ネタを訪ねて三万歩[109]3Dソフト情報交換の非公開グループを結成
── 海津ヨシノリ ──

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次々と新しいメディアやツールが生まれてくる現代において、一人で学ぶには敷居が高すぎるモノが溢れかえっているのではないでしょうか。

コンピュータ・グラフィックスの世界で言えば、3Dソフトがそれに該当するような気がしています。この世界、かつては自分の使用しているソフトの優位性を自慢し合うといった、陳腐な情報交換のコミュニティーが多かったように感じています。私はそれが嫌いで、尽く避けてきたことを思い出しました。なんだかとっても気持悪いのです。


そんな中で、2012年12月30日に学生からの要請でFacebook上に3Dソフト情報交換場所として、非公開グループを結成しました。

名前は学生からの意向で「Kaizu 3D Lab」と赤面しそうなものになってしまいましたが、そのあたりはご愛敬と言うことで理解して下さい。大切なのは誰がリーダーでといった仕切りを付けていないことです。

もちろんある程度の人数に膨れあがってしまった場合は、しっかりしたなにがしかの方向性はつけなくてはならないのかもしれませんが、今はこれがベストだと感じています。

さて、3Dの情報交換となると一番の問題は扱うソフトのこと。実はこの問題は設置のかなり前にあっさりとクリアしており、問題はまったくありませんでした。結論から先に言うと「なんでもあり」ということでスタートしています。それぞれが複数のツールを使い分けていることも影響したのかも知れません。

ということで、2014年3月の段階でのメンバーはごく少数ですが、半分は女性という状況で頑張っています。この手の3D系コミュニティーとしては女性の比率は格段に高くなっている理由は、私にもわかりません。

なお、学生以外のメンバーもいますので、学生オンリーというわけではありません。人数が増えすぎると、アットホームで円滑なコミュニケーションは保てませんからね。もちろん非公開グループですが、入会を制限しているわけではありません。

とにかく、ポイントとなるアクティブメンバーのメインソフトは【Blender、Cinema 4D、Lightwave、ZBrush、modo】のように千差万別なのです。他にも【3dsmax、Maya、STRATA DESIGN 3D CX、Shade】といったソフトの話題も出て来ます。関連したソフトとして【AfterEffects、Photoshop】は、お約束の範囲という具合です。

これでは情報交換にならないと感じてしまう方もいるかもしれませんが、基本概念や他のソフトでの作り込みを自分のメインソフトで実行するためにはどのようにしたらよいのか? という部分で盛り上がっています。ポリゴン系のモデリングであれば、共有できるヒントは沢山隠れています。

ちなみに、ここでは海津式「手」のモデリング技法が予想外に支持されてしまいました。テクニックやTipsの類は、自分では大した情報ではないと感じていても、受け手にとっては眼からウロコという場合が少なくありません。

私の中でも少し整理したいと思っていた時期でもあり、また多摩美術大学造形表現学部での授業が募集停止に伴い減ったこともあり、空いている時間を実験や勉強に充てたいと考えていたからです。

ただし、ここで力みすぎるとドロ沼から抜け出せなくなってしまいます。いつもの制作(のようなコト)の延長上で「学ぶ」と考えた方がいいかもしれませんね。いや、大袈裟に「学ぶ」などと考えない方がよいのかもしれません。気が付いたら学んでいたという流れが良いですね。

「苦もなく自然にマスターできる3Dグラフィック」では流石に胡散臭いですが、気持だけはグループの到達点と考えたいです。

さて、この手のグループで人数が少ない場合の注意点は、話題を絶やさないこと。もちろん、無理に書き込みをする必要はありませんが、なんとなく定期的に誰かが面白いネタをアップしてくれるので、いまのところリズミカルに場が盛り上がっています。

質問や疑問の解決も大切ですが、お互いに刺激し合うことはとても新鮮で有意義だと痛感しています。ですから、面白い映像やゲームの紹介も活発です。時にはヨタ話も。

とにかく、3Dの場合はスキルの差がPhotoshopなどとは比べものにならないほど大きくなってしまうので、ネタ振りも大変です。

しかし、学び始めたばかりの段階であれば、背伸びせず、分かっている範囲でとにかく何かを作ってみることが一番の近道だと感じています。あれこれ学んでからでは遅いのです。大切なのは数をこなすこと。

これは特に3Dソフトだけに言えることではなく、すべての「学ぶ」ということに共通する基幹的ハウツーだと感じています。

しかしながら、「学ぶ」はそれだけではありません。感覚や意見の相違を「学ぶ」の上にのせられるか否かも大切なことですね。Tipsだけを追い求めても、デザインが出来たり、イラストが描けるわけではないですから。

