[4614] WEBニュースの見出しが気にかかる◇私はコレで会社をやめたくなりました

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《社会人のプロ失格です》

■ショート・ストーリーのKUNI[番外編]
 WEBニュースの見出しが気にかかる
 ヤマシタクニコ

■歌う田舎者[62]
 私はコレで会社をやめたくなりました
 もみのこゆきと




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■ショート・ストーリーのKUNI[番外編]
WEBニュースの見出しが気にかかる

ヤマシタクニコ
https://bn.dgcr.com/archives/20180726110200.html

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最近[番外編]が多いような気がするが、たぶん暑さのせいだ。何せ命に危険を及ぼす暑さなのに、わが家にはレジアイスもないので(注・ポケGOネタです)頭を冷やすこともできないのだ。だから、小説が・・・え、台風北上で危険な暑さが和らぐ? そうなの? まあいいよね。

パソコンの前にいる時間が長い私だが、WEBのニュースの見出しが時々おかしくて精神が落ち着かなく、ついつい冷蔵庫に常備している茎わかめを食べると歯にはさまってさらにいらつく、ということがある。

前から時々書いたと思うが(書いてないかもしれないが)、長年小さな街の極小新聞社にいたせいで、またその社長が日刊の硬〜い業界紙の出身だったもので、新聞流の硬〜い見出しのつけ方はもうええわと言いたくなるほど教えられた。そうやって教えられて、今も身についているやり方は基本、昔から続いている古いやり方なのだけど、新聞の見出しのつけ方はそんなに変わってないようで、さすがオールドメディアと揶揄されるだけのことは、じゃない、すでに確立されたスタイルを持っている歴史あるメディアだけのことはあるんである。

そして、新しい媒体であるネットのニュースの見出しも基本、同じような考え方でつけられているようで、だからこそ、時々おかしくなっているようなのである。

去年、ニュースの見出しが話題になったことがある。
(2017年5月29日 NHKニュースWEB)

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官房長官 隠岐諸島から約300キロの日本海に落下か
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内容は「菅官房長官は、北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことを受けて改めて記者会見し、ミサイルが島根県隠岐諸島からおよそ300キロの日本の排他的経済水域の中の日本海に落下したと見られることを明らかにしたうえで、制裁や圧力の強化に向け、アメリカや韓国など関係国と連携して対応していく考えを示しました(以下略)」というもの。

もちろん落下したのは北朝鮮のミサイルであって菅官房長官ではない。でもこの見出しだ。ネットでは「NHKの報道は雑すぎだろ。頭から落ちたのか足から着水したのか腹を盛大に打ったのか、それとも菅の四肢がバラバラになって着水したのか詳細に報道しろよ」等々「一瞬で大喜利化」し、コラがいくつも出現する騒ぎとなった。「端折りすぎてておかしなことに」という書き込みも見られたが、これは端折りすぎたのではなく、単なるミスだと思う。

正しく伝えようと思ったら、この場合まず考えられるのは

官房長官「隠岐諸島から約300キロの日本海に落下か」

と、かぎかっこをつけて引用部を区別する方法。でも、「官房長官」をあえて入れず、

ミサイル 隠岐諸島から約300キロの日本海に落下か

としたら済むか。こういうときに官房長官が出てきて、政府の見解を伝えるのは特筆すべきことでもないからわざわざ見出しに入れなくていい。やっぱり受け狙いだったのか。まさか。


今年の1月30日のWEBの産経ニュースの見出しを読んだときに一瞬、悩んだのは私だけか。(2018.1.30 16:40 産経ニュース)

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PC売却候補にシャープ 東芝、ASUSと交渉停滞
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見出しで「シャープ」と「東芝」と「ASUS」という三つのメーカーが並んでいるので、一見してその関係がどうなってるのかわかりにくい。「、」があればそこで一旦切れると思う。

ということは「、」より前はひとつながりだろうから、売却候補としてシャープ、東芝の二社があがっている・・・ようにも思えるけど、違うみたい・・・。

で、記事を読めば「経営再建中の東芝が検討しているパソコン事業の売却先候補に、シャープが浮上していることが30日、分かった。先行して進めていた台湾大手ASUS(エイスース)との交渉が停滞していることが背景にあるとみられる。(以下略)」というものだった。ああ、確かにそう言われたらそのように見える。そのようにしか見えない。

