ネタを訪ねて三万歩[115]"封印"していたプラモデル作りを再開
── 海津ヨシノリ ──

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facebookでのグループ参加が引き金となり、"封印"していたプラモデル作りを再開することにしました。プラモデルと言ってもガンプラ(ガンダムのプラモデル)ではなく、私の場合はAFV(Armored Fighting Vehicle)です。つまり、装甲戦闘車両。


学生の頃はエアブラシを基本にラッカー、アクリル、エナメルという3種類のプラモデル専用塗料を利用していました。もちろん復活の狼煙とともに、同じ環境と言いたいところですが、部屋のスペースや換気の関係でエアブラシとラッカーは御法度と決めました。

そうなるとウェザリング処理がかなり制約されてしまいます。しかし、長いブランクの間に新しい技法が色々と編み出されており、私はその中のひとつにチャレンジする事にしました。それは油彩です。

油絵の具をテレピン、ペトロールなどでウェザリングを行うウォッシュ技法。これが意外と新鮮でリアルな表現に繋がっていきます。問題は下地処理。新たに色々揃えると大変なので、手持ちのリキテックスで代用することにしました。ところが、ここからが大騒ぎの連続。

まずプラモデルは開封後に、台所などで利用する中性洗剤を希釈した水で表面の油分を洗い流します。パーツが細かいので安手の筆などを利用するとベストです。乾燥後にマスキングテープなどで仮組をし、必要な部分は接着しておきます。細かいパーツはランナーから離さず着色をします。

ここでサーフェイスを行う事が理想ですが、パテ盛り処理などがない場合は特に必要ないでしょう。ここではサーフェイス処理を省いて話を進めます。

まずリキテックスはアクリル絵の具ですが、そのままではプラスチックへの食いつきが悪いので、ストレートな塗り込みは避けなければなりません。特にガッシュの食いつきはかなり弱いです。

そこで、モデルの質感に合わせてグロスポリマーメディウム、またはマットメディウムを混ぜることで食いつきを良くします。両者とも接着剤的な性質がありますので、効果はかなり違ってきます。

また、グラデーションメディウムを混ぜると乾燥を遅らせて筆跡を鈍らせる事が可能です(^o^)それから、希釈には水ではなくリターディングメディウムを使うと良いでしょう。

問題はこうして調合したリキテックスを塗るときの注意点です。希釈に注意し、三回ぐらいの重ね塗りで完結できる状態で作業を進めます。一回目はプラスチックの表面でかなりの部分がリキテックスを弾いてしまいますが、気にせず一通り塗りつぶします。

これを三回ほど繰り返すと相当良い感じになります。必要に応じて四回ぐらいでの完結で考えても良いかも知れません。ちなみに私は四回完結です。なお、この下地処理では完成作品の色味よりも幾分暗めの色に設定をします。

さて、ここで一番気にしなくてはならないのは乾燥時間。通常の状態で完全に乾燥させるためには三日ほど必要のようです。重ね塗りの時間的感覚は一日ぐらいで良いと思いますが、四回目が終了したら三日ほど放置した方がよいでしょう。

充分に乾燥したら、ラッカー系のトップコートスプレーを全体に軽く吹きかけます。ここでラッカー系が登場してしまいますが、仕方がないです。もちろん、外でダンボール箱に入れて軽くさっと吹きかける程度で充分です。

この乾燥にも一日以上時間を費やします。充分に乾燥したら油彩でのウエザリングに入ります。面相筆で下地よりもかなり明るめの色を雨だれ式に全体にスポットし、テレピン油を少しだけ付けた筆で擦っていきます。

言葉で説明するのはかなり難しいのですが、実際にやってみると絵心があれば数時間でコツが掴めます。あとは根気よく続けるだけです。

さて、AFV系のプラモデルでは履帯(りたい)、つまりキャタビラがPVC(ポリ塩化ビニール)系というモノが少なくありません。伸縮がある程度可能で整形も容易ということなのでしょう。

ただし、塗装はそのままでは剥げてしまいます。お金を掛けてカステン(モデルカステン/連結可動履帯)を利用したいところですが、下手をすると本体のプラモデルより出費を考えなくてはなりません。

まずは普通の履帯への対策としてマスターしておきたかったので、当面はカステンには手を出さないことに決めました。そこで、塗料の食いつきを強くするためのプライマーとして、ガイアマルチプライマーを事前に塗布する必要があります。

そんなわけで、とりあえず実験用にと、大昔にストックしていたプラモデルの箱が収まったダンボール箱六つも発掘しました。数十年ぶりに開けてみると、絶版品がかなりあり、ちょっとしたお宝の出現にビックリしてしまいました。

そうなると、とりあえずのテイスト作成用に使うのを躊躇してしまったのですが、昭和時代の1/144のガンダムプラモも数点混ざっていたので、これを練習課題とすることにしました。

素材はガンキャノンです。モールドも甘く、パーツも少ないので作りやすい反面、最新版の同製品と比較すると小学生にも見向きされない造形なので、ガンダムプラモとしてのリアルなモデリングは求めず、AFVのための塗装に徹しました。

まず、リキテックスでフィールドグレー色を作成し、実際の色よりも彩度を上げ、丁寧に四回ほど塗り重ねてマット感のあるイメージに仕上げます。

充分に乾燥させてから、トップコートスプレーにてコーティング処理を行い、乾燥後に油彩で汚しをするわけですが、とにかくペトロールの臭さには参りました。ラッカーを避けた意味はほとんどなくなってしまいましたが、もう後には引けません。

