エセー物語(エッセイ+超短編ストーリー)[008]“The Piano”のご紹介 沈むティーポット
── 柴田友美(超短編ナンバーズ) ──

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◎“The Piano”のご紹介

今回は、普段お世話になっているタカスギシンタロさんの“The Piano”を紹介したいと思います。

“The Piano”は、「ピアノ」の英語版です。日本語版も英語版も、Kindleの電子版で買うことが出来ます。

最初に英語で、次に日本語を載せます。(たくさんある中から3作品を抜粋しています)


◆The Burden

A herd of feet quickly boarded the elevator.

*Beep * (The elevator cannot move as its load has exceeded capacity.)

*Clink* (Someone places an object onto the floor.)

*Ding* (The elevator begins to ascend.)

A glass eye remains outside the elevator’s doors.





◇重さ

急ぎ足の一群がエレベーターに乗り込んだ。
ブーッ。重量オーバーです。

コトン。

チン。上へまいります。
扉の前に残された、義眼。


◆Balloons

After a drinking bout, I came to my senses, holding balloons.
All I can remember is floating in the sky.


◇風船

酔っ払って、気がつくと風船を握っていた。
憶えてるのは、空を飛んだことだけ。


◆Milky Way Highlands Milk

Add a few drops of our product to your coffee or other preferred beverage
and enjoy in a darkened room.


◇銀河高原牛乳

コーヒー等に本品を少量滴下し、部屋の明かりを消してお楽しみ下さい。


『The Piano』(Kindle版)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01AFXWXYW/dgcrcom-22/


『ピアノ』(Kindle版)
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どうでしょうか。日本語もよいけど、英語もよいですね。

「重さ」(The Burden)については、擬音の表現の仕方が、日本語だとかわいい感じだけど、英語だとなんかかっこいいなぁ、と思います。

「急ぎ足の一群が〜」というのが「A herd of feet quickly 〜」となるのが、これもなんか素敵だなと思います。英語になると、なんだかイメージの広がり方が変わるように思います。

「風船」(Balloons)については、最初は英語で書かれたものが日本語に翻訳されたのではないか、という気がするくらい、なんだかとても自由な感じがします。

「銀河高原牛乳」(Milky Way Highlands Milk)についても、この説明書がついた何かが、外国のどこかで売っていそうな気がします。(当たり前のように不思議なものが売っている、という話がめっちゃ好きです)

両方読むと、翻訳者の工夫も感じられて面白いです。(空想が激しいと、英語だけ読んでもなんのことかわからないので、やはり日本語訳も必要です。空想ものでなくても英語分かりませんが)

今回とりあげたのより、もっとすごい翻訳もあるので、ぜひ日本語版と英語版を両方買って読み比べてください。(日本の古典ぽいのとか、擬音のオンパレードとか、よくこれを翻訳したな、と感心するのがたくさんあります!!)

Kindle電子版だと、分からない単語の上でタップするとすぐ意味が表示されるというのも便利です。

銀河高原牛乳は、あの日本のビールのことは知っておいたほうがよいのか、知らなくてよいのか、どうなのでしょうか。

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◎沈むティーポット 柴田友美

机の上に置いていたティーポットが、テーブルに張り付いたのか、動かなくなってしまった。柄のところを持っても、全体を持ち上げようとしても、まったく動かない。

紅茶の葉を、洗わずに置いておいたのがよくなかったのかもしれない。金槌で叩き壊そうかと思っているところに、玄関のチャイムがなった。出てみると、そこに一人のコックさんが立っていた。

「山のあるものがなくなってしまいました。とても困ったことになりました。すみませんが、あなたのティーポットを貸してもらえませんか」

「いいですけど、これは動かくなっていますよ」

そのコックさんをリビングに通して、そのポットを持ち上げてもらうと、ポットはなんなくテーブルから離れた。コックさんがそのティーポットを持って外に出てから、窓の外を見ると、山の色が突然変化した。

そしてテーブルを見ると、ポットを置いていたところにカメラが置いてあった。僕はそのカメラを持って、その山に行くことにした。



【柴田友美(しばたともみ)】

短いお話を書いています。
huochaitomomi@gmail.com

群青コースター(Kindle版)発売中!
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