つまり、「シャープ」の後で改行すべきだったのではないかと思うが、見出しをつけた本人は「はあ? アキがあるじゃないですか。そこで切れてるっていうか、改行したようなものでしょ、ふつう」と言うのだろうか。すみません。

しかし、同じ内容の記事が京都新聞のネット版では改行が入って2行になり、さらに語順が整えられて

東芝、PC売却候補にシャープ
ASUSとの交渉停滞

これならすんなり読める。
またSankei Bizでは

東芝、PC売却候補にシャープ浮上 台湾大手ASUSと交渉停滞

改行しなくてもわかりやすい。語順の問題か。産経ニュースとSankei Bizの関係はよく知らないが、とりあえず産経ニュースの見出しはあまりよくないよね。


次の見出しも「?」だった。(2018年6月17日 Yahoo!ニュース)

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19人殺害 中3訴えた人の価値
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「中3訴えた人の価値」のどこに意味の切れ目があるのかわかりにくいので、何かの事件の裁判の話だろうか、だれかが中3を訴えたのか、中3がだれかを訴えたのか、何を訴えたのか、「中3訴えた人」って誰なの? とか、いろいろ考えてしまう。

見出しのすぐ下の記事はと見ると

「〈やまゆり園〉中3が作文に 人の価値、誰にも決められない入所者らが殺傷された相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」の人々と交流があった中学3年の男子生徒(14)が、園への思いを作文につづり、「第37回全国中学生人権作文コンテスト」(法務省など主催)の中央大会で奨励賞を受けた。題名は「人の価値」。(以下略)」

となっている。なんだそういうことかい。

Yahoo!ニュースはいろんなところからニュースの提供を受けているわけだが、見出しは自分ちでつけるのだろうか。

元の毎日新聞のサイトでは最初から見出しが「やまゆり園 中3が作文に 人の価値、誰にも決められない」となっている。よくわかる。なぜそのまま使わず、余分な(しかもわかりにくい)見出しをつけたのかと思う。

そもそも見出しに「訴えた」という言葉を持って来たのがあまりよくなかったと思う。直前の「殺害」という言葉に無意識のうちに引きずられ、なんとなく事件性のある「訴えた」に思えてしまう。違うかな。

次のは、意味がわからないというのではなく・・・。(2018年6月29日 産経新聞)

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給食の「香味漬け」にゴキブリの死骸 校内アナウンス間に合わず食べた生徒
も 群馬の中学校
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この見出しを見たらだれでも「ぎゃー」とか「おえー」と思う。絶対「ゴキブリの死骸」を「食べた生徒も」いたのだと解釈するはずだ。

でも、記事を読むと

「群馬県館林市教育委員会は29日、市立第四中学校で26日に提供された給食で、メニューの「香味漬け」に体長約3センチのゴキブリ1匹の死骸が混入していたと発表した。市教委は27日、岩上博志校長と保護者に文書で謝罪した。生徒の健康被害などの報告はないという。」ということなので、ちょっと違うようだ。

まさかこれは「ぎゃー」とか「おえー」と言わせるための見出し? それはないだろう。週刊誌の見出しでは「えっ」と思わせておいて、本文を読めば「なーんだ」ということがしょっちゅうあって、もはや週刊誌の見出しをそのまま信じるほうがあほだったりするが、これはそうではないよね? 単なるうっかりであることを望む。


さらに、つい最近のニュース。(2018年07月05日 京都新聞)

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大雨で増水の川にシカ取り残される 京都、自力で泳いで脱出
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西日本豪雨関連のニュースだが、なぜ「京都」の後に「、」をつけるのだろう。これだと「京都が自力で泳いで脱出」したみたいに思う。菅官房長官が日本海に落下するのだから、京都が自力で泳いで脱出してもいいのか。

いやあ京都はんも思い切ったことしはりますなあ、どこに脱出しはりましたんやろ、和歌山あたりですかな、意味わかりまへんわ・・・。だいたい京都新聞の記事やから、わざわざ「京都」と入れんでもええような気もしまっせ。

