ネタを訪ねて三万歩[95]超ミニサイズ本を出版
── 海津ヨシノリ ──

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EPUBなどの電子出版旋風は、まるで突然やってきた黒船であるかのように印刷業界に衝撃を与えています。しかし、それはテレビがダメになったのと同じで、良質のコンテンツを提供できない作り手側の問題も孕んでいるのではないでしょうか。作り手の勘違いは、昨今の日本のメーカーの多くに見え隠れしていていてかなり痛い問題ですね。

例えば、よく聞く話として「デジタルカメラの写真は空気感を映し出せないが、フィルムカメラはそれが出来る」という、なんの説得力も科学的な裏付けもない話は、裏を返せば「要するにあなたはデジタル機器が使えないのでしょ」ということだったりするわけです。

印刷業界であれば、本の温もりだとか、シズル感のような話も同様ですね。重要なのはコンテンツ。印刷したい本でなければ駄目な表現、素材、そして内容をまず語るべきだと感じています。

そんな中で、ちょっと面白いモノを作ってしまいました。自画自賛になりかかっていますが、通常ではあり得ないミニサイズの著書です。なんと横50mm×縦75mmという名刺以下のサイズしかありません。それでも16ページのフルカラー印刷本です。




ただし、データ作成時の画像解像度は225lpi/450ppiなので小さくてもとても綺麗です。しかも、作成した本はminibookサイトでの販売が可能なのです。もちろん内容によっては拒否されるかも知れませんが、それは公序良俗違反のものだけでしょう。さて、価格設定は税込みで210円と315円。私は迷わず210円を設定しました。売れることを願うよりもこの手作りショップ的な流れが楽しいからです。

ミニブックしろくま
< http://www.minibook.co.jp/
>

新刊はなんと超ミニ本です
< http://kaizu-blog.blogspot.jp/search/label/AuthoredWorks
>

これは面白いと、まず最初に思い描いたのは写真集でした。通常、自分の写真集を作るとなるとかなりハードルが高いので実質無理な世界でしたが、このミニ本で思いが叶ってしまいました。

「TOKYO SCENERY」は、facebookなどにアップした写真を中心に再トリミングするという独自のルールで整理した写真集です。撮影時には当然トリミングして撮影するわけですが、facebookなどでの公開時に微調整トリミングをしています。そして、今回は更に思い切ってトリミングを行ったというわけです。

ちなみに、私の撮影スタイルは100%横位置撮影です。縦長に撮影することは原則ありえません。それを強引に縦長にトリミングするという、厳しいレイアウト処理をクリアさせた作品ということになります。ちょっと大袈裟ですが、ささやかな拘りというわけです。

ところで、携帯電話やiPhoneを使った撮影した作品は一切使っていません。これもささやかな突っ張りです。要するにカメラに対するリスペクトなのです。

ですから、大半はミラーレスのマイクロフォーサーズシステムで撮影しています。小さくて交換レンズが揃っていること。更に古いマニュアルレンズが使えることが決め手になりました。

実は、速攻性を優先させるために、広角レンズ付きと中望遠レンズ付きの二台持ちしているのです。こんな芸当はミラーレス一眼でしかできません。もちろん毎日というわけではありませんが、この武装がかなりの頻度なのは確かです。また、マイクロフォーサーズカメラボディーは、白、黒、赤と三台所有しており、気分転換を兼ねて色々組み合わせています。

そして、四台目はコンパクトカメラです。大半がスナップ撮影なので困ることはあまりないのですが、場所によっては誤解を受けかねないので意識的にコンパクトカメラに切り替えて撮影することがあります。更にもう一台、予備をカバンに忍ばせています。それもコンパクトカメラなのですが、撮影場所の情報をメモするようなスタイルで活躍しています。

もちろん、五台を常時持ち歩いているわけではありません。常時携帯しているのはコンパクトカメラの二台で、予め何か面白そうな撮影が可能だと思われる場所に出掛ける場合は、ミラーレスを一台または二台という感じです。どちらにしても、この時の当たり外れも撮影に大きく影響してくるので、案外真剣に吟味していたりします。

とにかく、撮影に関しては納得がいくまで、同じ場所に何度も訪れていたりします。当然、その場所に向かう用事があるときに限定するようにルール決めをしています。そうしないと仕事に影響が出てしまうからです。

もちろん一発でいい感じのシーンを撮影できることもありますが、何度か訪れないと角度やアングル、そしてレンズが決まらないことがあります。しかし、それもまた楽しいわけです。なにより、予想外の被写体に遭遇することが出来るからです。

