挑んで死にたい、ダンボールアーティストとして[20]「売るための技術」としてのマーケティング
── いわい ともひさ ──

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●マーケティングとは

前回はブランドについてお伝えしましたが、今回は「マーケティング」について書いてみました。

「マーケティング」と聞くと、何やらとても難しいものを思い浮かべる人も多いかもしれません。ウィキペディアでは次のように書かれています。

〈マーケティング(英: marketing)とは、企業などの組織が行うあらゆる活動のうち、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにする」ための概念である。また顧客のニーズを解明し、顧客価値を生み出すための経営哲学、戦略、仕組み、プロセスを指す。〉

https://ja.wikipedia.org/wiki/マーケティング


難しいし長いわ! って叫びたくなりますね(笑)まあウィキペディアは辞書的な答えを書かなくてはいけないため、こうなってしまうのはわかります。でも、もう少し簡単に言い表せないでしょうかね。



そんな疑問に、マーケティングのプロである理央周さんが答えてくれました。理央さんの言葉を借りると、マーケティングとは「自然に売れる仕組みを作ること」になります。

これなら簡単だし、すっと頭に入りますよね。もちろん実際には様々なマーケティングの理論や手法はあるわけですが、「自然に売れる仕組み」と考えれば、それは何も大企業にしかできないものではないとわかります。

年商1,000億の企業と年商1,000万の個人商店、それぞれのマーケティング手法があるのです。

●理央さんから教えてもらったマーケティング

私にマーケティングの初歩について教えてくれた理央さんとは、名古屋商工会議所で出会いました。

2014年に名古屋商工会議所が主催した創業塾というイベントで、理央さんがマーケティングの講師を務めていました。

フィリップモリス、アマゾンジャパン、マスターカードなど、名だたる企業でマーケティングの責任者として経験を積んだ理央さんは、2010年に名古屋で会社を設立し、企業や大学でのマーケティングの講師をはじめ、書籍執筆やテレビ・ラジオへの出演など幅広く活躍しています。

その経歴から、あまりに参考にはならない壮大な規模のマーケティングのお話を想像しましたが、よい意味で期待を裏切られました。

理央さんから聞いたのは、愛知県の自転車屋さんがチラシのデザインを少し変更しただけで売上が14倍になったとか、お店や会社の名前は覚えやすくしないと記憶にとどめてもらえないとか、誰にでも応用できそうな話でした。

もっとも大切なのは「マーケティング的な考え方」であることがわかりました。

マーケティングの本質的な考え方がわかっていれば、個人商店にだって応用できるわけです。

例えばお店の名前の話ですが、聞いても意味がわからないような横文字にするよりも「田中コーヒー店」とか「精肉の鈴木」とかにした方が、覚えてもらいやすいのです。

名前とかは基本ではありますが、案外個人のこだわりを優先してしまったりしますよね。まあこのあたりは、あくまでもマーケティング的な考え方なので、なんでもかんでもそれに従わなくてはいけないということではありませんが、念頭に置いておくとよいですね。

理央さんのお話は非常に身の丈にあった、わかりやすいものでしたが、もっとスケールの大きな話もあります。

●Amazonとブロガーを使って30人で年商9.6億円のEC Technology

中国のEC Technologyは、わずか従業員30人で年商9.6億円という驚異的な売上の会社です。詳しいことは次のブログに書かれています。

http://gadgety.hatenablog.com/entry/ectechnology-history


個人ブログだったので、情報源としてリンクされていたEC Technologyのウェブサイトを見ましたが、現在は売上の情報などは掲載されていないようでした。

ブログに書かれていた従業員数、売上の情報は、いずれも2014年のもののようです。

そのEC Technologyですが、売り物はスマートフォンの充電器やイヤフォン、ワイヤレス・スピーカー、キーボードなど、スマートフォンやタブレット端末の周辺機器が中心です。

商材から考えて、単価がそれほど高いものではないことは容易に想像できます。実際、Amazonで検索してみても製品の価格帯は1,000〜4,000で、安いものでは1,000円以下でした。

例えば平均単価を2,000円と考えた場合、9億円を売り上げようと思ったら45万個売らなければいけません。一年でこの数を捌くには、月平均で37,500個です。

創業当時は10人というこの会社で、機器本体やパッケージの設計・デザインを手がけ、工場に発注し、梱包して倉庫に保管。ECサイトを作り、売れたら顧客に配送して……などと考えていたら、従業員全員が休みなく働いても間に合いそうにありません。

彼らはAmazonを有効活用して販売を行っているそうです。Amazonで商品を販売するときは、Amazon側にまとめて商品を送ってしまえば、倉庫で保管してもらえて、注文処理も配送もAmazonがやってくれます。

オンライン販売を行うときにかかってくる様々な負担を、Amazonが肩代わりしてくれるのです。もちろんAmazonを利用する費用はかかりますが、個人で同じことをやろうと思ったら、その何倍もの費用がかかります。

Amazonは世界中に展開しているので、各国語がわかる従業員がいれば、同じやり方でどんどん水平展開できます。

しかし、安くても聞いたこともない会社の製品は中々購入しにくいものです。そこで利用するのはブロガーです。

ブロガー達に商品を無料で渡し、Amazonにレビューを書いてもらうよう依頼します。無名の会社でも数百、数千というレビューが付いていて、内容がまあまあと思えるものなら購入しやすくなりますよね。

安価な製品を配るだけで、信用の証となる製品レビューを書いてもらえるなら、宣伝費としては安いものです。

Appleのようなブランド力の強い会社が、デザインや性能に徹底的にこだわった製品を高額で売るのとは、間逆な戦略と言えます。

こういう業者は雨後の筍のごとく増えていて、私のブログにも無料で製品をあげるからレビューを書いて欲しい、といった問い合わせは結構あります。

もうバッテリーはいっぱい持ってるのでお腹いっぱいです(笑)

●マーケティングを自身のビジネスにどう活かすか

今回はマーケティング的な考え方や事例について書きましたが、一番大切なのは、自分自身のビジネスにどう活かすかということです。

「うちは規模が小さいから、マーケティングにかけるお金なんてない」と考えている人は、そんなことないってことがわかってもらえたんじゃないでしょうかね。

私もこれから商品を作って販売していきたいと考えていますが、いまはまだ自分一人が食べていくのに精一杯な状況です。しかし小規模でも、マーケティング的な視点を持って物事を考えれば、最小限の力で最大限の効果が出せます。

例えば、作った商品をお客さんに直接販売してしまうと(BtoC)、手間がかかりすぎます。なのでAmazonのような仕組みを使うのもひとつの方法だし、量販店に卸すという方法(BtoBtoC)も考えられます。

小売りの場合は、不特定多数の人への配送やサポートなどの対応が必要ですが、量販店に販売すれば、ある程度の数量を一度にさばけて、直接的な顧客対応もそちらにお任せできます。そうすれば負担を大幅に軽減できますよね。

今年は自分自身のビジネスのことをもっと書けるように頑張ります。


【いわい ともひさ/ダンボールアーティスト】
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Behance https://www.behance.net/iwai


今週の一言:手痛い失敗をしてしまいました…詳しくは後日。