紙の新聞の見出しの場合、メリットはなんといっても自在に変化がつけられること。見出しには1行ですむ「1本見出し」もあれば主見出し・副見出しの2行になる「2本見出し」、さらに「3本見出し」もあったりする。

でも、2本でも3本でもそれぞれの文字の大きさや書体を変えたり、高低差(縦書きの場合)をつけたりできるのでわかりやすく、読者が混乱することは少ない。でも、WEBで同じようにできないから(いや、できないことはないだろうけど)、やっぱりそれなりの工夫が必要になってくるのだ。


読売オンラインを見ると、「…」を活用しているようだ。(いずれも2018年7月25日)

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西日本などで酷暑…台風29日にも本州上陸か
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着服・備品売却・横領か…吹奏楽部顧問を懲戒免
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東京駅で「張り水」…丸の内広場に涼しい光景
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そうなんですか…。

ハフポストは従来のニュースサイトとはちょっと違うかもしれないが、見出しに「。」を使っている。紙の新聞の見出しではありえないので軽く驚くが、確かに、どこで切れるのかわからなくなる心配はない。言葉遣いも、何が何でも簡潔にという縛りから自由なようで、わかりやすい。(下。いずれも2018年7月24日)

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甲子園の京都予選、猛暑で異例のナイター開催。高野連「どうにか対策を練ら
ないと」
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渡辺直美さんが「グレーテスト・ショーマン」の髭女に大変身。クオリティが
高すぎてヤバい
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「:」も使っている。

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エレベーターのボタンの配列:研究員の眼
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あーなるほど。そうなんだよね。要はわかりやすく事実を伝えるということなんだから、そのために記号を使ったり、いろいろ試みられていいはずだ。

というわけで今後の変化に期待しつつ、ニュースサイトの見出しウォッチングは続く(たぶん)。


【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
http://midtan.net/

http://koo-yamashita.main.jp/wp/


何回か前に財布を買った話をここに書いたが、その財布が使いにくくて、結局その後も財布を求めてさまよっていた。その過程で財布にはアウトドア用とかトラベル用とかいうカテゴリーがあることを知る。

長財布派の女子がパーティーなどではパーティー用バッグに入らないからわざわざ小さな財布を別に購入することもある、ということも。財布の世界も広い。

で、私は無印のトラベル用ウォレットを購入して現在使用中。めちゃコンパクトで感動します。もっと派手だといいんだけど、なにしろ無印だから……というより、トラベル用はスリに遭ったりしないよう目立たないほうがいいんだそうだ。


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■歌う田舎者[62]
私はコレで会社をやめたくなりました

もみのこゆきと
https://bn.dgcr.com/archives/20180726110100.html

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禁煙パイポの話ではない。と言っても、40歳以下の人々には何のことか意味不明であろう。1984年に発売されたタバコ禁煙グッズである。

禁煙パイポを持った中年男性がカメラ目線で、「私はこの禁煙パイポでタバコをやめました」と語りかけ、二人目も同じように「私もこのパイポでタバコをやめました」と語る。三人目は右手の小指を立て、「私はコレで……会社をやめました」そんなCMが世を席巻したのは、もう30年以上も前のことなのか。

今、禁煙パイポはどうなっているのだろう。そう思ってググってみたところ、マルマンヘルスケアでまだ販売されているではないか。なかなかのご長寿商品であることよ。

ものはついでである。タバコの有害性について、デジクリ読者の皆さまに専門家の見地から詳細な解説を行い、愛煙家の方々の意識改革に資するのはいかがかと考えてみたものの、「あ、吾輩、タバコの専門家じゃなかったわ」ということに気付いたので、いやあ、これは致し方ない。代わりに吾輩の近況でも語ろうではないか。

それはある初夏の日のこと。いつものように無言の会社でパソコンに向かい、カタカタとキーボードを鳴らしていた。え、無言の会社って?

