挑んで死にたい、ダンボールアーティストとして[18]ブランドについて考える
── いわい ともひさ ──

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●ブランドとはなにか

「ブランド」と聞いただけで、すぐに幾つかの名前が頭に浮かんできます。

IT業界でいえばアップルやグーグル、マイクロソフト、IBM、ファッションならグッチやエルメス、ルイ・ヴィトン、車ならトヨタや日産、マツダにメルセデスなどなど、数え始めたらきりがありません。

ブランドのはじまりは何か、ウィキペディアで調べたところ、自分の家畜に焼印を押して、他者と区別したことが起源になっているようです。

しかし、次第にその役割は変わり、現在ではブランドは信頼の証になりました。高級ブランドのロゴやパターンなどがデザインされた商品は、それだけで一定の品質が保証されているように感じるものです。

このようにブランドそのものが、高い付加価値を持っていることの目印のようになっています。




●ブランドイメージやブランド戦略

「ブランドイメージ」は、あるブランド名から浮かんでくるイメージですが、それは企業だけでなく、国にもあります。

例えば日本なら、「高品質・安全・礼儀正しい」というイメージがあります。ドイツなら「環境先進国・生真面目さ」、エジプトなら「砂漠・石油」など、国名を聞いただけでイメージが思い浮かびます。

実際には日本で作られた製品でも粗悪なものはあるし、不真面目なドイツ人だっています。

しかし、「ブランドイメージ」が多くの人の頭の中にあり、それが良いものであれば、好印象になります。逆に悪いブランドイメージを持っているとそれだけで損をしてしまうこともあります。

2000年に発生した、雪印グループの集団食中毒事件と牛肉偽装事件を覚えていますか。

牛乳をはじめとする乳製品といえば、雪印というイメージが付いていましたが、一連の事件によってブランドイメージが地に落ちてしまい、ついには雪印食品が廃業に追い込まれるという事態になりました。

信頼されていたがゆえに、それが損なわれたときの反動も大きかったのでしょう。この事件の後、雪印は牛乳などの製品に「メグミルク」というブランド名を使いました。

「雪印」というブランドについてしまった負のイメージが、あまりにも強かったためでしょう。現在では雪印という名前が製品名に復活しています。

雪印の話は事件であり、ブランドイメージだけで語れるものではありませんが、事件後の対応を見る限り、その影響の大きさを感じずにはいられません。ブランドの重要さを示した事例といえます。

その他には、トヨタ自動車が日本に導入した「レクサス」という高級車ブランドが思い出されます。

レクサスはトヨタが米国で作っていたブランドで、一般車は「トヨタ」、高級車は「レクサス」という区分がありました。

同様に、ニッサンは「インフィニティ」、ホンダは「アキュラ」という高級車ブランドを米国で展開していました。

しかし、高級車ブランドを日本に持ち込んだのはトヨタだけで、他社はいまだ日本では展開していません。

当時レクサスを日本に持ち込むというのは、かなりリスクが高く、体力も必要なことだったと思います。

トヨタは当時から、クラウンやセンチュリーのような高級車を販売しており、レクサスとの住み分けをどうするかなど、課題は山積みだったでしょう。

レクサスが日本で展開され始めた当時、トヨタブランドで売られていた車の一部が名前を変えて、レクサスブランドとして売られるようになりました。

同じ性能の車がレクサスになった途端、価格が200万円以上も高くなったものもありました。

そこには所有者にしかわからない手厚いサービスがあるとはいえ、驚きの価格
差でした。

現在、レクサスは高級ブランドとして日本の市場にも浸透しています。リスクをとってでも、このようなブランドを日本に導入した詳しい背景までは知りませんが、ブランド戦略が企業にとって非常に重要なものであることが分ります。

●ブランド力があると何がよいのか

企業にとって「ブランド力」は、様々な面で強みになります。最も端的な効果は「より高くものが売れる」ということです。

ディズニーランドの現時点での1日入場料は、大人が6,900円です。足を運んだことのある人ならわかりますが、ディズニーランドは平日でもとても賑わっています。

一人で行く人よりも、カップルや家族が多いでしょうから、ディズニーランド内で使う飲食代やお土産代などを合わせると、一組あたりの平均単価は軽く2万円を超えるでしょう。

ブランド力のない遊園地がこのような高額な入場料をとったら、入場者が大幅に減ってしまいそうです。

日本は全国各地に素晴らしい技術を持った事業者がいます。もっと評価されるべきではと思うこともしばしば。

付加価値の高い技術や商品を持っている事業者は、うまくブランドが作れれば、売上はもっと上げられます。

石川県に「限界集落」と呼ばれていた過疎の村がありました。そこにはきれいな水が流れていて、美味しい米が収穫されていました。

農村の人達は自分達が作る米の価値がわからず、農協に一律いくらという価格で買い上げられていましたが、元広告代理店勤務だった公務員がそこに目をつけて、奇抜な方法でその付加価値を世間に知らしめ、従来よりも高い金額で米が売れるようになりました。

これもまたブランド化のひとつの事例であり、きちんとしたブランド力を持たせられれば、よい価格で売れるようになるのです。

●どうすればブランドが作れるのか

では、どうすればブランドが作れるのでしょうか。こればかりは、こうすれば絶対にうまくいくという方法論はありません。

ただ、やはりブランド化の前提は「商品に価値があること」なので、莫大な費用を投じても、うまくいかないものもあります。

これは大手企業が立ち上げて、大ゴケしている商品やサービスの事例を思い浮かべればわかります。

具体的な事例を挙げてしまうと悪口になるので、みなさんのご想像にお任せしますが。

最近では「地方創生」などという言葉をよく聞きます。何年か前に「今治タオル」のブランド化が話題になりました。

ユニクロなど、数々の大手企業のブランド化に関わっている佐藤可士和さんが今治タオルのブランド化を手がけていますが、その舞台裏が書かれた本を読むと、かなり困難だったことがわかります。

予算のない中、多くの人が関わる地域産業をブランド化するなんてことは、聞いただけでも頭が痛くなりそうです。

しかし、今治タオルの確かな品質があったからこそ、佐藤さんも動いたということが本には書かれていました。やはり商品価値があればこそですね。

私もこれから製品を作って販売をしていくので、いずれはブランドというものを確立していきたいと考えています。


【いわい ともひさ/ダンボールアーティスト】
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今週の一言:お陰さまで超忙しいです。でも、まだまだ駆け出し。勝負はこれから。