ネタを訪ねて三万歩[110]悩み多きPhotoshop
── 海津ヨシノリ ──

投稿:  著者:


●よし、ガラパゴス携帯捨てるぞ!

私はいわゆる「ガラパゴス携帯」を使っていました。ただし、2010年秋からはiPhoneも新規購入していましたので、ガラパゴス携帯に固執していたわけではなく、よくいわれる「2台持ち」をしていたというわけです。


完全に無駄と分かっていても、20年以上使い込んでいたdocomoの携帯になんとなく愛着があったからです。いや、正確には何かを期待していたのです。もちろんiPhoneのリリースでしたが、2010年にSoftBankのiPhoneに手を出したので、その目的は消滅しました。それでも持ち続けたのは、長期利用者への特典のようなものだったのかもしれません。

もっとも、実際のところは完全に惰性になっていたことは否定できません。結局この4年間、私はつまらない妄想に取り憑かれたが故の惰性を続けていたのかも知れません。結果として数10万円を無駄に使っていたわけですから。

そして、3月23日の昼過ぎに突然「その時」はやってきました。「よし、ガラパゴス携帯捨てるぞ!」ということで、いきなりdocomo携帯回線をiPhone 5sに変更してしまいました。この携帯電話は最初に契約してから6台目の機種で、2008年から利用しており、所有した機種では最長記録となっていました。

実は同時に、18年ほど使っていたdocomo携帯回線もiPhone 5sに変更しています。ちなみに、ここでいうiPhoneはすべてSoftBankです。既に契約しているiPhone3台がSoftBankであったからです。

もちろん、それをdocomoに変更することも検討しましたが、いかんせん同じモノなのに本体価格が高いので、検討時間は3秒で終わりました。docomoで2回線契約していたガラパゴス携帯をSoftBankのiPhoneにする方が、SoftBankのiPhone3台(最終的に1台は解約予定でしたのでそれを考慮しても)をdocomoに変更し、ガラパゴス携帯もdocomoのiPhoneにした場合の出費よりも格段に安かったからです。検討する意味はなかったのでした。

結局、5台契約していたdocomoの携帯電話は、我が家から完全に消滅しました。一番長く使っていた携帯番号を生かすために、最後の2台の携帯をiPhone 5sに変更し、今まで契約していたiPhone 3台(iPhone 4が2台とiPhone 5が1台)のうち、1台のiPhone 4を解約後に下取りしてもらいました。

番号ポータビリティーの問題もありますが、iPhone 5sに機種変更するためにもっともリーズナブルな処理だったことも大きな要因です。

ということで、私の今までのiPhoneの電話番号は消滅しました。これからは、結果として最初に契約した時のガラパゴス携帯番号がひとつになりました。なにかとても複雑な心境ですが、取り憑かれていた魔物から逃げられたので気分は爽快です。

●「の」が付加されないテキトーすぎる仕様変更

これでネックとなっていた案件が消滅し、メデタシめでたし〜だったわけですが、お約束のように新しい問題が勃発。今度はPhotoshopです。Photoshop CCというより、Adobe製品はすべてCCに移行してから、おかしな現象に悩まされていました。Photoshopのアクションが全滅に近いのです。

従来は新しいバージョンへ移行する場合、古いバージョンで作成したアクションなどは、書き出してから新バージョンで読み上げて使っていました。ここでふと思い出してみると、CS5.1からCS6の時に3つほど正常に処理してくれないアクションがありました。

しかし、そのときはそれほど重要なアクションではなかったので、気にせずトラッシュしていました。つまり、私の記憶で問題が発生したのは、CS6に移行した時とCCに移行した時だけに問題が発生していたのです。実はPhotoshopのアクションはCS6から異常生成していたのです。

そこで、まず、バックアップデータから同じアクションを拾い、CS5.1で正常動作することを確認してからCS6で再実行してみました。結果はエラーです。次にダメ元で同じアクションをCCで読み込んで実行してみると、なんと正常に動作してしまいました。

ということは、悪いのはCS6ということになります。謎は深まります。結局、複数のアクションでこの実験を行った結果、完全にCS6が悪者であるという結論に達しました。

そこで、エラーでストップした場所の処理を丹念に確認していったところ、トンデモナイ事実を発見してしまったのです。

Photoshopのレイヤーで「背景」をコピーすると、CCの場合は「背景 のコピー」なのに対して、CS6の場合は「背景 コピー」となり、「の」が付加されないのです。ちなみにCS4、CS5、CS5.1ではCCと同様に「背景 のコピー」となります。

