ネタを訪ねて三万歩[192]秋学期は通常に戻るはずだったが
── 海津ヨシノリ ──

投稿:  著者:


ソフトウェアはAdobeに習ってゾクゾクとサブスクリプション型に移行していますが、それが徒になってしまう場合もあります。要するに、常に最新環境であるソフトのバージョン問題が、実はいろいろと深刻だったりします。

たとえば、大学の環境は常に最新というわけではないので、学生が自宅で作業した場合に、互換性が取れないこともときどき発生します。プログラム系、楽曲系、映像系などはシャレにならないです。

すべてのソフトがサブスクリプション型であっても、セキュリティーの関係で、常時アップデートが行えないと聞いたことがあります。そのため、授業で使うソフトに関しては可能な限りの環境を用意していますが、当然完璧ではありません。

マシンのスペックも人文系の大学の場合、学生のマシンは4~8MB、教員のマシンで8~16MBなので、多くは望めません。もっとも、私が麻痺しているのかもしれませんが……。

とくに今年は、突然のコロナ禍でスタートした春学期が本当に大変でした。スマートフォンでの履修生も含まれていたからです。急遽、Androidタブレットを導入して体制を整えましたが、学生から届く予想外の質問への対応は、私にとって未知なものばかりで、かなり困惑してしまいました。




たとえば、「どうしたら学生の状況を再現できるのか?」「学生がどのようにしたいのかについて、質問の意味が分からない?」のツートップでした。とくに学生のトラブルをどうやったら再現できるのかには、本当に苦労しました。再現できないと解決策が出せないからです。つくづく自分がオタクだと思い知らされました。

たとえば、Windows環境でzip圧縮ファイルをダブルクリックすると、解凍することなく中身が見えてしまいます。macOSX環境でダブルクリックすれば自動解凍ですから、紛らわしいです。

そして、これが混乱の元で、htmlファイルとlinksフォルダーを圧縮していたら、htmlファイルをダブルクリックしても、linksフォルダーの画像は表示されません。これでパニックになってしまう学生がかなりいました。

リンクという概念が理解できないと難しいですね。わからなければ仕方がない話です。理解してもらうための努力を続けるしかありません。たとえば「水泳ができない人にどうやって説明するか?」のような状況ですね。

そんなこんなで、秋学期は通常に戻ると誰もが淡い期待を抱いていたわけですが、見事に裏切られて、第二ラウンドに突入でした。

そんな秋学期は学生たちも春学期の教訓からか、ほぼ全員がPCを入手しているので、ずいぶん環境が改善されました。ちなみに圧倒的にWindowsノートPCでした。大学がWindowsですから当然の結果なのでしょう。

そんなわけで、突然パソコンを使い始めた学生にとって、「拡張子」「クラウド」「zip圧縮」「ダブルクリック」「右クリック」……と、矢継ぎ早にワケワカメな言葉が出てくるわけですから、まさに外国語を学ぶような状況ですね。

そして、ほぼ全員がPC所有ということで、私は大きな勘違いをやらかしました。PCを持っているから、基本操作は問題ないと思い込んでしまったのです。多くの学生はスマートフォンに慣れているのですが、PCではかなり混乱した状況下で課題をこなしていたからです。

プチパニックになった学生からのメールによる質問は、どのクラスの学生で、どんな環境であるかを書かずに送ってくるので、対応は本当に大変でした。もちろん、私自身が勘違いしているが故のトラブルもありました。まだまだコンピューターは、発展途上ですね。

また、PCに不慣れな教員からの、勘違い指示で困惑していた学生も少なくありませんでした。たとえば、「12PIフォントで作成」という指定に困惑した学生からの質問に、私も「そんな特殊なフォントがインストールされているとは思えない」と悩んでいて、「フォントサイズ12ポイントでイタリック」だと理解するのに、数時間かかってしまいました。

数値とアルファベットのフォント名が実際にあるので、深読みしていたわけですが、問題の指示を出した先生が「どうしてこんな指示を出したのか?」と、そのことのほうが気になってしまったと同時に「自分も何かやらかしていないか?」が気になってしまいました。

たとえば、些細なことですが広く使われている「イラレ」「フォトショ」「インデ」「パワポ」という表現を、私は絶対に使いません。「イラストレーター」「フォトショップ」「インデザイン」「パワーポイント」のように、すべてフルネームで使います。

仲間内ならいいと思いますが、分からないことだらけの初心者にとって、専門用語の省略ほど怖いモノはありませんからね。私は学生とも関わっているので、常にIT関連の省略語には注意するようにしています。面接時に省略語をうっかり使うと、心象は良くないですからね。

そんな中で、私のやらかした最大のミスは、クラスを間違えて課題の指示をを出してしまったことです。似たような名前の授業だと、間違えないほうがおかしいかもしれませんが、とにかく気を引き締めないといけませんね。

