ネタを訪ねて三万歩[99]リアルとバーチャル、それぞれの人間関係
── 海津ヨシノリ ──

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いよいよ新学期が始まりました。4月はいつも気持をリセットして、新しい学生達と積極的に関わろうと努めています。そんな今年は初めての体験として、多摩美術大学造形表現学部の新歓(新入生歓)に参加してきました。最初の授業の後でしたので、新入生達も緊張はほぐれていたと感じました。

実は毎年オリエンテーションで、少しばかりのイタズラをしています。まず、入学式の後に昼食時間を挟んだ午後一番に、共通教育科目(全カリ)のオリエンテーションがあります。

ここで私はメガネを掛けっぱなしで「この科目は更に突っ込んだ内容の授業をデザイン学科にいる私の双子の弟が担当しますので......」と説明しておいてから、その後に別室で行われるデザイン学科のオリエンテーションでは、メガネを外して「共通教育にいる兄から説明があったと思いますが......」とやるわけです。

これが少々癖になっています。このくらい悪ふざけ......じゃなくてオチャメしてもいいですよね〜。というわけです。

もっとも共通教育は面白い教授が数人いて、色々ユニークなネタを披露してくれるので、私のネタなどカワイイほうです。ですから、ついつい調子に乗ってしまうわけです。




ちなみに、このイタズラを例年の学生の3割ぐらいは信じてしまうのです。もちろん、数日後には気が付いてくれますが、中にはかなり長い間信じ切ってしまう学生もいて少し反省......。

そんなわけで新学期がスタートしましたが、始まるとこれが恐ろしく速いわけです。色々とやることも出て来ますし、それとは別に在校生の色々なグループとの懇親会や、卒業生との恐ろしく早い同窓会と、案外と忙しなく4月は過ぎてしまいます。これも昔のように卒業と同時に一期一会に変わってしまったりしたのと異なり、ネットワークで繋がっていればこその嬉しさですね。

実は4月の頭に、代々木公園で多摩美の卒業生達とタイミング遅れのお花見をしたのですが、その場に別の学校の教え子が突然現れてビツクリ。広い公園内で偶然に会うなんて恐ろしい確率です。

しかし、そこは若い人達。直ぐにお互いが打ち解けて色々と盛り上がってしまいました。こんな風に、違う学校の教え子どうしのコネクションが最近増えてきています。教え子という括りに学校は関係ないですからね。お互いのネットワークを更につなぎ合わせて、素敵な関係が末永く続くことを祈りたいです。

さて、若い世代に限らず、既にネットワークの存在は生活の中に大きな比重を占めています。新聞はもはや存在意味を成さず、遂に学生の時から購読していた新聞を止めてしまいました。

そして、陳腐な番組を垂れ流しているだけのTVを見る意味はないですね。時間の無駄です。ただし、面白いCMは気になります。ですからそれらはYoutubeで確認するようにしています。なんだかTVにワクワクしていた子供の頃が妙に懐かしいです。

そういえばスウェーデンの友人から、2年ほど前のある日本のTVドラマを紹介されました。彼女曰く「とても面白くて癖になっている」とのこと。当然日本人の私が見ているのが前提で話を振ってきたわけですが、私はまったくTVを見ないので知る由もありません。

それを説明し、可能であればDVD等を捜してみると答えるのが精一杯でした。ちょっと笑えないシュールな結果ですね。みんなが同じ方向を向いていた時代は完全に終演しているわけです。

さて、そんな現代の加速度的に変化するメディアにあって、紙媒体は死滅寸前。もちろん電子出版が最高といっているわけではありません。今の電子出版はあくまでも既にある紙媒体の焼き直しでしかありません。電子出版でなければ実現できなかった見せ方と、本物のビジネスモデルは当分先にならないと拝めそうもないですね。

しかし、そろそろ拝ませてもらえないと、タダでさえ安い料金で振り回されている我々デザイナーやイラストレーターは、更に安いレートを提示されそうで、その方が困った問題です。

しかし、某有名プロデューサーが国に対して「クールジャパンなら日本中のクリエイター達に、無報酬で協力して貰えばいい」とふざけた発言をしている状態ではお先真っ暗ですね。完全にクリエイター版ワーキングプワを国が推奨してどうするの? と突っ込みたくなります。

記憶に新しいところでは、天王寺区役所の「報酬無しのデザイナー募集」の件、企画立案者は既に辞表を提出していると激しく願いたいです。

とにかく、一度貼りついてしまったレッテルを剥がすのは大変です。「デザインなんてちょちょっと出来るでしょ」「イラストなんてササッと描けるでしょ」っていうレッテルです。

この状況を思うに、超有名デザイナーあるいはイラストレーターたちは、どうして後から続く若い才能を育てようとしなかったのだろうか感じています。保身なんでしょうか? そう勘ぐられても仕方がないですね。