Illustratorはどのバージョンでも「の」がしっかり付加します。つまり、この適当すぎる仕様変更でアクションは全滅です。いや、完全にバグです。言い逃れは出来ません。CS5.1で作成したアクションはそのまま書き出して読み込めばいいのですが、CS6で作成したアクションは、忘れるか、作り直しです。

CCに完全移行する前は「まっ、いいか、前のバージョンでやれば」という適当さでなんとかクリアしていましたが、とにかく新たに作り直さなくてはなりません。

しかし、アクションの手順はテキストに書き出すことも出来ないので頭が痛くなりました。まず、画面キャプチャーで手順リストを撮影してから印刷し、同じように作り込んでいくしかありません。

リスト表記の意味が分からない部分もあり、CS6で確認しながら……ということで半日使って再登録したのですが、その瞬間にPhotoshopがフリーズして振り出しに戻ってしまいました。結局その日はアクション再登録で完全に潰れてしまいました。

また、それとは別に、どのバージョンからであったか忘れてしまいましたが、Photoshopから我が家のプリンターへの出力は一切出来ません。Ethernet接続もUSB直結も。本当に意味不明です。単に嫌われているだけだったりしているのかもしれませんね。


■今月のお気に入りミュージックと映画

----------------------------------------------------------------------

[Over The Rainbow]by Harry Edward Nilsson III in 1998(U.S.A)

本当は"Girl On Calendar"とするつもりでしたが、既に連載104回目で紹介していましたので変更しました。"Populaire"がラブコメディーであったので、一番好きなラブコメディーの"You've Got Mail"から変則チョイスです。

さて、邦題「虹の彼方に」は、1939年のミュージカル映画"The Wizard of Oz"(邦題:「オズの魔法使」)でジュディ・ガーランドが歌った劇中歌としてあまりにも有名ですが、私はトム・ハンクスとメグ・ライアンが共演した"You've Got Mail"(邦題:「ユー・ガット・メール」)のラストで流れる"Over The Rainbow"が好きです。

そして、なんと歌っているのは"Midnight Cowboy"で、"Midnight Cowboy"(邦題:「真夜中のカーボーイ」)のテーマ曲となっている"Everybody's Talkin"をカバーしたハリー・ニルソン。素晴らしい歌声です。

You've Got Mail
<
>

----------------------------------------------------------------------

[Populaire]by Regis Roinsard in 2012(France)

邦題「タイピスト!」。50年代末期のフランスを舞台としたラブコメディー。50年代の雰囲気を楽しみたいだけでも必見。冒頭の"Forgotten Dreams"から"Girl On Calendar"の流れとビジュアルだけで既にウットリ。

タイプライターの映画なのに、Leroy Andersonの"The Typewriter"が使われていないのも不思議ですが、見終わってみればこの映画には似合わないですね。

主演でとってもキュートなローズ役のデボラ・フランソワは、特訓にて全てのタイピングのシーンを本人が演じているそうです。特訓の成果は作品に華を添えています。

ただし、ラストのワールド大会ではどう考えても不自然なアジア某国の代表のシーンと、全編に渡って時代的にしかたがないのですがタバコのシーンが多すぎるのがちょっと残念。コンテスト会場の客席などでプカプカですから。でも、とにかく素敵な映画で、なんだか手放してしまったタイプライターをもう一度打ってみたくなりました。

Forgotten Dreams
<
>

The Typewriter(1分28秒ぐらいから)
<
>

タイピスト!
<
>

----------------------------------------------------------------------

【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/
怪しいお菓子研究家

yoshinori@kaizu.com
< http://www.kaizu.com
>
< http://kaizu-blog.blogspot.com
>
< https://www.facebook.com/yoshinori.kaizu
>

毎年卒業式を終えて暫く経つと、不思議な出会いがあります。在学中は特に接点もなかったので会話もなく、当然顔も分からない卒業生数人との交流です。人と人の出会いの重要性は、空間ではなくて時間だと痛感しています。もちろん空間で出会う素敵な人達も沢山いますが、時間で出会う人達とのこれからがとても楽しみです。

思えば、多摩美術大学造形表現学部の学位記授与式での学部長の祝辞が、すべてを代弁してくれたような気がします。カンペなしの「過去は思い出ではなく物語である」という話の紹介は素敵な祝辞だったと思います。

私が瞬時に感じたことは、物語は作者が読むのではなく読者のモノ。読者を裏切らない物語を作り込めば、人生は素晴らしいフィナーレを迎えることが出来るのではないか……と。