ネタを訪ねて三万歩[90]眠っていた何かのスイッチがオン
── 海津ヨシノリ ──

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普段出向くことのない町に用が発生した場合、可能な限り早めに出掛けて近隣を散策し、スナップ写真を撮りまくるようにしています。新しい刺激の収集という感じですね。

最近は特定の会社へ一定期間出向するような案件が増えてきており、そんな場合は事前に色々な出掛け方や帰宅方法を検討し、目に入るモノを片っ端から撮影しています。ただし、撮影しても実際にBlogやfacebookにアップするのはおおよそ全体の1%程度。面白いけれどもイマイチという場合は、再撮影または思い切って没にしてしまいます。

ちなみに撮影はコンパクトカメラやマイクロフォーサーズのミラーレス一眼、あるいはレンジファインダーカメラに完全依存しています。スナップ写真を一眼レフでやると、威圧感が強すぎて誤解を招きかねないからです。些細な誤解が大きな失態にすり替わってしまうのは怖いです。

さりとて、iPhoneでというのもまだ私には抵抗があります。お気軽すぎる感覚に対する抵抗です。そんなわけで常時持ち歩く荷物が増えてしまったので、大きなバッグに切り替えるようになりました。もちろん、飲み会や各種パーティーなどでもカメラは大活躍。

ただし、顔を撮影する場合は「ネットにアップしても良いか?」の確認を取るのが今のマナーですからね。教員からのパワハラと誤解されるようなことは御法度です。そして、顔出しが駄目な場合は手の集合写真など、臨機応変にその場の雰囲気を撮影するようにしています。




問題は日ごとに増える交友関係から、イベントや飲み会の招待が激増してしまったこと。もちろんすべてに参加する事は不可能です。ちょっと贅沢な悩みだと感じています。でも、スケジュール調整を工夫するのもまた楽しいひとときです。

楽しいひとときと言えば、今年も多摩美術大学造形表現学部デザイン学科の卒業制作基礎審査会が先月行われました。私が関わっているデジタルコミュニケーションコースでは、担当教員が合議の上で数名の学生を担当することになっており、今年は4名の担当となりました。

しかも、そのうちの2名からは事前に逆指名を受けており、残りの2名も勝手知ったる学生だったので、最初の緊張がほとんどない雰囲気でスタートすることが出来ました。

あとはこの4名を集中してサポートするだけです。もっとも、既に5月の段階から一部の学生とはfacebook上で公開対応していますので、気が付いている方も多いでしょう。もちろん、担当外の学生からの相談も色々在ります。

で、慣例として担当学生が決定したら、取り敢えず顔見せを行うのですが、今年は初めから和気藹々でしたので、思い切って校庭でピクニックすることにしました。各自がお菓子を持ち寄って校庭で相談というわけです。

実は、私はこの学生達が入学したときから一部の学生と不定期に校庭ピクニックをしていたので気になりませんでしたが、参加した学生はこんな体験をしたのが初めてであったのでかなり楽しんでくれました。彼女たちにとって、近場にこんなにくつろげる場所があったことへの驚きの方が強かったかも知れません。ちなみに、彼女たちと明記しましたが4名の担当学生のうち、1名はイケメン男子生徒です。

分かってしまえば当たり前なのですが、刺激や発見は遠くに出掛けなくても、近くで沢山得ることが出来るのです。それは誰もが実は近場を意外と分っていないからなのです。思い込みなどがそれに拍車を掛けていますね。

大切なのは、違う視線に立つ好奇心です。同じ視線は感覚を退化させます。同じ町を徘徊するにしても、視線の位置を少しかえるだけで見え方が激変します。見え方が違ってくると、こちらの反応も違ってきます。こうして眠っていた何かのスイッチがオンになります。

あとはそれの繰り返しと、そこから生まれる連鎖反応ですね。今それがとても楽しい状況です。次から次へと入学してくる学生達の、新鮮で斬新な発想と行動はおじさんを激しく刺激してくれます。

もちろん学生とだけ付き合っているわけではありませんし、若いから刺激的というわけでもありませんが、出来上がってしまった大人の多くは防御姿勢なので刺激を得ることは難しいですね。