ちなみに、私は滅多に人物を画面に入れることはありません。入れてしまうと人物に意識が移ってしまうからです。無人の空間もまた町並みの一部であり、そのシーンから画面に映り込んでいない人々の生活を想像して欲しいという思いがあります。

なお、誤解が出てしまうとまずいので自己フォローしますが、人物写真が嫌いなのではなく、町並みがテーマなので極力入れないという意味です。人物写真は別途要請により撮っていますが、こちらは公開できないのが少し残念というわけです。

ということで、「TOKYO SCENERY」は一気にVol.2まで、作成しました。このシリーズは今後も定期的に発行する予定です。

加えて、2005年ぐらいから続けているToyWarsの世界をすこしだけ整理した「2.5D 緩やか3Dイラストレーション」も出しました。本当は世界観なり、ストーリーを決めてから作り込まなくてはならないのですが、特に限定せずにダラダラと作り続けてきたものを整理した感じです。

実はこのToyWarsをダラダラ連載していたことで、今年の多摩美術大学造形表現学部デザイン学科の卒業制作で、女生徒から逆指名を受けてしまいました。デザイン学科の私が関わっているデジタルコミュニケーションコースでは、学生数名を教員が担当することになっているのですが、3年目にして逆指名は初めてでビックリしてしまいました。キャラクターを作りたいという強い思いからだったそうです。

彼女は幼児のイラストや工作から、その子へオリジナルイメージの縫いぐるみを作るという壮大なプロジェクトを成功させてくれました。

Junko All Stars 思い出を形に
< http://www.j-allstars.com/
>

そう考えると、特に限定しなかったことが良い出会いと結果に繋がったわけで、ちょっと不思議で複雑な感じではありますが、それもまた吉(よし)ですね。

更に、ライフワーク的にのめり込んでいる手作りおかし本として「手作り おかし "KAIZU STYLE SWEET"」も発行してしまいました。

最近は学生からの要望によるお茶会や、展示会の陣中見舞いとしての差し入れなどでオーダーが多くて嬉しい悲鳴を上げていますが、お陰で少し腕が上がりました。もちろん、オーダーといっても販売しているわけではありません。ちなみに、facebookでプロの方からの裏技的なアドバイスを頂けるようになったこともスキルアップに繋がっています。

他にも色々とアイデアはあるのですが、取り敢えず少しずつ形にしていきたいと思います。とにかく、特定の人だけの世界ではなく、誰でも参加出来るというのが一番気持ちいいですね。

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■今月のお気に入りミュージックと映画

[ママがサンタにキッスした]by ジューシー・フルーツ in 1981

12月はクリスマスソングということで、今年はこれ。オリジナルは、1952年6月15日にジミー・ボイドが13歳で録音したそうです。日本でも様々な人がカバーしていますが、私は正直これ以外はハズレだと思っています。アップテンポで歌うイリア(奥野敦子)さんのボーカルは明るくキュートで気持ちの良い流れです。

[メン・イン・ブラック3]by Barry Sonnenfeld in 2012(U.S.A)

トミー・リー・ジョーンズファンの私としては絶対に外せない作品ですが、これほどの完成度と内容だったとは、良い意味で完全に裏切られました。エンターテイメントとしても一級ですね。こんな映画が日本から出てこないことがちょっと残念ですが、肩書きだけでしか人を判断しないオジサンやオバサンが生き残っている以上はどうしようもないですね。

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次回のアップルストア銀座でのセッションは、Apple側の都合により2月の開催となりました。

【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/怪しいお菓子研究家

yoshinori@kaizu.com
< http://www.kaizu.com
>
< http://kaizu-blog.blogspot.com
>

私は現在レーザープリンタを一台、インクジェットプリンタを5台を所有しているのですが、そのうち一台は老朽化していてシアンが出なくなってしまったために、どうでもいいプリント専用機とし、カートリッジが消耗したら廃棄するつもりでした。

ところが、前日まで元気に駆動していた一台で黒が全く出なくなってしまいました。多分ノズルが詰まって壊れたのでしょう。腹が立つのはカートリッジの替えを購入したばかりの出来事だったこと。

更に別のプリンタもかすれが止まらなくなってしまいました。そして、なんとこちらもトナーを交換したばかりのレーザープリンタがまったく印刷出来なくなってしまいました。トラブルは連鎖すると言いますが、いくらなんでも酷すぎます。