挑んで死にたい、ダンボールアーティストとして[21]初挑戦のクラウドファンディングで手痛い失敗
── いわい ともひさ ──

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自身で考えた製品をクラウドファンディングで公開するために、昨年末から準備していました。

クラウドファンディングサービスの提供会社ともやりとりを行い、プロジェクトは3月15日(火)から開始予定でしたが、残念ながら公開後に断念しました。

●クラウドファンディングとは

クラウドファンディングとは、群衆(crowd)とファンディング(funding)を組み合わせた造語で、文字通り、多くの人達から資金調達することを主目的にしたサービスです。

無名の新規事業者にとっては、資金を集めることそのものが非常に困難です。実績のない会社には、銀行のような金融機関も中々お金を貸してはくれませんし、知り合いから借りられる金額には限界があります。

クラウドファンディングを利用すれば、短期間に大金を集めることも夢ではありません。

魅力的な製品やサービスを提示できれば、それに賛同した多くの人達が少しずつ出資してくれます。海外では若い事業者が億単位の資金調達に成功した事例もあります。

クラウドファンディングは、インターネットを利用した資金調達の仕組みです。サービス提供会社が用意したウェブサイトに、様々なプロジェクトが公開されます。

魅力的なプロジェクトであれば、SNSなどを中心にどんどんと情報が拡散されて、場合によっては大きなメディアが取り上げることもあります。

インターネットやSNS上で影響力のある人には、有利な仕組みです。




●資金調達以外のクラウドファンディングの魅力

クラウドファンディングは資金調達を主目的にしていますが、他にも様々な活用方法があります。

例えばマーケティングです。いまから販売したい製品があるとします。どれだけ調査を重ねたとしても、想定した層に購入してもらえるかどうかは、販売してみなければわかりません。

このような場合、正式販売の前にクラウドファンディングで情報公開を行うことで、市場の反応を確認できます。

結果を見て、広告宣伝の手法や広告出稿の媒体などを検討すれば、より適切な予算配分が可能になります。

プロジェクトが成功すれば、それ自体がひとつの実績にもなります。製品を販売店に売り込むときに、目標額の何百パーセントの資金調達に成功したとか、どのような層から多くの出資が得られたかなどを具体的に伝えられれば、販売店側も取り扱いを検討しやすくなるでしょう。

●初挑戦が開始前に終わってしまった顛末

私はクラウドファンディングを、主に資金調達以外の目的で使おうと考えていました。先にお伝えしたようなマーケティングや販路づくりに活用したかったのです。

昨年末に製品のアイデアを固め、試作を行い、着々と準備を進めてきました。

私が考えた製品は「小さな丸い板」です。板の裏側にはネジ穴が付いています。この板をカメラ用の三脚に取り付けるだけで、サイドテーブルになります。

発想の原点は、ワイヤレス・スピーカーでした。ワイヤレス・スピーカーは、スマートフォンやパソコンとワイヤレスに接続して音楽が聞けます。

自宅で活用できるのはもちろん、屋外にも簡単に持ち出せて、置き場所を選びません。

私は一日のほとんどの時間をパソコンの前で過ごしており、スピーカーを自身の後方に置いて使いたいと考えています。

しかし、そこにはスピーカーの設置場所になる本棚や机はありません。

スピーカーは設置場所によって音の聞こえ方が変わるため、一番よい音が聞こえるところに置きたいのですが、これが案外難しいのです。

なにかよい方法はないものかと考えていたときに思い出したのが、カメラ用の三脚でした。

カメラ愛好家ならひとつは持っていそうな三脚は、基本的には屋外で使うものです。自宅では収納したままという人がほとんどでしょう。

そもそも多くの人が、三脚を購入したまま、眠らせていると思われます。私自身がそうでした。

三脚の上に台を取り付ければ、スピーカーの設置場所になるし、使っていない三脚の有効活用にもなり、一石二鳥ではないかと考えました。

でも三脚に板をつけるというアイデアは、誰でも思いつきそうです。製品化検討の段階で、ネットに類似商品がないかを検索しました。

四角い板を取り付けて、パソコンの設置台にするという製品がありましたが、私が考えていたものとは用途もターゲットも異なるため、これは問題ないだろうと考えました。

他には類似商品は見つからず、製品化を進めました。

ところが2016年元旦の深夜、年越しも終わってそろそろ眠ろうとしていたときに、ネットで類似商品を見つけてしまいました。

しかも商品の販売元は、あの糸井重里さんの「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」だったのです。

その商品は三脚に取り付けてティーテーブルになるというものでした。発想や用途、ターゲットなどは異なりましたが「三脚に取り付けて使う」「丸テーブル」という大きな特長が被っていました。

ただ商品の販売はすでに終了していたこと、ウェブサイト上に特許など権利関係の記載がなかったこと、どのような分野にも類似商品は存在するということなどを総合的に考えて、問題なしと判断しました。

その後はクラウドファンディングの準備を進めました。しかしプロジェクト公開直前になって、どうしても気になったことから、直接、ほぼ日に私が考えている製品の販売に問題があるかどうかを確認しました。

結果は「問題あり」とのことでした。ウェブサイトには記載はありませんでしたが、意匠権申請中とのことで、そこに触れるというのです。

意匠権は見た目のデザインなどに関する権利です。正直なところ、問題を回避する方法は色々と考えられましたが、周りの人達に迷惑をかけたくないということや、無用の争いを避けたいという考えなどから、プロジェクトの公開中止を決断しました。

まさかこのような幕切れが待っているとは、思いもよりませんでした。

しかしプロジェクト公開後に、ほぼ日からクレームが付いていたら、クラウドファンディングサービスの提供会社にも、さらに迷惑をかけたかもしれませんし、私自身も今後の事業運営に悪い影響が出ていたかもしれません。

結果は残念でしたが、被害を最小限に食い止められたことは、不幸中の幸いと考えています。気を取り直して、次の一歩を踏み出します。


【いわい ともひさ/ダンボールアーティスト】
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今週の一言:いや〜本当に痛かった。でも立ち止まっている余裕などありません。前を向いて進んでいきます。