それと、一定の学生の質問メールがサーバー側でスパム扱いされてしまい、ゴミ箱直行で「私が気がつかずに丸一日経過してしまった」なんてことも多く発生しました。理由は不明です。また、学生が集中するためにサーバーが落ちたり、サーバー経由のメールの質問が最大24時間も遅延したりと、本当に初体験トラブルの連続でした。

来年の春学期も、ちょっと怪しい雲行きの予感……。

■えこひいきミュージックと映画

“ウルトラQ dark fantasy:レンズ越しの恋”on Directed by 服部光則 in 2004(日本)

1966年に放送された「ウルトラQ」のリメイク作品。冒頭のテーマミュージックが、やけに安っぽくなってしまったのがとても残念。オリジナルのままで良かったのに……。ちなみにリメイクと言っても、ほとんどの物語は新作。今回紹介するストーリーも新作です。

祖父の形見だった古風な二眼レフカメラ(Zeiss Ikon Ikoflex I)を見つけた主人公が、ファインダーを覗くと、誰もいるはずがないのレンズの先に、60年前の少女の姿が映る。

それは祖父の初恋の人だったのです。そして、彼女と祖父は結ばれず、祖母と結ばれたのは、少女が東京大空襲を避けられなかったから……。主人公は少女に東京から離れるように説得し、それが少女の運命を変えてしまうことで、タイムパラドックスが発生。祖父が祖母と結婚しなければ、自分は存在していないことを知り……。

不覚にも、ラストで涙腺が反応してしまいました。祖母を演じている原知佐子さんは、「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」でおなじみの実相寺昭雄監督の奥様だそうですが、2020年1月19日に他界されています。

60年前の少女時代を演じているのは「千と千尋の神隠し」の、千尋の声を演じた柊瑠美さんでした。ところで、劇中に出てくるカメラZeiss Ikon Ikoflex Iは1900年製となっていますが、正しくは1934〜7年製ですね。

ウルトラQ dark fantasy: レンズ越しの恋


“From Russia with Love”by Matt Monro 1963(UK)

10月31日、名優ショーン・コネリーが他界してしまいました。彼の代表作は、なんといっても007(7作品に主演)。そして最高傑作は、いまだに「ロシアより愛をこめて」だと思っています。

そしてベスト5に入っていると信じているもう一本は、日本を舞台にした「007は二度死ぬ」。ちなみに「ロシアより愛をこめて」のオープニングは、メロディーだけです。実はオープニングがメロディーだけのシリーズ作品は3作品だけです。

第1作『007/ドクター・ノオ』(1962)※1
第2作『007/ロシアより愛をこめて』(1963)※2
第6作『女王陛下の007』(1969)ジョージ・レーゼンビー主演

※1 テーマ曲の後に流れる「Kingston Calypso(Three Blind Mice)」はメインテーマではない。
※2 マット・モンローの歌はエンディングに流れます。

他、ショーン・コネリーが主演した007映画は以下の通りです。
第3作 007 ゴールドフィンガー(1964)
第4作 007 サンダーボール作戦(1965)
第5作 007は二度死ぬ(1967)
第7作 007 ダイヤモンドは永遠に(1971)
ネバーセイ・ネバーアゲイン(1981)サンダーボール作戦のリメイクでイオン・プロ以外の作品

ロシアより愛をこめて(1963)007 危機一髪 マット・モンロー


You Only Live Twice / 007 は二度死ぬ 1967



【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/お菓子研究家

オンライン授業の設定で春からPC周りの環境整理をしたわけですが、改めて見るとUSBケーブルのタコ足配線が、遂にイカ足配線となっていました。そのうちイカ2杯になりそう。アダプターの数珠つなぎって、妖しい雰囲気プンプンでしたね。

そして、相変わらず差し込みに必ず失敗する、前後がわかりにくい仕様は設計者の黒歴史かもですね。そもそも、みんな同じ黒なので、このケーブルは何用? ということが瞬時にわからず、とても苦労していました。

そこで私は、マスキングテープをケーブルのコネクタ付近に巻くことで、把握するようにしました。あとはそのテープが何用なのかをメモしておけば、遠目で見ても何のケーブルか判別できます。

荷造りタグのようなモノも昔は使っていましたが、奥の方に配線してしまうと、それを読むのに一苦労ですからね。とにかく、他のコード類と絡まないように、余分な部分はリング状に巻いて結束バンドで仮止めし、コード類が入り組まないようにしました。

ただし、これだと場所を移動したときに、一苦労してしまうんですよね。もちろん、単にテープを巻いただけだと、識別は難しいですよね。私は安くてシンプルな無色のテープを、ホームセンターで仕入れて愛用しています。色は黄色、緑色、紫色です。これを巻いたあとに100均でゲットした、マニキュアを付けて識別させています。マニキュアはガラスにも描けたりするので、意外と重宝します。

yoshinori@kaizu.com
http://www.kaizu.com

http://kaizu-blog.blogspot.com

https://www.facebook.com/yoshinori.kaizu

https://twitter.com/Yoshinori_Kaizu