歌う田舎者[47]モミノミクス3本の矢が見せる未来
── もみのこゆきと ──

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「11番、ピッチャー永吉に変わりまして、代打もみのこ、背番号18」

いやぁ、そろそろ甲子園の予選が始まる季節ですねぇ。甲子園といえば、一昔前の薩摩藩ローカル局では、方言による野球実況中継が行われておりました。

【超ローカル実況】KKB鹿児島放送の甲子園実況 是枝さん理解不能解説
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心なしか、実況担当のアナウンサーにも軽くスルーされているような、しっちゃかめっちゃかな方言解説ぶりが涙を誘います。

つーか、誰かわたしを呼びました? え? なになに、ピッチャー矢沢永吉さんが堺市ワールドツアー中で香盤表繰り上げ? ♪時間よ〜止まれ〜♪

そうですかそうですか。あまちゃんでも、天野アキがアメ横女学園センターのシャドウとして修行を積んでおります。お呼びがかかったときにお役に立てずして、何のシャドウぞ。DGC55の一員としては、どんと胸を叩き「オレに任せとけ!」と言わねばなりますまい。

え、55って何? 55歳じゃないわよ、失礼しちゃうわね。もっと若いわよ、ちょっと若いわよ、コント55号でもないわよ、なによなによ、なんか文句でもある? デジクリのライターは、サイトのカテゴリーで数えると、編集長・デスクまで含めて55人よ。それでDGC55よ。わたしがセンターを乗っ取ったからって、トウシューズに押しピンなんか入れないでよね。




そんなわけで登板繰り上げである。もちろん柴田編集長に「オレに任せとけ!」とGカップの胸を叩き、自信満々に登板表明したさ。ぼよよ〜ん。あ、すいません、ウソですウソです。Gカップもウソですが、ほんとは「ほ、保証できないけど、頑張ってみるですよ。なんて返答でええんでしょうか」と、自信なさげにモジモジしながらお返事したわけである。

あぁ、なんてしおらしいあたくし。それなのに、いつまでたっても嫁にいけないなんて、世の中間違っとるよ。

まぁ、それはさておき、代打としての職責を立派に果たし、DGC55のセンターに躍り出るためには、日本の将来に思いをいたす壮大なテーマで書くべきではないか。

参議院選挙も目前となったこの時期、モミノミクスが標榜する三本の矢「機動的な旅計画」「大胆な支出計画」「投資を喚起する婚活戦略」、この3つについて、国民がこぞって理解を深め、正しい投票行動ができるように導くことが必要ではなかろうか。

【機動的な旅計画】

預金通帳の残高がデフレである。持続的に下落していくのである。しかしながらインド人占星術師に「このお方は、近々大金持ちと結婚する運命にあるので、働かなくてもいい」と将来を保証されたわたしに怖いものはない。

インド人占星術師の占いについてはこちら [働かなくていい]
< https://bn.dgcr.com/archives/20130523140100.html
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なんといってもインドは、中国4000年の歴史に匹敵する偉大な文明大国なのである。ウパニシャッドがチャンドラグプタであり、ガンジス川からマハーバーラタしたサンスクリットが流れ出している国なのである。Wikipediaの「インド」の項目から拾ってきたので、何のことかさっぱりわからない。全てカレーの一種かもしれない。

しかしカーマ・スートラだけは知っている。あのような人体の構造を無視したポーズでエッチできるのか、いつ見ても不思議でならない。インド人は全員中国雑技団なのではないか。

いや、本稿ではカーマ・スートラと中国雑技団について語りたいわけではなかった。とにかくインド人に言わせると、わたしの人生は安泰のはずなのだ。

そうはいっても不安にかられるのが人間というもの。今年も折り返し地点を過ぎたというのに、どこぞの大富豪がプロポーズしてくるとか、超イケメン実業家がバラの花束を持って攻めてくるとか、そのような気配がこれっぽっちも見受けられない。ニューデリーに住む友人N子は、その占いに秘められた何か大事なニュアンスを、わたしに伝え忘れているのではないか。

