?×?×CrossOver Talk[9]自分のスピード感覚って、考えたことがありますか?──自分と相手とのスピード感の違いを理解してコミュニケーションを築く
── 杏珠 ──

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デジクリ読者の皆さん、こんにちは。studio H.M代表のディレクター/デザイナーの杏珠(あんじゅ)です。

今回のお話は、自分の持っているスピード感覚を理解して、周りにいる方とのコミュニケーションを円滑にしようというのがテーマです。相手とコミュニケーションを取るときに、距離を感じることってありませんか? そんな距離をすこしでも縮める方法を一緒に考えていこうと思います。

●「速く」ではなく「早く」物事を進める

新聞、雑誌、メディア...どこをみても、いろいろな意味で「スピード」が求められている記事がとても多いと感じています。特に仕事に関わることは顕著ですよね。一言で「効率化」ということで片付けてしまえばそれまでですが、何のために効率化するのか? スピードを上げることにフォーカスして、なにか大事なことを忘れてはいないか...そう思ったことはありませんか?



仕事の速さを追求して、目の前の仕事をささっと片付けるのって、なんだかデキるビジネスマンみたいで、なんだかかっこいいような感じがしますよね?でも、その人その人によって、訓練して仕事のスピードを結果的に上げることができても、目標がないままで無理をしてやっているのであれば、いつかはカラダを壊したりすることに繋がります。自分もそういった時期がありました。

仕事の効率化やスピードの速さは、ある意味麻薬的なモノで、それが体感できると、次から次にその方法を導入したり、実験してみたくなると思います。それはそれで大事な時期もあるかと思いますが、その先をどうしたいか? というビジョンがなければ、終わりのない競走をすることになります。

では、どうしたらいいのか? それは「早く」始めるということが一番だと分かりました。行動を「速く」するのではなく、やり始めるのを「早く」するということです。この「早さ」が、人とのコミュニケーションにも大変役に立つことが分かったんです。

●感覚のスピードや歩幅は人それぞれ違う

私は「感情より理解から入る」ということに気をつけています。「相手とフィーリングが合わない」といって、感情のみで人と接すると、自分の考えをきちんと伝えるチャンスを見逃すことが多くありました。そして、コミュニケーションを取るときに、感情から入りやすくなってしまう一番の理由が自分の「スピード感」だと気づいたのです。

行動する時に「心地いい」スピードや歩幅は、人それぞれ違います。そのスピードや歩幅があったからこそ、今の自分が形成されているのであって、それを「こうした方が効率的だよ」とか「この方が絶対速く終わるよ」と、相手が望んでいないのに、自分の速度に引っ張り込んだりするようなコミュニケーションを取っていると、自然に相手が遠のいていきます。相手のスピードの遅さに我慢できなくなって、感情に走ってしまうケースです。

スピードよりも別なことで解決できることがあるんじゃないか? その人が望んでいるものを、まっさらな気持ちで考えることが、本当のコミュニケーションではないか? と思うんです。

●販売員時代のときに得た考え方

私は高校を卒業してからすぐに、家電量販店の販売員として接客に従事したことがあります。今では本当にその経験に感謝しています。「お客さんの生活をより豊かにするには、なにが一番ふさわしいことなのか?」という思考方法が身に付いたからです。「お客さんが望んでいることをサポートできるのであれば、商品を無理に売る必要はない」ということです。これを言うと販売員さんとかに怒られるかもしれませんが(笑)。でも、この考えで接客すると、不思議にリピーターが増えるんですね。商品をただ売るのではなく、お客さんの立場で接客する。ここでも「早さ」が大事になってきます。

接客を「速く」すると、以下のようになります。
・売り上げを目標の金額に「速く」上げることに気持ちが動き、目の前の商品を「売ること」だけにフォーカスしてしまう。
・接客時間の回転率を「速く」するために、接客時間を効率的に短くしようとする。
・次のお客さんの接客をしたいために、クロージングやフォローも「速く」こなしてしまう。

そこで、接客を「早く」すると、こうなります。
・売り上げは最終的に到達するように、「早く」計画を立てて「早め」に準備する。
・顧客満足度を上げるために、お客さんがどんな生活を望んでいるのかを「早い」段階で引き出してやり、その人自身が望んでいたことを分かってもらえれば、リピートに繋がる。
・お客さんは最後のやりとりが一番記憶に残りやすい。なので、最後にしっかりとフォローすることで、お客さんに喜んでもらえることが多い。