大切なのは色々な意見。同じ結果に対して人は様々な視点を持ちます。その違いを共有することで、自分の世界をより明確に構築できるようになるのではないでしょうか。

もちろん、無理に活動を誘導するといった力みが入ると、この手のグループは不安定になってしまいます。大切なのは、何事も自分のペースをキープして人のペースを意識しないことですね。スピードは人それぞれです。早ければ良いと言うわけでも、遅いから悪いというわけでもありません。

実は、少人数の非公開グループを他にふたつ設定しています。ひとつは完全にプライベートなグループ活動なので伏せさせて頂きますが、もうひとつはFacebookで私がアップした写真が元で、突然出来てしまった不思議なグループです。

その名も「ちくわぶ党」。もちろん政治結社ではありません。おでんの具材などで関東では人気の「ちくわぶ」をこよなく愛する者達のコミュニティー(かなり大袈裟な表現)といったところです。勢いは本当に大切ですね。メンバーは千差万別なので本当に不思議な感じがします。ちなみに、我が家のおでんの具材の三分の一はちくわぶです。

そうかと思えば、主催者としてではなく、参加者として5000名から13000名越えという大所帯のグループにも幾つか属しています。こうなると、もう読むだけでも大変だと思う方も多いでしょうが、案外書き込みは少なく、過去の情報を見つけ出すといった使い方で活用しています。恐らく新しいバージョンがリリースされれば突然活発になると思います。

かつて、ユーザーグループが存在するようなモノは発展途上製品だ、そう言い切った方がいました。しかし、だからこそ楽しいのではないでしょうか。色々な意味でネタを提供してくれるモノとの関係は、その後ろに居るユーザー同士のコミュニケーションに他ならないからです。

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■今月のお気に入りミュージックと映画
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[What Is Life]by George Harrison in 1970(England)

邦題「美しき人生」はジョージ・ハリスンの代表曲のひとつ。1970年のアルバム『オール・シングス・マスト・パス』からのシングル化ですが、「マイ・スウィート・ロード」のB面として発表されていた、あまりにも有名な曲ですが、突然聞きたくなってしまいました。冒頭の "What I feel, I can't say" の部分が私はとても好きです。
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[The Croods]by Kirk DeMicco in 2013(U.S.A)

ドリームワークスが公開した3Dアニメーションで、邦題「クルードさんちのはじめての冒険」。家族の安全を重視するための家訓を厳守し、隠れるように洞窟の中だけで生活していた原始人一家が、洞窟の崩壊によって危険な外の世界へと飛び出したことによる大冒険と進化(?)をコミカルに描いた作品。

ドリームワークスの3Dアニメーション作品は好き嫌いが分かれてしまうのですが、この作品は「ヒックとドラゴン」や「モンスターVSエイリアン」と同様でとても気に入ってしまいました。
< http://www.thecroodsmovie.com/
>


【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/怪しいお菓子研究家

yoshinori@kaizu.com
< http://www.kaizu.com
>
< http://kaizu-blog.blogspot.com
>
< https://www.Facebook.com/yoshinori.kaizu
>

FacebookとBlogにアップする写真は別カットと決めてから、可能な限り効率よく街中で撮影を楽しむようにしていますが、面白い風景やオブジェを発見しても直ぐに撮影できないときがあります。あると言うよりも、あり過ぎるというべきかもしれません。通行人が多過ぎたり、天候が悪かったり、日差しが気に入らなかったり。

そんな時は、その場所に何度も通ったりします。もちろん撮影のためだけに通うことはありません。次に仕事でその界隈を訪れることがあればという感じです。ですので今までで一番時間がかかった撮影は半年でした。

都合10回通って、最後に気に入った写真が撮れたときは本当に気持ちがいいものです。ところが、何度も訪れると別の視線を発見したりして、更に撮影に欲が発生してしまうことが時々あります。もちろん面倒ではなく、とても面白いゲームのような世界だと感じています。

ただし、どんなに通っても絶対に撮影出来ないシーンもあります。それは人家の庭やマンションのベランダです。完全に盗撮と勘違いされてしまう危険性が大きいからです。エスカレーターで携帯やスマートフォンを広げると、盗撮の疑いを持たれてしまうのと同じですね。当然、見ず知らずの人が画面に入らないようにすることも神経質に対処しています。

こういうことも、面倒な世の中になったと嘆くのではなく、新しい縛りとしての制約を自分の中で楽しむコトが大切ではないかと感じています。それこそが、私にとってのゲームなのかもしれません。