このような疑念を抱いていたところ、N子が実家に一時帰国していることが判明した。実家は小倉である。♪小倉生まれで〜玄海そだち〜♪ そうか。これは詳しい状況をヒアリングせよというシヴァ神のご意思に違いない。インドに行くより小倉のほうがずっと費用がかからないぞ。

よし、即決である。中小企業に必要なのはスピーディーな経営判断だ。わたしの人生に必要なのは、金を使わない判断であるような気がしないでもないが、それは取りあえず置いておく。旅の計画は機動的になされなければ日本経済の活性化は望めない。

【大胆な支出計画】

そんなわけで小倉なのであるが、薩摩藩×小倉間というのは、九州新幹線を使うと2枚切符で20,000円もしやがる。諭吉が2人も必要なのである。去年の秋、Peachで大阪に行った時は片道5,800円だった。Jetstarで成田まで行っても片道5,490円だったりするんだが。

このような状況であるからして、薩摩藩から小倉に行くということは、いまや関西・関東に飛行機で行くよりもラグジュアリーなことなのである。海も越えない旅なのに、なんたることであろう。というか、そんなんでいいのか、JR九州!

しかしながら、わたしは近々大金持ちと結婚するわけであるからして、ラグジュアリーで大胆な支出をしてもいいはずだ。いざ、赴かん、小倉へ。♪ゼニのないやつぁ 俺んとこへこいっ 俺もないけど心配すんな〜♪である。

このように意気揚々と鼻歌など唸ってみたところ、早速友人から結婚式の招待状が届いたのはいかなることであろう。結婚するのはわたしの方じゃないのか。ご祝儀は出世払いというか大金持ちとの結婚後10倍返しでどうですか。

そのあと続々とわたしの元に届いたのは、自動車税の請求書、市県民税の請求書、国保税の請求書である。お上とはなんと無慈悲でせん滅的な請求書攻撃を行うのであろうか。参議院選挙ポスターのキャッチコピーを「日本を取り殺す」に書き換えてやりたいくらいである。

「ちきしょー! 矢でも鉄砲でも持ってこい! 払えばいいんだろ、払えば!」もう破れかぶれアンドレカンドレである。小倉には高速バス乗り継いで行けばいいんだろ? 諭吉よ、さようなら。

♪さよならーさよならーさよならー もうすぐ外は白い冬〜♪わたしにとっては顔面蒼白の夏である。

しかしながら、日本の社会保障の財務基盤を盤石にし、安心して暮らせる国土を整備するためには致し方なきこと。支払わぬわけにはいくまい。

いや、税金はいいけど、小倉には行かんでいいでしょとか、そんな声は聞こえない。

【投資を喚起する婚活戦略】

「機動的な旅計画」「大胆な支出計画」これら2本の矢の前提は、わたしが大金持ちと結婚するはずという、この一点にかかっている。しかしながら、わが財布の中にばんばん現金を投資してくれるとか、酒とごちそうを永遠に供給してくれるという人は、いったいいつ現れるのか。

あぁ、それにしても今夜は寝苦しい。賞味期限が切れた鱈の干物でもアテに、冷えた安ワインでも飲むか。

寝苦しい一夜が明け、自室のベッドで目覚めると、自分が小さな毒虫になっていた。突然のことにとまどうペリカン、いや、とまどう毒虫である。

「こ、これはなに? なにがどうなってしまったの?」
「おやおや、これは小さくてかわいらしいお姫様、どうなすったのかな」
部屋の片隅からもそもそと這い出てきたのは、醜い蜘蛛男である。

「近寄らないで! この気味の悪い蜘蛛男!」
「まぁまぁ、そう言わずに・・・わたしはあなたの望みを何でも叶えることができるのですぞ」
「なんですって! それはほんとなの?」