歌う田舎者[61]無言……陰気っぽい
https://bn.dgcr.com/archives/20170921110100.html


カタカタカタカタ鳴らしつつ、なんだか腹が痛い。朝から脇腹に違和感があったのだが、だんだんと、まっすぐ椅子に座っていることも苦しくなってきた。

「…痛い、腹が痛い。う、ううううう…」右手で左の脇腹を押さえ、体を前に折り曲げるようにして呻いた。

「あ…うっ…ぐう…うぐ…っ…」

顔面蒼白になり、椅子から崩れ落ちそうになる吾輩を、前に座るプロジェクトリーダが心配そうに覗き込んだ。

「も、もみのこさん、大丈夫ですか。だれか、だれか病院に!」

顔を上げた吾輩の目に映る白い旗。

「ついに…陥ちたか…! おお! 果敢にして偉大なるフランス人民よ…自由…平等…友愛… この崇高なる理想の、永遠に人類のかたき礎たらんことを… フ…ランス……ばんざ…い…!」

市民(シトワイヤン)の歓声がバスティーユにこだまする。無数の銃弾を浴びた軍服は、みるみるうちに血で染まり、虚空を掴むように伸ばした手は、やがて……。

などという芸を弄する気力もなく、徒歩1分の病院によろよろとなだれ込み、その日は帰宅。翌日は薬でなんとか持ち直したため出社したのだが、仕事のスケジュールは超絶逼迫。しかも、その翌日には某所での会社説明会にアサインされている。

あんなあ、要らんやろ、その仕事。吾輩の持ち時間は5分と指示されていたのだが、会社説明会に必要なのは、えらいオサーンと新人君の話だけで、オファーがあったときも最初から「吾輩、要らんじゃね?」と思っていたのである。

んなことやってたら、納期に間に合わねえ上に、最終バスにも間に合わねえじゃねえか。よって、「吾輩、病を得て床に臥せっており、明日のご奉公は何卒免除いただけぬかと御願い申し上げ奉り候」と、平身低頭願い出る矢文を送ったのであるが、えらいオサーンから戻ってきたのは果たし状であった。

「最初から決まっていたアサインに対して、体調を合わせてくるのがプロです。あなたは社会人のプロではありませんね」

はあ?

「社会人のプロ失格です」

もういっぺん言ってみろ。

「人間失格」

……生まれてきてすいません。かくなる上は、薩摩藩の人間のけじめとして、西郷どんもすなる錦江湾への入水というものを、吾輩もしてみむと……待て待て、ちょっと待て。社会人生活30年を超える吾輩に何を言っておるのだ、貴様。吾輩は新人か? 22歳か?

22歳になれば少しずつ臆病者になるのは谷村新司である。誕生日に22本のローソクを立てて祝ったものの、ながすぎた春で他の男と結婚するのは伊勢正三である。そんなことはどうでもいい。だいたいな、吾輩も具合が悪くなろうとしてなったわけじゃないのである。

前日駆け込んだ病院の待合室で、腹が痛いあまり待合室の長椅子に横たわり、うんうん唸っていた吾輩。よろよろしながらレントゲン室で腹部を撮影した後、診察室に呼ばれた。医者が指し示したレントゲン写真には、内臓全体になにかもやもやとしたものが写っている。

「これは……いったい何ですか」
「おそらくベンですね」
「BEN?」

マイケル・ジャクソンか。腹の中がスリラーなのか。それはバッドでデンジャラスだ。

てゆーか、何? 便? 内臓の中が便でいっぱいってこと? 要するに便秘? オーマイガーーーーッ!

吾輩、慢性的便秘持ちである(頭痛持ちとはいうが、便秘持ちっていうのか?)。台湾5泊6日の旅でも、食べたものをすべて腹に入れたまま持ち帰るくらいの便秘持ちである。

歌う田舎者[55]あこがれのBEN E.KING
https://bn.dgcr.com/archives/20160322140100.html


しかし、便秘でなんとなく腹部不愉快な日々が続くことはあっても、こんなに腹が痛くなることなど一度もなかった。しかも、このときの便秘日数は5日くらいで、わりと日常茶飯事的日数だったのである。

この頑固な便秘を解消するために、ヨーグルト、大根おろし、青汁、プルーン、さつま芋、コーヒーがぶ飲み、白湯がぶ飲み、牛乳がぶ飲み……などなど、さまざまなことを試してみたものの、効果は一時的で、しばらくすると腹が慣れてしまい、また便秘になってしまうのだった。

だが下剤には妙に敏感で、半日トイレから離れられなくなってしまう。致し方なく、金曜の夜と土曜の夜を下剤の日と定め、翌日は薬の効き目がおさまるまで、外出もせずに、息を潜めて便意の訪れを待つ休日を過ごしているのである。

このように、吾輩、常日頃から便秘解消のために血の滲むような努力を払っているにもかかわらず、「最初から決まっていたアサインに対して、体調を合わせてくるのがプロです。あなたは社会人のプロではありませんね」だとう〜〜〜〜? どの口が言うかゴルァ!

