子だくさんIT社長のFileMaker日記[12]孫正義さんから出た「ITゼネコン」という言葉
── 茂田カツノリ ──

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Ustreamによるネット中継が大流行り。僕もいくつかの番組に参加してるが、いままでメディア側がフィルタしてしまった情報がそのまま出せることは、とっても素晴らしい。

そんな感じでこの数ヶ月、日々歴史が塗り替えられてゆくUstreamだが、先日行われた「孫正義×佐々木俊尚『光の道』対談」は本当に意義深いものだった。その中での主題部分ではなく、中に出てきたお話について僕は注目したい。

孫さんが光回線を全国に張り巡らし、それをみんなが使えるようになった先の話として「電子教科書」について取り上げている部分において、これをいまの「ITゼネコン」にやらせてはロクなものにならない、という発言があったのだ。ITゼネコンは国の大きな仕事を請けているが、国民の税金からおこぼれを頂戴しようとは卑しい、とまで。

いやーそんな、僕ら末端IT労働者の思いを、こんな場で孫さんのような方に公言していただいて、ありがたく思うです。

・Ustream SoftBankCorp Japan
< http://www.ustream.tv/softbankcorp-jpn
>

僕はFileMakerで企業の基幹システムを開発している。FileMakerは200ユーザくらいまでのシステムなら、多くの場面において最良の選択になるのだが、Micorsoft印なものではないぶんマイナーな存在ではある。

別にマイナーなものをわざわざ好んでいるのではなく、世間一般のソフトウェア開発業と同じ土俵で競争してると、結局は孫さんのおっしゃる「ITゼネコン」的構造に巻き込まれてしまうので、そうではない路線を選んでいるというのが一番正直なところだ。



●独創的なものを活かせず受託に甘んじる現状

世の中にはソフトウェア開発会社もそこに従事する人もたくさんいるが、その多くはいわゆる受託開発、つまりどこかの会社から依頼された狭い範囲で利用される製品を開発している。

さらにいうと、その受託も直接お客さんから依頼されているのではなく、受注自体は誰でも名前を知っているような大きな企業で、実際の開発作業を下請け孫請けがやってる、という形が多い。

もちろん、規模の大きな仕事を受けるにはさまざまな管理能力や作業的キャパシティが必要だから、ある程度の規模の会社でないと受けられないことは当然。でも、そうやって下請けで会社としての力を蓄積したところが晴れて直接受注できる立場になるかというと(これはあくまで印象の話ではあるが)、あんまりそういう話は聞かない。

つまり、土建業で行われている元請け下請け孫請け体質が、IT産業、特に国の仕事などの大規模案件においてはそのまま引き継がれているというわけだ。

現場のプログラマーは優秀で、本当に自己を犠牲にして必死に働いている。ちょっと働き過ぎというくらいだ。でもお金の流れとして、本当に「ものづくり」をしている人の手前に、「受注すること」自体を仕事としている人が何重にもはさまる状況は、決して良い構造ではない。

依頼側は、たとえば国の機関なら国民から預かった税金を効率的に利用する義務がある。しかし、実際の成果物を作るに要するプログラマーの工数のほかに、中間に入る業者に落ちるお金も負担するとなると、同じお金でもできることは限られてしまう。これは当然の話。

という方向の話をすると、その業界内にいる当事者である僕はどんどん愚痴になってしまう面もあるが、世間の状況はどうあれ、自分自身はなんとかしたい、と思ってはいる。

ある業務に役立つアプリケーションを開発したら、それは当然、同じ業務に携わる他社にとっても役立つはず。だから、僕の立場としてはパッケージ化して販売すべきなのだが、そのために現状のものをちょっと変更したり、販促活動をしたりというちょっとした資金が、なかなか調達できない現状はある。

2008年にベンチャーキャピタルがベンチャーに出した出資総額が、日本はたった1,000億だったという笑い話がある。もちろん、調査方法はいろいろなので単純には把握できないが、この切り取られた数字だけみれば、某電子マネー詐欺でお金を集めた某詐欺師と同じ金額だ。

日本中のベンチャーが一年必死にがんばっても、一人の老詐欺師にかなわないとしたら、それはやっぱ間違った社会だと思うのだが。

ということで零細ソフトウェア開発会社を経営する僕としては、受託から脱却してパッケージソフトを売ることができるようになるというのが一番の大きな戦いで、いまはその戦いの途上にいる。

これにはもちろん僕が頑張ればいいのだが、やはり社会全体というか、世の中の応援もほしいところではある。そんな中で、孫さんがあのような日本中が注目する場において「ITゼネコン」という言葉を使ったというのは、ある種僕に勇気を与えてくれたのは事実。

僕の勝手な認識ではあるが、孫さんは川のこちら側にいる人なんだと思ったら、ちょっとだけ嬉しくなったのであった。

ということで、ガキ4人抱えて奮闘しておりますが、もうちょっと頑張ります。

◎イベント情報──「集まれ! iPhone女子」
5月23日(日)16:00〜18:00/アップルストア銀座
< http://www.apple.com/jp/retail/ginza/
>

iPhoneを愛用する女性のためのイベント。女性ならぜひ使いたいアプリケーションや、女性ならではの活用例をご紹介するほか、ケースのデコレーションやフリック入力のコンテスト等を実施。司会は僕だよ。女性向けイベントですが、もちろん男性のご参加も可能なので、ぜひともお越しください。

【しげた・かつのり】 FileMaker公認トレーナー/FileMaker11認定デベロッパー。株式会社レクレアル代表取締役。Twitterが与える人生の変化があまりに大きすぎて驚いている44歳4児の父。

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