羽化の作法[97]現在編 ギャラリー13月世大使館初日、大盛況のうちに終えることができました!/武 盾一郎

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2019年11月23日(土)のオープンデイは、雨にもかかわらず途切れることなくお客様が来てくださり、盛況のうちに終えることができました。原画も2点お求めいただきました。どうもありがとうございました!

閉廊後、ざっと片付けるともう夜の10時。丸亀製麺も閉店してしまったので、北上尾のサイゼリアでポオエヤヨさんとふたり「お互い頑張りました」と労をねぎらい合いました。ふたりともヘトヘトでしたが、充実感とほっこりキラキラ輝いたオープンデイをささやかに祝いました。

ところで前回の原稿で、『不思議な国のアリス』が生まれた1862年7月4日、ドジソン(ルイス・キャロル)とアリスたちが川をボートで遡ったあの日は、実は天気が良くなかったと書きました。

羽化の作法[96]現在編 ギャラリー13月世大使館オープンします!
http://bn.dgcr.com/archives/20191112110200.html

ドジソンにとって忘れられないひとときは、まさに《永遠の金色の午後》として思い出の中に輝いてたのだろうと推測し、ガブリエラガブリエラの物語背景に取り込んで『アリス・エイリアンと金色の午後』を展示しました。

今回の初日、雨の中、沢山の方にお越しいただいた《13月世大使館》は、まさにアリスとドジソンの《金色の午後》が再現されたように、温かく輝いていました。



雨模様なのにドジソンが《金色の午後》と書いた気持ちがなんとなく分かったような気がしました。

次回開廊日は12月14日(土)13〜18時です。皆様にお逢いできますこと心より楽しみにしております。

ギャラリー《13月世大使館》のクリスマス展
https://gabrielgabriela-jp.blogspot.com/2019/11/blog-post_24.html





●《12月世》《13月世》《霧の國》3つの世界の鏡像関係

ここで少し《13月世の物語》の解説をさせてください。

ガブリエルガブリエラの作り出す《13月世の物語》の世界観では、三つの大きな世界があります。この世である《12月世》。この世と織り成す目に見えない世界《13月世》。そしてもうひとつ《霧の國》です。

「現実世界とファンタジー世界」のように「ふたつ」で世界を包括する構造にしたくなかったのです。善と悪、体と心、男と女、光と影、対になる「ふたつ」で世界が説明できそうに見えるのですが、二項対立に陥りたくない気持ちがありました。

もうひとつ加われば世界は動的に巡るのでないだろうか。グー・チョキ・パーのように。

三つの世界の関係はロジャー・ペンローズの『ペンローズの〈量子脳〉理論─心と意識の科学的基礎をもとめて』の三角形の図、「物理的世界」と「心の世界」と「プラトン的世界」と似たような感じです。

https://gitanez.up.n.seesaa.net/gitanez/image/penrose.jpg

“物質的世界は、プラトン的世界の一部から生じます。だから、数学のうち、一部だけが現実の物質世界と関係しているわけです。次に、物質的世界のうち、一部だけが意識を持つように思われます。さらに、意識的な活動のうち、ごく一部だけが、プラトン的世界の絶対的真実にかかわっているわけです。このようにして、全体はぐるぐる回っていて、それぞれの世界の小さな領域だけがひとつにつながっているようなのです”

http://gitanez.seesaa.net/article/28136763.html

《12月世》と《13月世》は、映し鏡のような対の関係性があります。このふたつでは世界が閉じてしまいます。そこに《霧の國》が加わることによって、ぐるぐると世界が巡り物語が動き始めるのです。

●《霧の國》と《13月世》

《霧の國》には《魔女トワル》がいます。彼女は夢を伝って人の心にも現れます。そして人間たちにこうささやきかけます。

“居場所の無いあなた さあ 私の國においで
悲しみも痛みもない 美しい人形にしてあげるえ
特別なあなたは 白く清らかな《霧の國》に相応しい”


《魔女トワル》には、《片目のシャーデン》と《死神フロイデ》の二人の使いがいます。

《片目のシャーデン》


《死神フロイデ》


《霧の國の魔女 トワル》は13月世の《光と影の女王 チェーニ》と瓜二つ。そして、《光と影の女王チェーニ》には《1番弟子 毛虫のピッピ》と《5番弟子 エリザベス鳥プップ》がいて、《霧の國》と《13月世》も鏡像的な関係になっています。

《瞳をぬけると金色野原》


●《霧の國》と《12月世》

《霧の國》イメージの元は、この世に起こる天災や死など、畏怖する自然現象にあります。なんで「霧」なのかというと、ポオ エ ヤヨさんの飼っていたキジバトのポオちゃんが、天に召された日の夜から明け方、とても濃い霧が発生したのです。

「霧がポオちゃんを連れて行った」とヤヨさんは言いました。

悲しいことではあったのですが、「暗い朝の霧が魂を包み込んで連れて行く」イメージはとても美しく、そのことが《霧の國》の世界観の母体となっています。また、原発事故の後の福島第一原子力発電所に霧が発生するニュースも影響を与えています。

福島第一原子力発電所の「怪霧」と海側遮水壁
https://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/83f663bc8e7df52ff5f1fb8cce003d8d

森や山などで起こる霧も、もちろん不気味だったり神秘的だったりするのですが、原発事故現場に発生した霧は何かのメッセージのようでした。あるいは人間の思念が霧になったようでもありました。

《霧の國》は居場所の無い人、自分が特別だと思ってる人を拐って人形(くぐつ)にしてしまう恐ろしい場所です。

「地獄」みたいな感じもあるのですが、地獄のように「行くべきではない場所」というよりも、「誰しもが通る道」、またはむしろ「必要な場所」として設定されています。

《死神フロイデ》は命を奪いに来るのですが、それは「自我を殺す」意味でもあります。人は一生の中で何度も自我を再生(リボーン)できるのです。

この世で人形(くぐつ)のように生きている人たちは、少なくないと思われます。きっと彼ら彼女らは《霧の國》に囚われてるでしょう。しかし、それは必然的なことでもあるのかもしれません。

「必然的な業苦」と「畏怖としての自然」。それは現生そのものでもあり、《霧の國》と《12月世》も鏡像的な関係にあるのです。

●霧の國の“狂ったお茶会” ─ 死神フロイデと執事鳥エノクとイリヤ ─

そこでガブリエルガブリエラの新作を観てみましょう。


《霧の國》の《死神フロイデ》がドクロのパイプを持ってこちらを見ています。ドクロはたぶん本物です。

よく見ると、親指にはヴィヴィアン・ウエストウッドのアーマーリングの指輪みたいなのを付けています。フロイデ様はお洒落なんです。でもそれは血管を切るための道具なのです。

参照:Interview with the Vampire


執事鳥が手に持つティーカップには、異邦の少女《アリス・エイリアン》が幸せそうに居眠りしています。後ろを見るとティーカップの山が積まれています。さて、どういう状況なのでしょうかね。

“狂ったお茶会”とは、ご存知『不思議の国のアリス』のあの”The mad tea party”です。

参照:ディズニーアニメ版”狂ったお茶会”


ご興味がわいたなら、あれこれ想像していただけると幸いです。(つづく)


【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/タフになる!】

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