電網悠語:日々の想い[171]プレゼン:試行錯誤な手法論
── 三井英樹 ──

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最近、従来とは少し違った方法でプレゼンを試している。資料をきちんと作ら
ないという方法。素材を用意して、その場で調理する手法と言うべきかもしれ
ない。手抜きと紙一重だ。

手抜きと異なるのは、準備時間が余り変わらないこと。準備をしない訳ではな
い。むしろ、有り余る資料があってこそできる方法だ。目の前にありったけの
素材を並べて、観客の顔色を見ながらご披露していく。ウケが悪ければ、これ
ならどうだとばかりに二の矢三の矢を放つ。連続ですべると、手駒が尽きる恐
れがあるので準備には時間がかかってしまう。

もちろん毎回ではない。テーマや場や参加者、更に主催者を見て決める。きっ
ちり準備して、画面の流れを自分のペースメーカーにして話す場合と、少しア
ドリブを加えてページごと飛ばし飛ばし演る場合、そして並べた素材に応じて
よりアドリブでやる場合。今はこの三パターンか。突然何かしゃべれと振られ
ることもあるので、全くのアドリブもあるといえばある。

テーマで分類すると、自分の考えなどが主体なら順序立てた計画型、サイト構
築のプロジェクトの実例なら、その場調理型か。前者は話が拡散しがちになる
ので、資料自体のシナリオを軸とする。後者は設計資料は基本的に山ほどあり、
そんな内部資料を見る機会は少ないはずだし、ヘタにまとめられるよりも生素
材の方がそもそも喜ばれる。




ここに至る前は、拡大縮小手法に凝っていた。主にPDFだけれど、swf(Flash)
も拡大縮小がし易かったので、それも時々。気分的にはA3目一杯に資料を並べ
て、拡大しながらブロック毎に説明する。時々縮小、というか全景表示して俯
瞰することで、全体の流れを見失わないようにする。

例えば、Webサイトの構築法について説明する際。RFP(Request for Proposal)
を頂いて、提案して、設計して、実装してテストして公開し、運用に入る。そ
の一連を俯瞰図で示しながら、局所局所を拡大して、ここではこんなツールを
使っている、こんな課題が噴出し易いなどなど。

  ▼Web Site Project Workflow 2009/07 | Flickr - Photo Sharing!
  < http://www.flickr.com/photos/mitmix/3696183727/
>

それは自分の作画方法と同じやり方だ。全体図を描きながら、詳細図を加えて
いき、更にブラシュアップする。書きながらも拡大縮小を繰り返し、自分が迷
子にならないように注意している。

この方法で頑張っていたときに驚いたのは、プレゼンが終わってから、そのツ
ールは何ですかと質問されたこと。え? Adobe Readerなんですが。申し訳な
いように答えたのを憶えている(制作ツールは、PDFの場合はInDesign、swfの
場合はFlash)。配布した資料と同じものでプレゼンしたようにすら感じなか
ったようだ。実はその違和感から、諸々の試行錯誤が始まっている。


そもそも、教科書に載っている方法論が好きじゃない。最初に自己紹介があり、
目次的にトピックを説明し、各論に入り、時折目次に戻って、迷子を救い、テ
ストに出るぞと言わんばかりに結論を数行にまとめる。全く持って正論である。
非の打ち所がない正攻法。

でもね、と思う。自分がその手のプレゼンを聞いていてワクワクしないことが
多いのだ。後で資料をなめれば、分かってしまうなら、わざわざその場に居な
くていいし、そのプレゼンタの話術に触れる必要もない気がしている。

更に、パワーポイント(パワポ)のアニメーションが炸裂し始めると、大抵は
頭を抱える。その爆発の絵は何? とか、余計なことが脳内にわき始めてプレ
ゼンに集中できなくなる。大抵は意味がないんだもの。先日は、娘の高校の授
業でパワポ・アニメーションが宿題に出されていて、どれだけ不要かを力説し
てしまった(娘にとってはいい迷惑だ)。

プレゼン=パワポ、という前提に慣れ始めたのは、つい最近。一から作るので
あれば、InDesignやFlashで作るより圧倒的に早い。但し、InDesignはPDFを使
いまわし易いので、類似プレゼンをするなら、素材がそこそこ溜まっている分、
私にはむしろ最速かもしれない。

そうした、習った常識と現場の常識、ツールの特性に対する肌感。プレゼンを
見つめて選択可能になってきているのが、また楽しい。伝えたいことを、伝わ
り易い形で。識者や尊敬する猛者たちの話を聞いても、正統的な「型」の先に
未来がないことを感じる。最終的には魅力を感じてもらえるかであり、その魅
力の多くはユニーク/唯一無二なものが多いのだろう。

  ▼mitmix@Amazon - ひとつ上のプレゼン。
  < http://astore.amazon.co.jp/milkage-22/detail/4844320807
>


いつからか、一期一会という気が増している。この会場で、このテーマで、こ
の参加者で話すのは、これが最初で最後。だから、何かトラブルがあっても黙
ったりしない。黙ったりできない。沈黙を見せる方が後悔するから。

人に語るというのを、緊張の段階から、楽しむようにも変わってきているのだ
ろう。更に、テーマとしても唯一の答えがある訳ではないものが多くなってき
ている。間違いということがない世界での対話、という認識に立ち始めている
からかもしれない。

Ustreamのおかげで、実はリアルの価値が上がっているのにも後押しされてい
るかもしれない。自席に居ながら様々なプレゼンを見ることができるけれど、
実はその場にいないことを悔しがっている自分が居る。実は自慢話を見せられ
ている感さえする。だから、自分が演る側に立つときは、少しでも自分も楽し
もうとしている。

いい会だったね、あんな風に言ってたけどもう少し突っ込ませてくれ、別の話
ですが意見が合いそうだから○○について聞かせてくれ、様々なリアクション
が楽しく、同じ時間を共有した感が面白い。

色んな形のプレゼンがあってよい。もっともっと忘れられないプレゼンに出会
えて、それを自分でも演る側に立てるように目指したい。精進。


Adobe MAXに今年も行けなかった。名プレゼンの数々に触れられなかったので、
悔しいので書いてみました。はい。

  ▼Adobe MAX 2010
  < http://www.adobe.com/jp/joc/max/
>
  ▼#maxjp - Twitter Search
  < http://search.twitter.com/search?q=%23maxjp
>
  ▼Twitter / Andy Hall: レナード・ニモイ
  (スター・トレック原版のスポック)が ...
  < >

【みつい・ひでき】 感想などはmit_dgcr(a)yahoo.co.jpまで
・今年も残り10週ない。
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