ということで、一気に作り込んだ実験習作は概ね成功したので、次はいきなり1/35のAFVとも思ったのですが、様子を見るために新たに1/72の小さいAFV系をいくつか買い込みました。

その中から、同時制作でM3リー/グラントとM4A3シャーマンを手がけたのです。小さいので作りやすく、塗装で勝負と思っていたわけですが、見事に思惑は外れました。

バリが多く噛み合わせも甘いので、修正が大変な作業になりました。いきなり本格化してしまったわけです。道具は色々もっていましたので特に困りませんでしたが、ブランクは大きいですからね。とにかく仮組までと思っていた矢先に、いきなりM3グラントを踏んづけて破損してしまいました。

※M3リー/グラントとは、第二次世界大戦中にアメリカで製造された戦車のことで、グラント及びリーというふたつの愛称は、いずれもイギリス向けの仕様で生産されたイギリス軍の型式違いによるものです。

※M4A3シャーマンとは、第二次世界大戦時にアメリカ合衆国で開発・製造された中戦車で、通称はシャーマン。色々なバリエーションがあり、70年代まで世界各地で使われていた。

※バリとはプラスチック成形時に発生する、プラスチックが少しはみ出してしまった状態。羽根付き餃子のような感じです。

残りはM4A3シャーマン。ところがM3リー/グラントよりもバリと噛み合わせがひどく、小さなパーツが多すぎて修正は大パニックになりました。

ここで昔の感覚が少し戻ってきたようで、無意識に手すりのようなパーツは細い(0.3〜0.5mm)銅線などで代用することにしていました。この方がきれいに処理できます。

そのためには、一度大きな穴のあいている該当する位置をパテで埋めてから、ピンバイスで穴をあける作業が必要になります。1/72だとマッチ箱のようなサイズですから、本当に神経ボロボロになります。

そうです。素直に1/35で始めれば良かったのです。とにかく、ひとつでも完成させないと次に行きたくないので頑張るしかありません。こんなに神経を集中したのは何か月ぶりだろう……。

そして仮組もいよいよ終わりという段階で、ついにやってしまいました。パーツがひとつ行方不明なのです。小さいので絶望です。

ただし、唯一の救いは類似パーツがあるのでそれを元に型取りすればなんとかなりそうですが、余計な作業が入ってしまったので気力はなくなり、しばらく放置することにしました。やはり作り慣れていた1/35あたりで肩慣らしがよさそうです。

しかし、私が以前作っていたときの二倍以上の価格設定には、正直お気軽に手が出ません。それでも無理して購入し、組み立て式のリアルな履帯や装備品などを別に買い求めると、本体価格の更に二倍以上に膨れあがってしまいます。

そうなると、本気で作るためにはプラモデルキットだけで6,000〜100,000円が軽く飛んでしまいます。別の意味でストレスの宝庫になりそうです。


■今月のお気に入りミュージックと映画
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[Cold Blooded Old Times]by Cuff the Duke in 2012(Canada)

アルバム"In Our Time EP"に収録されている曲で、Bill Callahanのカバー。オリジナルのフォークテイストに現代風アレンジが加わった心地よい楽曲。何故か懐かしい、フォークロックを思わせるボーカルが魅力的な曲です。

Bill Callahan - Cold Blooded Old Times - Don't Look Down(18秒目から)
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CUFF THE DUKE - Cold Blooded Old Times(Smog Cover)
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[The Hobbit: The Desolation of Smaug]
by Sir Peter Robert Jackson in U.S.A/NZ/UK

邦題は「ホビット 竜に奪われた王国」。ホビット三部作の二作目。あまり評価が高くないシリーズですが、私は意外と気に入っています。

マーティン・フリーマン演じるビルボ・バギンズが一作目より精神的にも体力的にもやたらと強くなっているのが気になります。しかし、全体的にテンポがあり、アクションシーンもよく見ていると所々に軽いギャグも含まれていて、それなりに楽しめました。

ただし、やはり「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの前の話のはずなのに、主要キャストが老けてしまっているのは誰の目にも明らか。なんとかCGで違和感なく処理して欲しいですね。それだけが気になりました。ちなみにラストが三作目に繋がるような終わり方になっている点も少し不満があります。


【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/怪しいお菓子研究家

プラモデー作りを再開したことにより、部屋の中を数日掛けて大掃除しました。年末ですらしたことのない大掃除です。ここで処分の対象となったのは書類関係。さすがに片っ端から処分するわけはいきませんが、時効の書類や、既に使っていない家電類の保証書やマニュアルなどが山のように出て来ました。

その中から念のために保管していた書類についてはスキャンニングしてからシュレッダー、またはマーカーで塗りつぶしという作業をひたすら繰り返しました。また、ダンボール箱の処分も大変でした。多くは家電の元箱なのですが、既に保証期間の切れているモノなどを思い切って処分しました。万が一の修理時の輸送用に確保していたのです。

そんなわけで本当に恐ろしい量の紙ゴミが発生しました。分別リサイクルを厳守し、2週間掛かってある程度納得できる掃除が終わったはずだったのですが、あまり部屋のスペースは変化していませんでした。どこかに抜本的な対策が必要だったのかもしれません。

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