有名女性政治家同士が犬猿の仲なのに、メディアに対しては「最高にいい友達」と言っているのと似ていますね。言っているコトとやっているコトが違いすぎる人が多すぎます。

ちなみに件の話は別に女性だからと言うワケではなく、男性の方がむしろ多いように感じます。調子のいい奴という意味で。あるいは上っ面だけの奴かな。近づかないのが一番ですね。もろんコレは、生身の付き合いが面倒だという話ではありません。

例えば、まだまだネットワークでのバーチャルなやりとりを揶揄する方達もいます。「やはりリアルな関係が交友には大切」......と。もちろんこれは一理あると思いますが、胡散臭い関係がリアルであるのなら、真面目なバーチャル関係の方が遙かに健全だと感じています。

既存概念が変化するために必要な時間の数十分の一しか与えられずに、俊足で変化する時代になってしまうと、そのスピードにしがみついているのがやっとですからね......普通は。

実際、リアルな関係でも胡散臭いことは山のようにあるわけです。人は過去の事柄や経験を美化してしまう動物です。どんなに嫌なことがあっても、時間と共に美化してしまう。だからリアルの方が絶対に正しいとなってしまうわけです。もちろん極論ですけれど、皆さんも案外思い当たることがあるのではないでしょうか。

昔、私も記憶が間違っていなければ、15年ぐらい前にネットで知り合った方と初めてお会いしたのは2年前でした。会う前も、そして会った後も関係は何も変わらず、今も良好に続いています。もっと長い時間を手紙やメールだけで続けていた例もあります。しかも言葉の通じない外国人です。そう考えると、コミュニケーションは本当に面白いと感じています。

もちろん、リアルな関係を否定しているわけではありません。リアルだからこそ余計に鼻つまみ者が気になるのかも知れません。バーチャルの世界での嫌な奴は問答無用でトラッシュですから、リアル世界よりも生存競争は厳しいわけです。

そう考えると、リアル世界の許容範囲の方が圧倒的に広いわけです。だから、無関係な人にまで影響が飛び火してしまうような気がしています。

もしかしたら、ほんの少しの会話で誤解や勘違いが解けていたかも知れない関係は本当に多いと思いますよ。それがやりやすいリアル世界は、それを心して実践しないと駄目なのだと感じています。パーチャルではそれが出来にくいわけですから......。

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■今月のお気に入りミュージックと映画

[Stairway to Heaven]by Led Zeppelin in 1971(U.K)

邦題『天国への階段』。ジミー・ペイジとロバート・プラントとによって作詞作曲された名曲中の名曲。まだまだ現役というか、突然聴きたくなってしまったというわけです。若い時に染みついた音楽は一生消えないですね。

[The Mechanic]by Simon West in 2011(U.S.A)

邦題『メカニック』。1972年のチャールズ・ブロンソン主演のアクション映画『メカニック』のリメイク作品。ジェイソン・ステイサム主演。時代とともにスターのイメージは変化しますが、チャールズ・ブロンソンもよかったけれど、やはりジェイソン・ステイサムのキレのあるアクションは、本人がスタントマンを使わない主義であることもあって素晴らしいの一言です。ストーリーはネタバレになので触れませんが、ラストまで本当に気が抜けない傑作だと感じています。

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■アップルストア銀座 5月20日(月)19時00分からのセッション

Hands on a Macとして画像処理セッション『海津ヨシノリの画像処理テクニック講座Vol.77』として、Photoshopによるフィルタ処理の可能性をハンズオンします。基本的な使い方をマスターしたら、是非覚えて頂きたいのが直感的な使い方。フィルタ処理は組み合わせと極端な設定により処理結果が激変します。

なお、ハンズオンセミナーは予約制で、申し込みに関してはAppleに一任しております。ちなみに2013年度に入ってからの傾向としては、偶数月に行っている公開セミナー終了後に申し込みをすることが定番化しています。

【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/怪しいお菓子研究家

yoshinori@kaizu.com
< http://www.kaizu.com
>
< http://kaizu-blog.blogspot.com
>

facebookで知らない人からの友達申請は危険ですが、こちらが忘れている場合も当然あるわけです。以前話をしたように、一〜二度会った程度の関係で10年近くブランクがあったら、普通は忘れてしまいますからね。いちいち申請者のページを見ている暇もないわけです。

結果、メッセージのない人で誰だか解らない人は、保留にして忘れてしまいます。仮に共通の友達が複数いたとしても、私の対応に変化はないです。悪く思わないで下さい。細かい事を気にしていたら続けられませんから。

この問題はどこかで宣言しておかないと「あいつ無視した嫌な奴」とレッテルが付いてしまいますからね。こちらの問題じゃないのに。とにかくマナーなきリアル関係よりも、マナーのあるバーチャル関係の方が格段に優れているというわけです。