ところが、中にはそうでもない人もいて、それがとても嬉しいのです。例えば、ほぼ20年来の友人の一人と、ここ数年は毎年あるプロジェクトで一緒になることがあります。そして、会うと不思議と刺激を貰いこちらのスイッチも入りっぱなしになります。何故かウマが合う感じ。こういった交友関係は大切にしたいものです。いつまでも良い関係で、ゆっくりと年を重ねていきたいと感じています。

でも。誤解を持って欲しくないのですが、若い人達からの刺激を受けるだけというわけではありません。刺激を受けることで「忘れていた」あるいは「眠っていた」技やアドバイスのスイッチが入り、結果として若い人達へのアドバイスというプレゼントが産まれるわけです。そのためには、若い人達にしがみついてフットワークを良くしていないとダメかもしれませんね。

ダメと言えば、最近facebookでかなり不快になっています。facebookの細かいルールを読んでいるわけではないので、的外れなのかも知れないことをはじめに断っておきます。

それは、プロやアマに関係なくネットで自身の作品を発表している人の作品を「新しい写真をアップ」で自分の作品のように利用している人がいること。かなり唖然としています。有名人でもそんな人を発見してしまいました。自分が撮影した写真か否かぐらいは明記すべきだと思うのです。ましてや、自身でも作品を作る立場の人がやっているのをみると凄い違和感を覚えてしまいます。

これは、フリー素材を生のままアップしている行為でも同じだと思います。モノを造りだす立場の側が、これをやっちゃ恥ずかしいという意味です。

もちろん、これはリンクやシェアの話ではありません。リンクやシェアは出典を明記しているわけですから、問題ないのは当たり前。ダマテンで自分の作品のように使っている人の話です。有名人だとそれに3桁の「いいね!」が付いたりして仰天してしまいます。

そんな中、私が8年ほど前に著書の中で紹介したアイデアに酷似したネタをアップした方を発見しました。どこの誰だか分かりませんが、気分は最悪ですね。もっとも、こういった場合、誰が観ても100%同じでないと勝負は負けですからね。当然観なかったことにしました。

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■今月のお気に入りミュージックと映画

[Dance Tonight]by Paul McCartney in 2007(U.K.)
「アップル」という会社を作ったポールが、65歳(現在70歳)になり時、違う「アップル」のCMに出演したときの曲。このCMのポールが凄く良いのですが日本では放映されていなかったと記憶しています。

歌いながらマンドリンを弾いて、ただ歩いているだけななのに、足取りも軽くて、映像もすごく良くて、うっとり。「ダンス・トゥナイト」のビデオクリップに使って欲しかったほど良い映像でした。実は今月は私にとってポール月間なのです。前妻リンダが撮影した写真集"Life in Photographs"を買ってしまったからです。

[The Beatles The Beatles Live]by Beatles

いわゆるビートルズのライブ映像集。そして正規に購入していますが、完全な海賊版です。本家は速やかに正式版をリリースしなければいけませんね。ではどうして購入したのかというと、1964ワシントンDC、1965NYCシェイスタジアム、1965パリ、1966武道館という内容だったからです。

特に武道館ライブ映像が入っているので思わず購入してしまいました。武道館ではなんと11曲も歌っていたんですね。私はビデオ映像も含めて武道館ライブ映像を一切見たことがなかったのでニヤニヤ状態。ただし映像はとんでもなく汚く、Youtubeの最低画像より汚い映像に笑うしかありませんでした。

【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/怪しいお菓子研究家

yoshinori@kaizu.com
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先月末を以てAppleのMobileMeが10年の歴史に幕を閉じた。私もiWebで作成したページを持っていましたが、道連れとして自然消滅させました。どんなに便利な機能であっても次々と新しい技術やデザインが入り込むコンピュータ関連の世界で、10年持ちこたえたというのは奇跡に近いかも知れません。

それでもたかだか10年です。でも10年って長いですよね。だいたい10年も会っていなければ誰だか忘れてしまいます。それも昔のパソコン通信時代のハンドル名しか分らない人はある意味致命的ですね。本当に「この人誰?」以上には進展しませんので。