じゃあ聞くがな、貴様は毎日毎日毎日毎日うんこ出してんのかよ。全全全部ひり出してんのかよ。吾輩はな、ちっちゃな頃から悪ガキで、15で便秘と言われたよ。食べるものみな溜め込んで酒も飲まずにビール腹。

ああ、わかってくれとは言わないが、そんなに吾輩が悪いのか。入社以来まだ有休1日も使ってねえんだぞ。便秘で腹痛になって何がいけないってんだ、くっそ暴れてやりましょう、そして戦うウルトラソウッ!

そのように威勢よく拳を振り上げた初夏の日から数か月。実際にはネット弁慶な小心者で、ちっとも戦っていない吾輩、相も変わらず仕事場の片隅で小さくなってカタカタカタカタとキーボードを鳴らしていたのだが、今度は新たな病魔が忍び寄っていた。梅核気、またの名は咽喉頭異常感症である。

・咽喉頭異常感症(Wikipedia抜粋)

咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)とは、咽喉頭部や食道の狭窄感、異物感、不快感などを訴えるが検査値の異常や器質的病変がみられないものをいう。耳鼻科領域では、咽喉頭異常感症と呼ばれるが、内科領域で「ヒステリー球」と呼称される疾患と概念的に同じものである。また、東洋医学・漢方医学的な「梅核気(ばいかくき)」の疾患概念とも重なる。

黙っていても喉が塞がれた感があるのだが、しゃべると喉に詰まった梅の種的な異物感が強まり、たまに空気をゲェと吐くことがあるので、しゃべりたくない。耳鼻科に行っても、鍼治療しても、漢方薬飲んでも治らない。仕方ないので、不必要な会話はなるべくせず、無言でいる昨今なのである。

そうか。無言の会社に合わせて、お前も無言であれ……と、神の見えざる手が恩寵をくだされたのかもしれぬ。日本の片隅で老いさらばえていくばかりの吾輩のことも、神は見ておられたのだ。

嗚呼、光はここに。神とはなんと情け深い存在であることか。主よ、感謝いたしま…うおおおっと、吾輩どっちかってえと仏教徒だったような気がするぞ。浮気はいかん、浮気は。つーか、具合悪いから治して、頼むよ、神様仏様。

そもそもこの病気、器質的病変がなければ、原因は精神的なもの(うつ病、心身症、神経症)ということなので、メンタルやられた原因をなんとかしないと多分治らないのだが、思い起こせば、顕著に症状がひどくなってきたのは、マイケルが吾輩の腹の中でBENを歌ったあの時期あたりからである。

そうか……BENが原因か。もうこれは、会社に盃返して足洗うたほうがええんじゃね? ほうよほうよ、それしかありゃーせんよ。

そうと決まれば、占いである。吾輩、五年に一度くらいの周期で、「あかん、もうダメや」となると占い師に見てもらいたくなるのだが、鍼灸の先生より、さる高名な四柱推命の先生が薩摩藩に来られるとの情報を得て、見てもらうことにした。さて、吾輩の運命やいかに……。

「なになに、転職か、あるいはフリーランスになりたいですと? …ふむふむ。有火有炉、良い運をお持ちですのう。燃え盛る火を炉で調整し、燃え過ぎぬよう、消えぬようにしながら、ものを作り上げていくことができるという、そういう素晴らしい運勢ですな。

いやはや、生まれてこの方、運勢は段階的にどんどん下がってきていますが、48歳で底を打ちました。これからはどんどん上がっていきますよ、ええ。お金には困りません。そうそう、転職やフリーランスはよろしいですね。今の会社にいるといずれ体を壊すことになります。年末頃を目途に仕事を変えられるとよろしいでしょう。

え、今日明日にも応募書類を出したい? ふむふむ…ううん、悪くはないですが、年末近くのほうがよろしいでしょう。今は少しお休みになって、方向転換を図られるといいかもしれませんね。

動を以て静となす…と、このように申します。今の会社に居続けるより、動いたほうがいいと出ておりますよ。表現することが大変お好きでいらっしゃると思いますので、音楽であるとか美術であるとか芸能方面も大変よろしいですね」

かいつまんで、このようなお話だったのだが、なんと言っても吾輩が食いついたのはココである。

「お金には困りません」

なんですって!? もう一度言って!