「望みをなんなりとお聞かせください」
「もしかして、あなたは魔女に呪いをかけられた王子様じゃなくって?」
「さぁ、どうですかな」

「インド人が言うには、そろそろわたし大金持ちと結婚するの。だから働かなくても左団扇のはずなの」
「ほうほう。インド人のせいにして、そのようにぐうたらを決め込んでいるわけですな」

「あら、人聞きが悪いわね。わたし、お酒もごちそうも食べたいの。旅にも出たいのよ。でも貧乏でお金がないの」
「かしこまりました。あなたのために食べきれないほど豪華なお食事を準備いたしました」

蜘蛛男が指差した先には、巨大なコップに入ったワインと、カビの生えた鱈の干物があった。

「ちょ、ちょっと。これはないんじゃないこと。これは昨夜の食べ残しじゃないの。それにカビも生えてるわ」
「お姫様、まぁ、お召し上がりになってください。毒虫に変身して味覚も変わっておりましょう」
「んまぁ、失礼ね」

そう言いながらも、鼻を近づけると、巨大な鱈の干物から、えも言われぬ芳しい腐臭が漂ってくる。「まぁ、いい匂い」一生分はありそうな大きな鱈にかじりついた。

「カビが味に深みを出しているわ。なんて美味なんでしょう」
それから、つるつる滑るコップによじ登り、体を乗り出して、じゅぶじゅぶとワインを飲んだ。

「お姫様のお望みは、まだありましたな。旅でしたかな。それも叶えて進ぜましょう。お金も要りませんぞ」
「まぁ、ほんとなの? 蜘蛛男さん、あなたって素敵。ねぇ、恥ずかしがっていないで、そろそろプロポーズしてくれてもいいのよ」

突然バタンとドアが開き、ずかずかと女が入ってきた。
「ちょっと、やだー。こんなとこにコップ置きっぱなしにしたの誰? うわ、きったなーい。虫が浮いてる」
女は流し台までコップを持っていき、一気にワインを流した。

ごぼごぼ・・・ごぽぽぽぽぽぽ・・・。く、苦しい。息が、息が出来ない・・・。
長い時間パイプの中を流されている間に、残飯のキャベツが鼻に詰まり、肉片が耳をふさいだ。脚が一本もげていった。

何時間、いや、何日流されていたことだろう。目を覚ますと暗い下水道の中に、一筋の光が差し込んでいる。息も絶え絶えで明るい方向へ這い出し、外を見上げた。

「あれは・・・あれは小倉城・・・王子様が言ったとおり、タダで、タダで来れたわ・・・うぷ・・・でも、なんか違う。こうじゃない、こうじゃないのよ」

小さな毒虫は呟き、小倉城によろよろと手を伸ばしたまま息絶えた。

「まったく、なんでもかんでもインド人のせいにしおって。このようなふざけた人間には天罰を下してやらねばならぬ」

破壊の神シヴァは暑苦しい蜘蛛男の着ぐるみを脱いだ。

モミノミクスに浮かれてはならない。預金残高も考えぬキリギリス思考は改め、地道に蓄財に励まなければ、インド人の逆鱗に触れ、身を滅ぼすのである。

※「時間よ止まれ」矢沢永吉
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※「カーマ・スートラ−完訳」ヴァーツヤーヤナ
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※「無法松の一生」村田英雄
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※「だまって俺について来い」植木等
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※「カンドレ・マンドレ」アンドレ・カンドレ
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※「さよなら」オフコース
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※「変身」カフカ
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※「とまどうペリカン」井上陽水
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【もみのこ ゆきと】qkjgq410(a)yahoo.co.jp

カフカ先生、ごめんなさい。そう言えば、お上の無慈悲でせん滅的な請求書をよく見ると、市県民税の所得割がゼロであった。あぁ、おいたわしや、わたし。1億くらい税金納めてみたい。

えぇ、地道な蓄財に励もうと思うとるんです。お仕事、あるいは勤務先、絶賛募集中〜。できることは......そうですねぇ、貧乏を嘆くことでしょうか。