音。
カントリー・ピッキングの技巧が冴えるギターソロで、もう完全に神の領域。この曲を聞いただけで、このアルバムを速攻でゲットしたことを思い出しました。しかし、未だに現役で活躍しているイエスや当時のアーティストを見ると、ある意味70年代というのは神が沢山降臨した時代だったのかもしれませんね。

[Monsters Versus Aliens]by Conrad Vernon & Rob Letterman in 2009
(U.S.A)

邦題は「モンスターVSエイリアンズ」で、ドリームワークスのちょっとブラックなCGアニメ作品。このぶっ飛んだ世界観は大好きです。日本語版の声優さんも色々と評判がいいようですが、やはり言語の字幕スーパーで見ないと私は気分が乗りません。ハザウェイ大統領の脳天気さとボブの怪しいボケぶりが続編を期待させるのですが、この話の続編って可能でしたっけ? というネタバレ話は御法度ですね。

ところで、ピクサーと比べられるドリームワークスの3Dアニメは好き嫌いが分かれてしまいます。例えば「シュレック」と「マダガスカル」が私は好きではありません。しかし「ヒックとドラゴン」は好きです。ある意味、癖のある作品が多いということですね。

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■アップルストア銀座でのセッション

12月19日(月)19:00〜20:00 Apple Store Ginza
Made on a Macとして画像処理セッション
『海津ヨシノリの画像処理テクニック講座Vol. 63』
Adobe Photoshop CS5によるデジタルメイクアップ/後編【メイク処理編】
人物写真のメイクアップ処理の基本操作とコツを整理します。「控え目」な処理の重要性の認識と「ふんいき」の演出についての処理手順をごらんください。
予約無用・参加無料・退席自由です。

【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/
怪しいお菓子研究家
yoshinori@kaizu.com
< http://www.kaizu.com
>
< http://kaizu-blog.blogspot.com
>
< http://web.me.com/kaizu
>

Adobeは「今後は直近1バージョンまでしかアップデート対象とせず」と宣言しましたね。また、同時に「Creative Cloud」を発表し、クリエイティブ製品をすべて利用できるサブスクリプション制サービスを、年間契約で月額5,000円(税別)で提供するとか。

アップデートを強制されているようなこの流れは正直「?」ですが、教育機関などはどうするのでしょうね。火を見るよりも明らかであった、モバイル版Flash開発の撤退の影響なのか、突然の750名リストラなど......Adobe大丈夫なんですかね。

とにかく、ユーザーを混乱させる規定変更や路線変更は歓迎できません。かつて高慢な対応で天下を追われたソフトがありましたが、多くの友人達がそのときの事が今のAdobeに重なっていると警告を発しているのが印象的です。