「お金には困りません」

なんて甘美な言葉。

「お金には困りません」

ああ、もうチョベリベリ最高ヒッピハッピシェイク!

そうか。これから吾輩、婆タレとして芸能界デビューし、歌に絵画に大活躍。第二の八代亜紀とか第二の五月みどりとか、そういう路線を目指せばいいんだな。よし、わかった!

これ、たれかある。今すぐ「かまきり夫人」の脚本を持て!

「YOU、来ちゃいなYO!」そういってくれる芸能事務所はどこかにないのか。

しっかし、毎回お前の話は長いな。結局何が言いたいんだ、20文字以内で言え! と、ちゃぶ台をひっくり返したい短気な読者の皆さまもおられることと推察する。かたがたに簡潔にお伝えいたそう。

つまり「私はBENで会社をやめたくなりました」と、本日の主旨はそういうことなのだ。

さて、それにしてもマイケルのBENは名曲だ。便秘に苦しむ諸兄の応援歌として、代々語り伝えたい曲と思われるので、ぜひ、正しい日本語訳を噛み締めながら、皆さまも一緒にご唱和いただきたい。

Ben, most people would turn you away
I don't listen to a word they say
They don't see you as I do
I wish they would try to
I'm sure they'd think again
If they had a friend like Ben
A friend like Ben
like Ben
like Ben

─便、きっとみんなは君から目をそむけると思う。
─でも、ぼくはそんな言葉には耳を貸さないんだ
─みんなは毎日君をトイレで流しちゃうから
─ぼくがいつも見てる お腹の中の君のことが見えないんだ
─みんなもぼくのように便秘になってみたらわかるよ
─もしみんなのお腹に、便、君がずっといたら
─便、便、便

吾輩、翻訳の専門家ではないので、若干違う部分があるかもしれないが、大意はこんなもんだ。細かいことは気にすんな。きっとマイケルも、便秘がもたらす悲劇に翻弄される吾輩たちのことを、天国から暖かく見守ってくれているに違いない。

これにて近況報告の結びにしたいと存じます。合掌。


※「禁煙パイポ」マルマンヘルスケア
https://www.youtube.com/watch?time_continue=6&v=2opz5VSlCCs

※「ベルサイユのばら コミック全10巻」池田理代子
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00I2K5XYI/dgcrcom-22/

※「22歳」谷村新司

※「22歳の別れ」伊勢正三

※「ギザギザハートの子守唄」チェッカーズ

※「ULTRA SOUL」B’z

※「SHAKE」SMAP

※「五月みどりのかまきり夫人の告白」

※「BEN」MICHAEL JACKSON



【もみのこ ゆきと】qkjgq410(a)yahoo.co.jp

今日明日にも応募書類を出そうとしていた会社は、数週間ぶりにサイトを見たら「35歳以下」という条件がついていた。くっそう、足元を、いや年齢を見やがって。

ところで病院で処方された便秘の薬は酸化マグネシウムだったのだが、下剤と比べてマイルドな効きで、平日の通勤バスの中で便意が襲ってきても、なんとか我慢できるレベルで結構なお点前だった。

酸化マグネシウムが切れたあとは、twitter上でヤマシタクニコさんと、フォロワーのディレルさんから、ビオフェルミン激推しを受けて、ひと月ほど飲んでいる。酸化マグネシウムより、さらにマイルドで、毎日出なくても、3日以上出ないということもないので、当面ビオフェルミンで様子を見ようと思っている。


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編集後記(07/26)

●日高義樹「日本人の知らないトランプのアメリカ」を読んだ(2018/海竜社)。39代大統領カーターから始まって、45代大統領トランプ至るまで、50年の長きにわたってホワイトハウスに密着取材を続けているジャーナリストによる深層レポート。トランプのアメリカはいま、想像を超えた大変化を起こしつつある。

