どうしたらできるかな?[step:18]ひとりでできるかな? できました!
── 平山遵子 ──

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卒業展示会の部屋割りが決まりました。私はある教室の半分を使用することになりました。正直、一人でできるのだろうか。不安でグシャグシャな頭の中を整理するために、まずは部屋のレイアウトを作成します。部屋の見取り図に机や椅子、照明、ノートPC、ぬいぐるみの置き場など、詳細を書き込みました。

ここにはオリジナルキャラクターたちのぬいぐるみを置き、向かいにはオーダーメイドのぬいぐるみを置き、導線は出入り口のドアから入り右側から回ってことにして……。何度も何度も描き直し、ようやく納得のいくレイアウトが完成しました。そして展示会で販売するキャラクターグッズのリストを作成し、無事期日までに大学側に提出できました。


あとは展示物の用意です。なにせ40体以上のぬいぐるみ。それを飾るための小道具やポスター、販売するキャラクターグッズ。展示スペースに置くチラシやイラストを入れた額縁など、一人の展示なのに荷物は山のようにあります。

それを自宅から2時間以上かかる大学まで、数回にわけて一人で運びこみます。宅急便などを使えばいいのに、とか思いますよね。でも、当時は学生でお金もあまりないので、展示が終わり大学から自宅に荷物を送る時に宅急便を利用したかったので、最初は節約、最後に少しだけ楽をするやり方を選びました。

実行委員会の仕事もあり、大学にちょくちょくと行く度に荷物を少しずつ自宅から運びだし、とりあえず大学の作品保管庫へ置いておきました。実行委員会委員長のわたしは、今回作品を一時的に保管できる保管庫を確保しておきました。私みたいに荷物の多い人、作品のスケールが大きい人などは、搬入で色々と苦労も多いかと思ったからです。この保管庫、そんな学生たちからも大好評でした。

実行委員会の仕事も一区切りがつき、いよいよ展示準備期間に突入。展示準備の予定表を作成しました。展示準備期間は3日間。以下の行程で動くことに。

一日目:展示室の掃除/長机、椅子の配置/ポスターとイラストの配置
二日目:小物、オリジナルキャラクターのぬいぐるみの配置/物販スペースにキャラクターグッズの配置
三日目:オーダーメイドキャラクターのぬいぐるみとノートPCの配置

一人で不安でしたが、きちんと予定表を作成することで、何とかなりそうだという希望が見えました。そして、一日目。まずは部屋の掃除です。教室は思った以上に汚かった……。まずほうきとちりとりで教室中のゴミを集めて捨てました。床を見ると、マスキングテープ、100円と書かれた値札シール、絵の具と思われるしみ、その他もろもろ、さすが美大らしいというか……。

もう少し、きれいに使って欲しいよね。まったく。自宅から雑巾とマジックリンを持ってきて正解だよ。プリプリしながら、私は一人で床と壁をゴシゴシと拭きまくりました。時々友達が私の部屋に遊びに来ると「うわっ、遵子さん、掃除してるの、ていうかこの教室めちゃくちゃきれにになってる」という声。

そうです、私はずれクジを引いてしまったんです。この教室は汚いし、掃除するの大変だから、絶対に303教室だけは嫌だなと思っていたのですが、ズバリ私の展示部屋に。黙々と掃除をすること2時間以上。ようやく汚い部屋がきれいになりました。壁も拭いたので、最初に比べ、電気を付けた時の明るさが増しました。

さすがに疲れて一休み。その後、一人で重い長机、椅子を運び込んで部屋に配置。この長机にきれいな布を敷きぬいぐるみたちを並べる。そう思うと疲れもあまり感じません。とりあえず夜の9時半まで頑張って無事一日目が終了。

そして、二日目、三日目も黙々と一人で頑張りました。何もなかったあの汚い教室がどんどん賑やかになっていく。私の展示部屋が形になっていく。友達も定期的に私の部屋を覗きに来ては「うわっ! すごい!」「これだけよく一人で並べたね!」「おっ、また部屋が賑やかになってる」。この友達の反応が、一人で作業する私の励みにもなりました。

三日目の夜の9時過ぎ。私の展示部屋が完成しました。明日から2日間の卒業制作展がとても楽しみです。沢山の人に見てもらえたらいいな。完成した展示部屋を何度もぐるぐる見て回り、ルンルン気分で大学を後にしました。

展示会初日、午前中はあまり人の出入りは多くなさそうなので、友達の展示部屋を回りました。30分ぐらい経って自分の部屋に戻ると、中央の休憩スペースの机の上に紙が置いてありました。「とてもかわいい作品ばかり素敵です。良い作品を見せて頂きありがとうございました。」

ある施設で働く女性の方からの手紙でした。30分の間、私は友達の作品を見に回っていたので、その方とお会いすることはなく少々残念でもありましたが、とても嬉しい気持ちでいっぱいでした。この手紙を読んだあとは、私はこの部屋から離れず、来た人みんなに会おうと決めました。その後、沢山の人たちがこの部屋を訪れてくれました。

美術高校の先生、画廊の方、大学近所の方、大学の先生や友達、大学の警備員の方、作品を通して知り合った観光組合の山本さん、小さな子供達などなど。一人で二日間、朝の10時から夜の9時まで立ちぱなしで、来た人一人一人に挨拶をしました。

展示部屋に付きっきりで疲れてふらふら。友達の作品も全部は見て回れませんでしたが、その分、来た人たちの感想や声が聞けて私にとって本当に励みになり、とても充実した嬉しい二日間でありました。

「これ、すごくいね! よくここまで爆発させたね!」
「きみの展示が一番楽しくて、人を引き付けるいい展示だと僕は思いました」
「遵子さんの展示がとてもよかった! とツイッターでつぶやいている人がいたよ」
「わぁ〜この部屋すごいわ! ポップだわ!」
「え〜これかわいい。ねぇ、お父さん、この象さんの巾着欲しい。買って!」
「本当にあなたの部屋は面白いですね。二日間きても飽きませんよ。」
「これ、本当に全部一人で作ったんですか。すごい、それにかわいいですね」
「展示が終わったらこの部屋片付けちゃうのもったえないよ」

ここでは書ききれないほど、たくさんの人の感想を聞けて、喜ぶ顔が見れて、たくさんの人の笑顔を見ることができました。私にとって本当に貴重な体験ができた、素晴らしい二日間でした。

当初はぬいぐるみも裁縫もまったく駄目。本当に出来るのか、不安だらけのゼロからのスタートでしたが、今回の体験でわかったのは「やろうと思う決意があればなんでもできる」ということでした。

展示会のようす
< http://www.j-allstars.com/gallery.html
>

大学を卒業したわたしは、現在もぬいぐるみを作り続けています。以前よりも縫い方も上手くなってきました。ただ、まだ上手く行かないのは「どうしたらビジネスに繋がるか?」です。これがわかったらだれも苦労はしませよね……。大学時代と変わらず、今も二足の草鞋です。会社で働きながら、休みの時間を見つけてはぬいぐるみを作っています。時には仕事でヘトヘトになってしまうこともありますが。

夢は「世界一楽しいぬいぐるみ」を作る!
ぬいぐるみで誰かを笑顔にしたい!

長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。

【平山遵子・ひらやまじゅんこ】
J★(Junko allstars)〜思い出を形に未来につなぐハンドメイド〜
< http://www.j-allstars.com/
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夢は「世界一楽しいぬいぐるみ」を作る!