こういった「早さ」と「速さ」の違いを理解すれば、人とのコミュニケーションもより円滑になっていくと思います。

●理解するスピードの「速さ」を意識したコミュニケーション

ここまで「速さ」に対して否定的な感じでお話をしてきましたが、「速さ」自体は決して悪いことではなく、むしろ自分の興味に対するバロメーターとも考えることができます。仕事術などで、効率化することが「楽しい」と思えば作業を「速く」することに対して、面白さを見いだすことにもなります。今回のコミュニケーションというテーマに限っていえば、相手に対して「速さ」という観点でコミュニケーションを取ることはやめた方がいいということです。

自分が意識的に技術やノウハウ、環境改善などを勉強し、いいところは取り入れて、自分で磨いていくことはとても大事なことだと思います。しかし、自分の行動や思考スピードが、他人と同じではないということは常に理解しておくことが必要だと思います。

下記のような場合は、逆に自分がどこまでいけるのか? という可能性を見いだすためにも、できるところは「速さ/早さ」にチャレンジした方がいいでしょう。

・自分ひとりでプロジェクトを進行するような環境。
・パートナーやグループでのプロジェクトにおいて、自分のリミッターを外して、お互いがスピードを出し合い、相乗効果を生み出せるような状況。

しかし、すべてのコミュニケーションにおいて、こういった状況でないことも考えられます。そこで、以下のようなことを念頭にコミュニケーションすると効果的だと思います。

・自分のスピード(話し方・思考・プレゼン方法)が相手にとって速くないか?
・「なにか速いかも...」と感じたら、国語の辞書のページを隅々まで見るような感じでゆっくり話を進める。言葉をひとつひとつ確認をしていきながら進めていき、相手の理解スピードを確認していく。
・ある条件が整っているという「○○ありき」の進め方をしていないか? 相手におざなりな対応をしていないか? 相手が分からなくなってきたときのために、極力分かりやすい話を準備しておく。

●自分が知っていることは、相手が知っているとは限らない

iPad、私も早速予約をしました。自分としては、色々な可能性を秘めたワクワクする商品として楽しみにしています。ですが、「iPadって何?」と、まったく知らないか、興味を持っていない人もいます。「電子書籍ビュアー」としてのデバイスって何? と思う人もいます。

「電子書籍」自体、何なのか知らない人も少なくありません。業界の方もまだ未確定な部分が多く、情報収集やビュアーの開発など試行錯誤している状況です。雑誌やWeb上で「iPadは電子書籍ビューアーとしては使えるのか?」という記事を見ても、「なんのことやら?」と思う人もいるでしょう。

そして、今ではTV番組やラジオ番組でも聞くことも多くなってきたマイクロブログの「Twitter」や、その場でパソコンやiPhoneなどでインターネットを使っての生放送ができる「Ustream」、インターネット上でのコミュニティネットワークなどの「ソーシャルネットワークサービス」は、私にとってはとても大事なWebサービスになっています。ですが、別にTwitterやmixiを知らなくても、生活になんら問題はない方が多数いると思います。

相手が知らないことを知っていたり、持っていないモノを持っていることに対して、「こんなことも知らないの?」と考える自分がいたら「自分はスピード感覚がマヒしていないか?」と振り返ってみて下さい。

自分が普通と思っていることは、人によってはまったく異次元の世界ということも多いのです。時代の波に乗り、波に乗って駆け抜ける瞬発力も大事ですが、自分の普段のスピードがどれくらいかを知っておくことも、人とのコミュニケーションを取るときにはとても大事なことだと思います。そばにいる人ほど、そのスピード感に距離を感じているかもしれませんから。一度、自分の「スピード感」を確認してみてはいかがでしょうか?

【あんじゅ】ask@happy-montblanc.com

東京都出身。デザイン事務所「studio H.M」代表。エディトリアルを中心にデザイン業を営んでます。愛車のSKYWAVE250にPSPのマップラスナビをつけていろんな所に出没しています。大手コンビニエンスストアと某家電量販店でオーディオビジュアル機器(カーナビ、衛星放送機器、テレコ)の販売経験を持つ、妙な経歴の持ち主のディレクター/デザイナー。
『みんなが幸せになれることはないか?』をモットーに、日々自分が気になることを追求し、業種、仕事にとどまらず多方面で物事を追求し、答えを求めている天国思考な人物です。
人と機械の架け橋になることを常に考え、機械がいいパートナーになってもらえるような活動をしています。
機械モノ(パソコンとかガジェットとか。iPhoneは2台持ち)が大好きで、小学校低学年からの生粋ゲーマー、料理(食べ物)が大好物です。業種、仕事の内容、もちろん仕事でなくとも『ピンっ!』と何かを感じてくれましたら、いつでもコンタクトいただければ嬉しい限りです。

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