トランプ政権のナショナル・セキュリティ・ストラテジー(国家安全保障戦略)は、2018年に入ってから詳しい内容が発表された。53ページに及ぶ文書にはアメリカの世界的な戦略構想が明らかにされているという。しかし、わたしはそういう報道を目にした覚えがない。まさか書籍で初見とは。本当のことなのか。

筆者が驚き注目したのは、「日米安全保障条約」という項目も言葉もまったく見当たらないことだった。日本について言及しているのは、「日本はアメリカと協力して北朝鮮のミサイルを撃墜するためのミサイル防衛システムを配備している」という点だけである。日本はアメリカの戦略構想の中から完全に締め出されてしまった。本当か。そんな重要な話、どこからも聞いていない。

新しいアメリカの核戦力の基本になっているのは現実的国防戦力(リアリスティック・ストラテジー)である。今後アメリカは、他国とは軍事同盟を結ばず、軍基地を海外には置かない。国際紛争解決の第一線兵器として使われるのが、新しい小型核兵器だ。アメリカ第一主義のもと、アメリカの利権を守るためだけに戦う。日米同盟体勢も消滅するとか……。だから、聞いていないって。

アメリカのリベラルなメディアは依然として、トランプをアメリカの歴史始まって以来の最低の大統領だとこきおろしているが、トランプはそうした攻撃をものともせず、オバマが進めてきた社会主義的な政策をすべて撤廃し、アメリカ経済を自由主義的な方向に押し戻した。このため、トランプの指導者としての力量、政治家としての指導力を認める方向にアメリカが動き始めている。

トランプ戦略のもとになる三つの考え方がある。まず、外交戦略というのは戦いであり、必ず勝敗がある。二つ目は国際社会はジャングルのようなもので、常に間断なく戦闘が行われている危険な場所である。三つ目は外交では主義主張、道徳性、善悪については考えない。わかりやすいな。トランプが戦争につながる国家戦略に頼らざるを得なくなったのは、今までの大統領の失敗である。

トランプ直前の8年間、アメリカの軍事力を弱体化させ続けたオバマ、その前の8年間、軍事力の余裕がないまま9.11後のテロリストとの戦いを始め中東戦争の泥沼にアメリカを引き入れたブッシュ、その前の8年間、中国とロシアとの友好に力を入れアメリカの軍事的な立場を失わせたクリントン、あわせて24年間の軍事的失敗がトランプ政権にのしかかっている。最悪なのはオバマだ。

オバマは社会主義的色彩の濃いオバマ政治を維持するために、大統領になりたいだけで改革の理想も意志も持っていないヒラリーを後継者に据えようとした。その新しい体制づくりの中の重要な要素が、アメリカのマスメディアを自らの陣営にとりこみ、強力な宣伝機関をつくることだった。リベラルな官僚も、司法省やFBIもオバマ陣営の重要な戦力なのだ。生臭いな、オバマってやつは。

このレポートはくどい。表現を少し変えたくりかえしが多い。もってまわった表現も少なくない。50年もホワイトハウス通い(?)していると、日本語が下手になるのか。筆者の名前は20年前に「日本国初代大統領 桜木健一郎」という漫画の原作者として知っている。いま83歳。ほんまかいな? な本。(柴田)

日高義樹「日本人の知らないトランプのアメリカ」
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4759316132/dgcrcom-22/



●もみのこさん、健康第一ですよ! と人のことは言えないけれど書いてみる。

会社説明会に噴いた。納期優先でしょう。お客さんがプロじゃないんだから、プロがお客さんに合わせないといけなくて、そりゃいろいろありますがな。

なら、優先順位の低いものは取りやめるか、高いなら納期を延ばすか、人を投入するかでしょう。っていうか、それができないぐらい日本での制作費が安すぎるのよ。この業界のお給料安すぎると思うわ。予定外のことが多すぎるのに。

どれだけ健康とプライベートを潰してきたことか。と、昨日のTOMOZOさんの記事の受け売りをしてみるのであった(笑)。 (hammer.mule)

■ゆずみそ単語帳[22]日本がふつうの国になる日/TOMOZO
https://bn.dgcr.com/archives/20180725110200.html